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プロローグ

 かつて、この世は理不尽だった。

 その当時は秩序など一切無く、人間は隠れながら生活していた。

 今でこそ人々が当たり前に使える魔法も、当時はみな使用する事が出来なかった。


 故に、モンスターと戦う事は誰も考えず、例え戦ったとしてもゴブリンやスライム等の低級モンスターであったし、使用する武器も剣や槌といった近接武器であった。

 しかしどんなに武器を使い、知恵を駆使した所で人間にとってモンスターは脅威には変わらず、結果隠れながら過ごす事を余儀なくされていたのだ。


 人間がそのような状態であるならば、モンスターは好き勝手に生きていたのか? 

 答えは否。いや、正確ではない。

 一部のモンスター、実力が突出していたモンスターに限っては本当に好き勝手に暴れていた。

 具体的に言えばドラゴン。


 紅蓮の鱗に羽。瞳さえも真紅に染め宝石のように輝く紅宝龍と呼ばれている種族。

 この世界における唯一無二の龍という存在。絶対な強者。


 群雄割拠などでは断じて無く、モンスター達も人間同様に怯えていた時代。

 そんな時代から幾星霜(いくせいそう)……。


*


 いつものように出勤し、いつものように自分の席へ。

 当たり前のように山積みになっている書類を確認し、軽く目眩(めまい)を覚えてしまう。

 はぁ、と小さくため息をつき、これが仕事だ。と自分に言い聞かせ上から目を通していく。


 ここは『冒険者支援ギルド ダンジョン課』

 冒険者として村を守り、魔物を狩り、クエストをこなし、そして、ダンジョンを攻略する人々の支援を行う役所。

 そもそもダンジョン課とは何するとこぞ、と分からないでしょうし、少し説明をさせていただきます。


 この課の仕事の内容は主に次の通り。


 ・ダンジョンのランク付け

 攻略が簡単なダンジョンには低ランク、高難易度のダンジョンには高ランクをS.A.B.C.D.Eの六段階に評価して、つける。


 ・ダンジョンへの案内

 案内と言っても直接連れて行くわけではなく、冒険者にあったダンジョンを見繕い、紹介する事。

 冒険者の経験や、要望をもとに最適なダンジョンと巡り合わせる。


 ・新規ダンジョンの調査

 ダンジョンは唐突に現れる。冒険者からの発見報告を受ければ現地に向かいランク付けの為に調査を行います。

 もちろん肉体労働です。ダンジョンへ行くのも、ダンジョンを調査するのも全て私一人でこなさなければなりません。……誰か手伝ってもらえませんかね?


 ・ダンジョンマスターの配置などの人事

 ダンジョンマスターとなれる素質のあるモンスターは主に知性が高く、まだこちらの話を聞いてくれます。

 ダンジョンマスターとなれそうなモンスターを勧誘し、私達側に引き込んでダンジョンを任せ、ダンジョンの管理をして貰っています。

 ――が、ダンジョンマスターもレベルが上がったりするため、ランク付けに基づき別のダンジョンに移ってもらう場合があってしまったり。


 ・ダンジョン内のモンスターの補充

 ダンジョンマスターからの要請に従い、ダンジョン内の少なくなったモンスターを魔王様にお願いする形で手配します。

 手配はもちろん魔王城から。魔王様が時間にルーズな上、魔王城から手配先のダンジョンまでの距離も考えなければなりません。

 魔王様への催促必須です。


・クレーム対応

 一部の冒険者からランクが合ってないなどのクレームが入ることもある為、それらの対応も仕事に入る。


 とまぁこんなところでしょうか。

 最初の方はまぁまだ何となく納得出来るでしょうが、後半の仕事内容には少し疑問が浮かぶでしょう。


 これ、人間じゃ無理じゃね? と。

 はい。私、人間ではありませんから。問題ありませんね☆

 魔王様から、


「人間弱すぎて退屈だからお前が育てる基盤作って私に強くなった人間を挑ませろ」


 とかのたまられて、拒否権無く人間に協力している哀れな龍族ですよ私は。

 配属先は先の通り冒険者ギルドの『ダンジョン課』。

 真っ赤な、燃える様な紅蓮の髪にちらりと覗く八重歯。

 眼鏡の奥から覗くのは龍由来の鋭い真紅の瞳。

 尾も羽も魔法で消し、姿も魔法で人間に変えOL(オフィスレディ)よろしく日々仕事に没頭しております。


 はぁ、とまたため息をつき、目を通していた一番上の書類の内容に思わず頭を抱えてしまう。

 書類は――”ダンジョン壊滅”と大きく書かれた報告書でした。


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