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22-21 そりゃ出来た人ばっかりじゃないわな。自分を筆頭に。

とはいえ、さすがに横領はなぁ。

 迎えが来なかったのはどうやらトーラスと支店長で揉めていたかららしい。話を聞く限りだと、大分、支店長はいい加減な人のようだな。

「いや、そこまで気にすることですかね? 確かに人通りは多いですが、だからって人を配置しなきゃいけない程の事とは思えませんが。

 そりゃ、ベルラント伯と言えば人の生き血を啜る吸血鬼だって噂もありますが、それならなおのこと襲ってくる人間なんかいやしないと思いますけども。」

 本人の前でそんなこと言うかね、普通。

 確かインベントリの権限を与える時に一度会っていたはずだけれど、こんな人だったんだな。

「予算もつけていて、計画についても書面で提出しているはずなんだが? 何故それが実行されてないどころか人を呼び寄せる話にすり替わってるんだ。

 ふざけるのもいい加減にしろよ。」

 珍しくトーラスがキレ散らかしている。こんなに険しい表情の彼を見るのは初めてだ。

「いや、それは。えーっと、そう、新人のマイクのせいだ。あいつが取り違えてしまいましてね。」

 そんな新人に警備計画を関わらせてたのか?

 仮にそれが事実だったとしても、それは支店長の責任だよなぁ。言い逃れとしても、お粗末すぎる。

「申し訳ないが、それほど暇があるわけじゃない。以後はトーラスの指示に従ってください。」

 別に支店長の行いを不問にするわけじゃないが、糾弾したところで実りがあるようには思えない。まずは、急場の予定をこなしておこう。

「わ、分かりました。それじゃあ、私はこの辺で。」

 何処へ行くつもりなんだか知らないが、関わらないでくれるならそっちの方が都合がいい。放っておこう。

 そういえば、ベネットはどこに行ったんだろう?

 子供たちの姿もないし。

「トーラスさん、ベネットたちは?」

 どこか別の部屋にでも移動したのかな?

「一応安全を確保できた急場の待機所に居てもらってる。こっちから来た人員で固めてるから平気だと思うけど。」

 かなりイライラしてるなぁ。

「ありがとう。そんなにやばい感じ?」

 何時までも倉庫で話しているのも何なので、その待避所に行こう。

「答えづらいね。状況的に厳しいってわけじゃないんだけど。」

 そういいながら、トーラスは待機所にしているであろう部屋へと先導してくれた。

 

 支店の一角にある部屋が待機所になっているらしく、すでに色々と整えられた部屋の中でベネットがかなりの量の書類とにらめっこをしていた。

 子供たちはメイドさんたちと遊んでいるからいいけれど、何をそんなに読み漁ってるんだろう?

「何してるの?」

 なんか、ずっとこんな調子だな。戸惑い続けていてちょっと情けないけれど、本当に何がかみ合わない感じだ。

「うん、こっちの人たちはおおらかだね。事務所から日誌だとか職員名簿だとか会計書類がほったらかしだから、ちょっと借りてきたの。」

 なんだか嫌な予感がするなぁ。

「そんなにひどくはないよ? ただちょっとね。」

 ちらりと視線を上げた彼女は、苦笑いを浮かべている。

「裏金でも作ってる?」

 そう尋ねると、すんなり頷かれた。

「そんなのどこでもやってることだし、別にいいんだけれど。さすがに杜撰すぎかなぁ。」

 そういいながら、彼女はいくつかの書類を差し出してきた。

 いやだなぁ。裏帳簿だったらどうしよう。

 言っていても埒はあかないから、仕方なく俺は書類に視線を落とした。

「秘書が愛人っていうのはよくあるお話だけれど、幹部が全員愛人っていうのは困っちゃうよね。」

 裏帳簿と言えば裏帳簿だけど、愛人へ貢いだ金額やら愛人としての評価みたいなものをまとめた書類を見せられるとは思わなかった。

「日誌とかを見ると、実質的に支店を差配しているのは副支店長みたい。だけど、いらないところで支店長が口出しをして引っ掻き回して、上手くいけば自分の手柄、失敗すれば部下のせい。

 副支店長は板挟みで、かなり追い詰められてる感じかも。」

 該当する部分の日誌には本当にそんな内容が記されている。いや、文句を副支店長にぶつけても仕方ないと思うんだけども。

「やっぱり、離れた場所は目が届きにくいのかもね。まさかこんなことになってるとは僕も思わなかったよ。」

 トーラスはうんざりとした様子で肩を落とした。

 勘弁してくれ。別に俺は査察に来たわけじゃないんだけどなぁ。

 とはいえ、あの様子を見ていると少し不安を覚える。いくら別に差配する人間がいると言っても、支店長があの様子だと色々と問題抱えていそうだ。何か手を打つべきかもしれない。

