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10-11 ようもやってくれたのう。

内心かなり焦っています。

 酷いありさまだった。

 ラウレーネの住処は荘厳なギリシャ風の建築物で、独特の色彩に彩られている。

 そこにまるでペンキをぶちまけたかのように血や臓器が散らばっていた。

 そして、大きく翼を切り裂かれ、いたるところから血を流しているラウレーネの姿があった。

「ラウレーネ様!!」

 ベネットはそれを見た瞬間走り出してしまった。


 やばい!! まだ何かいるかもしれないのにベネットは普通の服で、他には何も着てない!!


 俺は慌てて水の壁を作りラウレーネの元までの道を作る。

 連続する銃声が響く。

 これは、なんだ?

「まだ残党がいたのか!!」

 そういうと、先生は《魔弾》を放ち、銃を握っている男を仕留めた。

 元々血みどろだったのもあるが、10発以上の《魔弾》で打ち据えられれば怪我がなくても死は免れないだろう。

 俺は慌てて防刃服と防弾チョッキを着用する。

 ベネットにも早く着てもらわないと。

 

 幸いベネットの治療が間に合いラウレーネは一命をとりとめた。

 だが、ベネットの癒しの手が尽きてしまい、重傷の状態を脱し切れていなかった。

 翼がもがれている状態なので、《再生》のポーションがなければ全回復というわけにもいかない。

 再生能力があっても、こんなにボロボロでは翼の復元には年単位の時間がかかるだろう。

 しかし、ドラゴンをここまで追い詰めるというのは、何を使ったんだ?


 くそ!!


 《致命傷治癒》や《重傷治癒》のポーションの在庫が尽きた。

 瀕死の龍人全員には回しきれない。

 ラウレーネの治療も《治癒》のポーションでは行えない。


 仕方ない。マジックアイテムの購入で賄おう。

 ”売買”のレベルが上がっていて本当によかった。

 だけど、瀕死の龍人たちを助けたら、ほとんどオケラ状態だ。ラウレーネの重傷状態を解消するには至らない。

 これ以上は、ベネットの癒しの手に頼るしかないよな。

「すいません、これで看板です。」

 最後の《致命傷治癒》のポーションを使い、俺は両手を上げる。

「ありがとう、ヒロシ君。まさかここまでやってもらえるとは思わなかった。

 しかし、《再生》のポーションが必要だなぁ。ヒロシ君は手配できるかい?」

 今すぐには無理だ。

 そもそも、《致命傷治癒》や《重傷治癒》は売買で買えるものはすべて買ってしまった後だし、《再生》のポーションはリストになかった。

 売る意思がある人がいなかったという事でもあるんだろう。

 そもそも、どのくらいの人が出品してくれてるんだろうか?

 少なくとも世界中が相手と言っても、出品者は限られるのかもしれない。そうじゃないと、出品するが少なすぎる気もするし。

「今のところは出品がないので、どうにもなりません。それと資金的にも限界です。」

 なんとも情けない。商人として、必要な品物を資金不足で用意できないというのは恥だな。

「資金は何とかしよう。それともう一つお願いしてもいいかな?」

 もう一つどころじゃないだろう。危機的状態は脱したのだから詳しく説明してもらわないと。

「先生、ラウレーネも交えて、事情をしっかり聞かせてください。竜の友と名乗る以上、出来ることは何でもさせてもらいます。」

 まあ、できうる限りと但し書きが付くけれども。


 その前に、言っておかないと。


 俺は、ベネットの所まで行き、抱き寄せる。

「ベネット、駄目だろう。せめて盾くらいは使ってよ。」

 後先考えない癖があるのは何とかして欲しい。

 怖くてしょうがない。

 俺は、おでこをくっつけあってベネットの目を見る。

「ご、ごめんなさい。」

 分かってくれたなら、いいんだけれども。

「私も謝らないとね。残党がいる可能性もあったのだから、武装してくれと頼むべきだった。申し訳ない。」

 先生が深々と頭を下げる。

 俺は慌ててベネットと抱き合うのをやめて、先生の方を見る。

「いえ、緊急を要する事態でしたし、気を付けるべきはこちらでした。状況を察することが出来なくてすいませんでした。」

 お互い頭を下げたところで、話を切り替えよう。

 ともかく、状況がつかめない。

 

