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10-9 やりたいことをやれる仕事って楽しいな。

こっそりハルト君の能力を悪用し始めました。

 ひと月ほど、授業と仕事、そしてアルノー村にベネットを送る生活を繰り返した。

 セレンとロドリゴの遺跡定期便も復旧して、ジョンたちのスカベンジャー活動も再開した。

 修道院の再建はアレッタ主導の下、順調に行われている。

 ジョンの稼いだ金が注ぎ込まれているのもそうだが、修道女たちも精力的に活動していて心配されていた資金難は起きていない。

 というか、ジョンとしてはもっと金使ってほしいと俺と似たような悩みを口にするようになった。


 みんな頑張りすぎなんだよ。


 人事の話をすると残念ながら、副院長は復帰できず引退してしまった。会計士の方は今のところ問題なく仕事に復帰している。

 なので現在はアレッタが副院長を務め、会計士のサポートを受けつつ業務をこなしているそうだ。

 院長候補は、現在教会の方で適任者を探しているらしいが、大幅な人事異動が起こったためフランドル王国どころか帝国やサンクフルールでも教会で人材不足が起こっている。

 大半が、病死の為とか老齢のために職務をこなせず引退という形で人が消えたわけだが、多分ノックバーン司教が動いたんだろうな。

 消えた院長については、悪魔だったから銅竜の剣姫に消されたという噂が流れたが教会側はあくまでも病死という発表を行っている。


 どうやらベネットは、銀髪の剣姫を改めて銅竜の剣姫という称号を得てしまったようだ。


 まだ、銀髪の剣姫と銅竜の剣姫が同一人物だという噂にまでは発展してないが、目立つ髪色だしなぁ。

 そのうち蘇ったとかいう話になるんだろうか?


 ベーゼックの所属している修道院でも人事異動があって、ベーゼックは司書長という役職に無理やりつけられてしまったそうだ。

 スカベンジャーはやめてないので、忙しそうだ。


 俺はと言えば、市庁舎にウーズコーティングの鋼管を売りこみに行った。

 ついでにアライアス伯からの依頼で遺跡付近の水脈をハルトに発見させてアレストラばあさんに作ってもらった手押しポンプで水を確保できるようにしたわけだけど、これは結構な金額をいただけた。

 市への売りこみの方は微妙な反応だったが、1区画分の鋼管を無償提供したので、一応使ってもらえることにはなっている。

 これについては年月が経たないと、効果は分からないだろうしな。

 もちろん、グラスコーからは了承を得ている。

 先生は度々、街を離れている様子で例のテロリストが騒がしい様子だ。

 当然ながら俺も武器や防具、食料などを提供はしているけれど、ラウレーネのもとには行っていない。

 こちらで活動して、経済的な支援をするのが仕事みたいなもんだからな。


 これについては、俺が私費で行っている。


 だって、竜の友なんて称号をいただいているのに、それを商会に負担させるわけにもいかないしな。

 おかげで名声はうなぎのぼりではあるんだけども。

 それに合わせるように、詐欺師の類も群がってくる。悪い噂も流される。

 ナバラ家を乗っ取るんじゃないかみたいな噂は事実無根とも言い難いしな。

 大家さんの意向で俺が養子になるという話は保留を続けていた。

 だから、たびたび甥御さん、名前は何だったっけかな?

 覚えてないが、彼がたびたび家に押しかけてくる。


 もちろん、手荒くしたりはしていない。


 懇切丁寧に、ナバラ家がそれほど余裕のある状況じゃないですよと、説得を続けているわけだが話を聞いてもらえない。

 毎度毎度、難しい話をして俺を騙そうとしていると切れられて帰っていくのを見送るというのも繰り返していた。

 確認をすれば、すぐわかる事なんだけどなぁ。

 言っても仕方ないか。


 そろそろ雪が本格的になってくるし決算も近い。

 アノーは、無事にモーダルに戻ってきている。

 結構な儲けを出したらしく、倉庫がパンパンになるし金庫も証書で溢れた。

 いや流石だなぁ。

 グラスコーが以前から目をつけていた商人らしいので、当然と言えば当然なんだろうけど。

 能力が無かったら、俺なんか足元にも及ばないんだろうな。

 いや、そういうネガティブなことを考えるのはよそう。能力のおかげで、アノー並みの売り上げを出せてるんだと胸を張らなきゃ。


 で、当のグラスコーだがまだ戻ってきてない。

 一応、手紙が来るので無事であるのは確かなんだが。

 ちなみに、その手紙に商会の紋章案が添えられていた。狼が魚をくわえて真正面から睨んでる図案。

 案外かっこいいな。

 

