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10-24 今後どうするかしっかり考えないとな。

後始末が続きます。

 結局、俺は返答の猶予を貰った。

 いや、いろいろと面白いアイディアだ。他人に対する配慮とか、影響力の大きさとかを考えなければだけども。

 どれもこれもが戦争を想定している代物ばかり。一番無難そうに見える動力船だって、海軍を構成するにはとても重要な要素だ。

 とはいえ、これがフランドル王国のためになるかと言われれば微妙なところだろう。

 地政学的に言えば、どう考えてもフランドルは陸軍国家だ。

 となると、大陸を制覇でもしない限りは海軍力に資源を割くわけにはいかない。

 というか、下手すると飲み込まれる立場になりかねない。宿命的には海軍国家であるであろうベレスティア連合に喧嘩を売る未来が見える。

 その連合の武器となるのが動力船だ。

 もし、それを作ってしまえば、逆にフランドルを窮地に立たせかねない。

 

 一番無難なのか、後装銃だろうか?

 

 雷管もセットで開発しないといけないし人死にが増えると、人口密集度が低いフランドルが不利な気もしなくもないんだよなぁ。

 人口を増やす努力をまずすべきだと思う。

 飛行機に至っては論外だ。

 そもそも開発できる気がしない。

 それをいきなりジェット戦闘機作れって何をどうとち狂ったらそんな発想になるのやら。

 いや、ジェット戦闘機じゃないな。

 これ、ロケット戦闘機だ。

 

 頭が痛い。

 

 勘弁してくれ。

 機関銃とかのイラストもあるけど、これに至っては後装銃が前提の代物だから論外だ。

 どうしたものかな。地政学とは言ったけど、別に俺は学者じゃない。

 そこら辺も、もう一度ちゃんと調べたほうがいいかもしれない。

 

 でも、不思議だ。どれもこれも工業製品ばかり。

 魔法という要素が完全に抜け落ちている。

 蛮地という土地についても無頓着そうだ。

 モンスターが徘徊している以上、人間同士の争いばかりでもない。

 そういう要素は全くお構いなしに人間同士の戦争のことばかりに注意が行っている気がするのは俺だけだろうか?

 確か、第三王子の能力って魔法の威力が高まるのと、魔法に対する耐性だったかな。

 もっと魔法に頼っていてもおかしくないと思うんだけどなぁ。

 

 いや、魔法に対する耐性が逆に言うと問題なのか? もしかして、ポーションを飲んでも効かないとか?

 

 真面目に考えると疑問は尽きない。

 自宅に戻ってきてからずっと、部屋でうんうんと唸り続けてて、本当に頭が痛い。

 駄目だ。

 寝る!!

 

「おはよう、ヒロシ。」

 目を覚ますとベネットが俺の顔を覗き込んでいた。

「おはよう。」

 いつの間に俺のベットに来たんだろう?

「ずーっと絵を見て、うんうん唸ってるし、突然寝ちゃうし。そんなに難しい話なの?」

 難しいと聞かれると、難しいよな。

 技術的にも、政治的にも。

 いや、でも、そこは俺の考えることじゃないか。

「まあ、実現できないわけじゃないけどね。」

 特に動力船については、蒸気機関が作れれば良さそうなので、すでに自動車があるこの世界なら比較的実現可能な代物ではある。

 比較的に、これがハードルが低いというのも何なんだけども。

「褒賞が男爵位って言うのがすごいなとは思うけど、期限がないというのが逆に怖いね。」

 確かにそんなにポンポンもらえるものじゃない。

 こっちの世界でも、それは常識だよな。

 とはいえアライアス伯の話を信じるならな、今後は権利が縮小していくだろうから安売りしてもいいかと思ってるのかもしれない。

 土地があっても、徴税できない、賦役できないとなれば何のための爵位だって話になるだろうしな。

 いや、まあ俺にとっては他者に奪われない土地って言うだけでも十分価値があるけども。

「ところでベネットさん、どいてくれませんかね?」

 そう言ってもベネットはどいてくれない。

「困ってる時は、いつもさん付けで呼ぶよね。」

 くすくす笑いながら、ベネットは俺の首筋にキスをする。

「そりゃ、困るよ。

 朝なんだから、起きないと。」

 そういう俺の口をベネットが塞ぐ。

 

