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10-14 出来そうなことはなるべくやっておこう。

マジックアイテムについて、外車に例えてますが外車ディーラーさんにお話を聞いたわけではありません。

想像で書いています。

 市庁舎に手紙を届けて、グラスコーにも連絡をしておいた。

 変な時間に起きたせいで、昼を過ぎたばっかりなのに眠い。

 ハロルドの店に顔を出して、ウィンナーコーヒーを頼む。

 ウィーンはこの世界にはないけどな。

 ベネットから、何とかラウレーネが重傷状態から脱したという手紙が来た。

 これで一安心だな。

 問題は、《再生》ポーションか。

 あれがないと、翼が復活しない。

 明日、セレンにどうなっているか聞いておこう。

「ヒロシさん、大分お疲れみたいですね。」

 ハロルドが眠そうにしている俺に声をかけてくる。

「いろいろあったので。

 ちなみに、ここだけの話ですけど何かあった時の避難場所とかって確保してますか?」

 確か、テナントにはそういう設備は無いはずだ。

「一応、市の方から指定された避難所がありますが、災害の種類にもよりますよね?

 地震はこちらではめったに起きないようですから、石造りの建物に逃げ込むという話になってますが、場合によれば建物の中の方が危険な場合もありますし。」

 確かに。

 耐震性が高いとも言い難いか。

「ちなみに、前にお渡ししたかばんですけど、人も入れるようになってます。

 ハロルドさん本人が入る場合は、時間指定しないとすぐに抜け出しちゃうので、入る際には時間指定しておいてください。

 時間経過はしないですし、いざとなれば俺が出すこともできるので、それなりの期間を指定していいですよ。」

 こそこそと伝えた。

「その場合は、生肉とかと一緒に詰め込まれるんですか?

 いや、まあ、匂い移りとかしないのは知ってるんですが。」

 ハロルドは苦笑いを浮かべる。

「まあ、滅多にそんなことはないでしょうが一応です。」

 ドラゴンが襲ってきたら、と想像するとそれで間に合うかどうか。

 いや、もうそこは運次第だよなぁ。

 あ、そういえばもう一つ聞いておくことがあった。

「そういえば、穀物の値崩れって聞いてますか?」

 そう聞くと、ハロルドは頷いた。

「大分長いこと出し惜しみしてたみたいですね。10年物の小麦が捨て値で売られてましたよ。

 買い手はついてませんでしたけど。」

 麦って10年も持つのか?

 いや、買い手がつかないってことはひどい状態なんだろうなぁ。

 呪文で再生とかできるんだろうか?

 これもセレンに聞いてみようかな。

 

 ベネットからの手紙で、ドラゴンの生態が少しわかった。ラウレーネは食べ物を食べないらしい。

 なんでも、1月に1度、銅を摂取するだけで生きていけるのだとか。

 それも1回の100㎏も消費しないらしい。

 

 あの巨体で。

 

 びっくりした。

 

 龍人は、普通に動物や植物を摂取するらしいが、食事をしないラウレーネに気を使い、目立たないところでこっそり食事をしているそうだ。

 あまりにも貧相な食事だったため、ベネットが料理をふるまうと皆泣いて喜んだそうだ。

 

 ううん。誰も指摘しないのか?

 先生に手紙書いとくか。いや、俺が問いただすか。

 ともかく、手紙をしたためよう。

 しかし、相変わらず悪筆は治らない。なるべく丁寧には書いているけど、どうすれば字は上手くなるんだろうか?

 とりあえず、眠気は夕飯を取って、手紙を書いていたらどこかへ消えてしまった。

 久しぶりに、一人っきりだしネットでもしてよう。

 そういえば、ハルト何やってんだろう? メールとか送れるのかな?

 色々試したいこともあるので、カイネ経由で連絡を取ってみよう。

 

 色々とやっていたら、かなり夜更かしをしてしまった。

 でも、起きる時間はずれなかった。辛い。夜更かしは程々にしないとな。

 ハルトを相手にいろいろと調べていたわけだけど、メールも送れるしチャットソフトも使えた。何であれば、サーバーが建てられるタイプのゲームであれば協力プレイも可能だった。

 

 いや、いらん情報だけどな。

 

 一応、ハルトには昼くらいに倉庫に来るように言っておいたけど、あいつ起きてくるかなぁ。そろそろ倉庫に向かおうと思ってたところで、誰かが尋ねてきたようだ。

 

 また、甥御様かな?

 

「はい、おはようございます。」

 扉を開けたら、久しぶりに大家さんの甥御さんが立っていた。

「おはようじゃない!!今日こそは、相続を拒否すると書け!!」

 そういうと、俺に書類を突き付けてきた。

「何度も説明しましたけど、相続するとは言ってませんよ? 説得するなら、大家さんにどうぞ。

 それと、借金の有無は確認されました? 何度も説明しましたよね? このままだと、その借金も背負い込むことになりますよ。よろしいんですか?」

 もう何度も何度も、同じことを説明しているせいで、言い方も雑になっている。面倒臭がらずに、ちゃんと説明すべきかなぁ。

「もう騙されないぞ!借金だけ相続放棄ればいいんだ! 弁護士の知り合いがいる友達から聞いたぞ!!」

 誰だよ、その弁護士。それができるなら苦労はしないっての。

 いや、弁護士の知り合いがいる友人?