「それをカールに描かせたものなんですけど、どうですかね?」

 事務所にたまたま、アノーとロドリゴが揃っていたので商会の紋章を見せてみた。

「いや、かっこいいっすね。

 こういうシンボルって言うのは大切だから、俺はいいと思うっすよ。」

 図案化したので、割とシンプルだけどアノーの感性にはマッチしたみたいだ。

「それを馬車とかに付けるのか?」

 ロドリゴは、ちょっと眉をひそめてる。

 ううん。微妙な感触だな。

「まあ、そのうち慣れるだろうし。今は気になっても多少派手な方が後々よかったってなるもんだから、悪くないんじゃないか?

 魚食っている意味はよく分からんが。」

 確かに、なんで狼が魚を食ってるんだろう。ベンさんの疑問に俺も首をひねる。

 いや、悪くないとは思うけど、謎は謎だな。

「まあ、当人に聞くのが一番いいんじゃないですかね?」

 そんな話をしていたら車の音が遠くから響いてくる。この音はSUVのものだろう。

 噂をすれば何とやらだ。

 しばらくすると、グラスコーがくたびれた様子で倉庫に戻ってきた。護衛へのボーナスも渡し終わり、かなりくたびれている様子だ。

「いや、参ったわ。途中でランドワームに追いかけまわされてよ。

 こいつじゃなかったら、そいつの胃の中だったぜ。」

 やれやれといったようにグラスコーは愚痴を漏らす。

「お疲れ様です。でも、関所の外ですよね?」

 まさか、関所の内側だったらどうしようと不安になってしまう。

「当たり前だろ。さすがに関所の内側だったら領主が大騒ぎだ。

 それより雁首揃えて何やってんだ?」

 俺は、グラスコーに紋章のデザインを見せる。

「お、なかなかいいじゃねえか。思ってた通りだな。」

 カールに任せてみたが、グラスコーが思い描いていた通りに仕上がったみたいだ。

「ちなみに、なんで狼が魚くわえてるんですか?」

 そう尋ねるとグラスコーは首をひねる。

「まあ、大した理由じゃねえよ。飢えた狼が魚をくわえてるってことで、どんなに逆境にあっても負けないとか。

 そんな感じで考えたっていうのは、今思いついた。」

 まあ、そんなもんだよな。

 特に深い意味はないんだろう。

「まあ、親戚連中もうるさいし、そのうち嫁でも貰わんとな。

 家名はヴォルフィッシャーってところかな。漁師が多い家系だったし。」

 その割に魚嫌いだったよな。

「そうなんすね。だからうちは魚の取引が多かったんすか。」

 アノーが感心したようにグラスコーに尋ねる。

「いや、魚の扱いが増えたのはヒロシの影響だ。俺は、魚が嫌いだしな。

 ガキの頃無理やり食わされて、それ以来大っ嫌いなんだ。」

 グラスコーは吐き捨てるようにつぶやく。

 なるほどなぁ。

「でも最近はタコやらイカなんかは旨いなって思うようになったぜ。頭からバリバリ食える小魚も悪くないな。

 相変わらず、骨の固い奴は苦手だけどな。」

 味覚が変わったのもあるんだろうけど、やはり食べづらさが苦手だったんだろうな。

 グラスコーの好みを聞く限り食べやすいって言うのが共通している気がする。

「まあ、とりあえず今日は疲れた。

 ゆっくり休ませてくれ。」

 旅が終わったばかりだから、そりゃ疲れるよな。事務所の上にある部屋へと昇っていく。

 あれ?

