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12-15 見送りしたり、話を聞いてみたり。

地盤を固めたり、影響力を確保するためにいろいろ画策したり……

 寝室に戻ると、ベネットがタブレットを見ていた。彼女もレイナと仲はいい。

 きっと、漫画友達なんだろうなぁ。

 いや、深く踏み込むのはよそう。プライベートに関して、あれこれ口出しすると関係がこじれる。

「どうしたのヒロシ?」

 不思議そうに俺の方を見てくる。

「いや、レイナさんがセレンさんを引き込もうとしてたからね。

 ベネットもそう言うの見てるのかなぁって……」

 そういうとベネットは、あぁ、と妙に納得したように頷く。

「レイナ様の趣味はいろいろ広いから、どれなのかは分からないけれど。確かに、人に薦めることに熱心だよね。」

 まあ、それが悪いという事ではない。

 コミュニケーションツールとして使ってもらう分にはいいんだけれど。

「さすがに、TPOは弁えていると思うけどね。ちなみに、ベネットもいろいろ勧められたの?」

 俺がそう尋ねるとベネットは頬を染めながら、目をそらして頷く。

 そうか。

 一体どんなものを勧められたのか興味がないと言えば嘘になるけれど、人の趣味にあれこれ口出しをするのはよろしくない。

 これ以上追及するのはよそう。

「そういえば、ちゃんとご飯食べた?

 お願いはしておいたけど、食べられないものとかあれば言ってね?」

 そういいながら、俺はタイを外して着替えを始める。

 どうしてもスラックスと絹のシャツだと落ち着かない。寝室にいる時はなるべく寝間着に着替えておくことにしている。

 寝間着と言ってもパジャマじゃなくてトレーナーにスウェットという出で立ちだ。

 これがやっぱり一番楽。

 羊毛で作られた生地でできているから、とても暖かい。

「まだ大丈夫。というか、つわりってまだ体験してないんだよね。

 普通にご飯食べられるから、そんなに心配いらないかも。」

 そうなのか。色々大変なんだろうなと心配してただけに、軽くて本当に安心する。

 このまま順調に出産まで進んでくれればいいけれど。

「時々ふらっとすることはあるけど、このくらいなら平気だよね。

 でも不思議な感じ。

 お腹の中に赤ちゃんがいるって、全然感じないから。」

 お腹が目立っているわけでもないし、確かに言われてみないと赤ちゃんがいるとは思えない。

 つわりも軽いというし、なかなか実感できないよな。

「グラネにも乗れないし、ちょっと体がなまっちゃいそうって感じるけど……

 赤ちゃんいるって思うと無理はできないし、なかなか落ち着かないなぁ。」

 ベネットが不安に思うのは、分からないでもない。

 でもホルモンバランスが変化することで、精神的に不安定になるという話も聞く。そう考えると俺が全部理解してあげられるわけではないんだよな。

「何かあればいつでも言って。外には出ないんだから、いつでも駆けつけるよ。」

 ベネットの横になってるベットに腰かけて、彼女の手を握る。

「じゃあ、今日は一緒に寝てくれる?」

 ふしだらなことを思い浮かべる自分が嫌になる。こういう時くらいは、まじめにできないものか。

 つくづく、自分は駄目な人間だな。

「もちろん。姫様のお望みとあれば。」

 俺は笑いながら、ベットに上がる。丁度タブレットの中身が見えてしまったが、それは口にしないでおこう。

 

 翌日、ジョンたちを送り届けてもらうためにハンスに城に来てもらっていた。

 ここのところ遺跡に建てた砦に入ってもらっていたので、久しぶりに顔を合わせられる。

「ハンス、そっちは不自由ない? 必要なものがあればいつでも言って。」

 そう声をかけると、ハンスは苦笑いを浮かべる。

「蛮地で過ごしていた時に比べれば、何の不自由もないさ。

 雪が厄介なことくらいで飯も寝床もしっかりしているし、ヒロシが採用した人たちも俺の事を受け入れてくれている。

 そうだなぁ。

 しいて言うなら、砦の周りにたむろしているスカベンジャーたちが騒がしい位か。

 しょっちゅう喧嘩をしているよ。」

 それは、どこの遺跡でも同じなので仕方がない。彼らからすれば、命懸けのことだし妥協はしにくいだろう。

「喧嘩をするなって言われても無理な話さ。

 やれ横取りしただの邪魔をしただの、女を取られたとか酒の量で喧嘩するんだから、目くじら立ててもしょうがないと思うぜ。」

 ジョンはブラックロータスでの経験から喧嘩の中身が推測できたのだろう。

 肩をすくめて、ハンスに忠告をした。

「無駄に介入しない方がいいってことかね?

