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次元間トレーダー転職記:クズは異世界に行ってもクズなのか?  作者: marseye
上手く領主をやれてるだろうか?
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13-18 後始末が面倒だな。

ストレスたまってるのかいつも以上に冷たい対応をしています。

 貴族家の仕来りは複雑ではあるし、時代とともに形骸化して意味のないものも結構あるものだ。

 でも、それが出来上がる過程というものは、それなりに理屈が存在する。フィリップの言う常識は、俺にとっては不合理なものに映るものもいくつか存在していたけれど、その成り立ちを聞けば頷けるものも多い。

 ただ、技術的な進歩のおかげで解決できる部分も多々存在している。それについてはフィリップに確認を取って改めるという形をとらせてもらう。

「ありがとう。

 とりあえず、今日は寝ずの番をしていたものには仕事をさせないように。不足する部分があれば、それは翌日に回してもらって構わない。

 多少の不便は、俺の不勉強のせいだ。甘んじて受け入れるよ。」

 正直、毎日洗濯してもらったり掃除してもらわなくても言うほど不便じゃない。服の用意だって、子供じゃないんだから俺にだってできる。

 もちろん、やってもらえれば助かるし、それを怠ることで貴族としての威厳が落ちる部分もあるだろう。

 だが、それを維持できないのは俺の責任だ。使用人のせいではない。

「畏まりました。」

 珍しく、フィリップの顔がしかめられている。そんなに辛いものなのかなぁ。

 でも、ここで俺がごめんなさいというと余計に執事の立場がない。

「よろしく。じゃあ、仕事してるので何かあれば言ってください。」

 そういうとフィリップは失礼します、と頭を下げて執務室を後にした。俺はさっそく決済すべき書類を処理し、報告書に目を通しておく。

 報告書の全部に目を通す必要はない。

 重要度によって見出しで判断できるように緊急であるか重要であるか、通常案件であるのかの区分けがある。

 とはいえ、通常案件も見出しは目を通す。そうすることで今どういう動きがあるのかをおおざっぱには把握が可能だ。

 これについては、秘書を通じて雇用している事務官全員がアイディアを出してくれたので間違いはないだろう。

 

 ……多分。

 

 仮に問題が出てくれば、その時は直接秘書が動いてくれるはずだし、そうでなくてもミリーやテリーなんかは目ざとく報告してきてくれる。だから、俺一人が頑張らなくちゃいけないとか、そんな感じは全くしていない。

 どっちかというと、報告書を読むのは新聞や雑誌を読んでる感覚だろうか?

 いや、それじゃ駄目な気もするんだけども。とはいえ判断はすでにルールで決められたとおりに動いている。

 なので俺がいちいちあれがどうなっている、これはどうなっているって口を出す方がまずい。

 だから、これでいいんだよなと言い聞かせながら緊急や重要な案件が無いことを確認したあと、気になった通常案件の報告書をいくつかピックアップして目を通していく。

 春から本格的に動き出す建築申請が多い。前にも商店や工場が建つのは把握していたけれど、思った以上に土地が足らない様子が見て取れた。

 何を求めてやってくるのか。

 かといって、農地を完全につぶしてしまうのもなぁ。なので、農地に関しては取引を禁止している。

 そのせいで、高層建築の申請が増えていた。

 

 なるほど、高層建築か。

 

 エレベーターやエスカレーターとかあったら便利かなぁ。でも、動力をどうするかだ。

 モーターの試作はアレストラばあさんの方で行われている。主に工作機械の動力として活用したいようだ。それを流用すれば、あるいは。

 もしくは、蒸気機関で動くエレベーターというのもありかもしれない。そこら辺のアイディアはサボり魔の方にぶん投げておこう。

 報告書については掘り下げればいろいろ出てくるだろうけど、この辺にしておく。まず、ハロルドに手紙を書かなくちゃいけない。

 ラベール家の現状と、アリティウス家の意向。その上で、ハロルドはフランシスをどうしたいのか。

 つまり、精神科医に見せるかどうかの判断をしてもらわないといけない。バーナード卿には診察を受けられるようにお願いはしていた。

 幸いなことに春までには時間を設けてもらえるように約束も取り付けられているので、あとはハロルドの決断次第だ。

 

 あー、そうだ。

 

 決断してもらうための判断材料がインベントリの中にあったな。時間を止めてしまっておけるのは便利だが、ある意味で牢獄よりも残酷かもな。

 捕まえた刺客の尋問をして、地下牢に移した方がいいだろう。幸い、罪人は少ないので、牢獄は空いている。昼を取ったら、地下に移動するか。


 

