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2-10 白い部屋ね。

 いわゆる説明回という奴。

白い部屋と言えば高位の存在が出てきて、色々と設定を語ってくれる。

神様を名乗ることもあれば、システム管理者という場合もある。

特殊能力のレベルアップの時にも、そんなイベントが起きるんじゃないかと心のどこかで警戒していた。

 そして、今回は戦闘でのレベルアップだ。

 おそらく、このレベルアップは、俺の知るゲームで照らし合わせるならキャラクターとしてのレベルアップだ。

 つまり戦闘能力が上がったことを示している。

 だから、特殊能力のレベルアップでなかったなら、このタイミングだろうとは思っていた。

「うるさいな君は……」

 思考読むタイプなのかな?

 まあ、それはともかく、目の前に女がいた。

 いつからそこにいたのかは、分からない。

最初からいたのかもしれないし、今もいないのかもしれない。

姿形は黒い服をまとい、長い髪を垂らしている。

年の頃は20歳前後、プロポーションがあらわになる服なので、それなりに立派な肢体をしている。

 うん、美人だ。

冷たい感じがするが、美人だ。

「そうやって、色々頭の中で考えて攪乱するつもりかな?」

 呆れたような仕草をされたが、まあそういう意図がないでもない。

ただ、さすがに面倒なのでしゃべろう。

「何か、ご用ですか?」

 また呆れられた。

「用があるのは君じゃないのかな?聞きたいことはいっぱいあるだろう?」

 芝居がかった仕草だけど、まあ俺の想像しているような存在なら予想よりも落ち着いてるな。

「いや、そもそも思考を読んでいただけるようですし、わざわざしゃべらなくても良いかと思いまして……」

 実際、聞きたくても応えてくれるとも限らない。

ならしゃべるだけ無駄だよな。

「君は、ずいぶんと不遜だね。」

 こりゃまた失礼。

 困ったな。

考え事も敬語で考えないといけないんでしょうかね。

「無礼を働くつもりはありません。」

 なんか難しい顔をされてしまった。

「やめやめ!!もう心は読まないから考え事は好きにして!!」

 左様で……

「ここ最近、異世界人は生意気になりすぎだよ。全く……」

 憤慨されても困るんだよなぁ。

こっちだってどんな相手か気にはなっていたけど、こんなになれ、いや、フランクに話しかけられるとは思ってなかった。

「お気に障ったようで申し訳ありません。」

 頭を垂れて、謝罪する。

「まあ、まだ君は表面だけでも取り繕ってくれるからマシかな。」

 マシねぇ。他の奴らはなにやらかした? おかげで後続が苦労するんだよ。勘弁してくれ。

「同郷の者が失礼をしたようで、心苦しく存じます。」

 あれ?思うって存じますで良いんだよな?

悩んでも敬語が身につくわけでもないし、もう手遅れだな。

おかしかったら謝ろう。

「まあ、異世界人が君の同郷ばかりとは限らないけどね。」

 口角が上がったって事はセーフかな。

まあ、気に触れないなら良かった良かった。

 しかし、同郷の者ばかりじゃないね。

つまりパラレルワールドって理解で良いんだろうかね。

それとも単に日本出身者ばかりじゃないと言うことなのか……

「それよりも質問しなくて良いの?」

 考え事をしてたら、不思議そうに聞かれてしまった。

「発言をお許しいただけるようで、望外の喜びです。

 お時間を割いていただくこと、誠に感謝申し上げます。

 お許しいただける時間がどれほどか、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

まあ、どれだけ時間を貰っても俺が理解できるとは限らないんですけどね。

「もっと簡潔に……さすがに面倒くさい……」

 持って回った言い回しはお嫌いなようで……

「失礼いたしました。」

 何が地雷なのか、よくわかんねえなぁ。

「まあ、時間は有り余ってるわけでもないから君が目を覚ますまでには退散するよ。見ているのは君だけじゃないし。」

 あー、はいはい、その他大勢の中の一人ね。

なんかやさぐれた気分になってしまう。

「では、御名をお伺いしてもよろしいですか?」

 俺の質問にようやくまともな質問だと満足したのか笑ってる。

「想像はしてるんじゃないかな?」

 いや、だから答えを聞きたいんですがねぇ。この小者臭がする奴がまさかロキ本人じゃないよな?

「申し訳ございません。不遜な想像を口にするのは憚られます。」

 俺の言葉に”仕方ないなぁ”といった調子で女は頷く。

「ロキ様に仕えし者、モーラよ。ロキ様の信頼も厚く、優れた使徒である私と話せるなんて、滅多にない事よ。

 ありがたく頭を下げない。」

 おう、なんかそれらしいポーズをとるとそれなりに威厳があるようにも思える。

でも、モーラって吸血鬼の名前じゃなかったっけ?

個人名ではなかったような気がする。

 まあ、良い、片膝をついて頭を垂れましょう。

つっても別に尊敬したり、服従するつもりもないから立ち上がりはしないまでも、さっさと頭上げるけどな。

「あぁ……ようやく……ようやくまともな礼儀を知った者が現れた!!

