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4-15 ちょっと異世界舐めてました。

異世界ファンタジーと現実のパワーバランスには気を使います。

あくまでフィクションだからこそ作者のさじ加減で大きく変わる部分ですよね。

「さあ、撃ってきなさい!!」

 何をどうすれば、銀髪の剣姫が射撃場の奥の方に剣を構えて仁王立ちしてるんですかねぇ?

危ないから帰ってらっしゃい。

と言いたいところだけど、自信満々な様子で言うこと聞きそうにもない。

 どうしてこうなった。

 年始の祝いが終わった後に渡したいものがあるのでと誘ったのは日を改めてからだ。

 帰郷の話は念のためにしているけれど、ベネットからの返答はまだもらっていない。

 まあ、すぐに返答してもらわないと困ることでもない。

揃えなきゃいけないものがまだ残っているし、無理だと言われても仕方ないことだからそれはいい。

 今回、秘密の射撃場に二人を集めたのは、防弾チョッキを渡すためだ。

用意したのはグレード2だけど、一応これでもマスケットの銃弾を防ぐことが可能だ。

 俺も何度か練習しに来ているので、その際に試してみて効果を確認している。

相変わらず、射撃の腕前は上がってない。正直、才能ないんだろうなとはうすうす感じている。

 ちなみにグレード2に抑えたのは、服の下に着用できるので目立たなくて済むという判断があった。それと、防刃服との重ね着とか他の防具との併用を考えるとここら辺が妥当な気がする。

 そして、今日は俺が試しに撃たれてみるつもりだった。

実際、1回打たれて一応効果の確認は終わってる。

終わってるのに、何故ベネットがそこに立ってるんだろう。

 しっかりと防弾チョッキは着てもらってはいるけど……

「多分、必要ないわ。」

 とか、自信満々に言われたのは何だったんだろう?

効果を試したいということなら、必要ないとは言わないよな。

「さあ、遠慮はいらないわ!!」

 ベネットの声にトーラスが俺の方を見てくる。

 割と防弾チョッキの機能にも驚いていたのに、ベネットの奇行に困惑するばかりといった様子だ。

「分かったから、ちゃんと立ってくれ。ずれたらシャレにならないよ。」

 さっきから、ベネットは腰をひねったり、軽い屈伸をしていたりする。

どう考えても、これから撃たれるって姿勢じゃない。

両手剣を納めたまま持ち込んでるのも意味が分からない。

「と、トーラスさん。慎重にお願いします。」

 一応、防弾ヘルメットもかぶらせてるけど、顔は防いでくれない。

最悪、顔に命中したらと思うと気が気じゃない。

「なるべく、下を狙うよ。最悪、足元なら自分で何とかできるはずだ。」

 とはいえ、足にも急所はある。

最悪のことも考えて、すぐ救助に行ける心構えをしよう。

金貨30枚くらいする、《重傷治癒》のポーションは手持ちにあるので、いざとなればそれを使おう。

 ごくりと、俺とトーラスは息をのむ。

慎重に狙いを定め、体の中心を狙っているようだ。

 そして引き金を引く音と同時に轟音が鳴り響く。

先ほど、俺も撃たれたがドスンっと重いパンチを食らったみたいな衝撃はあった。

そして、痛みで少しぐらついた。

 だが、ベネットは特にそんな様子はない。

先ほどとの違いは、いつの間にか抜かれた剣を手に持っているということだ。

いつの間にという早業だが、実際は抜かれている動作は見えていた。

 ただ、それは引き金を引く前だった。

 早いと言えば早いけど、その……

俺は、いまだに目の前で起こった出来事を飲み込めていない。

 というか、きんっという澄んだ金属音が銃弾を弾いた音だとするなら、それは狙ってやったことなのだろうか?

偶然、ではないとしたらとんでもないことだ。

 しかし、自信満々な態度を見れば、そのとんでもないことができたということに思える。

「真ん中狙わなくていいわよ。好きなところを狙ってちょうだい。」

 そういうと、ベネットは後ろを向いた。

 いや、待て……さっきは引き金を引く動作が見えていたから事前に前に置いたというのなら、理屈は分からなくはない。

とても人間業じゃないけど、まあ何とか飲み込める。

 だけど、見もせずにそれができるって言うんだろうか?