 ラウレーネや龍人たちの証言によると、今回の襲撃は数匹の色彩竜とテロリストたちの混成軍だったらしい。

 竜の死体が目的なら、むしろそっちを狩ればいいだろうに。

 いや、そういうわけにもいかないか。

 おそらく、テロリスト単体では竜に太刀打ちできないと考えたうえでの行動のようだ。

 とはいえ、問題はテロリストたちが使用した武器だ。

 アサルトライフルはまだ良しとしよう。

 びっくりしたのが、対戦車ミサイルまで持ち出したというところだ。

 色彩竜を追い払い、地上の救援に向かってきたラウレーネをそれで狙い撃ちにした。


 どっからそんなものを。


 と言いたいところだけれど、心当たりがないわけじゃない。

 おそらく死んだ来訪者が残したものだろう。

 だけど、それをどうやって発見し、運用できるまでになったのかというところだ。

「ともかく、それらの武器は俺が何とかします。

 ただ、確保している人間は当然ながらそれを活用してこようとするでしょう。

 それを阻止しつつ、回収となると人手が足りません。

 申し訳ないですけど、手を貸してください。」

 まずは場所を探るところからか。

 ハルトに協力してもらうというのも手だけれど、いなくても何とかできる。

 おそらく使った武器から居場所を割り出すことは可能だ。

 でも、一人で何でもできるわけじゃない。

 龍人たちの手を借りないとまずいだろう。

「ありがとう。

 もう元気になったし、翼が使えないけど協力するよ。」

 ラウレーネが弱弱しく、礼を言って体を起こそうとする。

 慌てて、ベネットがラウレーネの起こそうとする体にしがみつく。

 体格差があるので、本来であればはねのけられるのだろうけれど、ラウレーネはベネットを気遣い、また体を横たえた。

「駄目です。まだ傷は完全に塞がっていません。

 お願いです。

 せめて、あともう1日ください。」

 どう考えても、あと1日じゃすまない。

 ベネットだけなら、あと2,3日しないとヒットポイントは完全回復はしないはずだ。

 もちろん、こちらの人たちにヒットポイントなんて言う概念はないから、大抵の場合、ある程度傷が塞がれば後は自然治癒で直そうとするのが通例になる。

 そう考えるとなかなか難儀だな。どう説明したものか。

 いや、それ以前に《再生》のポーションを手に入れないと。

「とりあえず、翼が動かせるようになるまでは安静にしていてください。

 ラウレーネ、それだけは受け入れてもらえませんか?」

 ともかく、彼女に無理はさせたくない。

 出来るのであれば、全部ひとりで片付けたいが、俺にはそこまでの力はない。協力を求めないといけないのが情けなかった。

「分かった。ごめんね、足手まといになっちゃって。みんなにはちゃんと協力するように伝えておくよ。」

 ラウレーネは渋々受け入れてくれた。

 しかし、足手まといなんてとんでもない。こちらが迷惑をかけている側だ。

「ラウレーネ、あなたが悪いわけではないです。

 俺の同胞が残したものが原因でそうなっているわけですから、むしろこちらが詫びなくてはいけません。

 ともかく話だけでは解決しませんので、出来ればアーバレスを害した武器を見させていただいてもいいですか?」

 ラウレーネは頷くと先生の方を向く。

「案内を頼めるかな、アルトリウス?」

 ラウレーネの言葉に先生は頷く。

 

 案内された部屋には墓標が建てられ、その傍らに殺害に用いられた兵器が並んでいた。

 携帯式の対空ミサイルやら対戦車ミサイルの発射機が並び、移動に使用されたと思わしき車もあった。

 おそらく、上に機関銃が設置されているから、兵器扱いで呼び出せたんだろうな。

 どれも使われている形跡があるから、次々と発射したことは想像できる。いくらドラゴンでもミサイルの乱れ撃ちにはかなわなかったんだろうなぁ。

 とりあえず、これ以外に少なくともアサルトライフルを使用した連中がいる。そこからすると、どこかに備蓄していたのは確かだろう。

 じゃないと、どこから持ってきたんだって話になるしな。


 ともかく“鑑定”してみよう。


 慎重に、余計な光景を見ないように所有者の情報を覗く。当然現在位置は消失している。所在地のみが座標で示されていた。

 残念ながら、俺が持っている地図には対応していない座標だ。南の山脈の奥というのが指示された座標になる。

 とはいえ、現在位置から座標のずれを計測すれば、大まかな距離や方角は把握可能だ。

 問題は、そこから物資を運び出されている可能性もある。

 そこはちょっと悩ましいな。

「ヒロシ君、場所分かったかい?」

 もはや先生に緯度経度の話は必要ないだろう。

「おおよその座標は分かりました。そこにあるとも限りませんが。」

 俺はバインダーに座標を書き記して見せた。

「なるほどねぇ。緯度と経度だね。

 それが分かれば十分だよ。覗いてみよう。」

 先生は鏡を取り出し、《念視》を始めた。

「どうやらまだ人はいるね。

 どうやって、君たちの世界の武器を扱うか難儀している様子だ。

 早い方がいいかな?」

 つまり、ここから《瞬間移動》で移動して制圧するって事か。

「彼我の戦力差にもよります。できれば、《集団透明化》が必要でしょう。

 ついでに、指揮している人間は生け捕りにしたい。」

 先生は手早く人数の確認を取り、必要な人員を手配し始めた。

「戦闘指揮はヒロシ君に任せてもいいかな?

 レイナちゃんには、先に王国側に連絡を取ってもらわないと。

 色彩竜たちを抑える力が緩んだ以上、件のやんちゃ坊主が暴れないとも限らないからね。」

 先生は、それらの調整かな?

「とりあえず、教会関係者に《再生》のポーションを作ってもらうように依頼しておきます。

 それと戦闘指揮は任されました。

 本当なら、ベネットが適任でしょうけど。」

 そもそも俺自身は戦闘向きな人間じゃないと思う。

 何のかんのと言ってレベルアップしたおかげか、槍さばきも様になったし呪文によるサポートならそこそこうまくできるようなったとは思うが、それで強くなったという確信はない。

 だけど、今のベネットをラウレーネから引きはがして戦闘に赴かせるなんてことはできない。

 それに、異世界人が起こした騒動なら異世界人である俺が決着をつけるべきだ。

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