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次元間トレーダー転職記:クズは異世界に行ってもクズなのか?  作者: marseye
上手く領主をやれてるだろうか?
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13-24 親類関係は良好に保ちたい。

親戚付き合いは面倒?

 父親と認めていない人物に、俺が金を出すって言うことに納得はできていない。だから、ベネットに深いため息をつかれるのは仕方ないよな。

「そういう風にため息をつかないの。せっかく、ご厚意で男爵様が手配してくださったのだから、感謝すべきであって不満を漏らすことじゃないのよ?」

嗜めるようにお義母さんはベネットの膝を軽く叩く。

「分かってる。別にヒロシのことで怒ってるわけじゃないし。」

 まあ、俺に怒りをぶつけてもらっても、一向に構わないわけなんだけども。

「大体、なんであの人あんなに借金こさえたの? 5万ダールって、かなりの大金だよ?」

 ベネットがそう尋ねると、エルマさんは顔をしかめた。

「不作続きで土地を手放したところまでは知ってるわよね?」

そう言われてベネットは頷く。

「知ってる。だから、村長さんの畑で働かせてもらってたんでしょ? それで食べられなくなるなんてこともないと思うんだけど?」

 小作人というのが楽かと聞かれれば、そんな事は無いけれど確かに家族4人で食つなぐことは可能だ。そういう意味で、5万ダールの借金というのは過大だな。株に失敗したりだとか、ギャンブルに手を出しただとか借金が出来た過程は知っているけど、じゃあ何故そんな借金を作る真似をしたのかまでは知らない。

 土地を取り戻したかったんだろうか?

「あの人ね。テオを学校にやりたかったみたい。

 小作人を続けていけば、何とか食べていくことはできるでしょうね。

 でも、ずーっと小作人のまま。

 だから、勉強をさせて王国の役人や騎士を目指せるように支度をしたかったんだと思うわ。」

 なるほど。そういう理由なら確かにあり得るな。

「でも、あの人お金儲けの才能なんかこれぽっちもないの。欲望には弱いし、ちょっとしたお金があると贅沢をしたがるし。

 お酒も好きでしょう?」

 それも分かる。

 結局は幸運にもモーラ様に能力を授けてもらっているから、俺は今の地位にいるに過ぎない。欲望に負けて、流されるなんてしょっちゅうだ。

 聞いていて、耳が痛い。

「あー、とりあえずですね。お義父さんの件は俺の独断でやったことなので、何か問題があれば手を出させていただきます。

 真面目に働いていただければ、それに越したことはありませんしね。

 その上で、うちの領内で暮らしていただければいいかなと思ってるんですが、そこのところお義母さんはどうお考えですか?」

 そう聞くと、お義母さんは少し考えこむ。

「ご厚意に甘えてばかりで申し訳ありません。娘を貰っていただいただけでも、感謝のしようもないのに。

 そのうえ、夫の不始末まで。

 ですから、こちらで働かせていただくなら、下手なことをしないようきっちり見張ります。お手を煩わせないよう努めさせてください。」

 頭を下げられてしまった。

「いやいや、もう家族なのですから、できればそう言うのはやめてください。テオ君の学校の件もどうせなら任せてもらえませんか?」

 そういうと、お義母さんは渋い顔をする。

「そこまで甘えてはいけないと思います。テオに才能があるのであれば、自分からつかみ取るべきです。

 ですから、下働きから始めさせていただけませんか?

 それで学費を作ってから、学校に行くべきだと私は思っています。」

 き、厳しいなぁ。いや、この世界ではそれが当たり前なのか。

「お母さん、ちょっと厳しすぎじゃない?」

 ベネットとしては、手を貸したいと当然思っているよな。

「いいえ、こちらに住まわせていただけるというだけでも大分甘えているんです。これ以上、ご厚意を賜ってはテオが腐ります。

 どうか、厳しく使ってやってください。」

 下働き、確定なのか。いや、そりゃ仕事はいくらでもある。働き手はいくらでも欲しい。

 でも、妻の親類をあまりこき使うわけにもいかないんだよなぁ。

 体裁が悪い。

「分かりました。しばらくお預かりします。その上で、適切な仕事があれば、それに就いてもらうという事でよろしいですか?」

 多分、どうしたところで手心は加わるだろうな。あとは、テオ自身の問題になる。

「よろしくお願いします。」

 結局またお義母さんに頭を下げられてしまった。俺は、ちょっとベネットと目配せをする。

 

