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2-5 イノシシ怖い。

 防刃服の効果はすぐに実証された。

 俺の体で……

 いや、イノシシって怖いな。

丁度、突進されると股間の位置に牙がきやがるんだからたまったもんじゃない。

時系列的に言うと移動を再開し、順調に馬車は進んでいた頃だと思う。

そろそろ下生えが増えてきて、遠くには森なんかも見えてきていた。

 だから、というか、なんというかイノシシが近くにいるとは全く気づけなかった。

がさがさという音と共に現れたイノシシは、一直線に馬車めがけて猛烈なスピードで追っかけてきた。

普通のイノシシなら、馬車相手に突っ込んでこようとはしないはずだ。

結構距離もあるんだから、ある程度追っかけてきても道をそれるものだろう。

 それるよな?

 いや、まあ普通のイノシシがどういうものだか知らないけど、馬車を追っかけてきたりしないと思う。

だけど、そのイノシシ、明確に馬車を追跡してきていた。

結構なスピードで逃げてたんだが、追いつかれそうにな勢いだ。

仕方なしに、馬車を降りて対応しようと言うことになったわけだけど。

迎撃準備が終る段階での彼我の距離は、まもなく30mをきりそうなほどだった。

 それでも30mもあれば銃で一撃……

 の予定が、トーラスの銃を受けても突進が停まらない。

 急所を外してしまったのかも……

 とはいえ、勢いは大分殺されていたと思う。

槍で突き刺してやれば、受け止めることは可能なくらいに動きは鈍っている。

というわけで俺が槍で受け止めることになったのだけど。

俺も、あわててたせいで狙いがずれたようだ。突き出した槍はイノシシの頭蓋骨を滑り、擦る程度の打撃しか加えられなかった。

結果、股間めがけてもろにイノシシの巨体を受け止める結果になってしまったのだ。

しかも、イノシシはチェインメイルでは防いでない部分に何度も牙を突き立てようとしやがる。

どんだけ生命力強いんだ。

 その上、ベネットがあわててフレンドリーファイヤーをかますというおまけ付きだった。

イノシシの首めがけて振り下ろした剣が、誤って俺の腹に命中するという大惨事だ。

思ってたけど、君ら少しはフレンドリーファイヤーしないように注意しなさいよ。

お構いなしに振り下ろされた次の斬撃でイノシシは絶命したが、俺は股間への打撃と、腹部への強打でしばらく動けなかった。

 というか、気を失ってたんじゃないだろうか?

 イノシシに突っ込まれた状況を思い出していたとき、俺ずっと空みてたもんな。

だんだん痛みが増してきて、吐き気がしてくる。

俺はおそるおそる体をまさぐった。

 特に、大事な部分を入念に……

 幸い、牙も貫通せずイノシシによる被害は軽微だ。

体内に飛び出している内臓と言われる繊細な部分も破裂とかしてない。

 してないよな?