「それ弁護士から、ちゃんと話を聞いてますか?」

 法律の専門家が、さすがに法律に合致しないことを言うとは思えない。その友人とやらは怪しい。

「うるさい!お前には関係ないだろ! 大体、おやじもおふくろも俺が養子になるのを邪魔しやがって。なんで片田舎に引っ込まなくちゃいけないんだ。

 俺は、ここで一旗揚げるんだ!!」

 そういえば、養子になる予定が立ち消えになって雲隠れしてたとも聞いたなぁ。

「一旗揚げるって、何するんですか?」

 今だったら、むしろ融資してもいい。無駄に金はある。

 いや、こういう無駄遣いはよくないか。やめやめ。

「いや、その、えーっとそうだ!マジックアイテムを扱う商人をやる!!」

 俺は、思わず黙り込んでしまった。新規性も何もない話だなぁ。

 確かに、高い商品が多いから儲かるように思えるんだろうな。

 でも、実際には高すぎて流通性はよろしくない。高級外車で一儲けみたいな発想に近いんだろうなぁ。

「と、とりあえず書け!!」

 そう突き出された書面を見て俺はため息をつく。

 いや、今のままなら普通に甥御さんが相続するんだよなぁ。あくまでも、俺が養子になるかもしれないって言う話が流れているだけだから。

 だから別にこんな書面いくらでも書いて構わないんだけども。説明しても無駄か。

「分かりました。」

 そう言って、俺は書面を受け取り、サインをする。

 変な文言が入っていないことは一応確認しているし、カーボンコピーもないことは確認している。単に俺に相続の意思がないという書面でしかない。

 これで帰ってくれるなら、もうそれでいいや。

 

 げんなりした気分で倉庫に行ったら、さらにげんなりする光景を目にすることになった。

 倉庫一杯に饐えた臭いのする小麦袋が大量に積まれていたからだ。

 グ、グラスコー。おまえー!!

「ようヒロシ、早速で悪いが収まっといてくれ。」

 澄ました顔しやがって、お前これ食えるのか?

 いや、一応虫とか、カビとかは後で選別してゴミ箱に移せる。

 さっさとインベントリに納めないと他のものが汚染されかねない。

「何やってんですか? これ、ほとんど腐ってるじゃないですか。どうするつもりです?」

 俺の怒りを意に介してないのか、グラスコーは肩をすくめる。

「半分は腐ってねえよ。腐ってるもんは適当に捨ててくれ。

 できるだろ?」

 出来るだろじゃねえよ。

 ノリとか接着剤に使えないだろうか?

 いや、無理かなぁ。

 そうだ、セレンに聞こうと思っていたんだった。

 とりあえず、そうこうしているうちにハルトがカイネを連れてやってきた。

「うわ、なんだこれ臭せぇ。」

 ハルトが開口一番、文句を垂れた。元凶は取り除いたが倉庫の中がかび臭い。

 ともかく、空気を入れ替えないと。

「窓開けてください。腐った麦ごと、グラスコーさんが麦を買い占めたんで。」

 うんざりしながら、俺は窓を開けに走る。

「私、《消臭》できます!!」

 そういうと、カイネが呪文を唱え始めた。

 あぁ、そういえばそんな呪文もあったなぁ。

 カイネが呪文を唱えると部屋いっぱいに漂っていた饐えた臭いが消え、すがすがしい空気で満たされた。

「へぇ、すごいなぁ。さっきまでの匂いがなくなってる。カイネはすごいなぁ。」

 ハルトが嬉しそうにカイネを撫でている。仲のよろしいことで。

 

 事務所に入ると、修羅場の匂いがした。皆一斉にタイプライターを連打している。

 そう、決算が近いんだった。タイミングが悪すぎる。

 どうしよう、セレンにくだらないことを聞く余裕があるだろうか?

 いや、《再生》ポーションの件はくだらないことじゃない。大切なことだ。ついでに、ちょっと麦を腐敗から復活させられないかどうか聞くだけだ。

「セ、セレンさん、今お時間ありますか?」

「無いです。」

 ですよねぇ。

「いや、《再生》ポーションについてなんですけど。」

「一週間待ってください。」

 こっちを見てくれないけど、ちゃんと答えてくれるな。

「えーっと、《食料浄化》で腐った麦を食べられるように……」

「できますけど、忙しいんで後にしていただけますか?」

「あ、はい。」

 俺は、すごすごと引き下がる。

「ヒロシ、計算処理してくれるのよね? 後、去年の形式で処理したいから、印刷お願いね。」

 ライナさんがタイプライターを打ちながら、俺に指示を飛ばしてきた。

「はい。」

 ハルトよ、これが決算だ。お前にも手伝ってもらうぞ。

 逃げようとしたハルトの襟首をがっちりホールドする。

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