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11-26 わーい楽しい……

さらなるチートの加速が読者に襲い掛かる。

 1週間ほど街に慣れるという名目で、ジョンたちには休暇を取ってもらった。

 その間に探索者ギルドへの登録や連絡員としてセレンを紹介したり、契約内容の確認を行う。

 おおむね問題は無いわけだけども、セレンとベーゼックが教会関係者という事もあり、それはそれで別の手続きが必要なことが分かった。

 ブラックロータスでは、特定の宗教に加担しないという事で、布教活動の禁止や他宗教の信徒に対する治療義務なんかも負わされる。

 こっちは、探索者ギルドの管轄じゃなく、ブラックロータスを運営する市の管轄だ。

 まあ治療義務とは言っても宗教が違うから治療しないというのは駄目というだけでただで治療しろという話じゃないから特別凄い制限がかかったわけでもない。

 というか、二人が宗派を気にしていた素振りが見えないので、多分気にしてないんじゃないかなぁ。

 ついでに、市役所で手続きできる銀行業の登録も行う。

 イレーネ銀行というのが、うちの商会で開設した銀行名なわけだけど、一応国からの許認可は受けていた。

 窓口はセレンになる。

 もちろん正式な活動が始まれば銀行出身者の人員が来ることにはなっているが、業務自体は開始することになっていた。

 相手はもちろん、ジョンたちスカベンジャー組だ。

 信用が積みあがっていけばジョンたち以外も預けてくれるようになるとは思うが現状は単なるプライベートバンクになりそうだ。

 銀行業をやるにあたって、しばらくは、ベネットとトーラスはブラックロータスに残ってもらう。

 護衛は絶対必要だろうしな。

 どう考えてもブラックロータスは治安が悪い。

 俺も、こっちでしばらくの間過ごすことになるけれど、やるべきことも多い。

 

 そこで、便利なのが”収納”のレベルアップによって得られた能力だ。

 

 うん。今の今まで放置してきたけど、向き合うべき時が来たな。望んでいたこととはいえ、現実になるとビビる。

 ついにインベントリ内に入れるようになった。しかも意識は覚醒したままだ。

 ……というわけで、メインの容量を有しているインベントリタブに入ってみたんだが何も見えない。

 真っ暗な空間というか、黒いビニール袋に包まれて目の前に光る画面が浮かんでいるようにしか見えなかった。タブをいくつか切り替えても特に変化はない。

 とても不便だ。

 仕方ない、一旦出よう。

 えっと、今はどこのタブだろうか?

 とりあえず、元のタブに戻ってから出る。

「おかえり。」

 ちょっと緊張した面持ちのベネットに出迎えられる。

「どうだった? どんな感じ?」

 ペタペタと触られるけど、特に変化はない。

「いや、なんだか袋に入れられているような感じかな。

 別の人が持っているインベントリにアクセスすれば、その人の所に出そうではあるけど。」

 とりあえず、通常の枠で滞在することは楽しいことではなさそうだ。

 まず、何も取り出せなかったしな。

「次は、車とかを納めている場所に入るの?」

 とりあえず、俺は頷く。何か変化があるかもしれない。

「すぐ出てくる?」

 なんでそんなに不安そうなんだろう?

 ベネットも何回か利用しているはずだけれど、俺だと不安なのかな。

「お試しだから、確かめたらすぐ出てくるよ。」

 そう言って俺は、再度インベントリにアクセスする。

 やり方は簡単だ。ウィンドウを呼び出して入りたい場所に手を突っ込むような感じで突きだすと、中に入れる。

 今度は、特別枠に納めたコンテナハウスだ。明かりがないため、先ほどと同様に真っ暗ではある。

 けどさっきとは違い圧迫感はない。

 空間があるなと感じる。確かスイッチはここだったかなと探りながら、電灯のスイッチを入れると点灯した。

 部屋の中に靄がとかそういうこともなく、普通に部屋が照らされる。繋がっている部屋や馬小屋には入れた。

 ただ、外に繋がる扉を開けても、外には出られない。というか、出ようとすると、あの圧迫感が体を包む。

 戻れば、普通に戻れるので部屋の中で滞在することは可能なのかな?

 冷蔵庫に置いたものなんかは、取り出せるけれど、ここでは普段使っているインベントリにはアクセスできない。

 つまり事前に滞在用の物資をこっちに置いておかないと駄目って事か。

 時間経過が止まっている様子もないから、滞在していれば、それだけ腐敗や劣化は進むかもしれない。

 いや、まあむしろそうであってくれないと食事とかも取れないよな。とりあえず、空気中の酸素濃度に変化が無いかを確かめているが、特に有意な変化はない。

 窒息するってこともないし、強制的に追い出されるという事もないかなぁ。

 一旦戻ろう。

「おかえり。ちょっと長かったけど。」

 そこまで不安がられると困るな。とりあえず、中断しようか、どうするべきか。

「いろいろと試してみないとね。

 今度は、ハンスの所に行ってみるよ。」

 やはり続行してみよう。事前にテストをするという事は、手紙で出していた。

 日時の指定もしてあるから、やらないと逆に不安がられるだろう。

「分かった、気を付けてね。」

 俺は頷いて、キャラバンのインベントリにアクセスした。一つのインベントリを複数人で共有している。

 ウィンドウを開くと、その先の状況が断片的に覗ける。

 一応、ハンスの所から出るとは伝えてあったので普通にコンテナハウスの中が見える。出てくる先にものを置かないようにしてくれているから、出ていきやすいな。

 思い切って出る。

 キャラバンのみんなが待機していたのは知っていたので、全員から驚きの声で出迎えられたことの方にびっくりする。

「な、何?