 いや、痛みは相当なもんだけど……

 嫌な感触もしないし平気だよな。

あー何か、いやな汗が噴き出してくる。

 しかしまあ、何度か意識が薄れてはいるけど……

 こう、考え事ができることからすれば、大したこと無いんだよなぁ……

 多分……

 ベネットが剣を振り下ろした腹部は、チェインメイルが破断していた。

が、防刃パーカーが防いでくれたおかげで内臓ぶちまけるという事態は何とか避けられているみたいだ。

手探りで、腹をなでる限りパーカーは切れてはいない。

 しかし、これ首だったら俺お亡くなりになってたよ。

ネックガードとか、ヘルメットの導入も考えておかないといけないかもしれない。

 いや、まずファールカップか……

 痛い……

「だ、大丈夫?……」

 不安そうにベネットがのぞき込んでくる。

今回は泣いてないようだから文句言ってやろう。

「大丈夫なわけ………ないだ……ろぉ……」

 いや、もう。

情けないけど、声も出ない。涙を浮かべて悶えるしかできない。

「今見てあげるから………えっと……」

 とりあえず、腹を撫でるように手を当ててくれる。

 いや、それよりも……できれば……

 いや多分、触れられていない方も痛みは徐々に薄れて言ってるから大丈夫だよな。

ベネットもどうしようか悩んでるようだし、遠慮しよう。

「とりあえず、何とかなったから……もう、良いです……」

 まだ痛いけどね。

周りを見ると、グラスコーとトーラスが痛ましそうな顔をしている。

 まあ男はそういう反応になるよな、それは……


 何とか起き上がり、誰も見てないところで服の下を確認した。

うん、やっぱり無事だった。

斬られたところも、赤い線がある程度で内出血もしていない。

 ベネットの治癒のおかげではあるんだけど……

 元凶もまたベネットなんだよなぁ……

 グラスコー達の所に戻ってくると、大丈夫かといった感じで男二人は見てくる。

もう、苦笑するしかないよな。

「とりあえず、お二人にお願いがあるんですけど……」

 いや、それとは関係なく護衛二人には言っておかないとな。

さすがにベネットもトーラスも自覚はある様子だ。

ミスした直後だもんな。

「助けたい気持ちが先走ってしまうんでしょうが、味方が交戦中の際は慎重に敵だけを狙うようにしてもらえませんか?」

 まあ、当たり前と言えば当たり前のことだと思うんだけどなぁ……

「直せるからという気持ちがあるのかもしれませんが、さすがに死んだら直せないですよね?」

 まさか直せるとか言う回答はこないよな?

ベネットが気づかされたような表情になるあたりからして、それはないみたいだ。

けど今まで考えてなかったのかよ。

 トーラスの方も、苦虫をかみつぶしたような顔してるし……

 よく今まで護衛としてやってこられたもんだな。

いや、まあ人に偉そうに説教できるような話でもないか。

俺が、ちゃんと槍を使えていれば、なんの問題もなかったはずだ。

「もちろん、見捨てられるよりは助けようとして貰う方が嬉しいですよ?

 実際、一人だったら俺は死んでるでしょうし……

 だから、こういう偉そうなことを言うのはおこがましいですが、お願いできますか?」

 真面目な話をしてるのに、端で聞いているグラスコーが笑いをかみ殺してる。

 どういう了見なのかねぇ、このおっさんは……

「いや、悪い。

 まあ、とりあえずお互い気をつけろよ。死なれても困るし、目覚めも悪い。

 どうせ、俺が払うのはギルド経由だから経費が軽くなることもないしな。

 あー、そういう意味で言うとヒロシは死んだ方が得か……」

 こいつ……

「つまり、生きてたら危険手当は出るって事ですね?」

 まあ、冗談に真面目に応えるのも大人げない。

こう言うときは、付き合う方が賢明だ。

「生きてたらな。半人前だからこいつらの日当の半分しかださんがな。」

 どうやら、護衛の報酬は1日当たりいくらの契約みたいだな。

いくらくらい出してるんだろうか?

まあ、無事に街に着けば分かるだろう。

「ところで、イノシシはどうします?」

 頭を切り落とされたイノシシはまだ放置されている。

俺の中では食肉という認識なんだが、どう扱うつもりなんだ?

「そうだな。お前、しまっておくことできるか?」

 重さ的には問題ないけど、ここで捌いたりしないんだな。

いや、ここで捌くって言われても困るわけだけどね。

もしかしたら一回くらい捌き方を見た方が良いかもしれないけど、できれば今回は勘弁して欲しい。

ちゃんと設備が整ってるところの方が、精神衛生上も良いとおもうしな。

「じゃあ、しまっておきますね。」

 そういって俺は、イノシシの遺体を”収納”した。

 あ、どうだろう。

 後で試してみるか?

「あの……」

 不意にベネットから声をかけられて、俺は面食らった。

「ごめんなさい………」

「あ、うん……」

 俺はベネットの謝罪に間抜けな受け答えしかできなかった。

いや、まさか素直に謝られるとは思ってなかったからなんだけど。

トーラスの方も申し訳なさそうに頭を下げてくる。

「俺も謝る。すまなかった……」

 本当はここで問い詰めるべきなのかなぁ……

 でも、俺そういうの苦手なんだ。

「いいですよ。謝られるような事じゃないです。今後注意していただければ構いませんから……」

 俺は、曖昧に笑って誤魔化した。

何をどう注意しろとか、あれこれ言えるほど俺は的確に指摘できないしね。

むしろ、戦士としての腕は二人の方が上なのだから、俺が邪魔にならない事を探った方がいい気がする。

「それと、俺の方でもおかしな動き方をしてたかもしれません。ちょっと道中で基本的なことを教えてください。」

 俺も頭を下げておく。

現実なら嘔吐してるレベルだと思いますが、ヒロシも幾分頑丈になっているのでこの程度で済んでいます。

皆さんデリケートな部分は大切にしましょう。

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