表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
291/603

11-15 これでも、いろいろと悩んでるんですよ。

楽をするために頑張る。

私の好きな言葉です。

 コンテナハウスを利用するのは俺とベネットだけだ。ジョンやノインたちには公開するのはいいけど、新人3人には内緒だから、宿に泊まってもらっている。

 宿の品質は、向上してない。残念ながら。

 というか、泊まる人間が少ないんだよな。必要とはされてはいるけど、需要が少ないとどうしても品質は上がりづらい。

 仕方がないんだよな。

 夕飯は新人3人と一緒に取ったけど、全員ぐったりしていて食が進んで無かった。

 新しい試みをしているんだから、当然疲れるよな。

 印象的だったのが、サボり魔のもっと楽になると思ってたのにって言葉だ。今思い出しても笑える。

「どうしたのヒロシ? 思い出し笑い?」

 なんか、思いっきり顔に出てたらしく、ベネットに感づかれてしまった。

「あー、うん。もっと楽になると思ってたって言うのが面白くてね。

 いや、実際楽になったとは思うんだ。その分効率が良くなって、逃がしていた客を捕まえられたから、忙しくなったって言うのが皮肉が効いてていいなと思ったんだ。」

 実際売り上げも上がってる。

 対抗業者が少なくなったという事もあるけど、やっぱりさばける人数が増えれば売り上げも必然的に上がるよな。

「ヒロシ性格悪いよ。でも、サボりたいから頑張るって言うのは、確かに面白い子かもね。」

 ベネットも若干笑っている。これからもサボるために頑張っていってもらいたいもんだ。

「そういえば、トーラスから手紙着てるよ? 教導はそろそろ、終了していいんじゃないかって。」

 ベネットから、トーラスの手紙を渡された。

 内容を確認する限り、トーラスやベネットの教導なしでも訓練が行えるくらいには成長してきたらしいし、報告について文書で行うことも身に付き始めている。

 何より、団長のカレルの意識が切り替わりつつあった。

 単なる戦闘員ではなく指揮官としての意識、傭兵団という組織を率いる経営者としての意識が芽生え始めているらしい。

 元々優秀だったんだろうな。

 後、レイシャが意外にも優秀で、古参のやる気を引き出しているとも書かれていた。どういう方法でやる気を出させたのかは不明だけども。

 まあ、これならトーラスはこっちに戻ってきてもらっていいよな。

 ロドリゴの護衛もカレル戦士団だから、そっちで問題が起きなければいう事なしだ。

「そういえば、カレルがヒロシと手合わせしたいとか言ってたけど。」

 俺はベネットの言葉に顔をしかめてしまう。

「必要かな? 俺は、そんなに強くないよ?」

 ベネットが俺の言葉にため息をつく。

「弱いわけないでしょ。ドラゴンと一人で戦って、死ななかっただけでも十分強いよ。」

 それは、呪文のおかげであって。いや呪文も俺に与えられた力なのか。

 能力値も高くしてもらえたからとか、運よく先生に教えてもらったからという事で、どうにも実感しにくいけども。借り物の力で、威張り散らしているような気恥しさがある。

「必要かどうかであれば、必要ないと思う。一人が強くたって、傭兵団として強いわけじゃないしね。」

 確かに、個人の武技だけで戦場を支配するのは難しい。あくまでも、戦場を左右する要素の一つでしかない。

 もちろん警備や護衛となってくれば、より少数同士の戦いになるから個人の力が影響を与える比重は大きくなるが、それでも人数に勝る相手を相手に勝利するのは並大抵の努力では難しい。

 何より、人間である以上限界はどこかしらに存在する。

 ……と言いながらも、ちょっとミリーの強さを見ると俺の考えも揺らぐんだよなぁ。案外100人でも200人でも数を揃えるだけじゃ勝てない相手って言うのもいるかもしれない。

 ここが俺の住んでいた世界とは根本的に違うと思い知らされる場面って言うのは案外多い。

 まず、そもそも銃弾を弾けるって時点でびっくりしたし。

「そういえば、ベネットは銃弾切れるようになった?」

 ふと気になって聞いてみた。そうしたら、ベネットはにんまりと笑う。

「見てみればわかるんじゃない?」

 誘うようなセリフだけど、”鑑定”して見ろって事か。

 いやその、今更ためらう理由はないけどね。

 ”鑑定”を使い確認してみると、バレットガードがバレットパリィに切り替わっている。こうやって技が切り替わるというのもあるから、レベルだけで判断はできないよな。

 しかし、どのくらいの銃弾なら切れるんだろうか?

 流石に大砲の弾とかは無理だよなぁ。こればっかりは実験できないから、確かめようがない。

 そんなことをいっていたら、ベネットがにじり寄ってきた。

「ど、どうしたの?」

 ベネットは俺の言葉に、にんまり笑う。

「もっと近づいたら、もっとよく見えるかなって。」

 いや、そんなことはないんだけども。

「それと、あとで覚えてなさいって言ったよね?」

 いや、急に抱き着かれると困るんだけど?

 

 夜に風呂に入り損ねて、朝風呂だ。

 これはこれで贅沢だけど、問題として仕事がちっとも進まなかった。

 竜皮膜の帆に書く魔法回路の図面を書く予定だったんだけどな。

 ベネットは、まだ寝ているし今日は俺だけ露店に出ようかな。彼女は彼女でやるべきことがあるわけだから、朝食を作って置手紙しておくか。

 軽くトーストとスクランブルエッグくらいでいいかな?