 何かあった?」

 そう尋ねるとハンスは首を横に振る。

「いや、何の前触れもなくてびっくりしただけだ。普通は、取り出す動作が必要じゃないか。

 ヒロシの場合は、自分から出てこられるんだな。」

 そうか、そういう違いがあるな。

「ごめん、前触れか何かがあった方がいいよね。」

 そう考えたら、持ち主に事前通知を送る機能が俺の脳裏に焼き付けられた。

 相変わらず気分はよろしくないが、分からないままよりはましかな。

 

 しかし、まあなんだ。

 

 これで、最早《瞬間移動》はいらなくなったかもしれない。インベントリを持っている相手の所なら自由に行き来が可能だ。

 あー、いや、そうか。

 インベントリを持っている相手は必要か。誰もいない場所には、やはり移動はできない。

 そういう意味で、《瞬間移動》は必要だな。

「あ、そうそう。これ、おみやげ。

 前に黒いもの話をしてたよね? あまりおいしくないかもしれないけど。」

 以前、そんな変な食べ物があるとミリーに話したら、食べてみたいと言われたので購入しておいた。

 10㎏で10ダールととても格安だけど、あまり進んで食べたくはないかなぁ。

「本当に真っ黒だね。食べられるの?」

 自分で食べたいと言ってたくせにミリーはそんなことを言う。

「前に食べたけど、渋いよ。」

 そういうとミリーは笑う。

「とりあえず、すぐ戻るんでしょ? 心配してるだろうから早く戻ってあげて。」

 ミリーの言葉に俺は頷く。

「また、顔を出すから。それじゃ。」

 そう言って、俺はメインのインベントリにアクセスした。

 相変わらず、こっちでは身動きがとりづらい。一度、ハンスたちの場所に出てしまったので、メインタブの出口はハンスたちのコンテナハウスに移ってしまっている。

 とすると、元の場所に戻るにはベネットの所から出るしかないか。試しに事前通知を有効にして、ベネットのインベントリに移る。

 すると、自分で出る前に引き出されてしまった。

「おかえり。もういいよね。

 テスト終わり。」

 まあ、初めてのことだからちょっとなれないとはいえ、ベネットがこんなに怯えるとは思わなかった。

 あーそういうことを考えると、そりゃレベルアップするよな。

「またレベルアップしたから、テストしないとね。付き合ってくれる?」

 こう、ぽんぽんレベルアップされると、ずっとテストしっぱなしになってしまう。

 

「ここが、インベントリの中なんだ。」

 一旦メインのインベントリに移ってから、コンテナハウスに移ってきた。ベネットも一緒なので、先ほどよりかは落ち着いていられる。

 相変わらず、インベントリの分割に使用しているアイテムは持ち込めないようだ。

 そこだけは排他なんだなぁ。

 まあ、紐づけを切るのは触れてなくてもできるし、使い捨てにしてしまえばいいんだけども。試してみたいことをいくつかお願いする。

 本当は別の人に頼みたかったけど、ここまでやってしまったら、勘のいいベネットは譲らないだろう。

「んー、自分で戻れるみたい。じゃあ、戻るね。」

 胃が痛い。

 もう完全に人体実験なわけだけど、平気かな。

「さっき、私もそれ感じてたからね。」

 言う前に、察して返答されると困る。

「さっきのは仕方ないでしょ。俺しか試せる人間がいなかったんだから。」

 そういうと、ベネットは笑う。

「そうだけど、先生に試される前にやっておきたいかなって。」

 そういいながら、ベネットはコンテナハウスから消えた。

 寂しい。

 いや、すぐベネットが自分のインベントリに入ってきたのは分かった。

 だから、すぐにそっちのインベントリに移る。

 どうやら、俺が同一インベントリ内に入ると意識が回復するらしく、ベネットがこちらに気づいて手を握ってくる。

「こっちは、窮屈ね。

 本当に見えない袋に入れられてるみたい。

 今度は、コンテナハウスに入ったら、どうなるか試そう?」

 好奇心旺盛なのはいいけれど、不安はないんだろうか?

「大丈夫? 無理してない?」

 そう問いかけると、改めて不安を覚えた様子ではあったけれど、すぐにベネットは笑う。

「ヒロシなら、何とかしてくれると思うから。」

 いや、俺にはできないことが山ほどある。そういう信頼のされ方は、正直きつい。

 でも、試さないわけにもいかないからな。

「分かった。一旦戻ろう。

 バッグの方をコンテナハウスにつなげるから。」

 そう言って、二人で宿の部屋に戻る。

 事前に部屋の中は見れるから、誰かに見られる心配はないけれど、消えたり出て来たりで見た人には何をやってるかさっぱりだろうな。

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