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次元間トレーダー転職記:クズは異世界に行ってもクズなのか?  作者: marseye
上手く領主をやれてるだろうか?
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13-2 トロールを配下に加えたぞ!

すべて倒してお終いってもったいなくない?

 トロールたちが目を覚ましても鋼線を引きちぎることはできない様子だ。俺はほっと胸をなでおろす。

「お目覚めのところ悪いですが、リーダーは誰です?」

 トロールの数は全部で6体。全員、体格は同じくらいだ。

 ただ、目星がつかないかと言えばそんなことはない。言ってみれば確認のようなものだ。

「俺だ。まさか、トロールの殺し方を知らないってわけじゃないよな?」

 俺は、笑顔でファイヤーワークスを放つ。

「威力は弱いかもしれませんが、じっくり焼くことはできますよ?」

 全員がごくりと息をのむ様子がうかがえた。

「なら、なぜ殺さない?」

 理由は簡単だ。交渉できそうだと思ったからだ。

「話が通じるならいいなと思ったんですよ。何せあなたたちを倒すのに結構な銃弾を使ってます。

 正面切って戦えば、こっちもそれなりに被害を受けてたでしょうね。」

 そういうと、幾分誇らしげな表情に変わる。

「当然だ。お前たちに後れを取ったのは雪のせいだしな。」

 別にそこは否定する必要はないな。

「ちなみに、人を襲ったのは何故ですか?」

 これで、人を襲わないと生きていけないとなってくると殺すしかなくなる。

「単純に食料が手に入らなくなったからだ。お前たち人間は、食い物を集める癖があるからな。」

 癖ねぇ。

「それなら、交渉して手に入れようと思わなかったんですか?」

 なんでそんなことをする必要があるみたいな顔をされた。戦って勝てば話し合うよりも簡単に欲しいものが手に入る。そういう思考になるのも自然か。

「そもそも、お前たち人間は俺たちの言葉を知らないのが普通だ。それならグダグダ言わず奪う方が簡単だろう?」

 それもあるか。

「じゃあ、話ができる俺は交渉相手にふさわしくないですか?」

 トロールのリーダーは目を細める。俺を品定めしている様子だ。

「別に俺はここで殺されてもいいんだがな。」

 なかなかに交渉上手だな。

「せっかく食料をあげようというのに、死ぬんですか?」

 俺の言葉にトロールのリーダーはせせら笑う。

「どうせ条件付きだろう? 俺たちに何をさせるつもりだ?」

 話が早くて助かる。

「条件は3つです。

 人間を襲わないでください。

 人間を助けてください。

 森の魔獣を間引いてください。」

 トロールのうち、リーダー格だけが俺の要求を理解しているようだ。

「なるほどな。体のいい傭兵扱いか。」

 まったくもってその通りだ。便利に使えそうなら使おうというのは虫が良すぎだろうか?

「言っておくが、俺たちは相当食うぞ? 豚なら一頭くらいはペロリだ。」

 肉しか食べられないんだろうか? そうだとすると面倒だなぁ。

「麦やパンは食べられますか?」

 少し難しい顔をされる。

「食って食えないことはない。だとしても、大釜一杯の粥じゃなきゃ満足できんな。」

 なるほどなぁ。

「ちなみに、調理器具とか持ってますか?」

「そんなもの、持ってるわけないだろう。」

 そうか。それも提供しないとか。

「トーラスさん、ジョシュを連れて離れてください。

 ……ハルトさんはどうします?」

 そう尋ねるとハルトは肩をすくめる。必然的にカイネも残すことになるんだけどなぁ。

 まあ、スノーモービルにまたがってくれているなら、すぐ逃げられるか。

「じゃあ、少し離れておくよ。気を付けてね。」

 そう言ってトーラスはスノーモービルを操り、トロールたちから距離を取る。

 十分に離れたことを確認し、俺はトロールたちを縛り上げたワイヤーをほどいた。

「じゃあ、まずは手付金を支払いましょう。魔法の大釜は準備できませんが、材料は置いていきますよ。」

 そう言って、俺は大釜を取り出す。

 人数分、6個だ。そこにはポリッジが注がれている。

 一応、いつでも炊き出しができるように準備していたものだ。以前に使わずに残ったものがあってよかった。

 ごくりとトロールたちが喉を鳴らす。

「この鍋に見合う匙がないので、お玉でいいですか?」

 そういいながら、お玉を渡していく。

「まだ、約束を守るとは言ってないぞ?」

 トロールのリーダーは仲間を手で制す。

「手付金です。食べ終わってから、契約するかどうか決めてもらっていいですよ。」

 まあ、断るとなれば戦闘になるわけだけども。出来ればそういうことは避けてもらいたいなぁ。

 我慢できなくなったのか、トロールの一人がお玉を鍋に突っ込み、ポリッジを掻き込み始めた。それにつられて、次々と鍋にお玉を突っ込んでいく。

 トロールのリーダーもついには折れて、自分の鍋に手を出し始めた。

 しかし、いい食いっぷりだ。少し、食糧を供給し続けられるか心配になる。とはいえ傭兵に支払う金額に比べれば雀の涙か。

「なあ、ヒロシ。俺らもなんか食わね?」

 食欲が刺激されるのは分かるが、少し我慢しててほしいな。ハルトの気持ちは分かるけども。

 しばらく食事が続いて大釜を空にするとトロールたちは雪の上に大の字になる。もう好きにしてくれというような感じだ。

 そこまで腹が減ってたんだろうか?

