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第50話 自然災害

少女の願いを渋々聞き入れた彼は、人間に素性を明かした。


流暢な人間の言葉で、自らが人外であると告白した。


そして、そんな自分を信じるなら、モンスターに抗う術を教える、とも言った。


人々に、選択肢などありはしなかった。


誰もが今の状況を許容出来ていなかったし、モンスターに一矢報いたいという気持ちは皆同じだった。


かくして、洋館の地下では、ひっそりとモンスターの知らぬうちに、


人間が力を付け始めていた。

 相変わらずの雨、雨、雨。

魔王様が無理に降り止ませ、晴れに天候を変えた事を怒るかの如く、今までにも増して強く、そして多くの粒が降り注ぐ。


 こんなに雨が降り注ぐ中に、そもそもギルドに来る冒険者など少なく、来ても緊急の用事などである。

当然ダンジョン課の窓口に来る冒険者もほとんどおらず、私はツヅラオと共に、書類の整理や様々な意識の共有。後は少し窓口を離れて、ツヅラオの狐火の練習に付き合ったりと言ってしまえば暇をしていた。


 そんな時は決まって2パターンしか先の展開が無い。

このまま暇のまま定時退社出来るか、もしくは何かしらのアクシデントが起こって、対応に追われるか。である。


 今日はそう、後者の日であった。

ただし、そのアクシデントが想像以上の規模で、思わず絶句してしまう程であったが。


 アクシデントの報告をしてきたのは、何とスライムちゃん。

彼女に任せていたダンジョンは結構人気でここに来る余裕は無いかと思いますが、一体どうしたというのか。


「た、たたたっ、大変ですー!」


 いえ、慌て具合で大変なのは分かるので、内容をですね。


「わ、私の、私のダンジョンがーっ!」


 そこで大きく息を吸い込んだ彼女は、


「土砂崩れで埋まっちゃいましたー!!」


 そう大きく叫ぶのだった。


*


 まさか、爆裂魔法で無理矢理掘って作ったせいで様々な部分が脆くなっていて、連日の雨によって崩れて、入り口はおろか、中も半分以上が埋まるとは……

ダンジョン奥の魔法陣から町に転送され、避難出来たモンスターは全体の7割と言ったところですか。

とりあえず皆さんの手を借りて埋まったダンジョンを掘り起こして、崩壊した部分はドワーフの方々に修復を依頼しましたので彼らに任せましょう。


「本当にものの見事にぶっ潰れてんなこのダンジョン。どんな作りしてたんだ嬢ちゃん」


 筋骨隆々に口ひげをたっぷり蓄えて、ハンマーを担いで私に言うのは小太りのドワーフ。

周りのドワーフからは棟梁(とうりょう)と呼ばれている辺り、彼らのリーダー格なのだろう。


「崖に爆裂魔法で穴をあけただけでしたが? その後にゴブリンリーダー達が補修はしたらしいですが」

「馬鹿言っちゃいけねぇ。んなもん戦いの衝撃で下手すりゃすぐぶっ潰れる……ってそうか。だからこうなってんのか」


 目の前の潰れたダンジョンを再度確認して豪快に笑う。

そうこうしている間にも私たちは必死にダンジョンを掘り返しているんですけどね。

ゴブリンリーダーは必死にスコップで、スライムちゃんは自身の体を浸透させて、埋まっているモンスターを探索、発見次第私達に報告してくれて、私はスライムちゃんが見つけたモンスターの場所を風魔法で掘り返して。

 

 しばらくその作業を繰り返していた時である。

唐突に、重い金属音が私の脚元から放たれた。音の元を見れば、私の右足に拘束具である鉄球が二つ。


 ゴブリンリーダーの仕掛けた罠でしょうね。……よいしょと。

 私にしてみれば軽く足を振り上げただけ。人間には真似できない速度で、ですけれども。

鎖が千切れて鉄球が空中に放り出され、流石にこのまま落下させてはまずいと思い跳躍。

空中で鉄球を捉えて殴りつけて粉砕する。


 こんな罠ばかりだからゴブリンリーダーは厄介なんですよ全く。

鉄球を砕いた手を軽く振って周りを見ると、ゴブリンリーダーの1体が頭を燃やして走り回っていたり、同じく一体が腰まで埋まっていたりと本当に多彩な罠を仕掛けていますね。

というかあなた方が引っ掛かってどうするんですか全く。


 ダンジョンを掘り返し、全てのモンスターを救出したころには、軽く3桁近い数の罠が起動され、私は心の中で、ダンジョン内の罠の数を制限させる事を固く決めたのだった。


*


「ではドワーフの皆さん、ダンジョンの再建をお願いします」

「お願いしますって言われてもなぁ、見取り図や図面がねぇと俺らも難しいぞ」

「そうですか。と言っても図面などは……」


 無い、と言おうとした時、ゴブリンリーダーの一体が何やら地面に描き始めた。

雨ですぐ流されはするが、その短い間でもどうやらドワーフ達には十分だったらしく。


「おう、分かった。そんな感じでいいんだな。すぐ取り掛かるぞ野郎ども!」

「「押忍!!」」


 棟梁ドワーフの掛け声と共に一斉にダンジョンの再建作業に向かう。


 さてと、後は完成まではこのダンジョンを閉鎖しなくてはいけませんし、どの程度の期間を要するかを確認して、ギルドに戻って資料を作りませんと。


「どの位の期間掛かりますかね?」


 棟梁の近くに飛んで、確認すれば、


「あぁ? こんな単純な構図のダンジョンなんざ暗くなる前に終わっちまうよ」


と頼もしい答えが。


 では完成まで待たせていただき、簡単な見取り図を取って各地に送る事としましょう。

少し雨と風が鬱陶しいので、精霊に言って私のところだけ避けるようにしておいて、と。


 もの凄い速さで復活していくダンジョンを、そこらの岩に腰を掛けて、私とスライムちゃんとゴブリンリーダー達は、完成を今か今かと待ち続けるのであった。

いつもありがとうございます。

今回は天候でダンジョンの地形が変わってしまった、というお話でした。


噴火を繰り返す火山のダンジョンが形変わらねぇわけねぇだろ。

っていう考えから生まれたお話。実際考えると違和感凄いですよねって事で。


まだまだゆったりのんびり急にシリアスに続いていきますので、応援の程よろしくお願いしますー。

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