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次元間トレーダー転職記:クズは異世界に行ってもクズなのか?  作者: marseye
上手く領主をやれてるだろうか?
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13-8 出来るんだからやるんだよ。

スキー自体は楽しかった記憶があります。

「また、厄介なこと引き受けたもんだな。

 フランシス=ラベールだって? 聞いたことないぞ、そんな貴族。」

 約束していた雪上車の山登り途中でグラスコーにハロルドのお嬢様について話してみたら、そんな反応が返された。

「俺だって知らねえよ。できれば、調べて欲しいんだけどなぁ。」

 そういうとグラスコーは苦虫をかみつぶすような顔をする。

「俺は情報屋じゃねえ、商人だ。そんなに調べたけりゃ、密偵でも雇え。」

 言われなくたって、依頼はかけている。

 何か知らないかとか、商売の伝手で聞けることがあれば聞いてくれという程度の事だ。

「当てになんねぇなぁ。大店の旦那であるグラスコーもこんなもんか。」

 そういうと、グラスコーはせせら笑う。

「子供じゃあるまいし、いい加減に人に頼る癖は直しておけよ? まあハロルドの野郎には世話になってるし、なんか分かったら教えてやるがな。」

 素直じゃねえなぁ。俺がこんなこと言わなくたって、調べてたろうけど。

 そういうとへそ曲げられそうだから黙っておこう。

「しかし、なかなかいいな。これがあれば、冬の山道も超えられそうだ。」

 グラスコーのお眼鏡にかなったようだな。

「ただ、こいついくらするんだ? 値段によっちゃ、そうそう手が出せないかもしれんぞ?」

 新車だと結構するんだよなぁ。売るなら中古だろうか?

「大体10万ダールはするかなぁ。普通の車みたいなやつなら6万ダールで用意できるけど。」

 そうかとグラスコーは悩むそぶりを見せた。

「こいつを1台、それと車みたいなやつを4台で30万ダールでどうだ?」

 当然メンテナンス込みの値段だろうな。

 でも、まあそれだけ売れるなら悪くないかもしれない。

「仕方ない、勉強してあげましょう。」

 とりあえず、上から目線で言ってやる。

「おうおう、偉くなったもんだなぁ。とりあえず、即金で用意するから納車は早めに頼むぜ?」

 なんかグラスコーが妙にうれしそうなのは何なんだろうか?

 ともかく、手配を済ませてしまおう。

「お二人ともはしゃぐのは結構ですけど、そろそろ山頂に付きますよ?」

 今まで話に加わってこなかったロドリゴは声をかけてくる。俺たちとロドリゴ以外にもアノーも乗車していた。

 二人ともスキーを娯楽にというのがどんなものを確かめたいと言っている。

 ちなみに運転はハルトだ。だけどハルトは、なんか不機嫌そうなんだよなぁ。スキー場が嫌いとか言ってたけど何があったのやら。

 とりあえず、あっちから話すまでは放置だな。

 

 3人にはスキーを履いてもらい滑降してもらった。下まで滑りついたら俺が《飛行》で山の上まで再度連れていく。

 結構重労働だ。

 何が悲しくて、おっさん3人を抱えなくちゃならんのだ。もっとも俺が言い出したことだしな。

「お疲れ、ベネットさんいないしコーラでも飲む?」

 3往復目で俺がへばってるとハルトが雪にさしたコーラを差し出してくる。

「ありがとうございます。助かります。」

 キャップを開いてコーラを半分くらいまで飲み干す。

「俺さ。スキー場で友達に置いてかれたことあったんだよね。」

 いきなりの告白に、俺はコーラを吹き出しそうになった。

「なんですか、急に。そう言うのは、落ち着いた時にしてもらえませんか?」

 そういうトラウマがあるなら、スキー場が嫌いというのも分からなくもない。

「急に夜中呼び出されてさ。車に押し込められたら、明け方にスキー場でさ。

 俺、全然スキーとかしたことないって言ってんのに、無理やりスノボ履かされて。」

 そりゃまた。

「何度もこけてるの笑いものにされた挙句、俺を置いて帰っちゃってさ。

 もう最悪。

 なんかスポーツやる奴って、人の話聞かないよな。」

 言わんとすることは分からなくもない。

「自分の体験を他人にあてはめちゃうんでしょうね。でも、よくそこから帰れましたね?」

 ハルトはため息ついた。

「ゲレンデの人に電話貸してもらって、何とか親に迎えに来てもらった。

 金なんかもないからさ。

 だから、スキー場とかあんまり好きじゃないんだよね。」

 これはかなりの重傷だなぁ。遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。どうやら、おっさんたちは山の下までついてしまったようだ。

「まあ、無理強いはしないんで安心してください。もう一往復したら、帰りましょう。」

 俺はそういいながら、空を飛ぶ。

 

