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10-12 龍人さんたちが頼もしい。

陰謀が渦巻いてます。

 従ってくれた龍人は10人。

 全員を《集団透明化》で偽装し、転移で一気に叩く。

 全員にトランシーバーを持たせることはできなかったので、3人一組、一人を俺の補佐という形でチーム分けし、《連鎖する目》と《魔法の目》で連携を取りながら武器庫を襲撃した。

 武器庫といったけれど、正確には洞窟だ。

 奥に広い空間があり、多少の枝道があってそこで寝泊まりしている様子だった。

 人数にして30人。

 全員手練れかと言われればそんなことはない。

 ほとんどが素人に毛が生えた程度だ。

 洞窟の外で試射を繰り返したらしく、爆発によって地面がえぐられていたり、魔獣がハチの巣にされていたりとなかなか派手な惨状が広がっている。

 中には誤射や誤爆で死んだ人物もいるのか、人の死体もいくつか混ざっていた。

 話を聞かなくてはいけないので、なるべく殺害は避けた。

 方法は《完全透明化》をした俺が銃を取り上げ、龍人に拘束してもらうというやり方だ。

 半数を拘束したところで、バレて戦闘に発展してしまったが、俺はまだ透明なままだ。


 指揮官らしき男が拳銃を撃ちつつ、奥の広間に駆け込んでいく。

 その奥にはいくつかの兵器が置かれている。

 それに乗られると厄介だ。

 勿論使い方が分かってるとは限らないが、中に閉じこもられると厄介だ。

 俺だって、戦車や攻撃機のロックのはずし方なんか知らない。

 本当は使いたくなかったんだけどな。


 ブルパップ式のショットガンだ。


 弾はゴム弾だし、当たり所が悪くなければ死ぬことはないだろう。

 ちゃんとホロサイトを装備して練習も繰り返していた。

 容赦なく背中にゴム弾をぶち込む。

 20mくらいの距離だから、射撃が下手な俺でも外さずに当てられる。

 もちろん、足を狙ったり腕を狙ったりとかは難しい。

 だから、胴体に向かって撃つのが基本だ。

 バンっと大きな音を立て、男を転倒させることができた。

 他の部屋の制圧も終わったと連絡が来たので、俺はゆっくり歩き、他に伏兵がいないかを確認しつつ、男に近寄っていく。

 どうやら気絶はしてないみたいだ。

 丁度《上級透明化》が途切れる。

 俺は、起き上がろうとする男の背中を踏みつけてショットガンを突き付けた。

「一応死にはしないと思いますけど、怪我しますよ?

 抵抗しないで降伏してください。」

 男が抵抗を示す様子はないが、がくがくと痙攣し始めた。

 あー、やっぱりか。

 俺は《解毒》のポーションを取り出し、男に叩きつける。

「それ、やると思ってましたよ。」

 制約さえなければ、経口摂取させなくて済むポーションの仕様に感謝したい。

 こんなおっさんにキスとかしたくないもんな。

 

 広間にここを占拠していた男たちを集める。

 全員をロープで縛り上げるのはそこそこ手間がかかるので、結束バンドを利用させてもらった。

 これもあんまり使いたくなかった物品の一つだ。

 プラスチック製だからなぁ。

 ウーズの皮で代用品とか作れるだろうか?

