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9-26 ちょっと待って。色々起こりすぎ。

ベネットはベネットでヤンデレ気味ですね。

「ねえヒロシ、なんで喜んでたの?」

 家に戻ったら、ベネットに問い詰められてしまった。

「いや、その。

 人って誰から何も思われないよりも、どんな感情でも意識してもらう方が嬉しい時もあるんだよ。」

 そういうとベネットは複雑な表情を浮かべる。

「私がヒロシのことを嫌いになっても平気なの?」

 いや、そういうわけではないんだけども。

「もちろん、蔑まれたり嫌われたいって話ではないよ?

 でもベネットが俺に殺意を抱くっていう時に何を思い浮かべたのか、想像するとね。」

 浮気した俺を刺すとかそういう感じの想像かなぁ。

「殺意じゃなくて、その……

 ヒロシを閉じ込めるために、ちょっとその。」

 もっと、すごい展開みたいだなぁ。

「なるほどねぇ。それはそれで愛されてる感じはするかなぁ。

 でも、やって欲しいって話ではないからね?」

 一応、釘を刺しておこう。

「分かってるわよ。あくまでも、想像のお話。物語と現実をごちゃ混ぜにしたりはしない。」

 ベネットはむすっとしてしまった。

「しかしアレッタさんの話、聞いてて不思議に思わなかった?」

 話題の振り方が多少強引かもしれないが、ベネットの意見も聞いておきたい。

「確かにね。言葉だけで頑張っていますというなら、話も通じるけれど。

 畑仕事やお針子までしてて、お金が足りない、子供たちに上納金を要求しなくちゃいけないって言うのは異常な気がする。

 そもそも、アレッタさんが言い出すまで、セレンが会計の話に至らなかったのはちょっとおかしいし。

 普通は、その前の監査の段階で出てきて当然の話だと思うのよね。」

 ベネットの感想はもっともだ。

 とはいえ、セレンが監査を指揮していたわけでもないだろうから話に出なかったのはそれほど不思議でもない。

 セレンとしては、監査がそんなことはとっくにやっているだろうと思っていたんじゃないだろうか?

 その上で何故お金が足らないなんってことになっているのか、アレッタたちがつかめていない様子が不自然なんだ。

 出納帳で十分わかりそうな話だしな。

「ご主人様、手紙が来ているよ?」

 カールが、結構な数の手紙を持ってくる。

 どうやら、竜の友という肩書は、思った以上に強力なのかもな。

 思わず、うんざりといった表情を浮かべてしまった。

「私も目を通すから、ちょっと頑張ろうね。」

 ベネットも苦笑いを浮かべる。

 仕方ないよな。

 とりあえず、目を通そう。

 

 大半が怪しげな儲け話のお誘いと、聞いた事とのない人間から俺にメリットがありそうで無さそうな援助してほしいという依頼だった。

 とりあえず、ファイリングしてグラスコーにも見せておこう。

 こういうのでも、商売のネタになる可能性はあるしな。

 最後に、差出人の名前がない手紙だ。

 多分、あの爺さんだよな。

 手紙の感じが他と若干違って古ぼけた印象を受ける。何か特殊な加工でもしてあるんだろうか?

 とりあえず中身を開いて読む。

 

 前回もそうだったが内容がえぐい。

 子供たちもそうだが、修道女たちも餌食になっている様子だ。

 しかも、貴賎関係なしに体を売っている。

 はっきり言って異常だ。

 そんなことあり得るだろうか?

 身分差があり、上のものが下のものを虐げるという構図は、分かり易いしそれはそれで問題だとは思う。

 だが、修道院一丸となって体を売ってるとなると、あまりにもおかしかった。

 アレッタがそんなことをしている様子は見えなかったし、そもそもそれなら金が足らずに野良仕事をする必要性が分からない。

 むろん、無償で行われているわけではなく、高額な報酬をやり取りしたうえでのサービスだ。

 高貴な出自や若い人間ほど高額な支払いを求められるらしいし、はっきり言ってこれでお金がありませんなんてあり得るのか?

 というか高貴な出自の人間が耐えられるんだろうか?

 ベネットにも手紙を見せてみた。

 当然彼女も似たような反応を示す。

「まるで洗脳でもされてるように思えるって言ったら、ヒロシは疑う?」

 ベネットがいう事に俺は疑いを持てない。

「疑う余地ってあまりないと思う。

 呪文かな?

 薬であそこまで平然としてられるとは思えない。」

 記憶をいじる呪文にはいくつか思い当たるものがある。

 ゲーム知識だから、それがこの世界の呪文と、ばっちりとあてはまるかは分からないけど。

 少なくとも、先生から習った呪文はほぼゲーム知識と変わらない。

 変化があるとすればゲーム的処理で簡略化されていたり、省略されていたりする部分だ。

 そこからすると、もし思った通りの呪文があるとすればえぐいよなぁ。


 不意に電子音が鳴る。

 誰からか、手紙が来たのかな?

 とりあえず、お知らせを見るとキャラバンの専用インベントリに手紙が来たことと荷物が追加されたことが記されている。

 いや、普通の荷物ならお知らせが来るようには設定してない。

 という事は。

 俺は、あわててキャラバンの専用インベントリを開く。

 中には手紙とミリーが入っていた。

 俺は慌てて、ミリーを取り出す。


 何やってんの?


「ミリー!!大丈夫か!!」

 俺がミリーを揺さぶるとすぐに目を覚ます。

「え?なんそんなに必死な顔してんの?」

 開口一番、ミリーは呆れたような声を上げる。

「いや、その……」

 改めて考えてみる。

 なんで俺はこんなに焦っているんだろうか?

