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12-23 同盟かぁ。

色気のない話が続いております。

 軍事の話はご婦人には受けない話だ。とはいえ、ベネットも元は傭兵だから聞いていて分からないという事はないだろう。

 問題は、バーナード卿の奥様だ。

 話を続けるべきかどうか、少し悩む。

「奥様、よろしければアルトリウス様の授業をお聞きになるのはいかがですか?

 他にも、化粧品のサンプルなどもございますし、是非お手に取って確かめていただきたいんですが?」

 ベネットが状況を察したのか、奥様を別の場所へと誘導してくれる。

「そうね、つまらない話が始まりそうだし。

 申し訳ないけれど、席を外させていただきます。」

 そういうと、ベネットを連れて、バーナード卿のご婦人は席を外してくれた。

「すまないな。あれはあれでよい妻なのだ。ただ、少々口が悪い。」

 バーナード卿の評に俺は少し驚く。あの程度で口が悪いとは思わないけれどなぁ。むしろ、しっかりサポートしてくれるいい奥さんだと思う。

 感じ方は人それぞれだけれど。

「そこは、おいておきましょう。

 楽しい話かと言われれば、人を選ぶのは事実ですしね。」

 少なくとも俺は嫌いな話ではないけれど、つまらないと思う人は絶対にいるはずだ。

「しかし、連合と同盟すれば、海軍がいらないというのは少し短絡的だと私は思いますが。

 そうでもないんでしょうか?」

 バーナード卿は頷く。

「確かに短絡的だ。同盟だからと言って、相手が自分たちの思い通りに動いてくれるわけではない。というか、むしろ従属するのはこちらだろう。」

 大国の意地として、新興の国に後塵を拝するのは良しとしないのは分かる。故に同盟というなら、相手が従うものだという思い込みもあるのかもしれない。

「この国には海軍は影も形もない。精々、商船を改造した砲艦をいくつか商人が有しているに過ぎない。

 その状況で、世界最強の海軍を持つ連合に逆らえるものか?

 じわじわ締めあげられるのが目に見えている。

 とはいえ、では海軍を育てるまでにどれだけの期間と金が必要か。10年、いや20年は必要だ。」

 正直、それでも楽観した見方だろう。絶対に連合からの横やりが入る。

「それでも、バーナード卿は海軍が必要であるとお考えですね?」

 そういうとバーナード卿は頷く。

「私もそれについては、賛同します。連合に比肩するとまではいかずとも、他に侮られる海軍では、あってはならないと思います。」

 俺の言葉の真意を測るようにまたバーナード卿は目を細める。

「卿は、何故そう思うのかね?」

 理由は様々にある。

 とは言っても、俺の考えがあっているか間違っているか。正直、判断がつきかねるけども。

「まず、地理的条件です。やはり帝国の農業生産能力には追い付けないでしょう。

 今の状況でも、フランドルで食む麦は帝国の麦である。なら、その麦を買う金はどこから手に入れるべきか。

 答えは、おのずと海外に目を向けられるんじゃないかと思っています。」

 バーナード卿は頷く。

「では、その土地を奪えばよいという考え方もあるのではないか?」

 それが難しいと考えたから、領土奪還の後に外征にまでは展開させなかった。その本人が言うのが、なんだか笑える。

「人がいれば話は違ってくるでしょうね。正直、大陸にある三つの国でフランドルが最も人が少ない。

 陸戦で勝つにはやはり人数が要です。」

 そういうと、バーナード卿は肩をすくめる。

「人など植民地から連れてくればいいという考え方もあるが?」

 もちろん、それは一つの解決方法だ。

「では、それらの植民地の人たちは、本国の影響が少ない占領地で何をするでしょうね?」

 地理的要因で、人の行き来が難しい。

 となれば監視の目は届きにくくなるうえに、文化的な融和も少ない。おのずと独立を目指すのは自然な発想だろう。

「無駄な火種を生むだけのような気がします。」

 バーナード卿は嬉しそうに笑う。この人こんな笑顔もできるんだな。

「まさか、ここまで理解している人物がいるとは。何度話しても、ここまで通じるものはいなかった。

 転生者という事でレイオット様には期待をしていた分、裏切られた気持ちが強かったのだが。

 やはり来訪者は違うという事かな?」

 なんか変な期待を持たせてしまったかもしれない。

「いや、私もレイオット様と同じです。単に、聞きかじりの知識を披露しているにすぎません。それにアルトリウス様の薫陶のおかげという面もあるかもしれませんね。」

 実際、先生に教わったことは多い。

 それと組み合わせてインターネットや、そこで買い求めた電子書籍のおかげでそれなりのことを口にしているけれど、実際現場で働いているバーナード卿の方がよほど知見は深いと思う。

「いずれにせよ、理解をしようと努める姿勢は素晴らしい。できれば、もっと深い話が出来ればよいのだが。

 さすがに茶会で話すべきではないことも多いしな。

 また機会があれば、話をさせて欲しい。

 それと砲艦の件は無理を言っていると思うが、出来る範囲で構わないのでよろしく頼む。」

 それについては、サボり魔の方から返信が来ていた。俺が予測していたものをほぼ形にしてくれている。

「きっと、ご満足いただけるものをお納めできると思います。

 ご期待ください。」

 まあ、とはいえ船を作るのには時間がかかる。2年くらいはかかるかなぁ。

 