 でも、何でもかんでもウーズ頼りというのも微妙だよなぁ。


 まあ、気にしてもしょうがない。


 拘束した人間について考えよう。

 何人かは、自爆用の爆弾を身に着けていたので、それは回収させてもらう。

 しかし、こんだけ弾薬がある場所で爆弾持ち込む神経が分からない。

 黒色火薬を詰めた爆弾らしく、火をつけてからしばらくは爆発することはないタイプだ。

 部屋に使われているプラスチック爆弾を利用されなくて本当によかった。

 というか、本当に手探りだったんだな。

 報告書の類には、用途不明の武器として記載があった。

 どうもマジックアイテムの類と勘違いされていたっぽいけれども。

 残されている書類は一通り目を通したけれど、誰が誰だかさっぱりだ。

 何処かで見た名前だなぁと思う男爵の名前もあれば、聞いた事のない子爵の名前もある。

 そもそも、この国の貴族ばかりではない気もするんだよなぁ。

「それで、皆さんは救国兄弟団という秘密結社の方々という事でいいんですかね?」

 お互いにお互いを見て、口をつぐんでいる。

 面倒だなぁ。

 もしこれが、近代兵器を使ったテロ組織じゃなければ王国に渡して、お任せしますってできるんだけども。

 並んでいるものが並んでいるものだけにおいそれと公開したくない情報ばかりだ。

 しかし、M4とかを数十丁用意してどうするつもりだったんだろうか?

 一人でアサルトライフルを3つも4つも同時に使えるわけもないし、壊れた時の予備だとしても数が多すぎる。

 いや、正確にはM4は銃身の短いカービンであってアサルトライフルじゃないけども。

 元の持ち主が何を考えていたのか、ちょっと考えるだけで気が滅入る。


 戦争でもするつもりだったんだろうか?


