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3-27 いろいろとありがたいけど、やっぱり怖い。

 結局そのあとの小売りはファビウス翁のしきりで再開された。

俺としてはお目付け役がいてくれたことで非常に助かったわけだけど、グラスコーはお不満な様子でふてくされてる。

それでも袋叩きに合いそうな雰囲気に比べれば何倍もましだ。

 何の気なしに戻ってきたベーゼックが説教を始めたのも相まって場は和むし若干お祭りめいた雰囲気も出てきたし。

つくづく思うのは人の見た目って大切だよなぁと実感する。

「なかなか面白いものを扱っとるな?」

 興味津々といった様子で並べた商品を品定めするファビウス翁の様子はちょっと子供みたいな雰囲気だ。

小屋での話し合いの時はやべー人だとばかり思っていたけれど今はむしろ安心感がある。

 逆に言うとそれはそれでやばい人な気はするなぁ。

「ありがとうございます。いろいろと伝手を頼って揃えたものですからおほめいただき光栄です。」

 既にいくつかの商品はファビウス翁の手元に献上させてもらった。

その上で割と高めのマジックアイテムも購入してもらったので商売としては全く損はしていない。

農村でマジックアイテムを購入できる人ってのはなかなかいないことを考えると非常にありがたい。

「いろいろと討伐やらなにやらで今は入り用でな。渡りに船という奴だ。しかしお前の雇い主は強情な奴だ。商売もせずにむくれ続けとるぞ。」

 面白いものを見るようにファビウス翁はグラスコーを見てにこにこ笑っている。

「るせえな話しかけんな。」

 どうにもばつが悪いらしくグラスコーは目線を合わせようとしない。

まあ、ファビウス翁の掌で遊ばされてる状況って言うのはプライドを傷つけられる気がするのもわかる。

「おう、こらすまなかったな。どうにもお前みたいなやつを見ると息子を思い出してしまう。大人の男に対しては失礼だったな。」

 そういってファビウス翁は笑った後、あとは黙って商売を見届けるだけになってしまった。

「ヒロシ、何かがあったんだ?」

 不思議そうにベーゼックが話しかけてくる。

俺は状況をかいつまんで説明するとベーゼックはなるほどなという様子で薄い笑いを浮かべた。

だんだんわかってきたけどこの薄い笑い別に馬鹿にしてるとか透かしているってわけじゃなさそうだ。

「まあ、そういうわけで俺がへまをしましたって話ですよ。」

 なんだかいろいろと疲れる。


 結局、小売りは夕方まで続きつつがなく終わってくれた。

引換券の効果は割とよかったのか、今回は帳尻がちゃんとあってくれている。

アルバイトへの支払いを含めても買取と販売を切り分けるのは間違いなくよかった。

と思う……

 グラスコーの機嫌が悪いのと、取り扱うには少し根回しが必要なことくらいだろうか?

ありがたいことにファビウス翁は手紙と誰に取り次げばいいかの情報までも丁寧に教えてくれた。

しかも一泊する場所まで用意してくれるというサービス付きだ。

 相当グラスコーは気に入られている。

それが余計にムカつくのかグラスコーのテンションはダダ下がりだ。

「いつまでむくれてんだよ。」

 思わずため口で文句を言ってしまう。

貸してもらえた小屋は質素だが確実に村の規模からすればねぎらわれていることが分かるレベルだ。

ぞんざいに扱われているわけでもない。

「んなこと分かってんだよ。今回の件はヒロシのせいじゃねえ。俺の責任だ。」

 ちょっとびっくりした。

こいつから責任みたいな話が出てくるとは思わなかった。

「ちょっとした違和感はあったんだよ。それでも気付かなかった。」

 悪かったなと相変わらずそっぽを向いて小さく言う。

なんだこいつ落ち込んでたのか。

 でもなんて言えばいいんだろう。

そもそも違和感なんか覚えてなかった俺からすれば、責任は俺にあると思うんだけどなぁ。

なんかここで慰めるとか違う気はするし、茶化すのも難しい。

「なに人は失敗するものさ。神様はいつだって君たちを見てくれている。」

 ベーゼックが突然軽薄な言葉を吐いた。

「るせえ!神様なんざくそくらえだ!!まったくよぉ。ふらふらしてる宣教師様はお気楽でいいぜ。」

 突然の暴言に俺はどうしたものかと悩む。

「ははは!確かにね。」

 意にも介してないのか朗らかに笑いながらベーゼックは酒を飲み始める。

「まあ、しかしとにもかくにも上手く行きそうだし、あの爺の話には乗ってみるか?」

 グラスコーも吹っ切れた様子で水を向けてきた。

「割り切れたらいいけどな。じゃない、納得したならそれでいいと思いますよ。」

 改めて敬語に切り替える。

それがうれしかったのかグラスコーはにんまり笑うと酒をあおり始めた。

どうにもグラスコーとの距離感がつかめない。

 一応上司なんだから馴れ馴れしいのは控えないとといつも思うんだが、上手くいかないなぁ。

決して舐めてるわけじゃない。

明らかにグラスコーは先輩商人としては有能だ。

むしろ誰にでも怖気づくことがない度胸には尊敬の念しかない。

正直、ファビウス翁を見てビビり散らしてた俺とは段違いだ。

 ただどうにもなぁ……上司感というものがない……

下手したら友達感覚がぬぐえないのはちょっと問題だよなぁ。


 ひと悶着を起こした村を後にした後、道中でファビウス翁の人となりをそれとなく調べてみた。

本人は謙遜をしていたが、やっぱりというか。

明らかに謙遜しすぎだ。

 爵位のない騎士ということは確かだけれどこの地方を納めるバウモンド伯の懐刀という立ち位置の人物らしく、他の貴族とのパイプ役すら担う人物で軍事面では間違いなく重要人物だ。

