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48番目の世界にて  作者: 那萌奈 紀人
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王国とアポなし訪問

 モセウシからの馬車の旅を終え、王都に着いた僕とキミコだったが、さっそく行き詰まっていた。


「さて、キミコ、到着したわけだが、僕はどうすればいい?」


 ルモイに行けとは言われたが、着いて具体的に何をするかは、全く聞いていないのだ。


「………………」


「キミコ? なんだ、その間は!」


「……王様に会いに行きましょう! 王様もガーディアンのはずだから、きっと教えてくれますよぉ!」


「もしかして、連れてきた後の事は、知らないか、忘れたんじゃないか?」


「む、村一番ですからぁ」キミコが目線を逸らしながら仰った。


「そう言ったら僕が納得すると思っているのか!! 前回で味を占めたのかもしれんが、今回は、それでは誤魔化されんぞ! 何して良いか、わかんないからって、いきなり王様を直撃していいの!?」


「大丈夫ですよぉ! キミコが保証しますからぁ、一緒に行きましょー!」


「こんなに、安心感の無い保証、未だかつて聞いた事がないんだが」


 で、結局来てしまった。城門に居た兵士に、新人ガーディアンが王様に会いに来ました。と伝えた所、かれこれ30分ほど待たされて、ようやく、城内に入る事ができた。正直、入れてもらえるとは思ってもみなかった。


 どうしよう、王様に会うって、何かマナーとか有るんだろうか? そんな知識は持ち合わせていないぞ!


 そして、それ以上に、僕の後ろを、右に行ったり、左に行ったり、見る物すべてに興味を示し、ジグザグ歩行をしている娘が、何かやらかさないか気が気じゃない。


 目の前に見えてきた、やたらと豪華で巨大な扉、きっとあれが玉座の間ってやつだろう。当然の如くそこへ通されると思ったら、素通りしてしまった?


 その後も案内の兵士に着いて、しばらく歩いていると、今までの廊下に飾られていたような、装飾品が一切なくなり、質素な雰囲気に早変わりした。


 連れて来られた部屋は、国王の私室らしい。当然、兵士も一緒に入るのかと思ったら、部屋の外で待つようだ。


 警備上それは、どうなのかと思ったが、よく考えたら王はガーディアン、それも王になる程、長くガーディアンを務めた人なのだろう。僕如き警戒するまでも無いって事かもしれない。


 と、思った瞬間、その考えは打ち砕かれた。若い、目の前に居る王は、僕と同じか少し上か、20代前半という感じだ。整った顔立ちに、セルフレームの眼鏡が印象的だ。落ち着いた雰囲気で、切った張ったの世界で生きてきた人間とは、とても思えない。


 思わず思考に囚われてしまった僕に、王が話しかけてきた。


「君が、新入りのガーディアンだな。本来は、アポを取ってから来て欲しい所なんだが、来てしまったものは仕方がない」


 キミコぉ! やっぱり駄目じゃないか! 後で、耳引っ張ってやる!


「あ、あの、す、すみません! 着いたは良いけれど、どうして良いか分からなくて、つい?」


「まあ、そう硬くなるな。来たばかりじゃ何も分からないのは仕方ない。俺だってそうだった」


 慌ててたから気付かなかったけど、怒ってる雰囲気じゃないね。少しほっとした。


「おっと、名乗って無かったな。俺の名は、細川 路美緒だ。ルモイ王国で、国王をやっている」


 クッ! ろ、ロミオだと! その甘いマスクで、ろ、ロミオ……。名前負けしてないところが逆にくる! 思い出せ! ペットのジャンガリアンハムスターが無くなった日の事を、あの深い悲しみを! 涙の海を泳いだあの日を!! ……ふぅふぅ。


