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22-27 なんだか気まずい。

なんともしまらないお話です。

 結局、翌日になっても何も進展はなかった。まあ、そんなものだよな。

 戦争というのは、戦闘そのものよりも戦前の準備や戦後の処理の方がよほど長引くというものだ。お互いグダグダになって、疲れ果てるまでは議論は続く。

 最後まで粘ったものが勝つと言っても過言じゃないだろう。

 というわけで、適当にすきを狙ってヨースケの返答を求めるべく、ダンジョンへと舞い戻る。

 こっちはこっちで、なかなか激しい議論が交わされてたみたいだな。

「目にクマが出来てますよ? 大分お疲れのご様子ですね。」

 そういうと、そちらもなと返事をされてしまった。

「とはいえ、こちらの返答はまとまった。条件は飲もう。その上で、出来れば暖かい土地がいい。

 頼めますか、ヒロシさん。」

 はじめて名前で呼んでもらえたな。

「尽力いたしましょう。連邦は本拠じゃないものですから、ご希望を完全に叶えられるとは限りませんけどね。」

 支店長交代があって、最近までいろいろとごたごたがあった。不正会計を正す作業一つとっても、割と面倒だったなぁ。

 副支店長が支店長に昇格。元の支店長は引退して、今はバーのマスターをやってるらしい。

 損害賠償を求めるべきだという意見も出たけれど、そこは不問になった。商会長のブレンが副支店長の要望にこたえた形だ。

 熱意に押されたとか言っていたけれど、実際問題、副支店長にまで辞められたら空中分解しかねなかったしな。

「ちなみに、ご家族などお連れしなくちゃいけない人はリストにしておいてくださいね。」

 流石にこの混乱状況だと、探し出すだけでも大変だろうなぁ。

 ともかく、同意は得られたのでアキに連絡を入れよう。ゲートの確保は完了しているので、座標を送ればすぐにつないでくれるはずだ。

 インベントリにしまえば支店にすぐに送れるけれど、次々と人が消える場面なんか見たら不信感を持ってしまうだろうしな。

「ヒロシ、ちょっと。」

 後ろからベネットにつつかれた。なんだろうか?

「家族のことまで面倒見てもらえると思ってなかったみたいだよ。」

 耳打ちされて、その可能性に初めて気づいた。そうか、そりゃ家族は捨てての逃避行だと考えれば、決断しにくかっただろうな。

 うわ、気まずい。

「えっと、それなりにお時間は頂きますよ?」

 そういうと、ヨースケは気が抜けたように頷いた。

「幸い、俺には家族と呼べる存在は居ない。だが、部下たちの家族についてはよろしくお願いします。」

 ヨースケは随分と硬派な人物だったんだな。落ち着くまでは、そういう関係の人間を作るつもりはなかったという事なんだろうか?

 

 なんだかぎくしゃくしてしまったが、ヨースケたちの移送は滞りなく終了した。

 サンクフルールのダンジョンを経由し、連邦のダンジョンへと移動するのは、アキの力をもってすればたやすいことだ。

 勿論、魔王の力については連邦の方には伝えてある。一応、全ての情報を公開したわけでもないし機密扱いとしておいてもらう約束は取り付けてあるけれど、いずれは広まってしまうだろうな。

 帝国はもちろん、教会の影響を強く受けているのだから知っていることだろうし、連合やサンクフルールの新政府もおぼろげながら伝わっているとは思う。

 何時までも、アドバンテージとして気軽に使えるわけじゃないことには注意しないと。

 連邦側のダンジョンは支店のある港町から程近くにあった小さなダンジョンだ。

 こうやって、世界各地のダンジョンをつなげられるというのも、交易する上ではとても有用な力なんだけども。軍事利用を懸念されると途端に使いにくい能力になってしまう。

 そういうことをしませんよと、いくら口で言ったところで疑いは掛けられ続ける。

 なるべくオープンに利用したいけれど、それはそれで教会のメンツにかかわってしまうし、なんとももどかしいな。俺を見るヨースケの視線も、若干疑わしいものを見るようなものになっているし。

「なるほど。これがあれば、普通の手段じゃ太刀打ちできないわけだ。」

 嫌味かな?

「言っておきますけど、これで兵士を送り込んだりだとか工作員を潜り込ませたりしたことはありませんよ? あくまでも、俺の本質は商人ですからね。」

 言ったところで信用してもらえないだろうけどな。

「ハーレム築くような男に言われても。」

 あぁ、アキやモーラとも関係を持ってると思われても仕方ない状況か。

 なんだか説明するのも面倒臭いなぁ。

「なんだ、堅物ぶっていながら、案外そういう願望があるんだねぇ。良いよ、君に嫁いであげても。」

 モーラは嬉々として、ヨースケに求婚し始めた。

「い、いや、まさか。」

 今度はロリコン疑惑か。

「一応言っておくが我は、ヒロシと関係は結んでないぞ。色ボケ神は狙ってるみたいだけどな。」

 やれやれといったようにアキは肩を竦めた。

「モーラは娘ですしアキさんは前にも説明したとおり、ビジネスパートナーのようなもんです。俺の姉を自称する子の命の恩人でもあるので、友人と言わせてほしい所ではありますけど。

