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2-25 無駄遣いしちゃうのは人の性だよ。

 まだ、一つ追加された能力がある。

うだうだ考えてないで確認しておこう。

 オークションの利用という項目だが、多分ネットオークションみたいな物じゃないかね?

 俺はウィンドのオークションのタブを開く。

一応説明が加えられているが、手数料を支払い最低価格を設定して期限を決める。

そして、買い手が付けば発送は自動で行ってくれるという点はネットオークションよりもお手軽かもしれない。

即決価格とかも設定できるから、予測はほぼ間違ってなかったな。

 しかし、買い手って誰になるんだ?

 そもそもマジックアイテムに買い取り価格があって、売れるって所からして不思議なわけなんだが……

 少なくとも俺がいた頃の日本でマジックアイテムなんか流通してなかった。

いや、あるわけ無いんだけどな。

買い取られた物品の行方についてはなんの手がかりもない。

どんどん謎ばかりが積み上がっていくな。

 うーん。

なんだか頭が痛い。

こう言うときは、いつも甘い缶コーヒーが欲しくなる。

 そんなのだから、糖尿病になったわけだが……

 ふと気づけば、俺は購入タブでいつも愛飲していた缶コーヒーを検索してしまっていた。

手ごろな価格の物をケース買いしそうになってしまう。

どうしようか。

 買っちゃおうかな……

 これくらいならインベントリの肥やしになっても……

「ヒロシ、どうしたんだい? そんな苦しそうな顔をして……」

 若干引き気味に、トーラスが声をかけてくる。

 そんなに真剣に悩んでたのか………

「いや、ちょっとくだらないことなんですけどね。

 欲しい物があって、買うかどうかちょっと考えちゃいまして……」

 俺は笑って誤魔化す。

「あー、あるね、そういうこと。まあ、悩んでも結局買っちゃうんだけどね。」

 まあ、トーラスの言うことも分かる。

悩んでも欲しい物は欲しいから、後の苦労を考えずに買ってしまうことなんてよくあることだ。

特に今回は、金が無いとかじゃないからな。

「あまり衝動買いは、勧められないわ。どうしても必要って事じゃないなら貯蓄すべきよ。」

 話を聞いていたのか、ベネットが口を挟んでくる。

「そうは言うけど、君だって防刃服を衝動買いしてたよね?」

「あれは、命に関わることだから例外よ。」

 トーラスの指摘に若干ベネットはたじろいでいる。

「まあ、命に関わるものじゃないし嗜好品を買うかどうか悩んでるんですよね。」

 俺がそういうとベネットの視線が俺の方へと吸い寄せられた。

美人に見られるのはちょっと苦手だ。

思わず視線をそらしてしまう。

「ね、ねえヒロシ。嗜好品ってどんな物なの?」

 遠慮がちにベネットが尋ねてきた。

 思い出してみると、たかが栄養補助食品程度で喜んでいた節もある。

 もしかして……

「いや、甘い飲み物なんですけど……」

 甘いという言葉にベネットの表情が変わる。

 あー、甘い物好きなんだな。

コーヒーとは別に何か買っておこうかな。

 結局、購入する方向で考えが傾いてしまった。

 意志が弱いなぁ………

「金銭的には問題ないんで買うことに決めました。まあ、大したものじゃないですしね。」

「そ、そう……それならそれでいいんじゃないかしら……」

 少し期待した視線を向けた後、恥ずかしそうにベネットは顔を背けた。

 なんか、仕草が可愛い。

きっと、お裾分けを期待して、そういうのははしたないと思ったんだろうな。

 さて何を買うかなぁ……


 やばいな。

思ってたよりも雪が道を荒らしている。

順調に思えた道行きも、ぬかるみに足を取られることが多くなってきた。

 この調子で街に着けるんだろうか?

 不安になって前方を見ると、グラスコーが手を挙げて馬車の速度を落とし始めた。

交代で御者をしていたので、今は俺が手綱を握っている。

ゆっくりと操作して俺は馬車の速度を落とした。

馬車からグラスコーが降りて、俺たちの方へ向かってくる。

「こりゃ、ちょっと野営が必要かもな。すまんが準備してくれるか?」

 まあ、このままだと準備もままならなくなって日が沈みそうだしな。

「分かりました。とりあえず、野営できる場所を探してみます。」

 トーラスに手綱を渡して、俺は馬車を降りた。

 見た感じ、まばらに木が生えている程度なのでどこでも良さそうに見えるが、雪で覆われている部分もあるから油断できない。

槍を取り出し、地面をつつきながら平坦な場所を探す。

 できれば、たき火の火が目立たない窪地が良いというのはハンスから教えて貰った知識だ。

そういえば、対人センサーを購入していたんだ。

 今回は、お試しで設置してみようかな?

 だとすると、木立がある方が良い。

 しばらく道の脇を歩いて丁度良い場所を見つけたので俺は馬車の方へと戻った。

「丁度良い場所がありました。案内しますんで付いてきてください。」

 馬車を先導して俺は目当ての場所まで馬車を誘導していった。


 対人センサーやLEDランタンを準備し、たき火の火を熾す。

 そうして、ようやくロバたちを馬車から開放することができる。

重い馬車を引かせているから、すっかり跡が付いてしまっている。

よくマッサージしてやらないと機嫌が悪くなるんだよな。

ここらへん、人間と一緒だからよくねぎらってやらないとな。

「ずいぶんと豪勢なもん持ってるじゃないか、ヒロシ。」

 LEDランタンを見ながら、グラスコーは感心したような声を上げた。

 しかし、豪勢?

 初めて見るって感じじゃないな?

