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10-1 ミリー様お願いします。

新章です。

結構あわただしい章になります。

お楽しみいただければ幸いです。

 貰ったスキルはもちろんチートだとは思う。

 だけど一番のチートはハンスに拾われたことだと思う。


 ミリーの能力を“鑑定”して驚いた。

 今までで見てきた人物で一番レベルが高かったのが、グラスコーが支援してたスカベンジャーのバーナビーたちだ。

 12レベルというのが俺のゲーム知識でも英雄と言っていいと思っていたわけだけど、ミリーがちょうどそのレベルだった。

 しかも結構能力値が高い。

 筋力や耐久力こそ人並みだけど、敏捷性は人間の限界を突破してるし魅力もベネット並みに高い。

 その上で、知力も意志力もそこそこ高いので何でもできそうだ。

 特殊能力も短剣の才能に急所攻撃、隠密行動、罠感知、罠解除、開錠能力に加えて動物支配という名前の能力まで持っていた。


 支配ってなんだ。


 というか人間も動物だろうと思うわけだが、さすがに知力が一定以上のステータスがあると支配はできないらしい。


 ほっとしたわ。


 短剣の才能については、技を習得できるわけだが、それもちょっと凄い。

 ベネットと同じくバレットガードを所持していて、さらにスウェーという能力を有している。

 これは、攻撃を捨てて防御に徹した場合に攻撃を見てから回避できるという能力だ。

 うん、一見すると地味だよな。

 地味なんだけど、“鑑定”で見れる文面から察するにどんな達人の攻撃もどんな不意打ちでも避けられるという事になりそうだ。

 ゲーム的な記述なんではっきりしないが、多分俺の攻撃は通用しない。

 じゃあ、魔法でとなるだろうが、びっくりしたことにマジックブレイクという技まで覚えている。

 これはあらゆる呪文を短剣で破壊できるというとんでもない技だ。

 もちろん自身を対象とする、もしくは術者と対象の間にいることが条件になるとはいえ、かなりとんでもない能力だろう。


 はっきり言って、俺ミリーのことを舐めていた。

 いや前から凄いなと思っていたけど、そんな想像なんかを軽くしのぐレベルでチートキャラだった。

 こんなのに拾われたら誰だって大成するわ。

 多分ミリーがこれなら、他のキャラバンメンバーも凄いんだろうな。

 “鑑定”するのが余計怖くなった。

 改まって、能力を見せて欲しいとミリーにお願いしたうえで見たわけだけども、心構えが無かったら多分腰抜かしてたな。

 しかし、この年齢でどんな人生を送ればこんなことになるんだろう?

「ヒロシ、大丈夫?」

 ミリーが首をかしげて聞いてきた。

「いや、ミリーがすごい能力の持ち主だってわかってビビってる。」

 そういうとミリーはエッヘンと胸を張る。

「どうだ凄いだろう。」

 こういう時、傷ついた対応をされると困るんだが、むしろ胸を張ってくれて助かる。

「すごいすごい、というか、もうこれで助けを求めないってむしろ頭がおかしいって話だよ。

 というかミリー先生よろしくお願いします。」

 俺は臣下が主人におもねるように頭を下げる。

「うむうむ、苦しゅうない。

 で、さっき聞いた話で全部なの?」

 観劇してから、いろいろと調整をしたうえで話せる内容を固めて今日やっとミリーを“鑑定”したわけだけど、それまでに話せることは大体話した。

「大体はね。

 伏せていたのは、マリドネル修道院って言うところだって事と多分悪魔が関係しているってことだよ。」

 これについては、ハルトの“案内”で調べたことで判明したことだ。

 少なくとも修道院には悪魔が3体潜んでいる。

 残念ながら誰が悪魔なのかまでは分かっていない。

 少なくとも、外に出てきた人物ではない。

「んげ、悪魔ならとっととやっちゃう方がよくない?」

 ミリーの反応は、こっちの世界の人たちにとっては至極まっとうな反応だ。

 ベネットも同じ反応だったしな。

「教会の関係者が悪魔でしただとスキャンダルになるから、実はまだセレンにも伝えてない。

 ここからは、教会側からの情報提供なんだけど、修道院から金を貰っている人物が数名いるらしい。

 下手に手を下すとこちら側が悪者にされる可能性もある。

 敵が悪魔だけなら、乗り込んで倒してしまえって話ではあるんだけどね。」

 なるほどねぇ、とミリーはつまらなさそうに呟く。

「少なくとも、外堀を埋める必要があるわけね。

 誰に金を渡しているのか、どこまで知っているかの証拠。」

 俺は頷く。

「おそらく主犯格は淫魔だと思うから、魅了には注意しないといけない。

 もちろん、魅了だけだと記憶を消すなんてことはできないから、別に魔法を習得している可能性もある。

 という事は、魔法の罠なんかも仕掛けている可能性もある。

 で、取り巻きであろう2体はバホメットだ。

 ヤギ頭の悪魔で、戦闘能力が高いのはもちろん変身能力もあるから、こっちにも注意しないといけない。

 素人の俺じゃ当然無理だし、ハルトは駄目なのはわかるだろ?」

 ハルトとは一度合わせたけど、とりあえずあいつはミリーを見て浮かれていた。

 ハーフリングに初めて会ったというけど、それだけが理由なんだろうか?

