表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/603

3-6 割と本格的な射撃場。

 地下には、約80mほどの地下室があった。

横幅は20mほどだが、結構広い。

 手動ではあるようだが、標的をつり下げて配置するレールも備えられている。

「ここは、本来非合法な銃を取り扱う店なんだけどね。当然試射をしたい客も多いんだ。」

 そう説明しながら、標的をつり下げてトーラスは位置調整している。

「もちろん、僕の得物は合法品だよ? だけど、この仕組みがとても便利だから時々練習に使わせて貰ってるんだ。」

 なるほど、確かに現代的な射撃場みたいな仕組みだから便利そうではある。

「それで、ヒロシ。何を試したいの?」

 ここに来るまで何も言っていなかったのでベネットも気になっていたようだ。

 俺は、インベントリから拳銃を取り出した。

米軍で正式採用予定だと話題になっている最新モデルだ。

「なんだい、その四角いおもちゃは?」

 トーラスは疑わしげな顔をしている。

 聞いた話だと、まだリボルバーもなくて先込めの単発拳銃が主流らしい。

そうなれば、オートマチック拳銃なんておもちゃにしか見えなくても不思議じゃないだろう。

「とりあえず、標的を5メートルくらいに合わせてもらえますか?」

 じゃないと当たらない気がする。

何せ初めて撃った銃がフリントロックで、拳銃なんか触ったこともなかったからな。

モデルガンくらいは触ったことがあるので、アイアンサイトの使い方は何となく分かるけど、何の役にも立たないだろう。

「ずいぶんと近くない?」

 標的の位置を見てベネットも近すぎると感じているようだ。

 まあ、でもこっちの拳銃も射程は似たり寄ったりだろう。

「まあ、素人だからこんなもんじゃないですか?」

 コッキングをして初弾を送り込み、セーフティを外す。

 一応、一通り説明書を読んだから、操作は間違ってないよな。

 両手で構え、照星と照門を標的に合わせる。やや薄暗くて、合わせづらいな。

今度、ホロサイトでも買っておこう。

「じゃあ、撃ちますね。」

 揺れを抑えて、ゆっくりと引き金を引く。派手な発砲音が辺りに響く。

耳がキーンと鳴っているような気がする。やばい、耳栓買っておくの忘れた。

今までは屋外で打っていたからさほど気にならなかったけど屋内だときついな。

 仕方がないので、いったん銃にセーフティーをかける。

「トーラスさん、耳を塞ぐものってないですか?」

 自分の声が遠く聞こえる。

 トーラスは何かをしゃべってるようだけど、聞こえない。

 とりあえず、差し出された耳当てみたいなものを受け取った。

どうやらイヤーマフみたいなものかな?

いつの間にか、二人ともそれをかぶっている。

 言って欲しかった。

「じゃあ、続き撃ちますよ?」

 俺は、再び照準を合わせて弾倉が空になるまで撃った。

激しい発砲音がイヤーマフ越しに突き刺さる。

 まあ、無いよりかはマシかな。

 マガジンが空になったのを確認し、薬室に弾が残ってないことを確認した後、オープン状態を解除する。

息を吐き、セーフティをかけてテーブルに銃を置く。

 振り返ると、トーラスは片眉を上げた状態で固まっている。

ベネットは標的をじーっと見ていた。

 イヤーマフを外し、耳の周りを揉む。

別にこれで耳の聞こえが良くなるわけじゃないんだけど、何となくやってしまう。

「どういう仕組みなんだい、その銃?」

 どう答えたものかな。

 まあ、使い出せばいずれ仕組みは分かってしまうから工業技術が発達すれば、いずれ広まるだろう。

とはいえ、ちゃんとした仕組みを俺が理解してない。

「秘密です。」

 なので、そう答えておく。

 ベネットは黙々と標的を引き寄せて、損傷具合を確認している。

 あの距離でも放った弾の数と命中している数は一致していない。

やはり素人じゃ上手く扱えないな。

 でも、ちょっとベネットは息を呑んでいる様子だ。

まじまじと拳銃を見ている。

「撃ってみます?」

 俺がそう聞くとベネットは首を激しく横に振った。

「なんだか怖い。それ怖い。」

 あー、いや……うん……

そのくらいの心構えの方が良いかもしれないね。

「撃たせてくれるなら俺は撃ってみたいんだけど、どうかな?」

 トーラスの方は興味津々の様子だ。

「いや、こんなに連射できるなら短い射程もカバーできそうだよ。

 いつも懐に飛び込まれるとナイフを引き抜いて防戦したりだったからね。」

 いっそそれなら銃剣でも良いんじゃないだろうか?