あー、いや、実際目の前で見せられてる。そうはならないだろって言っても実際できてるんだから受け入れるしかない。

忘れてた、この世界って魔法があるんだよな。そりゃ、ファンタジーな世界だもの、できてもおかしくはないのかもしれない。

 トーラスも諦めたのか、ベネットの要求にこたえ射撃を繰り返す。

途中から、フェイントを入れろとか訳の分からない要求を受けて、合計5発の銃弾が放たれた。

全ての弾丸が弾かれる。

 俺は、思わず床に手をついてしまった。

そんな芸当できるなら、防弾チョッキなんかいらんやん。

考えてみるとトーラスもそんな気分を味わってたのかなぁ。

「ヒロシ、そんなに落ち込むことはないわよ? 私も捌けるのは1度に数発ってところだから。あってくれたらとても助かるわ。」

 優しく慰められて少し落ち着いた。

確かに守らないといけない箇所を絞れるのは助かるかもしれないけど、まさかそんなことができるとは思わなかったよ。

「ちなみに、誰でもできたりするんですか?」

 そうだとするなら、ちょっと考え直さなきゃならない。

「とんでもない。私以外だと団長くらいじゃないかしら?教えてくれたのも団長だし。」

 流石団長、見た目通りの凄腕って事か。

「実際誰でも彼でも、あんなことしてきたら僕の商売あがったりだよ。ただね……

 ベネット、剣だけを立てておいて来てくれないかい?」

トーラスは何か試してみたいらしい。

 剣だけを立てさせるってどういうことだろう。

「ちょっと見ててほしい。」

 ベネットが言われたとおりに、剣を床に突き立てて置いて戻ってくると、そんなことを言ってトーラスは銃を構える。

先ほどと同じように銃声が響き渡る。

 ただ、それと同時に何かが割れる音が響く。

「あぁ!!私の剣が!!」

 根元の部分から、剣がぽっきりと折れた。

なるほど、確かに銃弾を何発も受けたらへし折れるか。

「あの剣大切にしてたのよ?言ってくれればよかったのに……」

 ちょっとベネットが涙ぐんでる。

「ご、ごめん。確かに言葉で説明すればよかったかもね。」

 トーラスが申し訳なさそうにあやまった。

もっとも、すでに強度が失われていただろうから、寿命だったとは思う。

それを言うと追い打ちになりかねないので黙っておくけど。

「やっぱり弾くんじゃなくて、斬らないとダメか。」

 また、すごいことを言う。

「団長は、そういうことをしてるってこと?」

 そう聞くとベネットは、頷いた。

これは、団長を敵に回したくないなぁ。

 そういえば、ベネットの使う剣はどうしよう。弁償しないとなぁ。

 あー、その前にもう一つ試してもらいたいことがあったんだ。

「と、とりあえず剣を回収しましょうか?」

 そういって、シューティングレンジに入り、ぼっきり折れた持ち手と刀身を回収してインベントリに入れておく。

 しかし、綺麗に割れるもんだな。

断面は大分厚みがある。プレートメイルの実物は見たことがないけれど、それよりは確実に厚いだろう。

 それでも、連続で近い場所を打たれると折れてしまうわけだから、銃弾を防ぐのはなかなか難しい。

実際防弾チョッキも同じ個所に撃たれた場合は、貫通すると言われているので打たれたら交換しないといけない。

 これは、防刃服よりもより消耗品になるということでもある。

これからトーラスに渡すもう一つのものには防弾チョッキは役に立たないしな。

 後で、剣で弾こうとした場合にどうなるかは、別の時に試そう。

安全のためには必要なテストだけど、ベネットの目の前でやったら可哀そうだし。

「えっと、ですね。今回はこの防弾チョッキ金貨30枚、のところ今回は無料でご提供します。今なら、防弾ヘルメットもお付けします。」

 実際売るつもりはない。

少なくとも、俺が渡すのはこの二人だけだ。

いや、もしかしたら危険を考えて提供先を増やす可能性もあるから、だけとも言い切れないか。

 もっとも、グラスコーが銃弾が飛び交う場所に出歩くこともないだろうけども。

二人は呆れた顔をしている。

「本当にヒロシは、商人に向いてないわね。私たちの稼ぎを侮ってるんじゃない?」

 そういわれると、まあ、確かに失礼かもしれないな。

「無茶なお願いの代償かな?」

 まあ、確かにそういう面はある。

「あのお願いは、ちゃんとした護衛依頼を出しますよ。割り増しも出すつもりです。」

 俺の言葉にベネットはため息をつく。

「それじゃ、断りづらくなるじゃない。まあ、お金を積まれれば傭兵ですもの、承るつもりだったけど……」

 この場で了承が得られるとは思ってもみなかった。

準備をしっかり続けないと。

「まあ、それとは別にこれをトーラスさんには試してもらいたいんですよ。こっちは無料じゃない。金貨200枚です。」

 俺は、インベントリからライフルを取り出す。

 まあ、誰でも思いつくよな。アレストラばあさんが知ったら激怒しそうだ。

L96A1、ボルトアクションのスナイパーライフルだ。

 選んだ理由は弾を連射する銃は持ち込みたくなかったことと、トーラスの腕の良さを考えればスナイパーとしての適性が高い気がするから。

そして、L96A1が寒冷地に対応しているという触れ込みが購入する決定打になった。

触れ込み通りであってほしいけど、そこは使ってみて貰わないと何とも言えない。

「やっぱりね。拳銃を見た時から思っていたけど、マスケットと同じ大きさの似た銃も当然あるよね。」

 予測はついていたらしく、トーラスに驚きはない様子だ。

「ちなみに、ライフルかい?」

 むしろ俺の方が驚いた。

ライフルあるんだな。

「意外そうだね? 一応、銃口から装填するから、弾は込めづらい。だから、ヒロシの特別製のものとは全然違うけどね。」

なるほど、そうだとするとまだ実験段階なんだろうな。

「一応マニュアルがありますけど読みますか?」

 色々とマスケットとは、勝手が違う。

今回はオプションマシマシで、通常のスコープの他に暗視スコープを切り替えられるようになっていたり、バイポットで伏せ撃ちしやすいようにもなっている。

それらの仕様を把握してもらうためにもマニュアルは必須だろう。

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