「似たような物があるんですか?」

 飼い葉を与えながら、ロバのマッサージを続ける。

少し気持ちよさそうなのが、妙に可愛い。

 不細工だけど……

「あぁ、グローライトって呪文を込めたガラス玉が売っててな。金貨20枚くらいで売ってるんだ。」

 20万だと?

 どんだけぼったくってるんだ。

「まあ、20枚もするだけあって明かりの強さも自由自在だし、燃料いらずだから重宝されるんだ。」

 なるほど、それなりに性能が良いんだな。

「こっちは、電池って言う燃料が必要ですし、明かりも調節も強弱の二段階しかないんですよ。」

 まあ、その代わり値段は銀貨5枚程度なんだが。

燃料不要って言うのが、ずっと続くならランニングコストでいずれは逆転されるだろうけど、どっちが良いかは良し悪しだな。

「なるほどな……」

 どうやら興味津々らしい。

 まあ、あれも商品としては悪くないかもな。

比較対象がある分、値段で勝負って事になりそうだけど。

問題点としては電池の手に入れ辛さだろうな。

結構長持ちするとはいえ、長旅となればそれなりの本数が必要になる。

それに、そこら辺に捨てられたら困るからな。

 あー、そういうゴミの回収とかもサービス購入でお願いできないだろうか?

 できたら凄い便利なんだが……

 さすがに贅沢を言い過ぎか。

 とはいえ、サービスの項目は無数にあった。

商品もそうだが、いったいどんな物があるかというのは、完全に把握できては居ない。

 と言うか、多分俺のお粗末な記憶力じゃ覚えた端から忘れて把握するなんて一生かかっても無理だろうな。

都度、都合に合わせて検索をかけていくのが精一杯だ。

無いと思いこんで、諦めるのはもったいない。

後でメモしてちゃんと調べよう。

 そんな考え事をしながらロバたちの世話が終わる頃には日がすっかり傾いてしまっている。

テントはトーラスとベネットが準備してくれているし、夕飯もグラスコーが準備を進めていた。

なので、どうやら野営の準備は何とか終わってくれたようだ。

 一息ついて、俺はたき火の近くに腰を下す。

間に合わせとはいえ、鍋で煮えているジャガイモとソーセージはおいしそうだ。

思わず腹の虫が鳴いた。

「まだ出来てないぞ? もうちょっと煮込めば完成だから我慢しろよ?」

「分かってますよ。」

 くそう、人のことを食いしん坊キャラみたいに扱いやがって。

 でも腹が減ってるのも確かなんだよなぁ……

 地形を把握するようにトーラスが周辺を探索し、ベネットは武器の手入れを始めている。

俺も、確認しておこう。

 見る限り、使った槍に刃こぼれもないし砥石を当てる必要はなさそうだ。

接続部分も特に異常はない。

一端取り外して穂先を布で綺麗にした後、装着し直す。

柄の部分に巻かれた革を締め直した。

 トーラスが戻ってきて銃の整備を始めたので、俺とベネットは周囲の状況を聞き打ち合わせをする。

遮蔽になりそうな場所、当番の順序、連携の取り方。

 ある程度は、型にはまっているので再確認程度だが、地形によってもやり方は変化する。

体調だって影響するだろう。

そこら辺、上手くできているかは分からないが何もしないよりはマシだ。

 と思う……

 正直、俺は全くの専門外だから二人に教えて貰うのが精一杯だし、これで正解なのかも分からない。

 まあ、本職の傭兵になるつもりはないんだから足を引っぱらなければ充分だろう。

「おら、飯できたぞ?しかし、お前らよく話するようになったな。」

 呆れたような、それで居てどこか嬉しそうな感じでグラスコーが話に割り込んでくる。

 誰の腹の虫が鳴いたのかは分からないが、派手な音が鳴ったので全員が笑った。

「まあ、もうすぐ街だが気を抜かずに頼むぞ?」

 グラスコーは配膳を進めながら、俺たちに注意を促す。

確かにゴールが近づくと気が緩むもんな。

「分かりました。と言っても、ここらへんじゃ狼も滅多に会わない平気じゃないですか?」

 トーラスは緊張をほぐすように笑って応える。

 しかし、そんなに安全なのかな?

「逆に言えば、人の方が危険でしょ。追いはぎや盗賊の類……」

 ベネットは逆に注意喚起のためか、そんなことを口にする。

 すでに全員の配膳は終わっているのでベネットの言葉を聞きつつも、みな食事に手をつけ始めた。

「そんなに追いはぎってのは多いんですか?」

 俺の質問にどう答えた物かといった感じで3人は首をかしげる。

「そうだな。多いと言えば多いが、衛兵もいるからすぐに捕まる。遭遇するのは運が悪いときだな。」

 グラスコーは苦笑いを浮かべる。

あー、運が悪いことも結構あったんだろうな。

「上手く立ち回る連中もいるけど、そういうのは危険度が低いね。」

 トーラスの言葉からすれば、そういう連中は武装してる相手には手を出さないと言うことかな?

「時々、ゴブリンを手先に使ってるのはやっかいよ。おとりに使ったり身代わりにしたり………」

 あまり気持ちのいい話ではないのか、ベネットが吐き捨てるように呟く。

 まあ、気持ちは分からなくもない。

「言葉が分からないから、余計やっかいなんだよな。交渉の余地がない。

 でも、ヒロシは話せるみたいだからな。

 いざというときは命乞いを頼むぞ?」

 冗談のつもりでグラスコーは言ってるんだろうが……

「そういう事態は避けたいですけどね。」

 俺は苦笑いを浮かべて、ヨハンナの顔を思い出す。

出来れば、ゴブリンだからって問答無用に殺すような真似はしたくないな。

 感傷なのは分かってるけど………

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