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14-5 色々と確かめないと。

今のおむつって格段に進化してますよね。

 ベネットが俺のために冷たい麦茶を用意してくれた。血液を失っているんだから、当然水分補給は必要だ。

 喉も乾いていたので、大変助かる。

「それで、何か変な力を貰ったみたいだけど。」

 ベネットは聞いていいのか悪いのかと悩んでいたようだけど、別に隠し事をするような能力じゃない。

 いや、ある意味で強力ではあるんだけど。説明がなんとも難しい。

「血を捧げることで、大体8mくらいかな。

 そのくらいまで攻撃範囲を広げることができるようになったよ。

 で、その攻撃で血を流させたなら、それを回収して回復や防壁に使えるようになる。」

 そのうえ、通常の防具や盾では防ぐことができないから、前にハンスに聞いた魔王みたいな攻撃が繰り出せるようになったわけだ。

 確かに強い。

 だけど、これ、攻撃対象を選べないんだよなぁ。

 使い勝手が悪い。

 範囲も8mだから中途半端だし。とはいえ、加害範囲が20mとかに伸びれば、それはそれで面倒か。

 いや、突きなら狙った相手に限定できるかもしれない。

 ベネットは微妙な表情を浮かべる。まあ、分からないでもない。俺が使う機会なんかめったにないからな。

「モーラ様って、ヒロシのことちゃんと見てるのかな? そんな技を教えられても使うところないよね?」

 ベネットの言葉に俺は頷く。まさしく、宝の持ち腐れだ。

「まあ、血を集めるという事を考えれば便利かもね。使うのは家畜相手になりそうだけど。」

 突きで使うなら、屠殺した後の畜肉から血抜きがてらにこの技を使うという方法もあるかもしれない。

 いい加減な使い方だよなぁ。おそらく、モーラ様の想定としてはこれでダンジョンや森に入って血で血を洗う戦いを繰り広げろって意味なんだろうけど。

 正直、それなら俺は献血する。

 捧げないといけない量を賄うにはそれなりに負担はあるけれど、出来ない量じゃないしな。

 それに家畜じゃ駄目とも言われていない。

 幸いなことにミリーが育ててくれている牛や羊なんかは結構いるから、捧げろと言われれば結構な量を捧げることができるだろう。

「いいの? 家畜の血なんか捧げちゃって。」

 ちょっと心配そうにベネットが尋ねてくる。

「駄目とは言われてないけれど……」

 まあ、一応俺も献血したうえで捧げてみよう。文句を言われたら、その時に対処するつもりだ。

 しかし祭壇なぁ。

「祭壇を設けるなら城内かな。どういうものを用意すればいいかとか分かる?」

 そもそも、モーラという神様は碌に伝承が残っていない。一応、方々に散らばる伝承を集めてみても、血を啜る神だという情報しか出てこない。

 いや、一つ手段が残されていたな。

「一般的な祭壇については分かるけれど、モーラ様ってかなり特殊な神様だよね?

 とりあえず、神像を用意しないと。」

 ベネットの言うとおり、神像は必要だろう。祠や外観なんかも一般的な形で問題ないはずだ。

「ちょっと俺も調べてみるよ。まずは呪文からかなぁ。」

 流石に呪文の準備ができていない。

 《伝承知識》の呪文は通常の手段では手に入れることができない知識を得るために使える強力な呪文ではあるけれど、代償が必要な呪文でもある。

 秘匿状況によっては莫大な秘石を必要とするし、場合によれば能力値へダメージを受ける場合もある。一時ダメージじゃない。きっちり能力値が落ちる。

 呪文で癒せるとは言っても、やはり見逃せるほどの代償じゃない。その上で、必ずしも答えが返ってくるわけでもないのが厄介だ。

 でも、おそらく今回はそれほどの代償はいらない気がするんだよな。

 何せ縁が深い神様のことだ。それなりの代償で済むんじゃないかと期待している。

 

 《伝承知識》を準備し、代償となるであろう秘石をそれなりの量で準備した。

 庭で魔法陣を描き、呪文を唱えた。紋様を描き、必要としている情報のことを思い浮かべる。

 対象はモーラ様に血を捧げるための祭壇だ。

 呪文を完成させると秘石が消費されていく。幸い、能力値ダメージは受けない。

 分かったのは血を受けるための杯、モーラ様を表す紋章、そして神像の目にルビーを埋め込まなければいけないこと。それらを用意すれば、あとは自由にしていいみたいだ。

 しかし、結構身構えていたけど代償がさほど多くなくて助かった。出来れば事前にどれくらいの代償が必要か分かればなぁ。なかなか怖くて使いづらい。

「よくやるねぇ。《伝承知識》なんかおっかなくて、私は使いたくないけどね。」

 レイナがため息を漏らす。

「おっかないって言うのはなんでですか?」

 そりゃ、能力値ダメージを受けたりもする可能性もあるから、決して楽な代償ではないけれど。それを踏まえたにしてもレイナの言い方は若干引っかかる。

「秘められた知識って言うのには、それなりの危険があるってことだよ。場合によれば、秘密を守る悪魔や天使がやってくることだって考えられるしね。

 知ること、そのものが危険だってこともありうるよ?」

 なるほど、それで俺のそばに控えていてくれたわけか。能力値ダメージを受けて、使いものにならなくなったところに襲撃を受ければひとたまりもないだろう。

 それに、その知識の守護者が素直に帰ってくれるとも限らないしな。レイナの隣でベネットは眉をひそめている。

 そんな呪文を使ったのかと怒っているのかな?

