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9-25 どうにもきな臭い。

主人公は変態です。

 セレンが復帰し、近くの喫茶店で話し合いができる状況まで持って行ってくれた。

 やはり同じ神を信奉する者同士の方が話は通じやすいんだろうな。

 そういう意味で、セレンには感謝をしないと。

「つまり、あくまでジョンが自ら望んで、その、遺跡漁りをしていると。」

 説明も紆余曲折あって、何度説明したか分からない内容を何とか彼女から引き出せた。

 俺は、大きく頷く。

「ジョンには才能があるのは間違いありません。

 実際、彼は結構な額を稼いでいるようですし、大怪我なんかも負ってないです。

 もちろん、完璧な安全を保障できるわけではありませんが、私もなるべくサポートできるように努力はしています。」

 言い方一つ、しゃべり方ひとつで印象は変わるものだ。

 シスターも何とか飲み込んでくれたようで、ほっとした。

「申し訳ありません。

 まさか、竜の友とも呼ばれている方だとは思ってもなくて。」

 肩書って大切だなぁ。

「それに、結婚式の打ち合わせ中だったなんて。

 大変失礼しました。

 シスターセレンにまでご迷惑をおかけして申し開きもありません。」

 深々と頭を下げられて、セレンは複雑な表情を浮かべる。

 彼女が咄嗟についた嘘だというのもあるし、俺たちの結婚式というのも歓迎しづらいのかなぁ。

 それにセレンは本来は教会から離れているはずだからな。

 そういえば、このシスターの名前聞いてたっけ?

 確かアレッタだったか。

「えっと、それでアレッタさん。

 私が院長からジョンを買ったという話を詳しくお聞きしてもいいですか?」

 それは、誤解でとアレッタは話したくない様子がうかがえた。

 でも、ひっぱたかれた理由だからなぁ。

「確かに自分は院長とは関係はないのですが、ジョンと院長の関係性は気になります。

 いったい何があったんですか?」

 聞くくらいはしてもいいよな。

「実は、成人間近の子たちは、それまで修道院で養ってもらった分の恩返しという名目で上納金を納めることになっているんです。

 そんなことは間違っていると私たちも院長には申し上げているんですが、では実際の修道院の運営はどうするのかと言い返されると何も。

 何とか、お針子の仕事や畑を耕し、少しでも修道院の力になろうと努力はしているのですがあまり芳しくなく。

 そんな時に、ジョンが全ての上納金を自分が払うと申し出まして。」

 そうなると当然ジョンはどこから金を手に入れるのかが気になるよな。

「問いただしてみれば、ジョンはヒロシという男性のもとで妙な仕事に従事していると話を聞いていてもたってもいられず。

 まさか、その男性がヒロシ様のように立派な方だとも露知らず、本当に申し訳ありません。」

 待て待て、立派ではない。

「いえ、アレッタさん立派なのはジョンです。

 私は単にジョンに協力しているに過ぎないですし、商人ですからいくばくかの利益をいただいています。

 単に同じ修道院の出身だからと言って、全員を救うと決意した彼の足元にも及びません。」

 謙遜とかではなく真面目にそう思う。

 そもそもハルトとかどうでもいいと思ってる時点で、ジョンと比べるべくもない。

 でも、アレッタって人は身代わりに自分をと言っていたけどスカベンジャーやるつもりだったのかな?

 いや、そんなの無理だよなぁ。

 そんなことを考えてこっそり”鑑定”してしまった。

 見るんじゃなかった。

 本当に普通の人だ。

 逆に言えば、そんな人なのにスカベンジャー志願するとか無謀すぎる。

「私には神の声も聞こえませんし、特別な力はありません。

 それでも、子供たちを助けたい。

 そんなことを思っていたのに、結局ジョンが危険な仕事をしているのにも気付かず、それも彼の意志であることすら分からってあげられず。

 本当に恥ずかしいです。」

 いや、勘弁してくれ。

 泣かないで欲しい。

「ちなみになんですが、修道院の会計はそんなにひっ迫しているんですか?」

 それはとても気になるところだ。

「はい、我々修道士の活動や地域の方からいただく寄付で色々と賄おうとしているのですが、如何せん出費が多いもので。」

 やっぱり言葉だけじゃわからないよなぁ。

 でも、帳簿を見せてくれとも言いづらい。

「もしかしたら、何か我々では気付かない無駄な出費があるのかもしれません。

 よろしければ、帳簿を見ていただくわけにはまいりませんか?」

 そっちから、申し出てくれるのはありがたいけど。俺は、セレンの方を見てしまう。

「シスターアレッタ。

 あまりこういう事を言うのはよくないかもしれませんが、少々軽率すぎます。

 外部の方に頼る前に私に見せてください。

 一時的に世俗にまみれているとはいえ、神に仕える身。

 悪いようにはしません。」

 セレンもやはりそういう判断をするよな。

「すいません。

 気持ちばかりがはやり、周りが見えておりませんでした。

 シスターセレン、お願いできますか?」

 アレッタは、地獄に仏といった感じでセレンの手を握った。

 いや、仏はおかしいか。

 いや、まあ、そんな感じだ。

 

