第71話 改めて
何やら寝苦しさで目が覚めたミヤジは、自分の体に乗る9本の尻尾を確認した。
すぅ、すぅ、と規則正しく聞こえてくる寝息はどこか安心さえ感じさせてくれる。
寝息を立てている存在を起こさぬよう静かに布団から抜け出して、ミヤジはそっと部屋を後にした。
「いけず」
小さく、呟かれた言葉には流石に気が付かなかったようだ。
縁側でタバコを吹かしていると、小さな元気な足音が耳に届く。
「父様、父様。朝ご飯はいかがなさいますかなのです」
まだ、太陽は昇り始めたばかり、そんな早い時間にもうご飯の準備を終えている息子に感心しつつ、もう少し後で、神楽が起きてきたら。と返して見える景色に視線を戻し、改めて実感する。
家族って、いいもんだな。と。
*
「俺やった事ないっすよ!?」
割と大きな声で言うのは勇者パーティの戦士。
しかし、いつものメンバーはおらず、彼だけがここ、冒険者育成学校へ来ていた。
「安心しろ、俺も初めはそうだった。まぁ、フォローはするからさ。これから頑張って行こうや」
「そんな事言われたって……あんまり教えるなんて柄じゃないと思うんすけど」
「あの勇者君にはいろいろ教えてたみたいじゃない。頼んだよ、ベスティア・プローウェル先生」
ポンと戦士の、いや、新米先生の肩を叩いて、ミヤジはご機嫌そうに歩いて行った。
*
「おらおらおらおら急げ急げ急げ、急患バッカ入って来てっから間に合わねえぞ!」
「は、はい!」
「慌てる必要はないからねぇ。それでミス起こす方が大変だよぅ」
「そーそー。落ち着いてやればいいのよ。陸のは急かし過ぎ」
「つーかほんとにここでやんの? わざわざ俺らに任せなくて女神様本人がやればよくね?」
口より早く手を動かしながら、神獣3体と僧侶1人は患者の処置を行っていく。
「女神様は新しい魔王様の護衛で忙しいのよ。何でも歴代最弱とかで」
「あの、一応私の居たパーティのメンバーでしたので……」
「ごめんねぇ。悪気は無いんだろうけど」
「はぁ。ま、やるからには覚悟しとけよな。女神様候補って言われたって、優しくしねぇからな」
「あんたはとりあえず、そのやらしい視線をどうにかしなさいよ」
地水空にはどうやら、面子が一人増えたらしかった。
*
「これで今日何回目よ。あんたが弱いの簡単にバレすぎよ!?」
「そんな事言われたって……まさか本当に魔王になっちゃうとは思わなかったんだもん」
「勇者ではない貴方が魔王を半ば漁夫の利で倒したのですから、強さが伴わないのは理解できますけど……」
「何で自分で生み出したモンスターに即行離反されてんのよ! 制御くらいしなさいってば!」
魔王になったばかりのその存在は、見た目はただの子供であり、力もやっぱり子供であり、唯一魔王共通のモンスターの創造が出来る能力を有している以外は、およそ魔王とは思えない存在だった。
そんな魔王を守るために、先代、先々代に仕えて来た側近と、新たに、魔王になる前に一緒にパーティを組んでいた魔法使いが側近となっていた。
そんな二人に守られながら、元勇者が待つのは自分を打ち倒せる存在で。しかし勇者以外の存在であり、それが来るのはまだまだ先になりそうだった。
*
ふふ、そうですか~。ようやくですか~。ふふふ、そういう事なんですね~。
森の中、まるでどこからか放り出されたように倒れていたそれは、ゆっくりと立ち上がる。
頭上には自分をさんさんと照らす太陽があり、その陽を受けても体に影響がないという新鮮さに戸惑いつつ、能力が、”嘘”が使えなくなった事を確認する。
はぁ、にしても。これが人間なのですか~。空も飛べず、力も弱い、魔力すら微小ときましたか~。……望む所です~。絶対、絶対に魔王へと成り上がって見せますからね~。
*
「マデ姉、ここのダンジョンこの間リーダー入れ替わったのです」
「あの時バタバタしていてやっていませんでしたね。すぐに書き換えましょう」
「マデラ、状態異常の心配がないBランクのダンジョンなぞあったか?」
「思い当たるのは無い様な……あ、オーガのダンジョンならば。資料は左から三番目です」
新人冒険者達に混ざり、その新人たちに負けてられるか、とやる気を上げた冒険者達もギルドに押し掛けて来て、一人増えたとはいえ中々にやる事が多くなっています。
これでも残業が無い分一人の時よりかなり助かっていますが。
「マオ様、キリがいい所でお先に休憩へ」
「ん、分かった。冒険者の列が片付いたら行かせて貰うとするのじゃ」
勇者に討たれた魔王様は、魔王の概念を勇者へと移し、魔操傀儡を巻き込んだ形で転醒し人形遣いとなった。
見た目は普通の女の子、しかし、いざとなれば魔操傀儡を取り出して、私と互角以上の戦いをする彼女は、今はこうしてダンジョン課にて私の手伝いをしてくれている。
元魔王として、魔王の想いは分かるらしく、早めに打ち倒せる者を送ろうとしているらしい。
一向に切れる事の無い冒険者の列を、ダンジョン情報を書き換えた後に引き継いで、マオ様を休憩へ。
深々と頭を下げて、冒険者達へ笑顔で対応する。
「こちらは冒険者支援ギルド ダンジョン課。こちらではダンジョンに関する様々な問題を取り扱っております。本日はどのようなご用件でしょうか?」
ご愛読ありがとうございましたー!!
これにてダンジョン課、完結となります。
色々書く予定なので大事な事は初めに書いちゃいますが。
兎にも角にも、ここまでお付き合いいただいて、本当にありがとうございました!
日々増えていくブクマや感想、評価などを糧にここまでなんとかやってこれました。
今後の予定なんですけど、まだまだ拾い切れていない伏線やら、書きたい話はあるんですけど、もうダンジョン関係無くなって来ちゃうので、ダンジョン課としてはここまで。という感じです。
そんなわけでして、短編やらで外伝のような話をいくつか書いたり、ちょっぴり連載したりしてシリーズ管理に入れようかと考えております。
この短編で、このキャラの話を読みたい! や、この部分をもう少し詳しく! なんてご要望ありましたら、ツイッターや活動報告、メッセージなどを頂ければ、書かせて頂こうかな、なんて考えています。
とりあえず考えている短編の次回予告を、
今回の冒頭で出てきた神楽家の日常を書いてみようかなー。なんて。
どれくらいのペースで書くか、や、どれくらいまでダンジョン課外伝を続けるかなどは本当に未定ですので、気長にお待ちいただけると幸いです。
投稿した際にはいつも通りツイッターにて報告いたしますので、よろしくお願いします。
最後に、重ねてになりますが、本当にここまで読んで頂きありがとうございました。
近いうちに新作も投稿予定でございますので、もしよろしければそちらの方もお願いします。
ではでは、ここらで締めさせて頂きます。ここまでの応援、本当にありがとうございました!