「次はちゃんと備えてから使いますよ。できれば事前に教えておいてください。」

 そういうとレイナは肩をすくめた。

「いや、ベネちゃんもそばについているし、覚悟の上なのかなと思ってたからさ。

 それよりなんで馬場なの?」

 広い場所にしたのは、魔法陣を描くためだ。それと、ベネットとの約束を果たすためでもある。

「ベネットがいるのは別の理由ですよ。本来は護衛を頼むつもりで連れてきたんじゃないんです。」

 むしろ、レイナがついてきたことの方が不思議だった。事前に《伝承知識》の呪文を使うことを教えていたから、警戒してたのはさっきの会話からわかったけども。

 レイナは少し不思議そうに首をかしげた。俺とベネットとのやり取りを知らないレイナにしてみれば、意味は分からないのも当然だ。

「ヒロシが、私の馬に《加速》をかけてくれるって約束してたんです。ただ、ちょっと興が削がれましたけど。」

 レイナはベネットの愛馬であるグラネがいる理由をそこでようやく理解できたようだ。

「あー、そうだったんだ。なるほどね。ごめん、デートのついでだったんだ。」

 デートって……

 いやまあ、そういう側面が無いこともないけど。

「お邪魔しちゃったね。帰るわ。」

 そそくさとレイナは馬場を後にした。

「今日はやめておく?」

 そう尋ねるとベネットは首を横に振る。

「考えてみれば、ヒロシが悪いわけじゃないものね。それに、実際には何も起きなかったんだし。

 グラネも走りたがってるから。」

 そういいながら、ベネットはグラネの鼻先を撫でる。

「分かった。じゃあ、準備をして。軽く流したら、呪文をかけるよ。」

 そういうとベネットは頷いて、グラネにまたがる。

 

 やはり馬に乗るベネットは美しい。

 加速をかけたグラネに振り回されることなく、美しいフォームで馬場を駆け巡る。つくづく思うけれど、ベネットには何か隠された能力でもあるんじゃないだろうか?

 馬を操ることもそうだけれど、車の運転もうまいしスノーモービルなんかも一番操縦が上手い。自転車なんかも、その場で制止できたりするしな。

 それは体幹が優れているという事で運転技術とは関係ないけれど。

 グラスコーなんかも、運転が上手いとは感じていたけれど、ベネットは別格だ。何かレースでもあれば、間違いなく上位に入賞できる腕前なんじゃないだろうか?

 しかも乗り物を選ばない。

 初めて乗る乗り物にも、最初こそ手探りだけれどすぐにコツをつかんで上手に乗りこなし始める。もしかしたら、飛行機なんかも操縦できるんじゃないだろうか?

 少し考えてみたけれど、じゃあ買ってみようと考えるにはちょっとハードルが高い。値段もさることながら、危険性が高い。ジェット機なんか、空を飛ぶ爆発物だからな。

 何かトラブルがあってからじゃ、取り返しがつかない。

 いや、まあ、それを何とかする手段がないとも言い切れないけれど、だからと言ってお試しにとなるほどには安くはない。今のところ、必要性も感じないしなぁ。

 あー、ハンググライダー当たりだったら試してみてもいいかもなぁ。もちろん、あくまでもそれをベネットが乗ってみたいかどうかというのが大事だけれども。

「ヒロシヒロシ、なんかヨハンナが泣きやまないんだけど?」

 慌てた様子でミリーがヨハンナを抱えてやってくる。むずがっている様子からするとおむつかな?

 俺は、念のために”鑑定”をする。

 ヨハンナが不快感を抱いていることから間違いはなさそうだな。

「おむつを交換しないと。ちょっと手伝ってくれるか?」

 そう言って、俺はテーブルを取り出してぐらつかないように地面を均す。

「おむつか。ごめんね、気づかなくて。」

 ミリーはそう言って、テーブルの上にヨハンナを横たわらせる。

「とりあえず、これ持ってて。」

 紙おむつとビニール袋を取り出してミリーに手渡す。

 そして、ヨハンナの服を脱がせて汚れたおむつを外し、暖かくした濡れタオルを準備してお尻の汚れを拭っていく。

「ミリー、ビニール袋を広げてくれるか?」

 そういうとミリーはビニールの口を広げてくれた。

 そこにタオルと紙おむつを入れる。

 あとは紙おむつを履かせるだけだ。ミリーはビニールの口を縛ると、紙おむつを渡してくれた。

「ありがとう。」

 慣れてないから手際よくとはいかないけれど、何とかおむつを交換できた。ヨハンナは機嫌を直したのか、嬉しそうに笑う。

「可愛い。」

 ミリーは赤ん坊が好きなんだな。

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