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15-14 ダンジョンのお掃除。

腕試しにはちょうどいいイベントですね。

 遺跡の間引きに関しては、腕試しの場みたいな雰囲気になり、スカベンジャーだけじゃなくカレル戦士団や他の傭兵団の人間も参加希望を出してきた。おかげで、まるでお祭りみたいな雰囲気だ。

 遺跡前に並んでいる行商人たちは嬉しそうにものを売りつけ、珍しいものを手に入れた傭兵たちも遺跡で使ってみようとかはしゃいでいる。

 うちの商会の新人たちもてんやわんやしながらも、一生懸命に販売にいそしんでいた。なんか、新人は遺跡で物を売るのが定番の研修みたいになってるのはなんでなんだろうな。


 で、俺も何故か間引きに参加することになってしまっていた。


 メンバーは俺、ベネット、トーラス、そしてミリーが先導してくれるという話で落ち着いている。他にもハルト、カイネ、ジョシュ、テリーのグループが出来てたりするんだが。

 何故こうなった。

「とりあえず、ゲート潰すのは明日だっけ? 確か、上位5チームで5か所潰すってことなんだよね?」

 何故か、倒したモンスターの数で競い合う形になってしまっている。間引きをするという目標からすれば、理にかなった方法ではあるんだが。

 ミリーは、それを何故か嬉しそうに聞いてきた。

「いや、俺たちは適当にお茶を濁すからな? 危険そうなグループがあれば助けに入る。その程度に留めるって約束だろう?」

 ハルトはどうやら本気で挑むらしいけど、俺達まで本気を出して張り合ってもしょうがない。遺跡を適度に保つための措置なんだから、本気で潰しにかかっちゃまずいだろう。

「分かってるって、たまたま上位に入っちゃうかもしれないけどねぇ。」

 大丈夫だろうか?

 これだけの人数が集まれば、それなりの猛者もいるだろうし、たまたまで上位に入るなんてことは無いだろうけど。わざわざ俺が参加して上位に食い込みましたって、出来レースとか言われそうだよな。

「大丈夫だよ、ヒロシ。数を稼いで上位に行かなければいいんだから、下層に率先して向かえば必然的に数は減るでしょ?」

 ベネットはベネットで怖いこと言ってるな。下層をまっしぐらに目指すってことは強敵と鉢合わせる可能性が高いってことでもある。そういう栄誉は、出来れば他のグループに譲りたいところなんだけどなぁ。

「苦労するね、ヒロシ。」

 トーラスは何故このメンバーに入ってくれたんだろうか?

 ちょっと、うんざり気味なところを見ると、俺と同じようにできればひっそりとしておきたいはずだろうにな。なんか、無理やり付き合わされてる感じがすごいする。

 

 トーラスが使うライフルについては、すでに有名になっているので使わないという選択肢はない。逆に俺がよく愛用していたショットガンは使わないことにしておいた。

 閉所でこそ威力を発揮する武器ではあるけれど、これを欲しがる人間は大量に発生するはずだからだ。いちいちそれに応える義理はないけれど、わざわざ目立たせる必要もないしな。

「だんだん悪魔が混じってきだしたね。バホメットが普通に混じってきててきついわ。」

 ミリーが疲れたようにため息をつく。そろそろ最下層につきそうなくらいだ。

 そりゃ、当然高レベルの悪魔も混じってくるだろう。脳喰らいと一緒に出てきたのは肝が冷えた。

 と言っても先制を取れているならトーラスのライフルで華奢な脳喰らいは簡単に仕留められるし、脳喰らいが支配下に置いているキマイラの変異種も俺とベネットが相手をすれば、無傷とは言わないまでも安定して相手にできる。

 そのうえ、ミリーの勘の良さを考えれば先制を取れないということは殆どない。最後に残ったバホメットも余裕さえ生まれれば、相手をするのは簡単だった。

「前に戦ったことがあったけど、こんなに弱かったかしら?」

 断ち切った、バホメットの首をベネットが持ち上げて小首をかしげる。

「弱い相手じゃないでしょ。ベネットの胸甲、深めの傷がついてるし。」

 ミスリルで作られた鎧に深い痕が残っている。下に防刃服やチェインシャツもあるとはいえ、ここまで傷つけられると不安になる。

「ヒロシなんかは、キマイラに圧し掛かられてたもんね。」

 相手も距離を取られると不利と見て組み付きにくるとか、なかなか頭を使ってくる。

 結局、何とか首の一つを押さえている間にミリーがとどめを刺してくれたからよかったけど、あのままじゃれ合ってたら危なかった。

「意外と弾の減りが速いよ。そろそろ切り上げ時じゃない?」

 トーラスがそう言うと、少し不満気だけれどベネットも頷いた。

「ちょっと暴れたりない気もするけど、こんなものかな。」

 なんかストレスでも抱えてらっしゃいますか、奥様?

「ヒロシ、何かやらかした?」

 ミリーがからかうようにわざと大きな声で、耳打ちしてくる。

「ちが! そういうわけじゃなくて!! んー、なんだか周りがお淑やかみたいな評判ばっかりで気持ちが落ち着かないの。

 私はまだまだ現役だからね?」

 ベネットが慌てて手を振りながら、わけのわからないことを言う。現役って言われてもなぁ。あなたの立場は、男爵夫人のはずなんだけども?