「僕は、笹塚 彰悟です。お見知りおきを。そして、こっちに居るのが、送迎役の」


「キミコの名前は、キミコですよぉ」「です」


 大丈夫だ、多分このくらいまでは、許される範囲だ。


「笹塚 彰悟と、そちらの人狐のお嬢さんは、キミコか、覚えておこう」


「ロミオくんに、これからどうした良いか、教えてもらいに来たんですよぉ!」


 キミコさん! 許される範囲を、とうに逸脱してるんですが、それは。


「何をするか、か。まずは、RMI防衛本部に向かうといい。そこでガーディアンの登録作業が有る。そこで、何かしら任務も与えられるはずだ。場所は、城の者に案内させよう」


 スルーだと! これが王の器ってやつか! ビビらせやがって! 後でシッポを引っ張ってやる。


 おっと、それどころじゃない。次の目的地は、RMI防衛本部か……。


 RMI? いや、これは深く考えない方がいいやつだ。8割がた答えは、見えているけれど、確信してしまった瞬間、抑えきれない衝動が、湧き上がるのは想像に難くない。次は、耐えられる自身がない。考えるな僕!


「ありがとうございます。あの、アネル……様って、城に来ていたりしないでしょうか?」


 えっ、王の表情が曇った! 何かまずい事いったか? アネルは禁句だった?


「アネルか、何日か前に来たが、もう帰ったぞ。あいつは今、忙しいから、会うのは難しいかもしれないな」


 うわっ! もう帰っちゃったんだ。まいったな、折角のチャンスを逃してしまった。それにしても、忙しい神ねえ。妹探しかな? あれから結構立つけど、あの二人は、まだ神都に辿り着いていないんだろうか?


「それって、妹さんを探してるからですか?」


「……なぜ知っている? 捜索対象が妹だと知っているのは、王都内のガーディアンと俺ぐらいだと思っていたんだが」


 極秘情報だった? 蓮井さんは、隠す素振りも、勿体ぶるような素振りも見せていなかったけど。


「その、ガーディアンに聞きました。モセウシで会った蓮井さんという方です」


 僕が言った瞬間、王の顔が歪んだ、さっきの比じゃない。劇的な変化だ。ロミオだけに。……うっ! くっ! 何、自爆してるんだ僕!


「蓮井だと! 蓮井 琉々奈か? 会ったのは、いつ頃だ!」


「僕がモセウシに居た時なので、16日前だったと思います」


 会った日を言ったとたん、王の表情から険しさが、スッと引いた。


「ああ、その頃か。すまない、少し取り乱したな。その蓮井という女は、王国を裏切り、アームラ教を敵に回した犯罪者だ。もし、どこかで見かけたら、防衛本部に連絡してくれ。絶対に単独で接触しないように」


 あの人が犯罪者? ちょっとキツめのお姉さんって感じだったけど、悪い人には見えなかったけどな。


 でも、善良100%で、出来ている人が居ないのと同じで、邪悪100%で構成されている人も居ないか。見えたのが良い部分だったって事で、納得しておこう。


「わかりました。もし、発見した場合は、報告します」


「ああ、頼む。他に、聞いておきたい事はあるか?」


 失敗した、国王に会いに来るのに考えすらまとめずに来てしまった。国王が暇を持て余しているとは、到底思えない。気分を害さないと良いんだけど。


「……色々有りすぎて、何から聞いたらいいか」


「そうか、なら先に本部へ行って、話を聞いてこい。その後で、俺に聞きたい事が残っていたら、また訪ねてくるといい」


 来たばかりだが、当然と言えば当然か、会ってもらえただけでも感謝しよう。


「はい、お忙しい所、ありがとうございました」


 退室しようと、ドアに手をかけた時、後ろから国王が、話しかけてきた。


「もし、アネルが来る事があれば、笹塚が探していたと伝えておこう。だが、覚悟しておけよ。あれは、『ウザイ』という言葉を、一切イメージを損なう事なく、忠実に擬人化したような存在だ。変に夢を見ていると、絶望するぞ」


 酷い言われようだな神! 国王に、ここまで言わせる神って、どうなんだ? なんか会いたくなくなってきたぞ。コンビニで会った、銀髪少女の捜索に力を入れた方が、いいかもしれない。いや、アレはアレで、大概だったが……。


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