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48番目の世界にて  作者: 那萌奈 紀人
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謎のリングとスレイプニル

 私は現在、アネル大聖堂の横にある広場に建てられた、木造の小屋の中に居る。


普段の動きにくい衣装を脱いで、オーバーオール、白のTシャツ、スニーカーという、いでたちだ。


「アネル様、妹探しを手伝うのは全く問題ないというか、進んで行いたいと思っているのですが、今の作業が捜索に役立つとは、到底思えないんですが……」


 私と同じ格好をしたシアルが苦言を呈してくる。


「全く! わかって無いよシアルは! こういう、細かい事の積み重ねが、最良の結果を掴み取る為の、最短ルートだったりするんだよ! ちょこっと走り回って、発見しました! なんてなるほど、世の中甘くないんだよ! ご都合主義には出来てないの! ……あっ! そこ、気を付けて! 狭いから気を抜いたら、はみ出すよ!」


 シアルに注意しながらも、手を止める事は無い、左手に塗料の缶、右手に刷毛を持って、塗り広げていく。


「この、絵をユニコーンに描いたら」「スレイプニル!!」


「……この、絵をスレイプニルに描いたら、どうなるって言うんですか? 細かい事の積み重ねどころか、微粒子すら積み重なっていない気がしますよ。あっ! はみ出してしまいました」


「ほら! 言わんこっちゃない! 集中しないから! 目は私が塗るから、シアルは体を塗って!」


「で、これ何のキャラクターなんですか?」


「これは、サミナが好きだった、アニメに出てくる、マスコットキャラの絵だよ。これが描いてあれば運転してるのが、私じゃなくても、関係者だって気付いて出てくるかもしれないでしょ?」


 相手が、他の惑星から来てるは気付いてるだろうし、車ってだけじゃ警戒して、隠れちゃう可能性があるからね。


「アニメのマスコットキャラですか……」


「あの子は、地球のアニメが好きだったんだけどね、子供向けアニメとかじゃ琴線に触れないみたいなのよ。何かこう、ドロドロした感じで『悪意渦巻く陰謀の前に、次々と倒れる仲間たち、信じた友の裏切り、絶望の淵に立たされた少女が最期に選んだ選択肢は……』みたいなのが琴線にビンビン響くらしいよ。このアニメも、良い感じに絶望感が漂うよ!」


 目は塗り終わったし、最後は最難関、耳の周りに浮かぶ、謎のリングだ。ほっそいなー。よし、刷毛の角を使って塗ろう。


「情操教育って言葉、知ってますか? もう少し、見せる番組を選んだ方が良い気がしますよ」


「勧善懲悪とか? ないない! それこそ教育に悪いよ! 悪人に人権など無い。問答無用で殲滅だっ! て、教えるの? そんな歪な教育を施すから、悪と判断したら、どんだけ叩いても許されるみたいな、勘違いをした人間が生まれるんだよ! 正義のペルソナを被ったモンスター達だよ? 天使のような悪魔だよ!」


「段階ってのがあるじゃないですか。悪い事はダメと教えて、その次に、立場によって悪と正義は入れ替わるって、教えるもんじゃないんですか?」


「大丈夫だよ! 私に似て、真っ直ぐに育ってるから。何の心配もいりませーん!」


「うわっ」「うわって言うなし!」


 よしっ! 塗り終わった。良い感じの痛車になったね! 後は10分待てば乾燥完了、いつでも出発できる。


「アネル様、今思ったんですけど、これ絵を描かなくたって、文字で『アームラ教』って書いとけば良かったんじゃないですか?」


「社名入りとか、ないわー。この方がサミナが喜ぶし。どうせ乗るの私じゃないし」


「いつからアームラ教は会社になったんですか。それに乗るの私じゃないって……えっ!?」


 シアルがビックリしてるね。何を驚く事があると言うのか?


「だって、私が乗ってたら、絵を描くまでも無く、二人は出てきてくれるでしょ? スレイプニルには、シアルに乗ってもらって、手分けして探す予定なんだよ!」


 これは良い作戦だ。2台で移動すれば発見する確率が2倍じゃないか!


「嫌ですよ! こんな恥ずかしいの運転したくありません! 私がユニコーンに乗るから、アネル様が、こっちに乗ってくださいよ!!」


「わけが分からないよ。どうしてシアルはそんなに、車の外装にこだわるんだい?」


「わけは分かってるくせに! 『どうせ乗るの私じゃないし』って、言ったじゃないですか!!」


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