 お茶会の締めくくりは、飛行船の到来だ。

 予定としては、補修も終わりいつでもこちらに来れるという事だったので丁度お茶会がある日に合わせてくれるようにお願いしていた。

 因みに俺の手配じゃなくて、レイナの手配だ。粋なことをしてくれる。

 希望者を募り、何度かベルラントの街を周回する遊覧飛行を行う。雪がちらついているので、なかなかいいアトラクションだな。

 少し寒いので俺はコートを羽織り、遊覧飛行に付き合った。

「これが量産できたならなぁ。連合に同盟など申し込まなくても済むんだが。」

 バーナード子爵がぽつりと漏らす。

「なかなか難しいかと。

 こいつを浮かせているドラゴンコアがまずもって手に入りません。空を飛ぶなら、他の方法を探した方がいいと思います。」

 そう返答すると、後ろから王子様が声をかけてくる。

「だから、飛行機を作ろう。魔法で飛ばすのでもいいぞ?」

 あのロケット飛行機か。無茶を言ってくれる。

「レイオット様、まずクリアすべき課題が数多くございます。呪文で《飛行》というものはありますが、重量制限が厳しいです。

 そのうえ、空を飛ぶ魔獣ほどの速度は出せません。」

 まあ、《飛行》をかけた人員にロケットブースターをつける運用なんてのもありえなくはないけども。

「サンクフルールがワイバーンを飼いならしたという噂がございますが……

 戦闘でしか使えないのでは、あまり意味は無いかと。」

 バーナード卿の言葉に俺は興味がわいた。

「どれくらい飼いならせるものなんですかね? 数によれば、輸送に使えるかもしれません。」

 俺の言葉にバーナード卿は首を横に振る。

「大した数ではないだろう。よくて数十、下手をすれば数匹じゃないかと思う。

 何せワイバーン自体の個体数が多くない上に、飼育が大変らしいからな。牛一頭を毎日餌で与えないといけないとも聞いた。」

 牛一頭を毎日か。それは確かに厳しい。

「牛一頭なら、大した量じゃないだろ?」

 王子様は、そこら辺の感覚が分かってないんだなぁ。

「レイオット様、ちょうど城の牧場がご覧になられますよね?

 あれが牛なわけですが、一頭を育てるのにどれくらいの時間を要するかご存じですか?」

 王子様は少し悩むそぶりを見せる。

「1年くらい?」

 まあ、育てるのはそれくらいだろうな。

「妊娠期間も含めれば2年くらいは見ておいた方がいいですよ。

 それを毎日です。

 そりゃ育てている農家が多ければそれなりに数は揃えられますが、結構なお値段しますよ。」

 場合によれば、用意することが不可能になる場合もあるだろうなぁ。

 そういう意味で、ワイバーンの軍事利用や輸送力で使うのは難しそうだ。せめて、穀物を食べてくれてるなら楽なんだけども。

「空を飛ぶ魔獣で扱い易い奴がいればいいんだろうなぁ。」

 王子様が独り言のようにつぶやくけれど、そう都合のいい魔獣がいるかどうか。それにそもそも、魔獣を使役するのは大変だ。

「魔獣の使役は大変そうですからねぇ。冬の間、フランドルを走る雪狼は、あれでも使役に苦労している様子ですよ。

 動物や他の魔獣で満足してくれますが、元々は人を食べる生き物ですから。

 犬と交配させることで、ようやく落ち着いてきたらしいですよ?」

 バーナード卿が首をかしげる。

「やけに雪狼に詳しいなヒロシ卿。何か、雪狼に関わっていたりするのか?」

 確かに、犬との交配を勧めたのは俺だ。なので、関係していると言えば関係している。

「通りかかる度に、襲われるものでいい加減大人しくなって欲しかったんですよ。

 なので、近縁種に見える犬と交配してみてはどうかって提案したんです。

 聞けば子供の頃から育てても使役者が食われるという事例は後を絶たなかったらしいので、割とすんなり受け入れてもらえました。

 まだ、試験中というところですが大分おとなしくなっているらしいですよ。」

 ふむ、とバーナード卿は何かを考えこむ様子を見せた。

「近縁種と交わることで大人しくなるのであれば、他の魔獣にも試してもらいたいものだな。

 私の領地でも魔獣は悩みの種だ。

 以前は、領地を持つ貴族の責任で駆除をしていたわけだが、最近では自前で処理できる貴族も減った。

 傭兵頼りというのも効率が悪い。

 それなら、もとより大人しくなってくれるに越したことはないんだがな。」

 なるほど。

 まあ、それができるかどうかは時間が必要だろう。

「面白いアイディアではあると思います。ただ、生き物が相手ですからね。

 思うままに操作できるとは思わない方がいいと思いますよ。」

 自然を意のままに操れると思ったら、足元を掬われたという話は枚挙に遑がない。そもそも、雪狼の件もうまくいっているように見えて、失敗しているって可能性もあるしな。

 いずれにせよ、時間のかかる話だろう。

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