「おはよう、ご主人様。」

 朝食のために居間にくると、カールが少ししょんぼりしていた。

 大家さんが亡くなってから、元気がなさそうだ。

 仲良くしてたから、当然だよな。

「おはよう、カール。

 朝ごはん、すぐに準備するから待っててくれ。」

 ちょっと遅めだが、ささっと済ませてしまおう。

 トーストとカップスープでいいよな。

「ベネット様は?」

 少し不安そうに尋ねられてしまった。

「すぐ来るよ。

 そういえば、俺のいない間は平気だったか?」

 ドラゴンを倒すために遠征中はカールとマーナで留守番をしてもらっていた。

 一応、セレンやベンさんに様子を見てもらっていたけど、問題はないとは言われている。

 ただ、元気がなかったとも聞いていた。

「大丈夫。マーナも慰めてくれた。」

 そうか。

 俺は、マーナを撫でてやる。

 とりあえず、用意したトーストとカップスープを並べる。

 そうこうしているうちにベネットもちゃんと服を着て、居間にやってきた。

「そうそう、ここ競売にかけられていたんだけど、どうしよう?」

 ベネットが、官報を取り出して、俺に見せてくる。

「あー、うん。買い取ろうか。」

 大家さんの甥御さんは生きていたんだけど、無理やり養子になっていたみたいだ。

 結果として借金の返済を強引に迫られ、破産。

 大家さんがちゃんと不動産経営ができていたからこそ、借金返済の猶予を貰えていた。

 その経営者が死ねば、当然ながら融資は止められるし資金は回収されてしまうよな。

 分かり切っていた結末だ。

 とはいえ、ちゃんと土地に値段が付けばプラスになるだろうし助けると思って競売に出された土地は買うことにする。

 税金がかかるとはいえ、しっかり運用すれば赤字にはならないはずだ。

 いっそ、グラスコー商会に売りつけてもいいよな。

 そろそろ倉庫も手狭になってきてるし。

 ハロルドの店も、競売に出てるのか。

 これも購入しよう。

 何であれば、支店の場所を提供するのもありだ。

 そこまで考えて、俺はため息をつく。

「どうしたの?」

 ベネットがトーストをかじりながら聞いてくる。

「いや、人の不幸に付け込んで金儲けしてるなって。商人なんだから当たり前なんだけどもさ。」

 被害にあった人が手放さざるを得なくなった土地ばかりだ。

 その人たちに金が行くとはいえ、俺もそれで利益が得られることを見込んでいる。

 金があるなら無償で援助してもいいじゃないかという気持ちがわかないのかと聞かれると強く否定はできない。

 でもそれって結局、俺は人から嫌われるのが嫌なだけなんだよなぁ。

「なるほどねぇ。まだまだ、修行は続くって感じなのかな。」

 ベネットの言葉に俺は口をへの字に曲げる。

 でも、確かにこんなことで悩むようじゃ、半人前だよな。

 上手くいくときもあれば、沈む時だってある。今はただ、運がいい時期に過ぎないんだ。

 躓いた時、それに備えて頑張らないとな。

「それよりも、家政婦さんを雇わない?

 旅に出ている間、カール君を見ててもらえる人がいたほうがいいだろうし。」

 そうだな。

 何時までも、ベンさんやセレンに面倒を見てもらうわけにもいかない。

「仕事を探している人もいるだろうしね。部屋も一つ空いてるから、住み込みで頼もうか?」

 市場の人やライナさんあたりに当てがないか聞こておこう。

 あ、そうだ。

「すっかり年が明けちゃったけど、あけましておめでとう。

 それと、お年玉。」

 カールとベネットにお菓子を詰めた袋を渡す。

「もう、子ども扱いなのか、大人扱いなのか迷っちゃうようなことはよしてよ。

 嬉しいけど。」

 そういいながら、ベネットはお年玉を受け取ってくれた。

「ありがとうご主人様。」

 カールもお菓子はうれしいらしく、ちょっと元気に笑ってくれた。

 

 倉庫に顔を出して、ベンさんに挨拶をする。

 ついでにグラスコーにも挨拶したが、そういや年が明けたんだったかと言われてしまった。

「お前の活躍のおかげで、商売がはかどってな。

 時間の経過が分からなくなるくらい忙しかったぜ。

 倉庫も新しいところに越したいしな。

 ナバラの所がつぶれたおかげで土地がわんさと売りに出されてるし、マジックアイテムばっかじゃなくて不動産もねらい目だな。」

 俺は、思わず軽蔑の目でグラスコーを見てしまった。

 いや、商人としては正しい。

 だけど、人の名前で商売したうえに、人の不幸にまで付け込むとか、お前はそれでも人間か。

 人として恥ずかしくないのか?

 と言いたいところだけども、同じことを考えていたんだから言えた義理ではないな。

 俺はため息をつく。

「ここは、俺の家なんで全力で取りに行きますよ? 他にもいくつか入札しますんで、よろしく。」

 もう、不動産の競売に関してはグラスコーとはライバル関係だ。

 既に駆け引きが始まってると思っていいよな。

「ほお、じゃあ俺も入札するかなぁ。お前から家賃ぶん捕るのは、さぞかし楽しいだろうしな。」

 その言葉に俺は思わず舌打ちをしてしまった。

「熱くなると競売は負けるぞ? まあ、俺はお前がクズ土地つかむのが見れれば大満足だがな。」

 こいつ。

 本当に、どうにかしてやろうか。

 だめだ。

 このままだとグラスコーのペースに飲まれる。

「とりあえず、ジョンやセレンさんに挨拶行ってきますんで、せいぜい飲んだくれててくださいよ。」

 そういいながら、俺は蒸留酒をグラスコーにぶん投げる。

「おっと! これはラウゴール男爵の所の奴か。

 うまいんだよなこれが。ありがたく貰っとくぜ。」

 そういうグラスコーを背に、俺は修道院へ向かう。

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― 新着の感想 ―
[一言] つまりこっから土地転がし編ってこと?(違う)
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