 後日帳簿をやり取りするという事でアレッタは立ち去ったけど、セレンは頭を抱えている。

「すいません、ヒロシさん。

 修道士はみんなポンコツです。」

 修道士全体に話を広げるのはどうかと思うけど、善良な修道士って言うのはみんな純情なんだろうなと思わなくもない。

「気にしてませんよ。

 副院長って言う人にも鞭をふるわれたし。

 殴られるのは慣れました。」

 むしろ、あれはよくなかったな。素直に鞭うたれておけばよかった。

「なんで教会の人はみんなそんなに乱暴なの?」

 ベネットの言葉に、セレンは違うんです違うんですと身もだえ始めた。

「修道士がみな未熟なのは当たり前なんです。

 世俗に疎い子も多いし、世間でうまくやれていない子も多いのは事実です。

 でも、副院長が鞭を振るのは明らかにおかしい。

 少なくとも、私のいた修道院の院長や副院長は穏やかな方でしたし、明らかにおかしいです。

 まるで何か魔法でも使われているよう。」

 魔法か。無くもない。

 ちゃんとステータスを確認しておくべきだった。

 あまりにも普通過ぎて、じっくり見るのが躊躇われた。

 そのせいで状態異常があったか無かったか思い出せない。

 魔法云々も気がかりだが、会計の方も気になる。

 帳簿をセレンに確認してもらえることになるというのは大きな前進になるかもしれない。

 そういえば爺さんにも探りを入れてもらってたんだっけ?

 そっちの方も進展があるとありがたいんだけども。

 そう言えばハルトはどうしたんだろうか?

 あちらから、連絡もないし何かあったんだろうか?

 一応トランシーバーは渡しているし、緊急連絡用のボタンも付いている。

 それすら使えないとか、相当やばいよなぁ。

 そういうのじゃないと思うけども。

「そろそろ出ますか?」

 喫茶店を後にしてハルトを待機させている場所へ向かう。

 

「ハルトさん何してるんです?」

 どうやら動画を見るのに夢中になっていただけのようだ。

 カイネと二人で画面を凝視していた。

 こいつ、本当に大丈夫か?

「あ、ごめん。

 この動画が面白くってさ。」

 その面白い動画とやらを見せたいのか俺に画面を見せてくる。

 いや何も説明せずに画面見せても、どんな動画なのか見てくれる人は多くないと思うぞ。

「確かにお知らせが届くわけですから常時集中しておけなんて言いませんよ。

 ただ区切りはあるんだろうし連絡くらいくれてもいいんじゃないですかね?」

 カイネが申し訳なさそうに頭を下げてくるが、ハルトは悪びれる様子もない。

「いいじゃん、実際何もなかったんだろ?

 敵が来ないんだ……」

 ハルトのおしゃべりが止まる。

 それと同時に俺も背筋が凍る思いをした。

「反応するんですね。

 よかった。」

 セレンはにこやかに笑う。

「殺意に反応するのかしら。

 それだと、詐欺師は分からないかも。」

 ベネットはいろんな場面を想定して、思考を巡らしている様子だ。

「で? どういう、お知らせが届きました?」

 俺はハルトに尋ねた。

「敵の反応が来たって、知らせが来たけど。

 今は反応ない。」

 敵探知はちょっと弱点があるな。

 これはつまりベネットとセレンが瞬間的な殺意を向けて、それに”案内”が反応したという事だろう。

 あらかじめ殺意満々で来ているならともかく、状況次第では殺そうとしてくる相手には反応しないという事だ。

 それと、感情が高ぶっての害意って言うのも殺害する意思と認識するかどうかは分からない。

 もうちょっと考えないとな。

「あの、ベネットさん。今何を考えています?」

 ハルトが焦ったように声を上げる。

「腕を折ろうかなって。

 つまり、身体的害意には敏感みたい。」

 ほうほう、じゃあ俺はどうやってハルトを騙そうか考えてみるか。

「ヒロシは何考えてんだよ。」

 お、反応した反応した。お金絡みで騙そうとするのは分かるんだな。

「いや、どうやってハルトさんを借金漬けにしようかなって考えてたんですよ。」

 まあ、考えたのは一瞬だけどな。

「勘弁してくれ。怖い。」

 ハルトが根を上げたので、実験は切り上げよう。

「分かりました。二人も遊ぶのはやめましょうね?」

 俺の言葉に二人は、はーい、と声を揃えて言う。

 本当楽しかったのかもな。

 あ、いや一つ忘れていた。

「最後に俺に殺意を向けてもらえますか?」

 ハルトだけに反応するだけだと意味がない。

 俺に殺意が向けられて、反応があるならグループとしての敵という対象を感知できることになる。

 そうなれば、非常に便利だろう。

「なんで、ベネットさんだけ反応があるんだよ。

 え?

 結婚するんじゃないの?」

 ハルトは慌ててるけど、俺はなんだか恥ずかしいような嬉しいような。

 いや、喜んじゃいけないか。

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