 本当にくたくただ。

 これを魔術師にやらせるとなったらとてもじゃないけど引き受けてはいないだろう。やはりリフトは絶対必要だな。

 帰りの雪上車の中でおっさん3人は真剣な顔で相談していた。

「ヒロシ、とりあえずリフトって言うのはすぐ作れるのか?」

 グラスコーが俺に確認を取ってくる。

 仕組み自体は単純だ。だから資材さえあれば、作るのは難しくないと思う。

「冬の間に作り上げるのは難しいでしょうけど、来年には間に合うんじゃないですかね。」

 3人が顔を見合わせる。

「正直、面白かった。だけど、戻るのに魔術師を準備するのはとても割に合ったもんじゃないだろう。」

 グラスコーの言うように、俺はくたくただしな。これを他人にやらせる気はない。

「まあ、人を担いで山を上り下りって、呪文を使っているとはいえ大変でしょうしね。」

 アノーがそういうとロドリゴも同意見なのか頷いている。

「ただ、思っていた以上にスキーってのは楽しいっすね。車だと味わえない加速感があってよかったっすよ。」

 なかなか感触は悪くない。

「あとは場所ですね。今回の山はアライアス伯の持ち物だ。話を持ち掛けて許可が得られますかね?」

 そこは売りこみ次第じゃないかなぁ。

「一応、うちの領地に試験的にスキー場を作りますよ。広げるなら、テストケースとして利用してみてください。」

 どうやら、おっさんたちには俺の意図は通じているらしく、道具はどうするかとか宣伝をどうするか、宿泊施設がどうのと喧々諤々の議論が交わされている。

 だけど、俺の方はちょっと疲れすぎて議論に参加する気になれない。思わず大きな欠伸をしてしまった。

 だるい。

 

 モーダルにつくまで眠りこけてしまった。道中で話す内容は特になかったし、あとはリーダーに任せておけばいいだろう。

 翌日は、サボり魔がいる大学に顔を出し、砲艦の設計進捗を確認する。

「ヒロシさん、これ本気なんですか?」

 サボり魔がうんざりした顔で搭載砲の仕様書を見せてくる。

「あぁ、うん。クリア難しそう?」

 俺がそういうと、サボり魔は顔をしかめる。

「難しいじゃなくて、不可能ですよ。砲身は何とかできるとしても、ガス漏れがどうにもなりません。

 それに、火薬だって爆発力が足りないって言われましたよ。」

 んー、そうかぁ。

 ここはやはり技術提供が必要かもな。と言っても、俺が知っている技術じゃない。

 あくまでも、書籍やインターネット上にある情報でしかない。こういうのを教えているとか提供するっていい方はちょっと偉そうだよなぁ。

 まあ、とりあえず見てもらうか。

「とりあえず、これについて確認して欲しい。出来そうなら、そのまま進めてくれていいし無理そうなら多少の妥協は仕方ないと思うよ。」

 そういいながら、俺はブリーチローダーの資料と無煙火薬の資料をサボり魔に渡した。

「やっぱり持ってたんじゃないですか。それなら最初から、提供してくださいよ。」

 そう言って、サボり魔は資料を受け取る。

「とりあえず、内容については教授たちと検討してみます。ちなみに、魔法で解決するって言うのはありですか? 無しですか?」

 資料に目を落としつつ、サボり魔が聞いてきた。もちろん、俺としてはこの世界の独自技術に期待したい。

「むしろ積極的に使ってほしいけどね。コストも含めて、最良の方法を選んで欲しい。」

 そういうと了解です、とサボり魔はため息をついた。

 

 領内に戻る前日。戻るメンバーはハロルドの店に集まる。

「お嬢様、ヒロシさんに従ってください。決して悪いようにはなさらないはずです。」

 ハロルドの声が聞こえているのかいないのか。

 お嬢様と呼ばれた彼女はうつろな目でハロルドを見ている。

 普段は簡素な服だけれど、外出用にあつらえたのかフリルが多めのドレスに厚手のコートを身に着けている。

 まあ、外を出歩くわけではないから、実際は防寒の必要はないのだけれど。

「では移動します。

 ちなみに、何かあればお手紙を出しますんで、ハロルドさんもこっちに来たい時などは気軽に言ってください。」

 多少のコストはかかるけれど、本当に気軽に言ってほしい。

 むしろ、こっちが呼ばないといけないこともあるかもしれないしな。何となく、お嬢様をハロルドと引き離して平気かなと少し不安に思ってしまう。

「よろしくお願いします。」

 そう頭を下げるハロルドを残し、俺はいったんインベントリに納めた倉庫を経由する。



「相変わらず、すげぇよなぁ。ここで生活してもいいんじゃね?」

 ハルトが倉庫の広さにため息をつく。

 確かに体育館くらいの広さがあるからいざという時はここに逃げ込んで生活するのはありかもしれない。

 とはいえ1時間おきに一人5万円とぶと考えると、ちょっとな。

 通り過ぎるならともかく、滞在するには重いコストだ。

「まあ、いざという時は利用しますよ。じゃあ、行きましょうか?」

 倉庫をしまっている特別枠から城にいるレイナのインベントリへと移動する。

 別に物理的に窮屈なわけじゃないけれど、何もないと逆に窮屈に感じるというのは不思議な気分だ。

 彼女はちょうどエントランスにいた。

 というか事前に知らせが届くので、出やすい場所に移動してくれてたのかな?

「おかえりー、とりあえずおみやげは?」

 早速手を出すレイナの手元にハロルドの店で出しているケーキを詰め合わせた箱を渡す。

「ハロルドさんの所のケーキです。あとで、ジョシュ君と食べてください。あー、それとですね。」

 とりあえず、お嬢様の説明をレイナにする。

「ほうほう、なるほどねぇ。フランシス?

 数年前にサンクフルール第四王子から婚約破棄された、悪女と名高い女性がそんな名前だった気が……」

 知っているのかレイナ。

 ……というか、まあ彼女の方が貴族社会には詳しいか。

「出来れば、あとで教えてください。フィリップ、彼女にはメイドをつけて世話を頼みます。」

 少なくとも、反応の薄いお嬢様を一人で生活させるのは無理があるだろう。

 使用人増やさないとかなぁ。

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よろしくお願いします。

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