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9-27 色々あるけど、ないがしろにはできないし。

若干お話を持ちこして、この章は終了します。

次の章では大分派手な展開が続くと思いますが、中身は変わりないのでお付き合いいただけると嬉しく思います。

 ミリーはしばらく滞在するという事で、午前中に先生の授業を受け、倉庫に顔を出し午後はベネットと観劇する予定を立てた。

 倉庫に行く段階でミリーを迎えに行き、グラスコー商会のみんなとあいさつを済ませて3人で観劇をするというプランだ。

 授業にまでミリーを巻き込むわけにもいかないしな。

 授業が終わり、彼女を迎えに行って倉庫へと向かう。

 私用で自動車を使うわけにはいかないので、ベネットとミリーにはグラネに乗ってもらい、俺は自転車で追従した。

「へぇ、旦那の倉庫ってこんなに狭いんだ。」

 以前とは違い、荷物で溢れかえっている。

 俺のインベントリをフル活用していても、結構な量の荷物で埋め尽くされていた。

 最近は、ベンさんだけじゃ捌き切れないのでギルド経由で雇った作業員さんに入ってもらっている。

「狭いというか、荷物があふれてるんだよ。

 あ、ベンさんお疲れ様です。」

 ベンさんがくたびれた様子で空箱に腰かけている。

「なんだ、ハーフリングの子供? ヒロシの隠し子か?」

 なんでそうなる。

「いや、俺が蛮地でお世話になってたキャラバンの子です。

 ミリー、グラスコーの倉庫を管理してるベンさんだ。」

 俺はミリーをベンさんに紹介する。

「ベンさん、よろしくね。」

 にっこり笑って、ミリーは手を振る。

「おう、よろしくな。じゃあ、叔父さんがジュースをおごってやろう。」

 わーいとミリーは喜んでベンさんの後をついていってしまう。

 無防備そうにも見えるが、ミリーならたぶん平気なんだよな。

「お疲れ様です。

 これ、家に届いてた手紙なんですが、似たようなの届いてます?」

 投資のお誘いやら援助の依頼やらをまとめたファイルをイレーネに渡す。

「はい、届いてます。うんざりするくらい。」

 イレーネはため息をつく。

「面白いよね。

 こういうの見るのが楽しくて、しょうがない。

 どう見ても男の字なのに未亡人名乗るとか、何考えてるんだろうね?」

 涼しくなってきたので、、元気を取り戻したレイシャが嬉しそうにファイルを持って行ってしまう。

「中身については、レイシャに頼んでいます。

 夜の世界では、割と詐欺師が情報を漏らすらしいので、助かります。」

 夜の世界というところで、若干イレーネはいら立ちを見せた。

 なんだろう、何か不満でもあるのかな?

「ねえねえ、ヒロシ!!これ何!!」

 そういいながら、ミリーがタコをもって、事務所に入ってきた。

「それはタコ。というか、そういう食べ物を勝手に持ち出さない。」

 そういいながら、俺はタコをインベントリにしまう。

「タコって何?

 食べられるの?」

 その言葉に事務所のみんなは無言になる。

「本当に売れるのヒロシ?」

 ライナさんが不安げに訪ねてきた。

「はい、売れますよ。

 南の方だとちゃんと食材として扱われてます。

 丁度グラスコーさんがいるあたりで売れるので、あっちに送ります。」

 蛮地の南端には、港がありそちらではよくタコを食べるらしい。

 今度俺も行ってみたいな。

「脳喰らいとか、ダークマントみたいで不気味じゃないですか?」

 セレンはちょっとお疲れなのか、ぐったりしつつ話に入ってきた。

 どうしようかなぁ。

 お疲れのところにあの手紙を渡すのはためらわれた。

「どうしたんですか、ヒロシさん。

 私に見惚れちゃいましたか?」

 冗談めかして笑うもののいつものキレがない。

「なぁに?ヒロシ、早速浮気?」

 ミリーが割って入ってくる。

「浮気してくれたら、いいですけどねぇ。」

 セレンはそういうミリーの軽口に乗っかる。

「浮気はしません。俺はベネットだけを愛してます。」

 つまらん反応と思われるかもしれんが、そうしないと俺はだらしなく関係を持ってしまいそうだから、きっぱり態度で示そう。

「偉いじゃん。

 あ、私ミリー。

 ヒロシを世話してたキャラバンの一員。

 ヒロシが心配なってきちゃったんだ。」

 ミリーが忘れてたとばかりに挨拶をする。

「あ、セレンです。

 もとは修道女でしたが、いろいろありましてここで事務員をしています。」

 ミリーはよろしくねセレンっと返す。

 なんかミリーを見てるとそれが当たり前のように感じるが、すごいコミュニケーション能力だよな。

 次々に挨拶を交わし、そつなく会話をこなしてる。

 俺には到底できない芸当だ。

「ヒロシは、ミリーちゃんみたいになりたいの?」

 ベネットが俺を見上げて聞いてくる。

「無理。あそこまですらすら話が出てこないよ。

 つくづく思うけど、ベネットやミリーの方が商人に向いてるんじゃないかって感じることは多いよ。」

 俺は苦笑いを浮かべる。

「ヒロシはヒロシで商人に向いてると思うよ。少なくとも私よりかは全然、優秀だと思う。」

 そうかなぁ。

「まあ、強みの方向性は違うと思うけどね。」

 ベネットは苦笑いを浮かべる。

 もっと自信持たないとな。

 彼女に不安を持たせたりしないようにもっと稼げるようにならないと。

 