 いずれにせよ、女性以外にも友人は多いですよ。邪推はやめてください。」

 言っておかないと、ベネットが拗ねる。

「おーい、ヒロシー!! 迎えに来たぞー!!」

 くだらない話をしながら、ダンジョンを抜けるとこちらで車の手配をしてくれていたハルトとキョースケが出迎えてくれた。

 新たにハルトの隣にカイネもいるので、疑いの目で見られれば彼女もハーレム要員に見えたりするのかなぁ。

 そこまで器用じゃねえっていうの。

「怒ってない?」

 そうベネットに尋ねると、視線を逸らされてしまった。

「どうかなぁ。教えてあげない。」

 まったく嫉妬されないというのも悲しいが、そうやってはぐらかされるのももやもやするなぁ。

 

 ヨースケを送り届けて支店長に託した後、俺は講和会議に忙殺されることになった。そもそも、国の一大事に口を挟めるほどの立場じゃないと思うのだけれど、何かと呼ばれては意見調整をして、提案をぼろくそに叩かれるのを繰り返す。

 却下するなら、そもそも俺の意見なんか聞かないでくれと何度叫びそうになったことか。

 しかも、意見がまとまりそうになる段階で、何故か一人は済んだ話を持ち出してちゃぶ台をひっくり返すんだよな。

 他国の人間にそれをやられるなら我慢もできるが、フランドル側からそういう動きをされると腹が立ってしょうがない。

 いや、こんな事で怒ってたら外交官としては二流だ。いや、そもそも三流もいい所なんだから、怒ってもいいのかな?

 真面目に全部投げ出してしまいたい。

 敗戦国であるはずのサンクフルール共和国政府は高飛車だし、連合は陰険だし、帝国は傲慢だし、フランドルは理屈っぽい。

 全員が納得する答えなんかあるわけねえだろうと。

 それでも、法という秩序がない外交の世界では話し合い以外に手段がない。裁判所や警察が動いてくれるわけじゃないし、選挙で解決というわけにもいかない。

 どうしてもというのであれば、第二ラウンドを開始するしかないんだよな。

 それだけは勘弁願いたい。もうみんな、いい加減くたくただろう。勘弁してくれ。

 そんなことを思いながら、それでも粘り強く交渉を続けて、みんなの頭の中がアルコール漬けになるんじゃないかと言うくらい時間が経過することで、ようやく仕方ないかという講和条件が成立した。

 懸案事項であったポートランドに王を建て、中立国として独立させる。

 但し、サンクフルールの官僚たちは残留して行政を行う。言ってしまえば、お飾りの王様を建てることで合意に達した。

 そして、恐らくこれも妥協に妥協を重ねた結果だと思うのだが、わが国の第三王子であるレイオット殿下が即位する運びになった。

 あり得ん。

 いや、今更王様になれても、王子様も嬉しくないだろうなぁ。しかも名義上は中立国だ。何ができるというのだろう。

 当然、詰問のためにベルラントの居城に王子様が押しかけてくる。本来なら、晩餐会やら舞踏会で持て成さなきゃいけない相手が、突然訪ねて来るんだから溜まったもんじゃない。

 挨拶もなしに、応接室で詰め寄られるなんて話が広まったら大問題だぞ。

「ヒロシ。お前、俺を生贄に捧げただろう。」

 相当な剣幕で詰め寄られてしまうが、そんなつもりは全くなかった。

「違います。おそらく、教会の差し金ですよ。適当にお世継ぎ決めたら、さっさと退位した方がいいでしょうね。」

 俺も、眠くてしょうがない。他の外交官たちがアルコール漬けになっている間も、俺は素面で色々と観察が出来てはいた。

 だが駆け引きがあまりにも高度過ぎて、実際のところなにが起こったのかはさっぱりだ。

「軽々しく言ってくれるもんだよな。いくら傀儡の王だからって、気が抜けるわけじゃないんだぞ。」

 あんなに王様になりたがってたくせに、いざなると決まると文句を言う。勝手なもんだよなぁ。

「じゃあ、裏で暗躍して大陸制覇にでも乗り出してくださいよ。一応名目としては、王様なんだし。」

 それが出来ないように、サンクフルールの官僚が居残るわけだけども。

「首輪付きでそんな真似できるわけないだろう。何かあったら、ヒロシの責任だからな。」

 そんな俺に責任を押し付けられても困る。

「逃げ出す時には、精一杯お手伝いしますよ。一応、友人ですしね。」

 そういうと仕方ないと納得したのか、王子様はため息をついて頷いた。

「約束だからな。ヒロシがそういうから引き受けてやることにしてやる。」

 そういうと、なんだか心底面白そうに笑った。なんだ、その笑顔は。下手な期待をされても困るんだが。

「言っときますけど、逃げる手伝いですからね? 戦争に加担させようとしたりしないでくださいね?」

 分かってる分かってると気軽に言われるけど、不安だよなぁ。小さい頃の癖が再発しないことを願おう。

 しかし、なんでベネットと王子様の嫁であるユリアは二人して微笑ましいものでも見るみたいな顔で頷き合ってるんだろうか?

 頼むから助けてくれ。

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