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2-16 グロ耐性が高いわけじゃないのな。

ややグロテスクな描写がありますのでご注意ください。

と言っても戦闘関連ではなく、畜肉の解体場面なんですが……

 昼食後は護衛の二人と別れ俺はグラスコーと、ある店に立ち寄っていた。

いわゆる食肉を扱う店だ。

護衛の二人には今晩の宿を探して貰っている。

基本的に取引に護衛を連れて歩くのは不味いと言うことらしい。

なので俺も、チェインメイルは脱いで防刃パーカーと防刃ジーンズだけだ。

 久しぶりに防具を脱いでみると、あれがどれだけ着心地の悪いものだったかというのを再認識してしまう。

護衛の二人も寝るときは必ず脱いでいたし、決して好んできているわけではないようだった。

多分、危険がなければ見張りの時も脱いでいたいんだろうな。

 そういう意味で防刃機能付きの衣類って言うのは画期的だったんだろう。

 それでもブーツは脱がないのは、やっぱり文化の違いだろうか?

 雑魚寝の時に俺が靴を脱いでいるのを見て、大分驚かれた。

 まあ、いざという時に、靴ならともかくブーツをはき直すのは面倒というのもあるかもしれない。

それに、やはり頑丈なブーツって言うのは傭兵としては必須の装備かもしれないが普段履きには適してないんじゃない気がする。

機会があれば、二人にも靴を勧めてみようかな。

 まあ、それはそれとして、肉屋か……

 やっぱり匂いがきついし、清潔かと言われると微妙なところだよな。

スーパーでバイトしていたとき、鮮魚を扱っている場所より、意外と肉を扱っているところの方が匂いはきつかった。

冷房なんか無いこの世界じゃ余計に匂いがきつい。

 ちょっと気分が悪くなりそうだ。

「ここで良いのか?おい、ヒロシ、イノシシをその台の上に出してくれ。」

 グラスコーは店主と値段交渉をしていたが、現物を見ないと判断つかないよな。

俺は革袋がホールディングバッグであるように偽装しながら、イノシシを台の上にのせる。

 しかし、でかいイノシシだ。0.5tくらいある。

 そういえば、試したいことがあったんだよなぁ……

「ほう、こりゃほんとに新鮮なイノシシじゃないか。傷がそれなりにあるのと、血抜きしてないのが残念だがね。」

 店主のじいさんがしげしげとイノシシを観察している。

確かに血抜きをして、熱を取らないと駄目なんだっけ?

「ちょっと血抜きを試させて貰って良いですか?」

 俺の言葉にグラスコーと店主はいぶかしげな顔をしている。

 まあ、試してみたい事って言うのはコントロールウォーターで血抜きができないかって事なんだよね。

上手くいくかどうか、分からないから断られたら諦めよう。

「呪文で抜く気か? 面白そうだな。」

 グラスコーは面白そうに頷いている。

店主のじいさんは、疑わしそうな目で俺を見ているな。

 まあ魔法使いはやはり珍しい存在らしいから、いぶかしがられても当然だよな。

 でも止められないなら、試してみよう。

 今回は、血液を操ることを意識して、徐々に切り落とされた断面から引っ張り出すように呪文を操り始める。

じんわりと、頭が重くなる。

能力値を確かめてみると、やはり負担があるのか意志力の数値が減っている。

 でも、なんとか血は全部引き抜くのには支障がなさそうだ。

 たっぷりと引きだした血が、空中で球状になって浮く。

「血って利用価値ありますか?」

 このまま血の成分を引き抜いて水にすることも可能だけど、利用するつもりならもったいないよな。

「あ、あぁ、ソーセージにしたりするな。ちょっと桶を持ってくるから待っててくれ。」

 急いで店主は桶を取りに奥に引っ込んでいった。

 なんか自分でやっておいてなんだが、真っ赤な球体が湯気を上げながら漂うのは不思議な光景だな。

「しっかし、見事な呪文だ。さぞや凄い魔道師様なんですな?」

 店主が幾分恐縮したような声で言いながら、でかい桶を持ってきた。

俺は、それに血を移動させる。

「いや、こいつは俺の従業員だ。余芸みたいなもんだよ。」

 なんでお前が偉そうに言うかね、グラスコー。

事実だし構わないが、偉そうにするのはむかつく。

「まあ、商人としても、魔法使いとしてもまだまだ未熟者なので、お気になさらず。

 ついでに体の方も冷やしておきますか?」

 店主は驚いていたけれど、できるならよろしくというので10度位まで温度を下げておいた。

「で、どうだい? 2000ダールってところで手を打たないか?」

 20万か……

 俺の”鑑定”では15万と出ているから妥当なんだろうか?

 まあ、これを捌いて小売りできる状態にするとなれば色々と大変だろうし、拾いものみたいなもんだしな。

「うーん、まあここまでサービスされたなら、その値段で引き取るよ。証書でいいかい?」

 もちろんと頷きながらグラスコーは応じていた。

 証書って事は、為替取引があるんだな。

 おそらくギルドが保証してくれるんだろうが、こういう取引って俺全く分からないんだよなぁ……

 ギルドに加盟している者同士だから成り立つ取引なんだろうか?