 ネットミームで見た、何億年も閉じ込められ苦しんだ挙句に、その体験や記憶を消去されル話。

 瞬間移動しているつもりで実は別の体に記憶が受け継がれているだけで元の体を破壊し損なわれ真実を知るという話。

 それらはあくまでも仮定の話だ。

 それには知っているから恐怖を誘うのであって、知らなければ何のことは無い怪談話だ。

 むしろ確かめようがないからそういうことがあるかもというのが話の要点でもある。

 だから、積極的に検証のしようのない状況を作り出す。

 ありもしない与太話に過ぎない。

 ただ俺はその話を知っている。

 確かめないと不安で仕方がない。

 ただ、ミリーに話すのはちょっと違う気もする。

「いや、何かインベントリに入って具合が悪くなったりしないか心配しただけだよ。

 手紙と同時に入ってるのはちょっと勘弁して。」

 ミリーからしたら、同時で何の問題があるんだという顔をされてしまっている。

「ミリーちゃん、ヒロシは心配性なのよ。

 それで、なんで急にこっちに来ようと思ったの?」

 ベネットがとりなすように声をかける。

「最初は旦那の忘れ物を渡すって話だったんだ。

 じゃあ、ヒロシに頼めばいいんだけど、ちょっとそれでヒロシがどうしてるかなって思って。

 後、関所の内側を見てみたくなったんだよね。

 そのうち領地貰うんでしょ?

 じゃあ、私たちが住む場所にもなるわけだし。

 あー、あとさ。

 あのトウモロコシだっけ?

 あれをなんでわざわざ、あんな奴らにやらなきゃいけないんだって聞いておきたくてさ。

 なんでよヒロシ。」

 こいつはいつも早口だ。

 まあ、質問は一つか。

「育てやすい植物だから、少しでも収穫が増えればいいなと思っただけだよ。

 俺を経由してハンスたちが渡したのであれば、感謝してもらえるかなと思ってね。」

 俺の言葉にミリーは疑いの目を向けている。

「それだけ?

 確かに夏植えたのに、結構な量が取れてるみたいだけどさ。」

 もちろん、それだけじゃない。

「大手なら、水場から動かないようになってもらった方がいいかなと思った。

 他の理由としては、あれは結構な水が必要なんだ。

 来年は樽とかも送るから、その大手さんにはトウモロコシと引き換えに水を分けてあげるといいよ。」

 俺はにっこり笑う。

「なるほどねぇ。

 さすがヒロシ、賢いなぁ。」

 ミリーは納得したのか、にっこり笑う。

 そんな様子にベネットもカールも戸惑い気味だ。

「あぁ、そういえば紹介してなかったな。

 俺の奴隷のカールだ。

 よろしくしてやって欲しい。」

 ミリーはカールを見るとへぇ、可愛いじゃんと言ってカールを抱きしめた。

「ヒロシの奴隷ってことは、カールは私の子分でもあるってことだね。」

 何を自慢げに。

「お前が持ってる絵本の作者でもあるんだぞ?」

 今のところ数冊だがカールの絵本はそれなりに売れている。

 当然キャラバンのみんなにも読んでほしくて、初版を渡しておいた。

「げ!まじ!!先生じゃん!!

 先生、早く続編が読みたいです。」

 カールの手を握り、熱心に頼み込み始めた。

「ご主人様、俺どうすればいいの?」

 どうするたってなぁ。

 流石にこういう関係はどう対処すればいいのかなんて俺には分からない。

「友達として接すればいいんじゃない?

 ヒロシは主人だからカール君が敬う必要はあるし、私も妻になったらあまり馴れ馴れしくはできないけれど。

 誰も見てないところでは、気にしなくてもいいと思う。」

 ベネットの言葉通りにするのが無難なんだろうな。

「まあ、あれだね。

 人同士の接し方なんてそのうちなるようになるってハンスも言ってたし、気にすんな!!

 よろしくねカール。」

 ミリーの笑顔にカールは黙って頷く。

「そういえば、マーナだっけ?

 狼の子に名前つけたって聞いたけど、元気?

 お、元気そうじゃん。

 うりうりうりうり。」

 カールを一通り撫でまわした後は、マーナを撫でまわし始める。

 最初は嫌がるそぶりを見せたが、マーナもまんざらでもない様子になって、すっかりミリーのとりこになってしまった。

 相変わらず凄いな。

「そういえば、結婚式いつにするの?

 春?

 またこっちに来る?」

 一応予定としては、春になっている。

 その前にキャラバンには顔を出すつもりだ。

「結婚前かなぁ。

 まあ、その時に祝ってくれてもいいけど。

 結局、手続きの問題でしかないから、結婚してるようなもんだよ。」

 俺はベネットの方を見る。

「そうだね。

 冬にまた、あっちに行く?」

 ベネットは、里帰りの日取りを提案してくる。

 そうだな。

 年明けに行くのがいい気がする。

「そっか。

 あ、そうそう、これ。」

 そういいながらミリーがポケットの中を探る。

「こっちは結婚祝いじゃなくて、ヒロシの誕生日祝い。」

 誕生日?

 いや、俺の誕生日は、まだ先。

「こっちに来た祝いって言うのでもいいかな。

 丁度、ハンスが連れてきた日だから。」

 そういうと、ミリーは翡翠のブレスレットを俺に手渡してきた。

 そうか。

 もうこっちに来て1年たったんだなぁ。

「じゃあ、ヒロシの一歳のお祝いね。」

 ベネットがくすくすと笑う。

 一歳はないだろう。

「まだまだ赤ちゃんだね。」

 ミリーも楽しそうに笑う。

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