「ごめんねヒロシ。テオの件、多分下働きって言っても無理だよね。」

 寝室に戻ると開口一番、ベネットに謝られてしまった。

「多分、無理だね。しばらくは、フィリップさんの所か、秘書のエメリッヒさんのところで見習いかなぁ。」

 とりあえず、ベネットを椅子に座らせて俺も向かいの椅子に座る。

「だよね。それなら使用人の人も納得するだろうし、周りからも変な目で見られないで済むかも。」

 ベネットの言うように周りの反応を考えれば現実的な落としどころだ。ただ、テオがどこまで勉強してるかだよなぁ。

「お母さん、ああ見えて頑固なところがあるからしょうがないんだけど。テオは頑張れるかなぁ。」

 いきなり小作人の息子が貴族家の執事や役人を束ねる秘書の下で仕事をさせられると考えるとかなり辛い。俺だったら逃げ出している。

「まあ、難しいようだったらお義父さんの手伝いをしてもらえばいいと思うよ。」

 試験農場の管理は難しくはないけれど楽な仕事だとは言えない。それなりに体力も気も使う仕事ではある。

 だけど、それの補佐であれば今までやってきた延長で仕事ができると思うんだよな。

「あの人の希望からすれば、テオを学校に通わせることに固執しそう。」

 あくまでもお義父さんとは言いたくないんだなぁ。

「まあ、そこはテオ君次第だよ。本人が強く望むなら学校に通うのもありだし、今までの仕事を続けたいならそれだってかまわない。

 彼自身の人生なんだから、彼が選ぶべきだ。

 俺たちにできるのは、その選択肢を狭めないことくらいじゃないかな?」

 そういうとベネットはため息をつく。

「そうなんだけど、そううまくいかないのも人生だよね。あれからフランシス様に変化はないけれど、間違いなく私たちは背中を押しちゃったし。」

 どう転ぶか分からないのも、また人生だよな。

「とりあえず、レイナさんに王都までの案内は頼んであるから、ファニング先生の診察に期待しよう。

 明日には、出発になるからせめてそれまでは優しくしてあげて。」

「優しくするのは構わないんだけれど、本当のお母さんにはなれないんだよね。それに本当の娘だとしても、どう接すればいいのか。私には分からないよ。」

 それはそうだよな。

 ベネットには余計な負担を強いているような気もする。かといって、男の俺がどうにかできる問題でもないんだけども。

「でも、ヒロシには苦労をかけちゃってるよね。家族のこともそうだけれど、私自身も妊娠してるからって甘えてばかりだし。」

 とんでもない。

「いや、むしろ身重の体に負担を強いてるなって思ってたんだけど。

 平気?」

 そう尋ねると、ベネットはうーんっと唸る。

「正直、そんなに辛くはないの。そりゃね。あんまり激しい運動をするのは怖いんだよ?

 だけど、なんだか体がなまっちゃいそうで、そっちの方が怖いなって。

 子供を産んだら太っちゃうって言うし。」

 多分、そんなこと心配しなくてもいい気がする。定期的に運動は続けているし、むしろ痩せすぎなんじゃないかと心配なくらいだ。

 でも、ご飯はちゃんと食べてるんだよなぁ。何処にあの量が消えていってるんだろうか?

 再生能力を獲得しているから、燃費が悪いというのはその副次的な効果ではあると思うけれど。

 あるいは、妊娠中のあれこれが軽減されているのは、それのおかげなんだろうか? 俺自身は再生能力を有しているわけでもないので、正直察しがつかない。

「落ち着いているなら、それに越したことは無いよ。なまってしまうのは仕方のないことだし、お産が済んでから考えよう?」

 ベネットは少し恥ずかしそうにしながら、頷く。何も恥ずかしがる必要はないと思うんだけどな。

「でも、お母さん平気かな? メイドさんに案内されるのも慣れないみたいだし。」

 それは仕方ないと思うんだよな。慣れないサービスを受ければ挙動不審にもなる。

「誰だって慣れないよ。俺だってベネットだって、つい頭を下げちゃうだろ?」

 そのたびに、そのようなことは不要ですと言われるわけだけど。慣れてるのはレイナくらいなもんじゃないだろうか?

 生粋の貴族は、あとはフランシスくらいなものだ。

 そういえば、彼女の振る舞いはとても上品だ。レイナのどこかガサツな仕草と違い、動作一つ一つが気品にあふれている。

 もちろん、ベネットにしろレイナにしろ、意識している時の動きはとても綺麗だし、貴族らしい振る舞いはできていた。

 でも、気を抜くとどうしてもベネットは鋭さが出てしまうし、レイナはらんざつさが目立ってしまう。俺なんかは、気を付けていてもどこか間抜けさがある様な気もするんだよな。

 まあ、こればっかりは年月が経たないと変わらないんだろう。

「多分、メイドのお仕事を手伝い始めようとすると思うから、そこら辺は必要ないって注意してね。何度か言わないと、多分聞いてくれないから。私が言うだけだと、多分無理だし。」

 ベネットの言葉に俺は頷いた。

 お義母さんがそういう性分というのは何となく想像がつく。良くも悪くも庶民の女性なんだよな。

 それが悪いことだとは言わないけれど、城にいる間だけでもこちらの流儀に合わせてもらわないとな。

「とりあえず、そのことについては注意しておくよ。

 でも、お義母さんみたいな人は助かるんだ。逆に俺の地位を利用しようとしてくる人も今後は出てくるだろうしね。」

 レイナの家は、そもそもが貴族の家柄だ。既に、そういう輩は淘汰されているだろう。

 俺の方は、親族と呼べる存在がいない。となるとベネットの家系の人が心配になるのは致し方が無いことかもしれない。

「お父さんの親戚もお母さんの親戚も、私の知る限りでは変な人はいなかったと思うんだけど。でも、私の知っている範囲だからね。正直なところ、不安しかないよ。」

 そういう親類は降って湧いてくるもんだしな。

 食客を養うみたいな風習はないらしいので、やばそうな人なら突っぱねればいいだけだとは思うけど。やばそうじゃない人が、やばかったって言う話もあり得るからな。

 俺も注意しよう。

 下手すると、何もわかってない人間が俺の親族を名乗る可能性もないこともないし。春ともなると、そう言うのが湧いて出てきそうだ。

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