 とりあえず、俺は帳簿を取り出して記入の仕方を知るために、為替での取引内容を探してみる。

「見つかったか?」

 グラスコーは、帳簿をのぞき込み、俺に尋ねてきた。

「こういう書き方で良いんですかね?」

 俺が指さしてみた項目で間違いがないのか、グラスコーは頷いた。

 店主が証書を持ってきたので、グラスコーはそれを受け取る。

一応俺にも見せてくれたが、眉をひそめて金額とにらめっこするくらいしかできなかった。

 まあ、ともかく取引内容を見よう見まねで書き込もう。

「なるほど、商人としちゃ確かに駆け出しだねぇ……」

 店主は微笑ましいものでも見るような顔をしている。

 その後ろでは、職人達が早速解体を始めていた。

 うげぇ……さっさと退散したいな……

 いや、良い機会だからじっくり見ておくか。

血抜きは済んでるし、言うほどグロテスクでもない。

 しかし自分でも槍を敵に突き立てたりもしたわけだが、皮をはぐときは思わず身震いしてしまった。

ナイフで切れ込みを入れて、少し剥いだら職人が3人がかりで引っぱる。

するとずるんと皮がむけて、むき出しの筋肉が見えた。

頭がない分、まだましとはいえ気持ち悪さは若干残る。

「お前よく見てられるな。俺はああいうのは苦手だ……そろそろ行くぞ?……」

 辟易した顔でグラスコーは店を出て行く。

俺もあわてて後に続いた。

 いや、別に俺もずっと見ていたいわけでもない。

 しかし、意外だな。

 こういう場面は、こっちの世界の人間なら慣れっこなのかと思ってたんだが……

 とりあえず食肉を扱う店を後にして、俺たちは再び関所へと戻った。

武器や防具、それらの補修剤の他に塩や香辛料なんかも取引する。

 驚いたのは、関所のような王国に属する組織との売買は、全部信用取引だと言うことだ。

書記官の発行する証書を渡され、それを年末にギルドに引き渡すことで現金になるらしい。

 それと、塩と胡椒、砂糖は国の専売品だと知った。

これらの専売品は、ほとんど儲けにならない。

許可を受けた商人しか専売所で購入できず、その値段も一定だし販売価格も定められている。

一応、ギルドの年会費に関係しないので損にはならないらしいが、美味しい商品というわけにはいかない。

 もちろん闇で取引されるケースもあるらしいが、捕まると縛り首らしい。

「まあ、生産地だと割と普通に横行してるけどな。その分見せしめも結構ある。」

 グラスコーは何気なく言ってるが、俺は冷や汗もんだ。

何も知らずに街の近くで転移してたら、間違いなく胡椒の販売は試してみてたろう。

下手したら、即縛り首だったかもしれない。

「他にも専売品ってあるんですか?」

 よく分からない物を取り扱って捕まったらしゃれにならない。

「そうだなぁ。火薬も不味い。銃そのものも許可無く販売は難しいな。他の武器は割と緩いが、領主が取り締まってる土地もある。

 まあ、そういうときは大抵門番から注意を受けるな。

 あとは、秘石/エルドライトも専売品だ。こっちは購入すら制限があったりする。」

 そういうと、グラスコーはウェストポーチから鈍く光る緑色の石を取り出した。

 見た目はあまり綺麗ではないが、宝石の類だろうか?

 俺はまじまじと観察するが、なんに使うものかさっぱり分からない。

名前から推測すると、エルドリッチ、秘術系統の魔術に関連するような気もする。

「遺跡なんかで手にはいる代物でな。スカベンジャーの主な収入源だ。

 値段はこれ1個で金貨2枚だ。売値がそれで、買い取りは5割、卸値は9割の銀貨18枚、儲けが出せるのは銀貨2枚。

 まあ、あんまり美味しい商売じゃねえな。」

 まあ、美味しい商売じゃないのは確かだろうな。

4割が税金と考えると、かなり強気な値段設定な気もする。

 それだけ消費するものって事なんだろうか?

「それ、なんに使うんですか?」

「さあねぇ……マジックアイテムの材料になるくらいしか分からん……」

 グラスコーも専門がないなのか、どこかなげやりだ。

 しかし、マジックアイテムの材料か。

それなら、強気な理由も分からなくもない。

1つのアイテムにどれくらい消費するのかは分からないが、マジックアイテムの効果や値段を考えれば、多少高値でも売れる。

 逆に言えばマジックアイテムを好き勝手に作られても困るわけだ。それは専売になるな。

 しかし、この秘石どうやって入手するんだろうか?

モンスターの体内にあるとかなら、オーガの死体を埋葬したりしないよな。

「まあ、詳しくはベネットにでも聞いてくれ。俺は専門外だからさっぱりだ。」

 丁度、護衛の二人と待ち合わせていた広場にたどり着くと、グラスコーはベネットを指さしながら言う。

確かに知っていそうな人間に聞くべきだよな。

宿屋の算段が付いているなら、夕飯時にでもゆっくり聞こう。

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