 レイシャが確か今寝てるんじゃなかったかな?

 上の部屋からどたばたという音が響いてくる。

「もう、別に同じベットで寝てもいいって言うのに。」

 入れ替わりでレイシャが下りてきた。

「そういう気分じゃないんでしょ。」

 そういう俺にレイシャはむすっとした顔を向けてくる。

 というか、人狼の表情も最近分かるようになってきたなぁ。

「ヒロシもそういうときあるの? あれだけべたべたしてるんだから、毎晩やってんじゃないの?」

 そんなわけあるか。基本的に、ベットは二つあるしお互い節度をもって接している。

 一人になりたい時だってあるんだから別の部屋で寝るなんて時もある。

 それでいいと思うんだけどなぁ。

「そもそも、そこまでべたべたしてますか? 一応気を付けてるんですけどね。」

 レイシャは俺の言葉に思い起こすように首をひねった。

「いや、うーん。

 べたべたしてる気がするけど、今はいないし、割と二人で一緒にいるのを見ないよねぇ。」

 今は、ベネットは日本語の習得のためにレイシャの所に行っている。

 夕方には迎えに行くけど、それまでは別行動だ。

 俺には俺の仕事がある。

 勉強しないといけないことも多い。

 そりゃ、もっとベネットとイチャイチャしたいという気持ちが無いわけでもないが、それはまた後でもできることだ。

 ベネットが寂しいとか言うならもちろん話が変わるけれど、そういう時は思いっきり態度で示してくれる。

 だから、それを見落とさなければいいんじゃないだろうか?

 まあ、正直男女の関係はこれが初めてなので、正解がどこにあるのかはさっぱり分からない。どっちにしろ手探りだ。

「べたべたしてないって思ってるのは当人たちだけですよ。

 端から見てると側にいれば何かとスキンシップしてますし、こそこそおしゃべりしてるし、じっと見つめ合ったりしてます。」

 様子を見に来たらしきセレンがいきなり言い放つ。

「自然にやってることだから自覚ないんだと思いますけど、割と目立ちますよ? その割にはお仕事をしっかりしてるのは驚きですけど。」

 そういうと、セレンは俺に資料を渡してくる。

「あ、ありがとうございます。この間の鉱物資源の分布図ですね。」

 そうか、そんなに目立ってるのか。


 どうしよう、もっと控えておかないとまずいかな。


 とりあえず気を取り直して渡してもらった資料に目を通す。

 アライアス伯の了承を得て、地下資源の調査をさせてもらっていた。

 まだまだ、モーダル近辺までだが、それなりに資源が埋まっている。

 鉄や石炭、硝石の他に銅鉱脈も発見していた。

 それらを色分けして、アライアス伯に提出する予定だ。

 その資料を清書してもらったわけだけど、なかなかの出来だと思う。これでそのまま提出できそうだな。

 他にも採掘を専門に行っている鉱夫ギルドとのパイプも繋がないといけないので、割と忙しい。

 鉱夫ギルドと顔をつなぐ理由は、アライアス伯の領地ではあまり意味はない。

 だけど禁止されているわけでもないし、他の目的もあるのでやっておくに越したことはない仕事だ。

 正月が過ぎたら蛮地に行く予定だが、それにはハルトも同行させようと思っている。

 今回のように地下資源探索をしてもらいたい。

 鉱夫ギルドの件は、その後の採掘をスムーズに行うための顔つなぎだ。

 ちなみに、蛮地の地下資源の権利主張は早い者勝ちらしい。そう考えるとがぜんやる気が出てくる。

 早いこと、石油を発見したいところだな。

 蛮地や国内にない可能性もあるけど、なければ海外へ調査しに行かないとな。

 出来れば、《上級瞬間移動》を使えるようになりたいけど。

 そのためにはレベルアップしないとだよなぁ。やっぱりダンジョンに潜るのが早道なのかね。

 あんまり危険を冒したくはないんだけども。

 勉強でレベルアップしないものか。

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