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11-2 お金は使ってこそ楽しい。

性分という奴ですね。

 キャラバンが拠点にしているコンテナハウスに戻る。

 そのコンテナハウスはお金の余裕も出たので当然改造させてもらった。

 当然こっちに来るまでにハンスたちには相談している。

 まずもって、お風呂を内部に設けようという話をして1階部分のコンテナを1つ増やした。

 水回りにはこちらで作ったウーズコーティングの鋼管を使ったり、排水処理を家にあるゼラチンブロブと同じものに変更したりもした。

 流石に臭いなんかはうまく処理できないだろうから、納豆キナーゼブロックも一緒に入れてある。

 タンクには、俺が《水操作》を付与したフィルターを準備して、上水と汚物で分離できるようにもしてある。

 フィルター自体は、《水操作》の呪文を使ってやらないと分離してくれない。

 けど、1回呪文を使えば、呼び出せる分の水の10倍の汚水を処理してくれるようになるから、十分有用だろう。

 今の俺なら1日分の《水操作》を全部フィルターに使えば、ひと月くらい持つはずだ。

 切り替えはセパレーターを入れて、フィルターを取り換えればいい。

 ここら辺の改造は、本当に心が躍った。

 で、到着早々1つに合体させることができて俺としては大満足だ。

 2階部分にもコンテナを二つ用意し、バッテリーを風雨から守れるようにもした。

 なるべく風を正面から受けないように斜め屋根を設置している。

 当然、そこから外を確認できるように跳ね上げ式のハッチを用意し、いざという時はそこから攻撃出るようにしておいた。


 やりすぎだろうか?


 いや、まだだ。


 合体させたうえで、俺が考えたマジックアイテムの偽装ペンキを全体に塗布する。

 こうすることで、周囲の景観と溶け込み、見つけ出しにくくなるという特性を与えることが可能だ。

 大きめのテントとつなげることで、そこで暮らしていることを偽装しつつコンテナハウスで生活にも支障が出ない。

 これで、水場では出しにくいという問題をクリアできるはずだ。

 ちなみに、俺たちが利用するコンテナハウスも同様の偽装をしている。

 今回は、トーラスとベネット、ハルトにカイネという5人での移動だったので、コンテナハウスの大きさはキャラバンのみんなと同じくらいの大きさになってしまった。

 ただ、間取りは若干違う。

 プライベートを大切にするために3つの個室を作ったので入り口を入ってすぐの居間が若干狭くなってしまった。

 ハルトとカイトのために別のコンテナハウスを作るという案もなくもなかったが、それだとハルトに費用の請求をしないと間尺が合わない。

 キャラバンのみんなには費用を出してもらってるのに、なんでハルトにタダでコンテナハウスを渡さなくてはならないのか。

 そこはやはりきちっとお金を貰わないと渡せない。

 まあ、旅の間は面倒を見るという約束なので、テントで寝ろなんて言うことは言わない。

 その上で、イチャイチャするのを見せられるトーラスのストレスを考えると部屋はどうしても三つ欲しかったのだ。

 なので、大きさの割には間取りが若干いびつだ。

 まあ、偽装のおかげでいつ使っても平気という利点はあるんだけども。

 ちなみに、キャラバンのコンテナハウスにも1面を跳ね上げ式にして窓を開けられるように変更してある。


 いや、結構散財したな。


 ハンスたちに渡したお金は、ほとんどこれに消えてしまったし、またいろいろと頑張ってもらおう。

 調子が悪くなったという織り機も修繕した。ハルトの武器が簡単に壊れるからと習得した《修復》がこんなところで役に立つとは思わなかった。

 もちろん、ただで《修復》ができるわけではない。

 修繕するための素材は最低限必要だ。今回の場合は鉄や木材なので、大した金額じゃないけども。

 もう一つの問題は《修復》では、出来栄えを完全に元に戻すことはできない。

 なので、数度《修復》をかけてしまうと、出来の悪い代物になり果ててしまうという点は問題点かもしれない。

 つまり、どんなに素晴らしい名刀だろうと、《修復》を繰り返していけば、なまくらになってしまうという事だ。

 俺の腕がよければ、その問題を解決できるらしいけれど、如何せん鍛冶や木工をやったことはないからなぁ。あくまでも応急措置だと心得よう。

 というわけで、俺は思わずにやにやしてしまった。

 今も丘の上からコンテナハウスを見下ろしているが、本当にテントが二つ並んでいるだけのように見える。


 あとは、周囲にめぐらした有刺鉄線くらいだろうか?


