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10-10 今度は竜絡みか。

テロリズムは怖いねぇ。

 市庁舎に出向き、御用聞きをした後アライアス伯の代官様と面会をする。

 出来上がった資料を見せて過不足が無いかを打ち合わせた。

 感触としては悪くない。

 特に硝石の発見は喜ばれた。

 そのあと、代官様に付き従い鉱夫ギルドに顔を出す。

 と言っても、ギルドの建物があるわけじゃない。

 鉱夫を取りまとめている親方連中がたむろするという酒場に顔を出す形だ。

 一応代表者として何人か古参の親方が常駐するのが習わしらしいけど、なんと言ったらいいんだろう。

 こう、堅気にはどうしても見えない。

 ドワーフやオークなんて人たちも結構いて、モーダルにもこんな場所があったんだなと驚いてしまった。


 みんな筋骨隆々だ。


 俺なんか一捻りされてしまいそうだ。

 まあ、実際はどうなのかは分からないけども。

 見た目と能力値が比例するとは限らないあたりが微妙だ。

 実際俺よりもベネットの方が力持ちなんだよなぁ。

 あんなに柔らかいのに。

 いや、別のことを考えよう。

 とりあえず、鉱夫ギルドの人とは、採掘現場を案内するついでに採掘現場を見学させてもらえるように交渉をした。

 どんな道具が必要なのか、どんな掘り方をするのかに興味があった。

 もちろん、本職の人と同じ真似がすぐにできると思って言ってるわけじゃない。

 あくまでも、商人としてどうサポートすべきかを知りたいからだ。

 そういう話をしたら怪訝な顔をされたけれどおおむね問題なく受け入れてもらえた。

 邪魔をするようなら殴るとは言われたけど、危険な作業だし当然だよな。


 そういう話をしているうちに日が暮れ始めてしまった。

 早めにベネットを迎えに行かないと。

 ここ最近、雪の日が徐々に増えて、雪が積もり始めたので移動が大変だ。

 一応、チェーンを巻いた自動車なら走らせることができるけど、なかなか怖い。

 滑るから制動が不安定だ。

 一応、私事での使用だし事務所に断りを入れてるけど、こういうやり取りをしないで済むように自家用車を買うかなぁ。

 ライナさんやグラスコーは聞かなくていいとは言ってくれてるけども。

 

「ねえヒロシ君、ベネちゃん嫁に頂戴よ。」

 いきなり何を言うんだこのオタクは。

「お断りします。」

 一体何が目的なのだろうか?

 レイナ嬢の家に行くといつもの居間で話していたからいつも通りの挨拶したら、いきなりだ。

 俺も面を食らう。

「今日ハンバーグ作ってくれてさぁ。おばあ様の味とそっくりだったんだよねぇ。

 ご飯に合う感じって言えばわかる?」

 そういえば、炊飯器をレイナに売ったなぁ。

 あれでまともにご飯が炊けるようになったから、カナエの料理を思い出したといったところなのかな?

 いや、それでもベネットは俺の嫁にする。

 渡さん。

「ジョシュ君に頼んでみればいいんじゃないですか?

 案外喜んで作ってくれるかもしれませんよ?」

 まあ、まだ若いし、こっちの常識である男は料理しないという流儀には染まってないだろう。

 それにレイナの頼みなら、喜んで聞くんじゃないだろうか?

「ジョシュはそういうのじゃないって何べん言えばわかるかな?

 いい加減君もしつこいよ?」

 そうは言うが、ジョシュの気持ちを考えれば、はいそうですかとは言えない。

「そういうのはちゃんと向き合ってから言ってほしいですね。聞いてないんですよね?」

 実際、レイナの言葉は強い拒絶である割に語気は強くない。そういうのを見るに、まったく気が無いわけではないだろう。

 そこら辺も含めて、当人同士で話してみるべきじゃないだろうか?

「ヒロシ、あんまり人様の話にむきにならないの。お節介焼きもほどほどにね?」

 ベネットに怒られてしまった。そんなにお節介焼きだろうか?

 いや、お節介焼きか。ちょっと反省しよう。

「ちょっと言い過ぎました。

 でも、ベネットは渡しません。俺の嫁にするので。」

 ヒロシのけちーっと、レイナがぶーたれるが知ったことじゃない。

 そこだけは譲らん。

「そういえば、モーダルの修道院ってヒロシ君の仕業?」

 急に話題を変えるのな、このお姫様は。

「関係はしてますよ。

 でも、あくまでも主体は教会です。」

 レイナは俺の言葉にどこまで関わっているのか、想像をめぐらしている様子だ。

「そういえば、先生がテロリストが出没しているという話をされてましたけど、レイナさんはそっちに関わってますか?」

 俺の方も確認したいことがあったので、聞いてみる。

「あー、うん。面倒くさいね。まさか、爆弾抱えて自爆するとは思わなかったよ。

 龍人じゃなければ死人が出てたところ。

 というか、まあ人は死んでるわけだけどさ。」

 うんざりとした様子でため息をつく。

 しかし、自爆テロだと?

 俺は思わず顔をしかめてしまった。

「もしかしたら、日本人がかかわってるんですかね?

 大分新しい概念ですよ、それ。」

 そもそもが破れかぶれの攻撃とか最後に残された手段とはわけが違う。

 あれは、人を使った脅迫だ。

 例え自爆が失敗したとしても、目標を達成できる。要求を聞かなければ、繰り返すぞという脅しだ。

 生き死には重要じゃない。

「どうなんだろうね。爆弾自体は大した威力はないし、死ぬのはテロリストだけでしょ?

