表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48番目の世界にて  作者: 那萌奈 紀人
30/76

馬車とトカゲ

 モセウシの街を出発した僕とキミコは、現在、馬車で揺られている最中だ。


 馬車なんて、乗るのも見るのも初めてで、色々と想像して、楽しみにしていたのだけれど、思ったより良いものでは無かった。


 まず、揺れる。サスの性能がイマイチなのでは、ないだろうか? いや、そもそもサスペンションとか付いてないのかな? 舗装されていない道なので、乗り心地の悪さに拍車がかかる。


 あとは、全然進まない。モセウシ、ルモイ間は、500Kmらしいので、徒歩なら17日程度の計算だ。乗り物で行くんだから、1週間くらいで着くのでは? という考えは、甘かったようだ。


 普通に17日くらい掛かるらしい、歩かないから楽、程度の物で、早く着くための乗り物では、なかったようだ。


 道が良くないとは言え、車だったら1日か、長くても2日で着く距離なのに、なんとも不便なものだ。誰か車を開発してくれないだろうか?


 などと、文句は言ったけれど、実際のところ歩くより、ずっと快適だ。幌とはいえ屋根もあるし、人狼の御者が二人いて、夜の見張りを交代でやってくれている。どうやら僕達は、お客様待遇で馬車に乗っているらしい。


 時折、遭遇する魔獣との戦闘も、基本的には御者任せで良いと言われたけれど、流石に、それは申し訳ないので、手伝うようにしている。


 今まさに、その最中なのだけれど。馬車の後ろを追ってくる、名も知らぬ大きなトカゲたちを狙い撃ちにしている。


 大きなトカゲの移動速度は、馬車より、ほんの気持ち程度、早いくらいなので、ジワジワと近付いてきた所を、安全な場所から狙い撃つ簡単なお仕事だ。まあ、さっそく蓮井さんの言いつけを破っているわけだが。


「えいっ!」当たった。「ナイスショットですぅ!」大喜びだ。


「ていっ! ありゃ外れだ。結局、キミコの魔法って、回復以外見てないんだけど、使わないの?」ちょっと、引き付けが甘かったようだ。


「うー、おしかったですねぇ。キミコの魔法は、使うのに少し時間が掛かるんですよぉ。あと、使った後に具合が悪くなるので、あんまり使いたくないんですぅ」


 なるほど、そういう理由だったのか。まあ、キミコは近接でも、十分強いから問題ないんだけど。


「そりゃ! 今度は、当たった! ……それにしても、魔法を使うと具合悪くなるなんて有るんだな。それなら、無理して使わなくてもいいから」


「おー! ど真ん中ですぅ。あと2匹! ……キミコ以外では、魔法を使った後に、具合悪くなるって聞いた事ないんですよぉ。何が原因なんでしょう……」


「残りの2匹は、くっついてるし、纏めてやるか」


 名も知らぬ爆発の魔法陣を、出来るだけ低い位置に描いて……。


「ステイ。さぁ、来い来い来い来い。リリース! 『ドンっ!』決まった! ……あれだな、神様って魔法に詳しいらしいから、会えたら聞いてみたらいいんじゃないか?」


 暇つぶしで考えた、役立たずの爆発魔法の活用法だ。馬車上で描いた魔法陣の位置を固定して置き去りにし、魔法陣に敵が近づいた瞬間、爆発させる。


「『パチパチパチ』ヴィクトリーですぅ。……そうですねぇ、きっと神様なら教えてくれますねぇ。……ふぇ? 彰悟くん、もう大きなトカゲ居なくなりましたよぉ?」


 ん? それは、知ってるんだが。あれ? 描いても居ない魔法陣が額の上あたりに浮かんでる。すでに月白から青に変色してるし。見た事ない絵柄だ。


「キミコ、なにこれ?」「さぁ?」


「触ったら、爆発したりしないよな?」


「無きにしも非ず、ですかねぇ?」


「意外と難しい言葉、知ってるんだな」


「……村一番ですからぁ!」


「よくわからないけど、村一番なら納得だな」


「しばらく、様子を見た方がいいんじゃないですかぁ?」


 キミコの提案通り、昼休憩まで放置してみたけれど、一向に消える気配なし。目の上のたんこぶ、ならぬ、目の上の魔法陣だ。青く光ってるから鬱陶しくて仕方ない。


 今は馬車から降りているので、とりあえず、魔法陣から離れたくて、ステイと指示してみたけど、固定されずに付きまとってくる。


「やってしまうか?」「やってしまうんですかぁ?」


 待ってても消える気配がないし、このまま人に会ったら、魔法を発動待機状態にしてる、危ない人扱いされてしまう。今日はトカゲ撃ちにしか、魔法は使ってないし、爆発しても、きっと再生できるだろう。


「キミコ、下がってて」「はいっ! 下がりますぅ!」


 出来るだけ、顔を後ろに引いて……。ダメだ、顔を追尾してる。離れられない。


 ええい、ままよ! 人差し指でピンッと弾いた。


 弾かれた魔法陣は、ガラスが割れるような音を立てて砕け散り……何も起きなかった?


 爆発するよりは、マシだけど、凄いスッキリしない結果に終わってしまった。


 これも、アネルに会った時にでも聞いてみよう。


 そんな不思議な出来事があったり、巡回中の兵士に、毎日のように止められては、馬車の中を確認されたりしたが、それ以外は順調に進み、予定より2日早い、出発から15日目に、ルモイ王国へ到着した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