「はいはい、騒いでたらおかわり来たよ? 帰り道もこんなに騒いでいくんだから、腕試しはその時にしようね。」

 ミリーが何かに気づいたのか、戦闘準備を促してきた。間引きが目的とはいえ、ちょっと派手にやりすぎだよなぁ。

 

 まさか地下で龍人と鉢合わせになるとはな。ラウレーネの下にいる龍人とは何度も顔を合わせているし、話も何度もしている。

 皆気さくで、優しい人たちだ。

 でも、そのイメージを根底から覆すくらい、相手にした龍人は狂暴だった。あるいはダンジョンで呼び寄せられたからかもしれないが、こちらが話し合えるかと声をかけた時点で武器を振り上げて襲い掛かってきた。

 銃弾をものともせずに突進してくるし、死ぬまで意味の分からない叫び声で威嚇し続けるし。

 

 ちょっと精神的にきつい。

 

 狭い通路なので翼を広げて飛ぶこともできないし、ブレスについても色の知識のある俺からすれば適切な防御呪文を用意することはたやすいけれど。流石に見慣れた相手と似た姿の相手というのは、気持ちのいいものじゃないな。

 その後は特に目立った戦闘は起こらず、せいぜいが他のグループの救援をする程度にとどまった。地上に戻り討伐数を報告し、俺はげんなりした気持ちで用意された天幕の中の椅子に腰かける。

「ヒロシ、あんまり気にしない方がいいよ? ラウレーネ様の所の人たちとは別物だって思った方がいいよ。」

 使用人たちに鎧を脱がされながら、ベネットは苦笑いを浮かべている。

「いや、分かってはいるんだけどね。」

 俺にも使用人たちが取り付いて、鎧を外し、汚れを落としていく。

「そんなに違うんだ? てっきり、みんなあんな感じなのかと思った。」

 ミリーはすでに鎧を脱ぎ終わり、テーブルに置かれたお菓子を頬張りながら暢気に椅子を揺らしている。

「僕も一度か二度しかあってないけど、あんな狂暴な感じではなかったかな。鱗の色が黒かったから、色彩竜の配下はみんなあんな感じなのかも。」

 トーラスの指摘は正しくて、あの龍人達は黒竜の配下だ。

 でも、あんな理性のない感じになるもんなのかな。

「ふーん、この中じゃ私だけあってないんだぁ。なんかのけ者にされた気分だなぁ。」

 なんでそんなことで拗ねるかなぁ。

「今度ラウレーネに会う時には、ミリーも連れてくよ。それでいいだろ?」

 そういうとミリーはそっぽを向く。

「別に拗ねてないもん。でも、どうしても連れて行きたいなら連れてってよ。」

 現金な奴だなぁ。

 

 遺跡の間引きに関しては、大きな波乱もなく終了した。

 もちろん戦闘を伴うのだから、皆が無傷というわけにもいかない。結果として、死者が数名出てしまうし、スカベンジャー家業を引退せざるを得なくなるような怪我を負ったものもそれなりに出る。

 そこは覚悟の上で参加したのだから甘んじて受け入れてもらうしかないだろう。当然ながら障害が残った者にも出来る仕事の斡旋や残された家族に対する当面の補償などは行う。

 普段であれば宿屋の組合でそこら辺の救済を行い、それ等にかかる費用を援助金という形で税金を投入している。今回については、うちが主導した間引きなのだから斡旋や保護については直接行わせてもらう予定だ。

 とはいえ、失われた命は戻ってこない。

 とりあえず、上位グループのゲート破壊が行われる最中に犠牲者の追悼式を行った。しめやかにという雰囲気ではないのは、まあ覚悟の上でというのもあるんだろうな。


 ちなみに、今回の1位はハルトたちのグループだ。


 メンバーを考えればさもありなんという感じではあるけれど、周りの反応は意外そうなのが面白い。ジョシュがあまり目立った存在ではなかったし、ハルトもおちゃらけた俺の友人みたいな見方をされていたらしく、実力者はテリーくらいだと判断されていたようだ。

 実際には、ジョシュの腕も上がっているし、ハルトの探索があれば群れを探知するのはたやすい。

 数をこなす勝負となれば、当然ながら有利に決まっている。

 ゲートの破壊についてはものの数時間で終了し、上位グループすべてで特に大きな怪我もなかった。ハルトたちが結構な戦利品を持ち帰ると遺跡周りにいる人々は大きな歓声を上げて、盛大に出迎える。

 いや、本当にお祭りみたいだな。

「そんなに渋い顔しないの。こういう生き方もあるんだって受け入れないと。」

 ベネットに言われるまで自覚がなかったけれど、そんなに渋い顔をしてただろうか?

 いや、特別な感慨なんかないんだけどな。

「ジョシュ君が死んだら、レイナさんに呪い殺されそうだと思って怯えてただけだよ。無事でほっとしてる。」

 そんなことを言うと、ベネットが笑う。

「そうだね。」

 そう言いながら、彼女は俺の手を握る。俺は、平気だよと示すように彼女の手を軽く叩く。

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