 城の地下には排水設備以外に蒸気機関や工作機械が置かれ、職人が行き来している。それ以外の設備として、区分けされて直接行き来出来ない場所に地下牢があった。

 地下そのものは俺が来る前から構築されていたもので、そこに設備を詰め込んで使用している。なので、若干間取りが窮屈というか。

 いや、改めて地下を掘ってとなると、上の構造物をどけなくちゃいけなくなる。流石にそこまでの費用を散財するのは、今の財政状況じゃ厳しいよな。

 地下排水路の脇にある通路は閉塞しておきたいところではあるけども。というか、城の地下に排水路があるって防御設備としては微妙だよな。

 そこから侵入されるのが目に見えてる。

 あるいは、脱出路として活用したかったのかもしれないけれど。そこが弱点になったら、元も子もない気もするんだよなぁ。

 排水管だけにして、常時水がたまるようにしておくというのも侵入防止には適切かもな。もしくは、完全循環か。

「ヒロシ、何か考え事しているのはいいけどさっさと始めない?」

 トーラスに呆れたように言われて、俺は妄想から何とか抜け出せた。

「すいません。とりあえず、牢の中に出しましょうか?」

 下手に縄抜けとかされたら困るものな。

 空いている牢獄に男を移す。着ているものとロープ以外は、インベントリの方に残していたけど。

 本当やたら暗器もってるな。

「こ、ここは……」

 いきなり応接室から、地下牢に突然移動させられたようなものだ。戸惑いもするか。

「おはようございます。

 と言っても、昼過ぎですけどね。よろしければ、食事をどうぞ。」

 そう言って、俺は皿に乗せたサンドイッチを牢獄の中に出現させる。

 インベントリ内では時間経過しないわけだから、男は空腹ではないかもしれない。とはいえ一応時間を知らせないと地下だから時間も分からないだろうという配慮だ。

 男はじっとサンドイッチを見ている。

「あー、別に毒なんかいれてませんよ。殺すつもりならとっくにやっているし、わざわざ毒で苦しんでいるのを眺める趣味はありません。」

 それが信用されるとも思ってはないないけれど。

「それで、お食事をする気分ではないという事であれば、少しお話させていただいてもいいですかね?」

 そう聞いたところで、応えるわけもないか。黙ったままそっぽを向かれる。

「ラベール家の方ですよね? ご当主の方ですか? 弟君の方?」

 当然応えないけれど、当主の方という言葉で少し反応がある。これは弟君の配下かなぁ。

「まあ、どちらでも構わないんですが、何故正式な訪問をしていただけなかったんですかね? こちらとしても、正式な面談であれば平和的に話し合えたと思うんですよ。」

 男は眉をしかめる。

「正面から、面談を求めれば応じたとでも?」

 いや、応じたじゃないか。

「ヘスティアと名乗る女性には、ちゃんと応対しましたよ?」

 心底馬鹿にした笑みを浮かべて男はため息をつく。

「あれは、ろくでもない女だぞ? 話を聞く方がどうかしている。」

 碌でもないのかどうかは知らないが、少なくともいきなり襲い掛かってくる相手より、遥かにましだ。

「そこはおいおい分かる事でしょう。

 ただ、手違いという事でお引き取りくださいましたけどね。」

 俺の言葉に男は微かに目を細めた。

「フランシスを消したのか?」

 男の言葉に俺は眉をひそめてしまう。

「どういうことだ? あの女にとって、フランシスは邪魔でしかないはずだ。手を引くとは思えん。」

 大体の絵図は見えてきた。

 つまり弟君はフランシスをアリティウスに引き渡し、生き残りにかけたわけか。それでアリティウスの人間が靡いてくれればいいけれど。

 正直可能性は低い気がする。

「手違いだったと言われてましたけどね。求めている方はいらっしゃらなかったようですし。」

 俺は笑顔でそう答えた。

「フランシス=ラベールを匿っているのは知っているんだぞ? 我々に引き渡せ。

 でなければ、彼女の身の安全は……」

 なんでこんなに高圧的なんだろうか?

「存じ上げない方ですね。私が知っているのは、ただのフランシスという名の女性だけですよ。」

 俺は男の言葉を遮る。相手は唸って睨みつけてきた。

 いや、睨むくらいはいくらでもしてくれていいんだけども。

「ところで、救国兄弟団という組織をご存じですか?」

「知らん。」

 おやおや、食い気味に否定されたな。例の騒動を知ったうえで俺の素性も知っていたら、知っているとは言えないはずだ。

 ただ……

 そんな素直な反応されると判断に困る。身内なのか、それとも知っているだけなのか。

「いや、使われた手口があまりにも連中に似ていたものでしてね。少々ワンパターンすぎやしませんか?

 自爆するか服毒自殺するか。それとも、そう言うのが今の流行だとでも?」

 使われていた毒まで同じものだ。流石に関係を疑うよな。

「貴様はラベール家を舐めている。たかが帝国貴族の分家だとでも思っているんだろう?

 そんな小さなものじゃない。

 悪いことは言わんぞ。与するならば、少しくらい手を差し伸べてやってもいい。」

 俺はため息をつく。これ以上聞きたいことが無くなってしまった。

「トーラスさん、適当なところまでお送りして差し上げてください。どうやら、やはり勘違いをされているようだ。

 慣れない土地で不安になられているご様子ですから、丁重によろしくお願いします。」

 一介の料理人に集るしかない状況になっておいて、何が舐めているだ。馬鹿も休み休み言え。

「ヒロシ、いいのかい? 僕は素直な性格だから、裏を読めとか言われても無理だよ?」

 トーラスの耳打ちに思わず吹き出してしまう。

「何も被害を受けていないんです。お引き取りいただいて結構ですよ。裏も何もありません。」

 あぁ、ミリーが水浸しにされたか。

 でも相手は、自爆してるし、請求先はラベール家ご当主の方だ。服代を後で請求しておくか。

「ま、待て。本気で言っているのか? 俺をこのまま開放するだと?」

 そう言ったし、そうするつもりだ。

「もちろん、領内で狼藉を働かれたなら、その限りではないですがね。領外でならどうぞご自由に。

 あぁ、何でしたら路銀くらいご用意しましょうか?」

 男は顔を青ざめさせている。おそらく、ここにいる方が安全なのだろう。もはやラベール家は狩る側ではなく狩られる側なのだというのが、これではっきりした。

 だけど、わざわざ匿ってやる理由はない。さっさと追い出してしまうのが一番いい。

 変にアリティウス家に勘繰られたくはなかった。

 なので、これ以上の問答はせずに俺は、地上に戻る。

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