 あぁ、俺はハンス、よろしくな。」

 そういうと、ハンスはジョンに手を差し出す。

「俺はジョン、よろしくなハンスさん。

 ヒロシに世話になっているから、俺にとっても恩人みたいなもんだ。

 まあ、とりあえず喧嘩については下手に仲裁しない方がいいよ。

 死人が出そうならともかく、引き際は多分弁えてると思うぜ?」

 経験的にハンスよりもジョンの方が正しいんだろうな。

「そうか。まだまだ、分からんことが多い。

 蛮地でも喧嘩はしょっちゅうだったんだから、お節介を焼くなというのは分からないでもないんだがな。

 どうしても、衛兵隊長と呼ばれると真面目にやらないと駄目だ見たいな気になってしまって駄目だ。

 空回りしてるのかもなぁ。」

 やはり気負う部分があるのか、ハンスは頭を掻いて力なく笑う。

「いや、よくやってもらってると思うよ。

 衛兵たちからはハンスの評判は聞いているし、露店を開いている商人からも苦情はない。

 真面目になりすぎるって言う事なら、多少他の人たちに任せてみるって言うのはありじゃない?」

 何であれば、シフトを組んで交代制にしてもらってもいい。

 それくらいの人数は雇っているはずだ。

「そうだな。俺一人の考えで人をまとめるのはよくない。

 何人かの班に分けてみるか。」

 何人か目を付けた人間はいるんだろう。ハンスはシフト制を組むことを決めた様子だ。

「オークなのに、真面目なんだなぁ。

 酒飲んで女侍らしているのかと思ったけど、うちのおっさんより全然まともだわ。」

 ジョンにおっさん呼ばわりされたベーゼックが嫌な顔をする。

「勘弁してくれ。

 普通のオークは、ハンスさんみたいに真面目じゃないんだ。

 それで、オーク以下ってレッテルを張られたらたまったもんじゃないよ。」

 考えてみると、俺は普通のオークに会ったことがない。ハンス以外のオークって言うのはどういう種族なんだろうか?

 噂はいろいろと聞いた事はあるけれど、どれもいい噂は聞かない。

 いや、でもそれを口にするのはな。

「まあ、俺はオークの中では異端だからなぁ。

 乱暴なのは、どうにも気が進まないだけで別に女性を侍らせたくないわけではないし。

 酒だって飲むぞ?

 ただ、それだけやってれば幸せって感じられるわけじゃないくてな。」

 女性を侍らせているハンスというのが想像がつかない。下世話な好奇心だけど、ハンスがどんな反応をするのか見てみたいなぁ。

「そのうち宴会でも開くときに女性を呼んでおこうか? ベーゼックさんはそう言うのに詳しいだろうしね。」

 そういうと、ベーゼックは口をへの字に曲げる。

「詳しくないわけじゃないけど、そういう事ばかりにかまけてるように見られるのは困るよ。

 いくら信者がほとんどいないとはいえ、教会を任されてる身だからね。最近は控えてるんだよ?」

 すぐ疑ってしまうのは悪い癖だけれど、ジョンやノインの反応を見ると控えていると言っても回数を減らしている程度の話なんだろうなぁ。

「オークを相手してくれる子がいるなら、大歓迎だ。

 さあ、そろそろ行こうか?」

 そういうと、ハンスは車の扉を開く。

 こっちの世界の車もだいぶ進化してきている。

 サスペンションもだけど、速度も結構速くなった。

 相変わらず無駄に頑丈そうなところは変わっていないけれど、値段も以前と比べれば安くなってきたとは思う。

「お?これはロニー商会の新モデルじゃん。

 さすが元祖自動車メーカー、見栄えもよくなってる。

 タイヤはゴムタイヤなんだな。」

 ジョンはハンスの乗ってきた車に興味を抱いた様子だ。

「うちの商会の奴でもよかったんだけど、ライバルメーカーの奴も気になってね。思った以上に馬力があって驚いたよ。

 エンジンの差だとは分かっているけれど、うちももうちょっと頑張らないとね。」

 お試しに買ってみたけれど、思っていた以上に精度が上がっていた。

 もうすでにディーゼルエンジンとしては、完成していると言っても過言じゃない。

 後は小型化して気筒数を増やしていけば、魔法の力を借りずとも馬力を稼げるようになるんじゃないだろうか?

 さすが自動車製作元祖の商会だ。

 うちも負けてられない。

「そのうち、俺も買うから、いいやつ作れよな。じゃないとこっちの車買っちゃうかもしれないぜ?」

 そういいながら、ジョンは車に乗り込んだ。

「分かったよ。

 ご検討のほど、よろしくお願いします。」

 俺は、頭を下げてジョンたちが出発するのを見送った。

 

 執務室に戻り書類仕事をしているとユリアが部屋に入ってきた。

「ヒロシ様、少しお時間よろしいですか?」

 いや、むしろこちらとしてもお話をしたかった。そちらからきてくれるとは好都合だな。

「仕事をしながらですけど構いませんか?」

 そういうと彼女は頷く。

「それで、こちらからも質問があるんですが、あなたは王子様と結婚したいですか?」

 そう聞くと彼女は赤面する。

 いや、そういう乙女な反応を求めていたわけじゃないんだけどな。

 真面目な話だ。

「レイオット様と、ともに暮らしたいという気持ちはあります。

 でも、私は教会の犬ですから。」

 少し落ち着いたのか、顔をうつむかせて切ない心情を語り始める。

 いや、それも別に聞きたいことではない。

「具体的な話をしたいんだ。

 君は、虐げられたまま王子様のもとにいたいのか、そうじゃないのか。

 どっちなんだい?」

 少なくとも、そばにいたいという気持ちは伝わってくる。そうする理由は少なくとも教会の一員としては無いはずだ。

 俺はじっとユリアの返答を待つ。

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