 呼び出した攻撃機や戦車、それに対空砲なんかを見ると相当兵器マニアなのはわかる。

 最初は攻撃機を呼び出して使おうと思ったんだろうな。

 その上で操縦方法が分からないとなって、戦車を呼び出して、一人で運用するのは難しいと判断。

 で、据え置きでも防御なら使える対空砲を呼び出したと。

 で、攻勢をかけるなら携帯式の対空ミサイルや対戦車ミサイルが使いやすいという結論に至り、アーバレスと衝突。

 その後、いろいろと妄想を巡らしてM4やらの銃や迫撃砲を複数用意して弾薬をため込んだと。


 そんなことする前に飯探せって話だよ。


 とはいえ、小口径高速弾を選んでくれたおかげで龍人の被害は比較的軽微に済んだ。

 鱗を貫通するものの体が大きな龍人に致命傷を与えるには、よほど急所を狙わなければ難しいだろう。

 たった2㎜程度の口径の差とはいえ、これがトーラスの持っているL96A1で使用する7.62mmだったら、もっと死人が出ててもおかしくない。

 もちろん口径が大きくなれば連射時の制御が難しくなるわけだし、より扱いやすさを重視したんだろうな。

 M16のようなアサルトライフルじゃなくて、M4のようなカービンを選んでいるあたりからも、それはうかがえる。

 そこまで頭回ってたのに、なんで対話って言う選択肢が出てこなかったのかが不思議ではある。


 まあ、勝てると思ったからなんだろうけど。


 結果として、ろくでもないものを呼び出して放置とか勘弁してくれ。

 しかし、捕まえたはいいけど、どう尋問したものかなぁ。

 《記憶結晶化》のポーションがあれば、わざわざこんなことを考えなくてもいいんだけれど、あれは全部教会に渡しちゃったしな。

 というか、下手に持ちだしたら疑われかねないし。

 定番は囚人のジレンマだよな。

 誰でも思いつく方法ではある。それだけ有効だって話でもあるけども。

 でも、その状況を作るのには、隔離場所と相手がどの程度の身分かを把握する必要がある。

 はい適当に分けました、あっちはこんなこと言ってるよ、そいつはそんなこと知らない何言ってんだ、だと間抜けもいいところだ。


 しかも毒まで飲むんだものなぁ。


 先生あたりが《思考探査》とか持ってそうではあるけれど。

「返事をしてもらえないのは分かってましたけどね。とりあえず、ひどい目に会っても覚悟の上と思っておきます。」

 ともかく、兵器群をどうするか考えないとな。

 戦車みたいな大物は、特別枠じゃないと収まりきらない。

 とっととインベントリに入れてしまおう。

「何? 消えただと?」

 なんか新鮮な反応だな。

 考えてみれば、これだけの大物があっという間に消えたんだから驚かれるか。

 龍人たちは驚いてはいるけれど、声を上げていない。

 みんなドラマみたいなオーバーアクションはとってくれないから、なんか楽しくなってしまった。

 ただ、ここで解説なんかすると悪役っぽいので、黙って対空砲や攻撃機も収まってしまおう。

 ふと気になって、値段がついてないかなと確認をする。

 淡い期待だったから、値段がついていて俺は眉を動かしてしまった。

 というか、結構なお値段で買い取ってくれるのね。どうしたものか。

 こっそり売り払ってしまおうか。

 いや、相談もせずにそれをするのは無しだな。

 

 幸い、ラウレーネの住処には寝所の他にも罪人を隔離する場所があった。

 先生と連絡を取り合い、ひっそりと隔離する。

 救国兄弟団とやらのやり取りを記した書類を読み込まないといけないし、関係者の身元も洗わないといけない。

 やらないといけないことがたくさんできてしまった。

 それと、問題の兵器の処遇だ。

 とりあえず、先生、レイナ、ベネットには見せることにした。

「なんとも、物々しいね。

 もともとあった車は壊れてしまっていたけど、こちらは無傷の状態か。」

 先生はため息をつく。

「これって、ヒロシ君使えるの?」

 レイナは、ちょっと興味を持っているみたいだ。

 でも、使えたらどうするつもりだ。

「俺には、扱いきれません。特に、そっちの翼がある奴は無理ですね。」

 他は適当にいじくりまわせば何とかなるかもしれないが航空機は飛ばすだけでもかなり難しいだろう。

「銃もこんなにたくさん。戦争でもするつもりだったのかしら。」

 異世界人が持ち込んだことについては、説明済みなので一人でこれだけの武器を持つ理由を疑問視するのは当然だろう。

 ベネットの予測も戦争を仕掛けるという結論に至るよな。

「ここから、人が住む領域に行くまでには山や谷を越えなくちゃいけない。空を飛ぶためのものだろうけど、それは操れなかったんだろう?

 どうするつもりだったのか、とても興味があるよ。」

 興味というけれど、先生は本当に興味があるんだろうか?

 なんか、呆れて言っているような雰囲気もある。

「問題は、そこではなくて、そのなんでしたっけ?救国兄弟団、とかいう連中がどうやってこれを見つけたのかの方が重要じゃないですか?」

 レイナの言葉に、先生は押し黙る。何か心当たりがあるんだろうか?

 いや、なんとはなくだけど、俺の想像が正しければ現代兵器の情報を漏らす人間は思いつく。

 どこまで関係しているかは分からないけども。

 ハルトではない。

 少なくとも、あいつは現代兵器で大混乱が起こっていたことを知らないし、ブラックロータスの遺跡で四苦八苦していたはずだ。

 もう一人いるとすれば、例の第三王子だ。

 おそらく、王族ならアーバレス殺害についての詳細を知る機会はあったんじゃないだろうか?

 その上で、その第三王子が救国兄弟団と関係していたかどうかまでは分からない。


 ただ、少なくとも手に入れたいとは思っていたんじゃないかなぁ。


 現代兵器のあらましだけでも知っていれば、あとは高位の魔術師や神託者であれば探せる呪文があるはずだ。

 第三王子がそのレベルなのかは知らないけれども。

 いや、本人がそこまでのレベルじゃなかったとしても、伝手を辿れば行き着くかもな。その上で、第三者が介入した可能性もある。

 というか、国家転覆をはかる目的の秘密結社に第三王子がかかわる理由が思いつかない。

 だから、多分情報漏洩したんだろうなとしか思えなかった。

 これ、言っていいことか悪いことか。

 多分、この3人の中で唯一衝撃を受けるだろうと思えるのがベネットだけって言うのがなんともやるせない。

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