 何の問題もないと思うけど?」


 そっか。


 そうだよなぁ。


 脅しが通用する相手ではないか。あれは、人命というものを重視する民主国家だからこそ使える脅しだった。

 人の命が元々軽い封建社会でそれが通用するはずもない。俺が気を回しすぎたな。

 攻撃手段と口封じの両方を達成させる程度の意識なんだろうか?

 いや、でもそういうことを本人の意思と関係なくさせられる手段がある世界だから余計に邪悪に見える。

 気になるのは、ラウレーネの精神衛生だ。

「ラウレーネが気に病んで無いかが気になりますね。単なる攻撃者とみてくれていたらいいんですけど。」

 下手に同情すると厄介だ。根が善良なだけに、心配してしまう。

「あー、そういう事か。それは確かに心配かも。」

 レイナもそれを危惧したのか表情がこわばる。ベネットの方を見ると、思うところがあるのか、気分が優れなさそうだった。

「こういう攻撃はどうすればやむの? というか、むしろなんでラウレーネ様の居場所が分かるの?

 許せない。やらせてる奴もやる奴も、みんな許せない。」

 ベネットの言葉に俺は、テロリストたちの目的を考える。おそらくラウレーネを害すことが目的ではないだろう。

 あまりにも無為が過ぎる。

 死体を狙ったという話からすれば、亡くなった銀竜アーバレスの遺体が目的なんじゃないだろうか?

 それを渡しさえすれば攻撃がやむような気もする。

 ただ、その遺体を使って何をするつもりなのかが気になる。

「多分、目的は竜の遺体なんだろうね。なんに使うんだか分からないけれど。」

 そういいつつ、俺はレイナの方を見る。

「あー、私に何に使えるか聞きたい感じ? ちょっと待っててね。」

 そういうと、レイナは立ち上がり、書庫になっている私室へ入っていった。

「遺体を使う? あ、そういう事なのか。」

 ベネットも想像はついたらしく、それがいい事か悪い事なのか判断がつかない様子だ。

「でも、やっぱりやり方が許せない。ちゃんと交渉してみるとか考えないのかしら?」

 ベネットのいう事も分からなくもないけれど、大抵の場合はそれを軍事利用することを考えているなら秘匿したいはずだよな。だとすると、真正面から交渉しにくいかもしれない。

 短絡的と言えば短絡的ではあるけれども。

 あるいは、統制が取れていない結果という可能性もある。

「交渉しようにも、あなたのお友達の死体を解体させてと言われてもいいですよとは言いづらいよね。

 それを何に使うのかによっても変わるだろうけど、少なくとも胸を張っていえることじゃないのかもしれない。

 そうなると、そういう手段に及んでしてしまう末端が居てもおかしくはないかなぁ。」

 まあ、胸を張って言えない時点であきらめればいいのにとは思う。

「とりあえず、これくらい持ってくればいいかなぁ。」

 そういいながら、レイナはテーブルに本を置いていく。

「一番、利用価値があるのはドラゴンコアだねぇ。

 飛行船って呼ばれる伝説のアーティファクトを作り出せるとか言われてる。

 他には内臓をいろいろ利用できるけど心臓なんかは呪文の範囲を拡大してくれるし、肝臓なんかはエリクサーの素材になってりもするね。

 エリクサーって、言ってみれば蘇生薬だからとっても貴重だよ。

 さすがに頭を潰されちゃった死体を蘇らせるほどじゃないけどね。

 肺なんかは、《水中呼吸》や《自由移動》の効果を与えてくれるマジックアイテムに使える。

 もちろん、骨や鱗なんかは魔法金属でできていたりするから言わずもがなだよねぇ。」

 飛行船という言葉で他があまり耳に入ってこなかった。

 もし、そんなものが出来ればいろいろと捗りそうだなという思考が頭の中を駆け巡る。

 いかんいかん、そういうことに使いたいですって言ってもらえるもんじゃないんだから余計なことを考えるのはよそう。

「飛行船が欲しいのは分かるけど、駄目だからね?」

 ベネットが俺のお腹を揉む。

 こういうのがいちゃいちゃしてるって言われる原因なんだろうなぁ。

「ベネット、その。そういうのイチャイチャしてるって言われるから控えてくれる?」

 振り払うわけにもいかず、されるがままにしているけど、さすがにイチャイチャしすぎと言われるのは困る。

「えぇ、いや、でもこれは、そんな意味じゃないし。」

 いや、別に意味とかそういう問題じゃないんだよなぁ。

「好きにすればいいじゃない。

 もうリア充はイチャイチャするもんだから、気にしてないよ。」

 レイナはあきらめ気味にため息をついた。

 そ、そろそろ帰ろうかなぁ。

 そう思っていた矢先に電子音とともに先生が居間に出現した。

 びっくりする。

「あ、アルトリウス様?」

 レイナも予測してなかったらしく、驚きの声を漏らす。

「よかった。

 ヒロシ君もこっちに来てたんだね。

 ベネットちゃんもいるし、助かる。

 申し訳ないけど、一緒に来てもらえるかな?」

 先生は冷や汗をかいて、もどかし気に俺たちの了承を取ろうとしてくる。

 それだけの緊急事態という事だろう。

「も、問題ありません。」

 多分、行き先はラウレーネの住処なんじゃなかろうか?

 とりあえず、何があったのかはあちらで聞こう。

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