「1日、これと同じ量を用意してくれるなら約束は守ろう。だが、3日と開けたら約束はチャラだ。それでどうだ?」

 猶予期間を設けてくれるのは助かるな。

「いいでしょう。じゃあ、まずは1週間分です。」

 そう言って、俺は大麦を納めたコンテナを置く。

「大釜があれば煮炊きはできますよね?」

 そういうとトロールのリーダーが頷く。

「だが、麦だけじゃだめだ。塩も置いていってくれ。味気ない食事はもううんざりだ。」

 左様で。じゃあ、コンテナの中に塩袋を納めておくか。

「他にご要望は?」

 トロールたちはそれで満足なのか特に要望は伝えてこなかった。

「では契約成立です。衛兵が麦を運んできますが、襲ったりしないでくださいね?」

 トロールたちは頷く。

「そっちが手を出して来ない限りはな。麦が尽きるのが先か、俺たちがくたばるのが先か。なんにせよ、どうせ死んだ身だ。

 好きにしやがれ。」

 大変満足いただけたようで結構、結構。とりあえず、これで多少はトラブルが減ってくれると助かるなぁ。

 

「あいつら、約束守るかな?」

 ハルトが帰りにスノーモービルを並走させて、俺に聞いてくる。

「どうでしょうねぇ。損得勘定はできるみたいだし、あとは性格次第じゃないですか?」

 駄目なら駄目で、もう一度討伐に乗り出せばいい。二度目はない。

「あやふやだなぁ。そういえば、レベルアップした?」

 ハルトの言葉で俺はレベルアップのことを思い出す。電子音がしたか、しなかったか。とりあえず、停車させてステータスを確認しよう。

「してますね。」

 気付かなかった。

 しかしこれで、12レベルか。あと1レベル上がれば研究している《完全瞬間移動》が使えるようになるはずだ。

 こうなってくると、俄然レベルアップしたくなる。

 けど無理をしてまで、レベルアップすべきかどうかは悩ましい。徐々にレベルアップが難しくなってきているのは、当然のことながら感じてはいる。

 トロールたちと戦ったのがきっかけなのはわかるけれど、それまで2年間で戦闘をこなした回数も多い。

 そこから一気にレベルアップとなると、難しいよなぁ。

「ちょっと不思議に思ったんだけどさ。レベルアップしたタイミング、トロールたちが約束を守るって言ったときなんだよな。」

 それはまたなんとも。イベント経験値か?

 前も、ドラゴンから逃げ延びた時にレベルアップした。何らかの困難を克服することでも、レベルアップするんだろうか?

「正直、そこら辺の仕組みが分からないんですよね。レイオット様が言っていたように、単に魔獣を殺せばいいってもんじゃなさそうですし。」

 そんな話をしてたら、先行してたトーラスが戻ってくる。

「なに?レベルアップの話?」

 一応トーラスにはレベルアップの話をしてはいる。後ろに座っているジョシュは何のことやらさっぱりのようだ。

「ちなみに私は、レベルアップしてますか?」

 カイネが不安そうにハルトに尋ねた。

「え?あぁ、うん。カイネもレベルアップしてるよ。」

 ”鑑定”したのか、気軽に返答している。その間、ずっとジョシュは放置されっぱなしだ。

「あの、レベルって何ですか?」

 どう説明したものかなぁ。

 まあジョシュは魔法使いだから、呪文のレベルの概念がある。そこと絡めて説明すればまだ分かり易いよな。

 とりあえず、一通り説明しておこう。

 

 長々とした説明で、ジョシュは困惑気味だ。

 戦闘や学習によって使える呪文のレパートリーが増え、より高度な呪文を扱えるようになる。

 そこは体感的にわかる部分だろう。

 それが戦士や斥候にも存在していて、より熟練していく。そう説明されて、はいそうですかとなるかと言われれば微妙か。

 何せ、呪文みたくくっきり分かれているものじゃないものな。

「ある日突然、銃の腕前が上がったりするんですか?」

 今回、全員がレベルアップしている。そこからすれば、トーラスの腕前が突然良くなったのか気になるところだろう。

「うーん、正直実感ないね。前までできなかったことができるようになったり感覚が研ぎ澄まされたなって瞬間はあるけど、それは過去との比較をした時だよね。

 ある日突然、レベルが上がったと思うようなことはないかなぁ。」

 トーラスの言う感覚は俺でも同じだ。槍の腕前が上がったなと思うのは、レベルアップ時じゃない。

 やはり過去と同じことをして、成功したり失敗した時だろう。

 呪文に関してはレベルアップで覚えられる範囲が広がるので、タイミングが分かると他の人よりも有利かもしれないけど。

「なんか、そう言われるとレベルってなんだよって思っちゃうな。本当にあるのかな?」

 ハルトは素直な感想を漏らす。

「ハルト様は強くなってると思います。前よりも、武器の扱いも上手になってますし、身のこなしも洗練されてます。

 だから、レベルアップはある……

 と思います。」

 カイネは最後は自信なさげに言葉を濁してしまった。強くなることとレベルの概念があることが必ずしもイコールでは結ばれないからなぁ。

 特殊能力のレベルもあるし、正直見れる俺やハルトじゃないと実感しにくいだろう。

 しかも、その見え方というのが人によって違うとなれば、果たして見えているものが本当かどうか自信がなくなるのも仕方がない。

「まあ、目安だからね。みんなそんなに気にしなくてもいいと思うよ。」

 結局のところ、強くなったという事実さえあればいい。

 より高度な呪文が使えるようになった。前よりも身のこなしがよくなった。

 そういうことが分かれば十分だろう。

 ただダンジョンのオーバーフローに関して、それがかかわってそうなのが厄介だけども。

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