あー、銃剣くらいなら鍛冶屋で作ってもらえそうだな。

「じゃあ、お試しにどうぞ? 横のレバーを下ろせば撃てる状態になります。」

 マガジンを差し込み、コッキングまで済ませてトーラスに拳銃を渡す。

標的を準備した後、俺はイヤーマフをかぶり後ろに下がった。

ベネットも、ちょっと青ざめながらイヤーマフをかぶる。

 さすがに射撃慣れしているのか、イヤーマフを忘れるという間抜けな失敗もなく、トーラスは拳銃を構えた。

特に気負いもなく、どのくらい連射できるのかを試すように1マガジンうち尽くす。

教えたわけでもないのに、銃弾が残ってないかも確かめてオープン状態を解除してテーブルに置いた。

 とりあえず、標的を引き寄せる。

 トーラスは、散らばっていた薬莢の一つを手に取りしげしげとそれを眺めていた。

「なるほど、紙じゃなくて金属でカートリッジを作っているわけか。」

 標的の方には興味がないらしい。

 しかし、凄い。ほとんど真ん中に集弾していた。

確かに5メートルじゃ大したことのない射程だが、それでも俺は真ん中に当たったのは数発だ。

正確無比な射撃の腕だな。

「ヒロシ、もう少し撃たせて貰って良いかな?次は30メートルくらいで撃ってみたいんだ。」

 トーラスは、ちょっと熱っぽい懇願をしてくる。

別に拒否するつもりはないが、なんか残念だ。

何が残念かは言わないが……

「とりあえず、標的をセットしましょうか?」

 そういいながら、俺は30メートルほどの距離に標的をセットする。

「ちなみに、その弾の詰まった奴1つでいくら位するんだい?」

 最近知ったんだが、端数が出るとき、硬貨には出来ないけど小数点で表示される事が分かった。

なので、1発当たりの値段は25円、表記だと0.25ダール、

フル弾倉と薬室内で1発だと、大体450円、4.5ダールほどで購入できる。

 ただしマガジンは結構高い。

50ダール、つまり銀貨5枚ほど支払わないといけない。

 元の世界の銃の値段なんか知らないから、これが同じ値段で購入できるのかは知らないが、ともかく結構する。

マガジンごと購入して使い捨てにしようとは思わないな。

 そこら辺をどうやって説明したものか。

まあ実物を見せながら説明しよう。

「とりあえず、これはマガジンと言ってカートリッジを納めておく箱です。

 これで銀貨5枚です。でも、これは再利用が可能だから、詰め替えれば、そんなに数は必要ないでしょう。」

 マガジンから、銃弾を引っこ抜く。

結構面倒くさい。

手間取りつつも何とか引き抜けた。

「んで、これがカートリッジ。1発当たりは結構安いです。」

 ここで、そのままの値段を伝えたら不味いことに気付く。

 んー、まあマガジンは訂正しないで良いか。

「大体1発で銅貨1枚で済みます。」

 4倍の値段だが、それでも普通に火薬と鉛玉を用意するより遙かに安い。

「そんなに安いのかい? 威力はそんなに弱い気もしないけど?」

 まあ、確かに1/10で済むと言われたら疑うよね。

かといって、さらに値段をつり上げる気にはならない。

「その分本体は高いですよ?金貨100枚はしますから。」

 ちょっと本体は高めに話すことは決めていた。

おいそれと出回って欲しくないし、すぐにトーラスが手に入れたいと思わない値段にしたつもりだ。

「あー、確かに高いね。新品のフリントロックと同じ値段だ。」

 実際、それはリサーチ済みで、わざと同じにしておいた。

射程が短いのに、既存の銃と同じ値段。

連射が出来るのが強みだから欲しいだろうけど、おいそれと手を出せないだろう。

しかも、真似をしようとしてもおそらく上手くいかない。

しばらくは珍しいマジックアイテムくらいの扱いになるはずだ。

 それなら、俺にも管理できる。

武器の扱いは慎重にしておかないと、自分の身に降りかかりかねないからな。

 とはいえ、これをトーラスに見せたのは理由がある。

いずれは、彼を雇用したい。

明らかに彼は、天才スナイパーになる可能性がある人物だ。

扱いにくい滑腔銃身の銃でさえ、誤射をすると言うことがなかった。

そう考えると間違いなく希有な才能を持っている。

 身を守る上で、凄腕のスナイパーが一人いるというのは凄い利点だと言っていい。

何せ相手の攻撃を受けない位置から一方的に攻撃できるわけだしな。

 だからといって、いきなりボルトアクションライフル持たせて配下になれじゃ、付いてきてくれないだろう。

いくら人付き合いが苦手だからって、それくらいは分かる。

 まあ、まずは俺が提供できるものを徐々に知って貰おう。

「まあ、弾の値段は大したことがないので、存分に撃ってみてください。」

 そういいながら、俺はイヤーマフをかぶる。

そういうことなら遠慮無くと言った風情で、トーラスはマガジンを拳銃に入れると離れた標的に向けて銃口を向けた。

今度は一発一発、確かめるような撃ち方だ。

 やはり、中心を外していない。

間違いなく才能持ちなんだろうな。

 途中からは右手のみ、左手のみの射撃に切り替えたが、それでも的を外すことはなかった。

「いや、本当に凄いね。動いていない標的とはいえ、弾道が凄くまっすぐ飛んでいるよ。んー、欲しい。」

 まるでフィギュアを愛でるおたくみたいに頬ずりしそうな程まじまじと拳銃を眺めている。

さすがに引き寄せた標的を見ると片手で撃ったときの銃弾は中心からずれているようだが、ちゃんと的に収まっている。

 それを見て、ベネットの顔はさらに曇る。

考えてみると彼女にとって天敵が現れたようなものか。

 騎兵として、戦列へ突っ込んでいくのが彼女の役割だ。

射程ぎりぎりから、相手の弾幕をかいくぐり装填中の銃兵に躍りかかる。

そういう時に不意に懐から、この拳銃を取り出されたら。

 まず何も出来ずに撃たれるだろう。

 でも、俺としては逆に考えて欲しいんだよな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