 午後、暁の盾の居留地に顔を出した後は3人で小さな劇場に足を運んだ。

 劇の内容は、行くまで把握してなかったんだが銀髪の剣姫と黒髪の王子だった。

 出来はとてもよかった。

 ロマンス小説をもとにしているだけあって、銀髪の剣姫はとても美しく、黒髪の王子は滅茶苦茶イケメンに描かれていてお似合いなカップルとして描かれているし。

 最後に復讐を遂げて亡くなる銀髪の剣姫と彼女を抱きしめて悲痛な声を上げる黒髪の王子の演技は鬼気迫るものがあった。

 その上で、いかなる困難があろうとも彼女を蘇らせると誓う場面には個人的にグッとくるものがある。

 確かに舞台装置や照明なんかはいたってシンプルで場面構成に粗が目立つ部分はあるものの、そんなことを無視していい位に演者がしっかりと演技ができているし。

 脚本も見せ場を分かったうえで、どこに注目させるべきかを押し出す作りで大変良かった。

 大変良かったんだけども。

 ベネット死んでないんだよね。

 後、黒髪の王子のモデルはデブなんだぞと。

 題材が題材だけに素直に楽しめないのが残念でしょうがない。

「いやぁ、かっこよかったね黒髪の王子は!!

 銀髪の剣姫の綺麗な事。

 演劇って面白いねぇ。」

 休憩のために入った喫茶店でミリーは手放しで絶賛している。

 自分がモデルでなければ俺も、その意見には賛成だ。

 劇団の実力が高いんだろうな。

 俺とベネットは真顔で顔を見合わせる。

「あれ?

 二人はあんまりだった?」

 ミリーの疑問にベネットは首を横に振る。

「そうじゃなくて、あれ、私たちがモデルなの。」

 恥ずかしくなってきたのか、ベネットは頬を赤らめさせて顔を覆う。

「あ、なるほど。

 そうなんだ。

 あー、いや、でもベネットはともかくヒロシはあんなにかっこよくないよね?」

 せやな。

 俺もそう思う。

「モデルって言ってもあくまでも架空の人物だしね。

 ベネットと違って、こっちとしては感情移入はできないかな。」

 そういうとベネットは覆っていた顔を上げる。

「それだと私が自意識過剰みたいじゃない!!

 使われてるセリフは全部ヒロシが言ったことだからね?

 脚色があるとはいえ、全部ヒロシは言ったんだから!!」

 俺は頬を引きつらせる。

 いや確かに言ったけど、そういわれると俺も恥ずかしくなってきた。

 よく、あんなきざったらしいことを言えたものだ。

「え?まじで?その顔で?」

 ミリーがからかうように笑う。

「はい、言いました。デブが調子に乗ってすいません。」

 ミリーは大爆笑する。

 いや、勘弁してくれ。

「素直でよろしい。

 否定してたら、許さないんだから。」

 そういいながら、ベネットはそっぽを向いてジュースを飲む。

 俺もコーヒーを啜りながら、こっそりベネットが絡めてきた指に応えるように指を動かす。

「何よ、仲良しじゃん。

 いやいや、まさか劇よりも甘々な感じだとは思わなかったなぁ。」

 ミリーはさっきから上機嫌だ。

 まあ不機嫌になられるよりかはいいけど、からかわれるのには慣れてない。

 しかし、言ったこととはいえ、どこから漏れたんだろうか?

 流石に二人っきりの時のセリフなんかはなかったけど、呪文で見張られてるんじゃなかろうか?

 いや、まあ、それらしい反応はないんだけども。

 反応がないから見張られていないとも限らないのが厄介だな。

 しかし呪文なぁ。

「何、ヒロシ悩み事でもあんの?」

 ミリーが目ざとく俺の表情をくみ取る。

「いや、ミリーに直接関係のある話じゃないよ。

 知り合いの悩みというか、うーん、なんといえばいいか。」

 悩みとか、そんな生易しい問題じゃない。

 事件と言えるレベルだ。

「ヒロシが関係してるんでしょ?

 だったら、私が関係ないって言い方はおかしいよ。

 話してみなって。

 お姉さんが何とかしてあげる。」

 お前がお姉さんって言うのはおかしいだろう。

 確かに俺は若返ってるが、ミリーよりは年上だ。

「なに?お姉さんって言うのは不満?

 一歳の癖に生意気だぞぉ。」

 そのネタ引っ張るのか。

「はいはい、一歳にしてはおっさん過ぎる気はするけど先達としては尊重するよ。

 それでもミリーに手伝ってもらうとなるとそれなりに事情を知ってもらわないといけない。

 俺だけがお願いしますって言う問題じゃないんだ。」

 なるほどねぇとミリーは分かってるんだか分かってないんだか分からないようなことを言う。

 そもそも、ミリーに何かをさせるってなるならミリーが何が出来るかを知らなくちゃいけない。

 俺が知っているミリーの能力は動物を意のままに操れるという事くらいだ。

 いや、操るというより意思疎通させて、その気にさせているといった方が正確かもしれない。

 それだけでも十分有能だけど、身のこなしなんかも軽いのは記憶には残っている。

 ただ、本当に協力をお願いするなら避けては通れないよな。

 ”鑑定”。

「ふぉ!!雪だ!!」

 ミリーが驚いたように窓に張り付く。

 本当だ。

 寒くなってきたとは思ってたけど、まさかこんなに早く雪が降るなんて。

「いつものことだよ。

 すぐに雨に変わるから、積もったりしないと思うけど。」

 ベネットは慣れたものなのか、のんびり外を見ている。

 慣れなんだろうけど、やっぱりこの国は雪国なんだなと実感してしまう。

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