 移動を頻繁に繰り返すから設置しやすい防壁として有刺鉄線を選んだ。

 キャラバンで飼育している動物はその囲みの中に入れて、夜の間逃げたり襲われないようにしようと提案したのだ。

「帰ってきたよー!!」

 ミリーがそういうとハンスがやってきて、槍で有刺鉄線に触れる。

 そうすることで、出入り口の有刺鉄線をインベントリに移し替えるというわけだ。設置も思う通り展開できるから非常に便利だ。

 有刺鉄線のなにがいいって、軽いってことだ。結構な距離を囲んでも500㎏程度で済む。

 通常のインベントリは重量制だから、軽いというのは何よりの利点だろう。これがフェンスだとか、砂を入れた箱だとかだと大して広げられないから不便だ。

 そういえば、《石壁》の呪文を習ったけどいまだに使ったことないなぁ。

 移動するのが前提だから、気軽には使いづらい。ずっと石壁が残っちゃうしな。

 領地を貰えれば活躍してくれるとは思うんだけど。

「おかえり、ヒロシ。何かいいことでもあったのか?」

 俺はハンスの言葉に頷く。

「欲しかったものが見つかったんだ。量が十分かどうかは分からないけどね。」

 それはよかったとハンスも笑ってくれた。

「他にもハンスが探してくれてたものも、有効活用できそうだよ。というわけで、足らなかった分はそれで相殺ってことでいいよね?」

 コンテナハウスについて、一応見積もりやらなんやらを渡して、足らない分は分割という事で納得してもらっていた。

 本当は、全部俺持ちでもよかったんだけども。

「あー、そうか。役に立ったなら嬉しいよ。だけど、足らなかった分に見合うだけの売り上げが上がるか?」

 ハンスは自分の見つけたものを評価してないようだ。

「むしろ、こっちからも支払わないといけないくらいだよ。実際にお金になるのは人を呼んで採掘をしてからだけどね。」

 採掘には細心の注意が必要だ。その際にはきっとキャラバンのみんなに世話にならないといけないだろう。

 ただ、立ち止まって掘ればいいってもんじゃない。安全を確保できなければ採掘は難しいだろう。

「もちろん、採掘するときは手伝ってくれるだろ?」

 そう問いかけると、ハンスは頷いてくれた。

「聞くまでもないだろう? 俺はヒロシの味方さ。」

 俺はうれしくて小躍りしてしまいそうだ。

 

 ベネットとロイドが互いに馬に乗り対峙している。別に喧嘩したとかじゃなく訓練なわけなんだけど、とても緊迫感がある。

 お互い木剣なわけだけど、そうは思わせないくらいの緊張感でお互いに剣を合わせていた。思わず俺はかたずをのんで見守ってしまう。

 剣技はロイドがやや優勢、馬との連携はグラネというアドバンテージがあってベネットが優勢だ。

 武器の優劣で言えば、両手剣のベネットが優勢なので順当に行けばベネットが勝ち越すと思ってたんだけども。

 

 結果から言えば、ロイドの圧勝だった。

 

 終始、華麗で目を奪うような技を繰り出すベネットに対して、あわてることなく対処するロイドが隙を突き急所に剣を突き付ける。

 それを繰り返されてしまい、ベネットは自信喪失してしまったようだ。

 若干涙目だったので、馬から下りてきてうつむくベネットを抱きしめてしまう。

「ロイドさん強すぎる。」

 おかしいなぁ。ベネットとそんなにレベル差があるんだろうか?

 ”鑑定”してみないと何とも言えないけど、ベネットのレベルは決して低いものじゃない。何かしらのからくりがあるんだろうか?

「俺が強いんじゃない。相性の問題だ。」

 相性って、どういう事だろう?

「ベネットの剣技はフェイントを多用する剣技だから、力押ししてくる敵には有効だ。

 対して、ロイドはカウンターを狙う戦い方だ。こっちには相性が悪い。

 観察することを主眼に置いているからな。

 逆に、ロイドに対して俺は力押しするタイプだから待ちの姿勢で不利になる。

 そういう事なんだが、分かるかヒロシ?」

 ハンスの言葉に、俺はそのまま当てはめていいのか分からいけれどトレーディングカードゲームのデッキ相性みたいなものを思い浮かべてしまった。

「今は、俺の方が追い付けてるだけだ。そのうち追い越される。」

 ロイドは、本当に口数少ないんだよな。それはベネットを褒めてるのかな?

 でも、片腕のロイドにぼろ負けしたことが相当堪えたのか、ベネットはしゅんとしたままだ。

「追い越せるなんて思えないです。私、才能ないのかな。」

 俺は、ベネットの言葉に閉口してしまう。あれで才能が無いとか言われたら、俺は槍を握る資格がない。

「慢心もよくないが、自分のことを卑下するのもよくない。少なくとも君の剣技は素晴らしいものだ。

 実際ロイドから、数本とっているだろう?

 その時のことを思い出すんだ。どんなものでもそうだが、諦めた時が終わりだ。

 逆に諦めなければさらに上に行ける。

 ベネット、君には才能がある。

 まあ、俺の補償なんて当てにもならないだろうがな。」

 ハンスの言葉にロイドも頷いている。

「だって。

 まあ、俺のお嫁さんになるんだから、全然諦めてもらってもいいんだけどねぇ。」

 俺が苦笑いを浮かべる。

 そもそも、ベネットに戦わせる状況はあまり望んでいない。戦うとひどい目に会うぞという、抑止力であってもらえればいい。

 そのためなら、いくらでもお金を注ぐつもりだ。

「確かにそうだな。今でも十分な腕前だしな。」

 ハンスも笑う。

「次は勝ちます!! 諦めないもん!!」

 抱きしめる俺を振り払い、テントに入っていってしまった。

 怒っちゃったかな。

「良い焚き付け方だ。彼女はもっと強くなるぞ。」

 ロイドが俺の肩を叩く。

「ヒロシはそんなつもりじゃなかったんだろう? 後を追った方がいいぞ。」

 ハンスは苦笑いを浮かべている。

 俺は口をへの字に曲げて、ベネットの後を追った。

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