 とりあえず、落ち着きがなかった。

 そそっかしいというか、不安定というか。

 能力に行動が見合っていない。

「わかる。

 ハルトはお調子者だもんね。

 静かに何かをするのは得意そうじゃないかも。」

 能力を見る前だったらミリーも似たようなもんだろうという軽口をたたいていたかもしれない。

 だけど本気を出したミリーなら誰にも気づかれることなく仕事を済ませてくれそうだ。

「ねえ、ヒロシ、平気なの? 悪魔が相手なんでしょ?」

 ベネットが心配そうに尋ねてきた。

 まあ、そうだよな。

 こちらの世界の悪魔は本当に強い。

 人知の及ばない部分がある。

「見つからなきゃいいんでしょ?

 それに危なかったら、インベントリの中に逃げるよ。

 でも何を見つければいいかなぁ。」

 そこは悩む部分がある。

 アレッタの持ってきた帳簿は滅茶苦茶なもので、収入も支出もいい加減だった。

 まず、体を売っている部分の収入は記載されていない、どころか修道女たちが得ている収入が過少に記載されている。

 これは支払ったギルド側の資料と照らし合わせれば明らかにおかしかった。

 支出の方でも食糧や衣類、補修材料など事細かに架空請求がされている。

 当然それも照らし合わせれば商人の側は受け取ってはいない。


 これでは、明らかにおかしい。


 セレンもこれについては上の方に問い合わせ、監査が適切になされているか訴えていた。

 今はジョンたちと同行して遺跡の方に行っているが、それが無かったら修道院に押しかけんばかりの勢いだった。

 あまりよろしい状況じゃない。

 明確に教会上層部に分かったうえで協力している人間がいる状態だ。

「おそらくは、ちゃんとした裏帳簿があるかもしれない。

 それがまず1つ。

 もう一つは悪魔が誰に金を渡しているか、それを知りたい。」

 おそらく、ノックバーン司教は白だと思う。

 というか、あれで黒だったら何が白で何が黒か分からなくなる。

 頼むからそういうのはやめて欲しい。

 まあ、覚悟はするけども。

「それって、ハルトの能力で場所を調べられないかしら?」

 ベネットがぽつりとつぶやく。

 そうだ、考えてみればそれは可能だよな。

「えぇ、場所が分かっちゃったら楽過ぎ。

 いろいろと探って、間者ごっこしたい!!」

 悪魔相手に何言ってるんだろうな。

 ミリーはちょっと頭おかしい。

「そこにある罠なんかも調べられるかもな。

 分かってる罠にかかるほど、ミリーは間抜けじゃないだろうし。

 ごっこ遊びはまた今度にしよう。」

 なんにせよ、悪魔相手に遊びはできない。

 全力でとりかかろう。

 ミリーはちょっと不満な様子だけど、状況が厳しいというのは理解していないわけじゃない。

 渋々ながら、ハルトの能力を使うことに同意してくれた。


 

 日を改めて、夕暮れ時に修道院近くの塔に集結した。

 ここからだと、修道院まで距離がある。

 何をしているのか感づかれることはないだろう。

 多分。

「ハルトさん、手筈通り探ってみてもらえますか?」

 やる気のない返事をしながらハルトは手を振る。

「へーい、裏帳簿を各階に限定して探せばいいのね。

 あと手紙だっけ?面倒だなぁ。」

 そういいつつ、修道院の見取り図を見ながら座標軸を打っていく。

「しかし、よく修道院の見取り図なんて手に入れられたね? ギルドの力?」

 ハルトの言葉に俺は頷く。

「修繕とかで業者が入りますからね。それで建物の資料が無いか尋ねたら資料室に案内されました。」

 資料室の入室料は取られるけど、貴重な情報があさり放題だと考えればお得だよな。

「これ終わったら、俺にも専用インベントリ渡すの忘れんなよヒロシ。」

 報酬として、カイネとハルトに紐づけた専用インベントリを渡す約束をしている。

 だけど、管理はあくまでもカイネだ。

「ちゃんと渡しますよ、カイネちゃんにね。」

 ハルトは舌打ちをする。

「最近、カイネが無駄遣いするなってうるさいんだよなぁ。ちゃんと構わないと拗ねるし。」

 そういいながら、帳簿や手紙の位置とそこに掛かっている罠について記載が終わっていた。

「手放したいならいつでもどうぞ?」

 俺はハルトを挑発する。

「ふざけんなよ。そういうジョーク、分かっててもむかつくから。」

 思いっきり睨まれた。

 やっぱり好きなんじゃないか。好きな相手なら、ちゃんと大切にしろよ。

「気を付けますよ。

 でも、ちゃんとしないと愛想をつかされますよ?」

 そういいつつ、ハルトの書いた見取り図をミリーに渡す。

「そういいつつ、実は本気でカイネを貰いたいんじゃないの?」

 ミリーが不穏なことを言う。

「ヒロシ?」

 ベネットが俺の肩をつかむ。痛いです。

「そういうつもりはないです、本当です。

 信じてください。」

 ハルトはその様子を見て、ざまあみろとか言ってやがる。

 くそ。

 本当に冗談だし、微塵も考えてないっての。

「とりあえず、進入路作るから。ベネットもいつまでも怒ってないの。本当に微塵も考えてないから、ね?」

 ベネットは俺の言葉にむすっとして、そっぽを向いた。

 でも、肩を掴んでいた手は俺の手を握っている。

 しょうがない、片手で呪文を完成させよう。

「《現れよ》」

 文様を描き、言葉を発すると、《影の道》が発動する。

 日が沈んできたので、目立たないがブラックライトのような黒い光を放つ道が塔と修道院をつなぐ。

「ほへぇ、こんな呪文もあるんだね。初めて見た。」

 ミリーは楽しそうに笑う。

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