 見ていてくれていますかロキ様!!モーラはやりましたよ!!」

 うわー……大丈夫か、この子……

 何もない方向に向かってガッツポーズって……

「モーラって吸血鬼だろとか、小者臭がするとか、ガキとかさんざんでしたが、これが実力です!!」

 こんな事を人前でやってるから、小者言われるんじゃないですかねぇ。

美人が台無しだわ。

 そこで、ようやく俺の視線に気づいたのか、はっとしてこっちを見る。

「何を見てるの!忘れて!!」

「御意に……」

 全く都合の良いことで……

まあ、それでも今までのことがロキ、さらには、このモーラが関わってくるなら下手に刺激はしたくない。

気まぐれで現実に戻しますとかやられたら泣きたくなってくる。

「しかし、そんなご高名のモーラ様が何故、私の前に?」

 その他大勢のうちの一人ごときに、わざわざ顔を出すって事は何か条件はあるはずだよな。

「良い質問だね。まず、君ごときが私と話せる機会などさほど多くない。」

 でしょうね。

「大半の者が、ろくに活躍もしないうちに自滅することが大半なんだ。

 故に、一定の基準を設けて会うことにしている。」

 まあ、レベルアップなんだろうけど。

条件としては緩すぎな気もする。

血の気の多い奴だったら結構、簡単にレベルアップするんじゃないかな?

「なんか、気づいちゃってるみたいだけど、大抵レベルアップするまでに死ぬのが多いのよ。」

 妙にフランクにしゃべるなぁ。

勘弁して欲しい。

「そんなに異世界人とは脆弱なのでしょうか?」

 俺の言葉にモーラは首を横に振る。

「そんなことはない。結構な力を与えてこっちに呼んでるからね。

 でも、なんか武器もないのにすぐ争ったり、逆に逃げまどって死んじゃうのが多いのよ。

 錯乱するのも分かるけど、無様すぎない?」

 いや、まあ、普通の神経してたらそりゃね。

「失礼ですが、私のようにろくな能力も持たない者ならば、それが普通かと……

 中には判断力に優れた者もいるのでは?」

 わざわざ俺みたいな雑魚を呼ぶ必要性なんか無いよな。

 まあ、理由があるんだろうけど……

「優秀な人間を呼びたいのは山々なんだけれどね。

 そういう人間は世界との結びつきが強いの。

 誰かに愛されてる、必要とされている人間をおいそれとは呼び込めない。」

 つまり、リア充は対象じゃないって事ね。

「それはまた……ご苦労されているようで……

 では、そんな愚にも付かない輩を呼び込まれて何をなさろうとしておいでなのでしょう?」

 まあ、ろくでもないことだってのは、ロキの名前を聞いた時点で想像できる。

 もっとも、そのろくでもないことがなんなのかはさっぱりだが……

「簡単な事よ。世界をぐっちゃぐっちゃのメッタメタにして欲しいの。」

 なんか、想像よりも安直な表現だな。

 まあ、このモーラの言葉がロキの考え全てではないだろうから、鵜呑みにはできない。

「この世界は、神々の楽園なのよ。

 あなたたちがケルトや北欧、ギリシャと言ったそれぞれの地域で信仰されていた神々がここにはいるわ。

 残念ながら、物質界に介入できる神は減ってはいるけどね。

 それでも、神々の力を顕現できる世界は貴重なの。」

 うーん、よく分からん。

それがなんで世界をぐちゃぐちゃにしろと言う話と繋がるんだ?

「そんな貴重な世界で、それでも神の力は薄れつつある。それは何故か分かる?」

 分かったら苦労しないわ。

不思議なものが失われるからか?

いや、そもそも、そんな理屈だとはじめの時点で神という存在自体がおかしい。

「それは素敵で素晴らしいロキ様に世界が支配されてないからよ!!」

 あ、はい。

「世界は必ず神を統一していくわ。それぞれの権能は徐々に奪われ、力を失い神は精霊へと落とされる。

 この世界でロキ様は多くの権能を奪われたわ。

 それも仲間であったはずのアースガルドの神々に!!

 こんな世界間違っている!!」

 なにこの子、怖い。

 ロキは、そこまで考えてるのかな? この子が一人で暴走してない?

「そこで……あなたたち異世界人の出番というわけよ……」

 モーラちゃん、顔近い。

俺は引き攣った笑いを浮かべてしまう。

「この世界には、それぞれの権能を能力にして人間に授けるの。

 もちろん、その神を崇める信徒にね。

 でも……今のロキ様に、信徒はいない……権能を能力に変えるほどの力もなくしてしまっている……

 力は奪われる一方!!可哀想なロキ様!!」

 涙をはらはら流す姿は可憐に見えるけど、信仰してる神様はロキなんだよなぁ。

「そこで、ロキ様は一計を案じられたの……能力を授けることもままならず、信徒も増やせない……

 なら、どうするか。」

 今度は、まるで楽しいいたずらを思いついたような笑顔が張り付く。

ころころと表情を変えるあたりに狂気を感じる。

「盗んじゃえばいいじゃない……」

 得意満面の笑みで言う言葉じゃないな。

 いや、まあ確かにロキと言えば盗みだけども……

「まあ、そういうわけで手当たり次第に能力を盗んでは、適当な奴にぶち込んで放流しているというわけよ。」

「な、なるほど……」

 どこまでがロキの考えで、どこからがこのモーラの妄想かは分からない。

だが結構、納得のいく説明だ。

「だから、好き勝手に暴れて欲しいの。欲望のままに世界を壊してロキ様の手に……この世界を……」

 うっとりとした表情で、虚空に手を伸ばす。

ちょっと芝居がかりすぎていて、滑稽にも見えるが本人は真剣なんだろうな。

「きっと、この世界でなら上手くいく……」

 つまり、別の世界では失敗してるのね。

 しかし、こうなってくると俺の能力ので元はどこなんだろう?

下手をすれば、その神の信徒と事を構える可能性がある。

 ギリシャ神話の神もいるらしいから、ヘルメスだったりするんだろうか?

むしろ、ロキを信仰するくらいならヘルメスを信仰したいです。

心読まれてたらこの時点で殺されそうだな。

心臓がばくばくいってる。

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