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48番目の世界にて  作者: 那萌奈 紀人
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胸ポッケと適度な弾力

 地下牢にて、佐藤達と対峙した後――――――――




 さて、気付かれずに、牢に残る事に成功しましたが、この枷は、わたしに外せるんでしょうか?


 お兄さんが、置いて行った魔法書は……。うーん。やっぱり見てわかる物じゃないですね。とりあえず、手あたり次第、習得してみるしか、なさそうです。


 1枚目、サークルマジックだけど、マジックスコープの亜種ですか。暗い所もハッキリ映ってます。


 くッ、何て勿体ない……。これを売っていたら、最低でも20万円くらいに、なりましたよ。……使えない魔法じゃないですが、空きスロットが1個しかないから、破棄しますか。


 2枚目、……習得できない。これは、人間種専用の魔法っぽいですね。これはポッケして、魔法屋に売りに行きましょう。勇敢にも、一人で救出作戦を決行している、わたしへの正当な対価です。自分へのご褒美です。


 3枚目も4枚目も、攻撃性の魔法じゃ無いので、枷の破壊には使えないと。……ふぅ、次でダメなら、カートリッジ切れまで魔法を撃ちこむ作業ですね。壊れるまで私の魔力は、もつでしょうか。


 5枚目は……、あっ! やりました! サークルマジックの攻撃魔法です!! 発射した魔弾が、壁に当たって……、小爆発。えー。


 サークルマジックの攻撃魔法という、条件は満たしていますが、これを枷の破壊に使って大丈夫なんでしょうか? 使ったら、枷ごと腕まで吹き飛んだとか、笑い話にもならないです。わたしは、回復魔法は習得していないし……。


 そうだ! ニコルさんの、腕に犬歯を当てて「いただきます」ガブッと、ひと噛み。腕に浮かんだ赤い水玉が、光の粒子になって消え去りました。『いただきます』は、なんとなく言ってみたかっただけです。人の血を飲む習性は、ありません。


 大丈夫ですね。不死性があるみたいです。これなら、腕が吹き飛んでも、勝手に治るでしょう。というか最悪、腕を切断しても枷を外せます。絶対やりたくないですが。


「リリース!!」なんとも懐かしい響きです。この汎用起動ワードを唱えるのは、何年ぶりでしょうか?


 身長の問題で、魔法陣が完成する前に、地面にめり込んでしまって、失敗する事が多いので、妖精種で、サークルマジックを使う人なんて殆どいません。


 枷の中央にあるカートリッジ部分に魔法陣を重ねて、発動させた魔法が、うまい具合に、枷の機能を停止させたようで、障壁に阻まれずに枷を触れます。爆発した時は、障壁が働いていたみたいで、腕も無傷です。


 のんびり、鍵を壊している時間は無いので、左右のリングの結合部分だけ破壊しておきます。両腕に残ったリングが、悪趣味な腕輪みたいですね。見栄えは悪いですが、逃げ切るまでは、我慢してもらいましょう。


 さて、次はサミナさんの番です。…………2度目ともなれば、慣れたもので、簡単に破壊できました。


「う、うぅ。……あ、あれ、魔封の枷が、壊れてる?」


「目が覚めましたか? それじゃあ、サミナさんも起こしてあげてください。わたしが揺すっても、起きてくれないんですよ」


 キョロキョロしてますね。わたしの存在を発見できていないようです。服の裾でも引っ張って、存在を主張しておきますか。


「えっ!……小さい……人!? こ、ここで、何をしているの?」


 小さい人ですか……。小さい人の中でも、更に小さい人な事が、コンプレックスなので、その呼び方は止めて欲しいところです。心に深く突き刺さるのです。


「小さい人じゃなくて、ミリナ フェアルです。お喋りしている時間は、ないですよ。早くしてください」


 サミナさんの枷も無事破壊されていたようで、ニコルさんが揺するとすぐ起きてくれました。起こしている最中に、助けに来たという事は伝えておきました。


「ふわぁ、おはよう……ん? んん? ねえ、ニコルお姉ちゃん。この、ちっちゃいの、サミナが貰ってもいいかな? 貰ってもいいよね?」


 なんて、緊張感のない、お子様なんでしょう。さすがは、神様の妹、大物のようです。


「よくありません! わたしは人形じゃないですよ。子供は、妖精の扱いが荒くて怖いので、ニコルさんに乗って移動します。これは決定事項です」


「そっかー、人形じゃ無いんだね! 大丈夫だよ。頭は外さないから。サミナが持っていくね。」


「却下です! 頭は外さないって、どこを外す気ですか」


 ニコルさんのシャツに、胸ポケットが付いていたので、そこに収まったら移動開始です。慎ましい胸部のおかげで、圧迫感も少なく、それでいて、適度な弾力があり、なかなか居心地がよいです。


 ちなみに、それは、家具としての評価であり、男性的な目線での評価ではありません。


 牢の外に、ニコルさんの靴があったのですが、なぜかサミナさんの靴は、見当たりません。仕方ないので、胸ポケットに、わたし、背にはサミナさん、二人でニコルさんに乗って脱出する事になりました。


「フェアルさんは、どうして、私達を助けに来てくれたの?」


「人を助けるのに理由なんて要らない。とか、言ってみたい所ですが、神様の依頼ですよ。貴女たちのお姉さんです」


「姉さんが……」「ねえ、ミリナ。アネル姉様に、会えるのかな? 会えるんだよね?」


「二人を神様のところまで、連れて行くのが、わたし達の役目だから安心していいですよ。必ず送り届けてみせます」


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