 そうは言っても今は用事が立て込んでいる。それに急いで何かを変えようとしてもなかなかうまくいかないことも多い。

 頭の中に入れておいて、どう対処するかをじっくり考えないと駄目だな。

「その件はおいおいやるとして、今後の予定は問題ない?」

 そういうと、二人はちょっと慌てた様子を見せた。

「あぁ、ごめん。とりあえず、人の手配なんかは済ませてあるからすぐ行動できるよ。だけど、慣れない土地だけに勝手が違うね。」

 いざこざがあったとはいえ、仕事は済ませてくれてたんだな。やっぱりトーラスは頼りになる。

「お洋服合わせしなくちゃだね。子供たちのお洋服も準備しないと。」

 ベネットは慌てた様子で、書類をとじていく。

「でもハルトは気にならなかったのかなぁ。支店長の事なんて一言もなかったよね?」

 支店長と相性が良かったのかもな。彼の話も聞いてみてからじゃないと、支店長の件を軽々に判断するのもよくないだろう。

「そこも含めて、おいおいね。とりあえず、支店長や話題の副支店長に挨拶してくるよ。」

 個別に面談をすれば何か分かることもあるかもしれない。それに彼らからこちらの状況も確認しておかないとだしな。

 

 待機所から出ると、待ってましたとばかりに支店長が寄ってきた。ちょうどいいから話を聞いてみるか。

「すぐに出発しますが、その前に支店の様子はどうですか? 不足しているものとかはありませんか?」

 そう尋ねると、支店長は一瞬気色を見せたかと思うと途端にしかめっ面になる。

「予算が足りません。あちこち種子を集めたり、試掘管を集めたりと火の車ですよ。」

 こうやってずけずけとこられるのは新鮮ではあるな。普段はおべっかばかりなので、こんなにストレートに金をせびられるとは思わなかった。

「帳簿上は、赤字にはなっていませんよね? と言うか、大分黒字になっています。そこから予算を増額すればよいのでは?」

 一応、予算については帳簿を提出している限りにおいて、独立採算という形をとっている。本店の指示に従い、予算編成をしろだとか無駄な経費を削減して、本店に利益を渡せなんて方式はとっていない。

「いや船便なんて必要ないんですから、もうちょっと納入額は安くなりませんかねぇ?」

 本店の利益は納入した商品の代金として受け取っている。だからその納入費を減額してくれと言う交渉は至極当然の話だろう。

 船賃がかからないからと言うのは、俺のからくりを知っているから話せる内容ではあるけれど。

「これでも本店は本店で色々と苦労しているんですよ。あっちはしがらみが多いですからねぇ。」

 切り口を変えて来るかなぁ。それとも強引に来るだろうか。

「確かにあっちは面倒くさい感じありますね。仕方ない。こっちでなるべくやりくりしますよ。

 その代わり、新作はなるべく優先してお願いしますよ。」

 ほほう。

 最初は口が悪いだけかと思ったけど、引くべきところは引くんだな。

「考えておきます。あぁ、ちなみに夜の予定は開いてますか?」

 ちなみに、スケジュールは確認済みだ。支店長は私的な用事を抱えている。

「夜は少し。下のものを呼びますので、それで勘弁してください。」

 プライベートを大切にするタイプなんだなぁ。いや、それ自体が悪い事ではないけども。

「結構ですよ。今後の運営についての話になるので、出来れば内情に詳しい人でお願いします。」

 ちらりと思考を読み取ると、面倒だなと言う気持ちと副支店長に任せればいいやと言う投げやりな考えが読み取れた。

 中々癖の強い人間だな。

「分かりました。ちゃんとした奴を用意しておきます。」

 にこやかに支店長から送り出されて、俺は車に乗り込んだ。

 

「あの人お尻が好きなのかな?」

 突然の言葉に俺は眉をしかめてしまった。

「そうなんだろうけど、今言う?」

 俺の言葉にベネットは口元を押さえる。子供たちの前でする会話じゃないよな。支店長の視線が待ち合わせしているベネットのお尻に行ってたのは気付いてはいたけど、口にするのはせめて誰もいないときにしてほしかった。

「あー、えっと。でも、案外やり手な感じがしたね。」

 誤魔化すように支店長の人柄に言及し始めた。子供たちが変な方向に食いつかないうちに話題を変えた方がいいのは確かだから、その話に乗っておこう。

「確かにね。帳簿の誤魔化しさえなければ、多少失礼な人ってだけで済んでたかもしれない。

 でも、やっちゃってるんだよなぁ。」

 少なくとも、それだけで野放しにはできない対象だ。

「これで副支店長さんがしっかりしてる人なら、交代してもらうべきなのかな。もっとも、私が口だすべきことじゃないけど。」

 あくまでも、商会の人事だからな。商会長はともかく、他の幹部との打ち合わせは必要だろう。

 そういう意味で、副支店長には期待したいところだ。人を辞めさせるのは簡単だけれど、辞めてしまった穴を埋めるのは楽な事じゃない。

 それに、どんな人物であれ内部情報を多少知られている人物だ。内幕をあれこれ漏らされる覚悟もしておかないといけないし、簡単な話じゃないよなぁ。ライバルと呼べる商会はいくらでもいるからな。

 どんなからくりがあるのか、喉から手が出るほど情報を欲しがっているところは少なくないだろう。

 法律が整備されているあっちの世界でも、営業秘密の漏洩なんて珍しくもない話だ。ましてやこっちでは法の整備どころか、国が違えば世界が違うレベルで影響力がないからな。

 咎める事なんて到底できないだろう。

 難しい話をしに来たところで、別の難しい話をぶち込んでくるのやめてほしい。

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