軍功がないというのも嘘じゃない。

 というかうーん。

後方担当で補給を一手に担う将校みたいな人だ。

それを軍功がないというのはどうかなと思ってしまう。

バウモンド伯が軍事行動を問題なく執り行えるのはひとえにファビウス翁のおかげと言っていい。

それどころか、何度か窮地に追い込まれたバウモンド伯を何度も救援している。

 それで軍功がないとかって嘘だろと。

 でも身分が農民出身で派手な戦闘には参加できず負け戦では地味な撤退を繰り返しているのは評価されないって言うことらしい。

いや間違いなく凄い人だと思うんだけどなぁ。

撤退が地味だってことは、手ひどい損害を受けることがなかったってことを意味するし、それが次の戦いにおいての戦力温存ができたってことも意味している。

負け戦があるのに、そのバウモント伯が没落してないってことは失地を回復できているということだろう。

 でも、話してくれた人からすれば運がない人って扱いらしい。

「なんだあの爺さん凄い奴じゃねえか。」

 グラスコーの印象としても俺と変わりはないみたいだ。

軍事に明るいわけでもないのにそういうところは分かるんだな。

「まあとはいえ誰かを討ち取ったとかはないんだから領主にしてもらえただけでも十分なんじゃないの?」

 貴族出身だけにベーゼックはあんまり評価していないみたいだ。

そこら辺の感覚、いまいち分からないなぁ。

文化的に散り際は美しくとかそういうものがあるんだろうか?

 俺はもっと評価されていいと思うんだけどなぁ。

 ただ評価と言っても確かに一代限りとはいえ土地の所有を許され領民を持つことができるのはなかなかに難しい事らしいことは聞いた覚えがある。

爵位が与えられれば、それらの権利の相続ができてしまう。

そうすると新しい家が興され既存の貴族との間にいろいろと軋轢が生まれる。

それがどれだけハードルが高いことなのかを考えると破格の対応なのかもしれない。

 そう考えればバウモント伯の信頼は確かなんだろうなぁ。

もうすでに現役は引退しているということだから老軍曹が退官を機に労いとして准尉に昇進させたみたいな感じなんだろうか?

言ってることが合ってるかどうかは分からないけど、話を聞く人からは処遇について不当だという話は聞かなかった。

 実際、近隣の村々では明らかにバウモント伯より親しみがあるし公平公正な領地運営をしているから何かあればファビウス翁に相談しろって言うことになっている。

つまり領民にはおおむね不満を持ってる人は少ない。

 ただ若い連中にはうざい爺さんってイメージもあって融通が利かないとか愚鈍みたいな話もされている。

なんというか、学校の生徒指導の先生に対する態度みたいなやつだ。

 まあ見た目怖いもんなぁ。

「しかし、手紙一つでこんなにスムーズにいくとは思いませんでしたけどね。」

 取次ぎの段取りもファビウス翁の手引きはスムーズで最初の失敗がまるで嘘のように引換券での取引はうまくいった。

もちろん正式なものじゃないので立会人は必要だったし、みかじめ料もかかる。

 とはいえ、それらも別段法外な量を請求されたわけじゃない。

事前に何を渡せばいいかまで指定してくれていたからだ。

こちらとしては値が張るものではないけれど、その村では不足している物資を指定してくれているのでめちゃくちゃ喜ばれるしこちらの懐もさほど痛まない。

 完璧すぎる。

それだけに恐ろしい。

敵対することになったら絶対嫌だなぁ。

「まあともかく工房もあの山の麓だ。爺さん並みに厄介なばあさんだが練習できたと思ってしっかり頼むぜ、ヒロシ。」

 俺はグラスコーの言葉にぎょっと目をむいてしまった。

「え?ばあさん?」

 俺はにやにや笑うグラスコーに目を向ける。

「言ってなかったか?工房を仕切ってるばあさんはあの爺さん並みにいかついぞ?」

 えぇ……

ファビウス翁並みにいかついばあさんってなんだよ。

聞いてないぞ。

「先に言ってよぉ。」

 俺は思わず情けない声を上げてしまう。

 白い雪に覆われた山肌を見つめているとなんだか山姥みたいなばあさんなんじゃないかと想像できてしまって身震いしてしまった。

図面やら提案についていろいろとまとめてきてはいるけれど、うまく話せる自信がなくなってくる。

できれば見た目は超若作りとかだったらいいなぁ。

せっかく異世界なんだからそれくらいのファンタジー許されてもよくない?

ブックマーク、評価、感想お待ちしております。

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この主人公の問題はクズなのに金に適当なところとぶりっ子すぎるとこだなもっと盛大に失敗しろクズなら
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