 手早く料理を済ませ、置手紙をしておく。一応、念のために鍵を閉めて戸締りしておく。マーナを一緒に連れてくるべきだったかなぁ。

 まあグラネもいるし、平気だよな。とりあえず、新人たちを迎えに行こう。

 

 営業許可を貰い、昨日と同じように露店を開く。流れは変わらない。効率もよく競合相手も減っているから、相変わらず盛況だ。

 忙しさもそれなりみたいだけど、慣れも出てきたのか余裕がありそうだな。

 じゃあ、次からは二人で回してもらおうかなぁ。これから、人の移動も起こるだろうし暇になる可能性もある。とりあえず、ローテーションで大学や工房に一人回すべきかもしれない。

 お昼ごろになり、ベネットが昼食用にサンドイッチを持ってきてくれた。

 順次お昼休憩に食べてもらおう。

「ありがとう、助かるよ。」

 そういうと、ぷいっとベネットがそっぽを向いてしまう。

 あれ? 怒ってる?

「ほったらかしで行っちゃうなんて、ひどい。起こしてくれればよかったのに。」

 いや、だって、大分疲れてたみたいだし。

「無理やり起こすのは悪いかなって。」

 そういうと、ベネットは俺の耳元に顔を寄せる。

「無理やり起こして、お風呂に入れてくれてもよかったんだよ?」

 突然の言葉に俺は取り乱してしまう。

「ベネット、ちょっとそう言うのは……」

 困っている俺に、ベネットはいたずらを成功させた子供のような笑顔を見せた。

「仲いいですね。」

 そういいながら、リーダーが冷たい視線を送ってくる。

「うるさいな。それより、カタログと注文票は問題ない?」

 俺はベネットの作ってくれたサンドイッチを食べながら尋ねる。

「悪くはないです。時々、字が分からん奴が暴れますけど。周りもフォローしてくれますしね。

 やっぱり、ヒロシさんの名声が効いてますよ。」

 俺は、リーダーのお世辞にちょっと気分を良くする。案外、人をおだてるの上手いんじゃないか?

「二人は、どんな感じ? だいぶ慣れてきてると思うけど。」

 リーダーは、サンドイッチを食べながら、少し眉を寄せる。

「仲が悪いって言う点を除けば、上手くいってます。口を利かないって程じゃないですけどね。

 その分やかましいです。」

 まあ、それはつまり意見交換ができているって事でもある。順調だと思えばいいかな。

 とするなら、最初はリーダーに任せるべきか。

「次回からローテーションで、モーダルに一人残ってもらう。

 俺も、次回以降顔を出せるか分からないから、基本二人で回してもらおうと思うんだけど無理はないかな?」

 リーダーは少し困惑していた。

「いきなりですか? いや、俺が残れば……」

 俺は首を横に振る。

「まずは、リーダーがモーダルに残る。その後は、サボり魔かな。」

 不服そうだな。

 リーダーはサンドイッチを無言で咀嚼する。でも、いつまでも咀嚼し続けるわけにもいかなくなったので、重い口を開いた。

「がり勉が最後って言うのは、どういう意図ですか?」

 それはもちろん、一番不慣れだからだ。これだといじめみたいにも受け止められるから、ちゃんと説明しよう。

「人づきあいが苦手そうだからね。モーダルに残っても、やることは基本、人と話すことだ。

 じゃあ、ここで経験を積んで慣れてから残ってもらった方がいいかなって思ったんだよ。」

 リーダーは渋々といった様子で頷く。

「分かりました。というか、こういう話、俺にしなくてもいいんじゃないですか?」

 まあ、決定権は今のところ俺にあるけど、別に話さない理由もない。

「二人にもちゃんと話すよ。むしろ、俺も不慣れだからみんなが何を考えてるか分からないと、何もできないだけだから。」

 ベネットがそんな様子を見て、小さく笑う。

「ヒロシも、人付き合い苦手だもんね。リーダー君には分からなかっただろうけど。」

 うん、まあ。得意ではないよな。

「そうなんですか? とても、そうは見えませんでしたけど?」

 何を見てそんな風に判断したんだろう? 普通に苦手だってわかりそうなものだけど。

「いろいろお膳立てしないと話せないの。露店にしても店員とお客様、来客の時は姫様の執事、そういう形を作らないとダメって言う感じ。

 だから、ヒロシって言う個人として話す時はとても寡黙なんだよ?」

 リーダーは、ベネットの言葉に困惑している。

「いや、それっておかしいですよね? いつだって、ヒロシさんはヒロシさんじゃないですか?」

 そうだろうか?

 今だって、俺は新人教育係として新人に接している。しゃべれるのは、それがあるからだ。

 ベネットの言うとおり、俺は形が定まらない付き合いはやはり苦手だ。

「そういう形ができれば、人付き合いが苦手な人間もしゃべれるよって話だよ。がり勉ちゃんが、そういうタイプかどうかは知らないけどね。」

 人づきあいが苦手と言っても、いろんなタイプがある。しゃべれるようになるかどうかだって違う。

 無理そうなら、配置転換も早めにしてあげないとな。

「分かりました。しっかり見ておきます。」

 見るって何を?

 あぁ、リーダーがリーダーらしく面倒見てくれるって事か。

「まあ、何か気付いたことがあれば言って。できうる限りのことはするよ。」

 別に役職手当が出るわけでもないから、リーダーは知らんぷりでもいいんだけどね。ただ気持ちはありがたいから、頑張ってもらおう。

感想、ブックマーク、評価お待ちしております。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