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9-21 モーダルって田舎かな。

実際には海外への玄関口であり非常に重要な貿易拠点だったりします。

田舎に見えるのは現代人の視点でものを見ているからです。

 お菓子職人がいるという領内に挨拶に向かい取引を行い、紹介状を使ってお菓子職人と接触を持った。

 複数人いたので、一応全員に資料と道具を渡しチョコレートの製作を依頼する。

 おかげで、モーダルには予定より到着が遅れてしまった。

 と言っても1週間程度なので、大した影響はないけど。

「なんか、モーダルって田舎じゃね?」

 まあ、確かにブラックロータスと比べれば広いし、胸壁の内側にも畑あったりするからなぁ。

 ハルトの感想は分からないでもない。

「でも、いい街ですよ?

 少なくとも、ブラックロータスに比べたら安全です。」

 治安の良さは他の町や市よりも高い気はする。

 ハルトにとって、それがいい事か悪い事かは分からないけど。

 とりあえず、ハルトの身分をしっかり固めないとまずい。

 グラスコーには、俺が面倒を見るという形でハルトのことを手紙に書いて知らせてあり、グラスコーが後見人になるという形で手続する許可を得られている。

 カイネはその奴隷なわけだけど、ハルトはカイネを市民にするかどうかでまだ悩んでいるようだ。

 まあ、そこは好きにしてくれ。

 倉庫に到着すると、いきなりセレンに出迎えられた。

「おかえりなさいヒロシさん。

 遅れるって聞いた時は心配しちゃいました。」

 抱き着いて来ようとするところをベネットにインターセプトされた。

「ありがとうね、セレン。

 ヒロシは無事だから、安心してね?」

 そう笑いながら、ベネットはセレンを抱きとめている。

「ベネットさんもご無事なようで何よりです。」

 それに対してむしろ積極的にセレンはベネットに絡みつき始めた。

 おいおい、目のやり場に困る。

「ちょっと、もう、こういう冗談に本気にならないでよ。」

 ベネットはまさか抱き返されるとは思ってなかったようで、慌て始めた。

「いいじゃないですか、減るもんじゃないんですし。」

 なんか、こういうやり取りはセレンの方が上手らしいなぁ。

「じゃあ、ヒロシ。

 また何か依頼があればよろしく。

 逆にこっちから依頼があるかもしれないけどね。」

 そう言ってトーラスは立ち去ろうとする。

 やばいやばい、ちゃんとボーナス渡さないと。

「ありがとうございます。

 まあ、年内は何事もないことを祈ってますよ。

 お互いに、無事に過ごしましょう。」

 そう言って、ボーナスを入れた革袋を渡した。

「そうだね。

 せっかく、いい仕事にありつけそうなのにぽっくり逝くのは勘弁願いたいよ。

 じゃあね。」

 軽く手を振って見送る。

「ヒーローシータスケテー」

 あー、はいはい。

「セレンさん、お願いしていた手続き出来てます?」

 とりあえず、仕事の話をしよう。

 ハルトの市民登録やら資格試験の予約をお願いしてあるはずだ。

「あ、はい。そこら辺にて抜かりはないですよ?

 あと、お部屋をどうするかですけど物件巡ります?

 しばらくは、ヒロシさんのところでってことですけど、早めに決めたほうがいいですよね?」

 流石に話が早い。

 基本、優秀ではあるんだよなぁ。

「多分、辻馬車にも慣れてないと思うんで、案内お願いできますか?」

 分かりましたとセレンは笑顔で答えてくれた。

 品定めという側面もあるんだろうけど、積極的に協力してくれて助かる。

 ハルトとカイネをセレンに任せて俺は、売り上げの清算を行うために事務所へ向かう。

「なんだか最近身の危険を感じる。」

 ベネットはちょっとげんなりした顔をして、セレンのスキンシップに警戒心をにじませた。

「そういう路線に変更したのかな?」

 まあ、手を変え品を変え、なかなか粘るもんだ。

「戻りました。清算お願いします。」

 そう言って、伝票や納品書をまとめてイレーネに提出する。

 帳簿はベネットにも添削してもらったので、以前よりはミスも少ないと思う。

「お疲れ様です。

 そういえば絹布の件ですが、入手状況はどうなっていますか?」

 どうやら、ギルドの方からも納入を依頼されているという話がイレーネの口から聞けた。

「いや、厳しいですね。

 一応、アノーさんとグラスコーさんの分は確保しましたけど、残りは赤が10本くらいしか余裕ないですよ?」

 実は嘘だ。

 卸しで購入した絹布が届いているので、出そうと思えば結構出せる。

 だけど、ちょっと出荷制限しないとまずい気がしているので、ギルドの要求分は後回しにさせてもらおう。

 そういえば絹布が届いた時点で、”売買”のレベルがまた上がった。

 おかげで、マジックアイテムの”売買”が可能になっている。

 実は、これまでも”売買”のオークション機能でマジックアイテムを売り払うことは可能だった。

 しかしレベルアップで手に入れた能力では、売却に加えて購入も可能だ。

 もちろん、制限はある。

 誰かが所有しているマジックアイテムのみであり、なおかつ売却の意思があるアイテムに限定されている。

 こちらが売却する場合も、あくまでこちらの世界の人物に貨幣で売却するという形が取られるので、単にマジックアイテムの売り買いを代行してもらっているようなものだ。

 もちろん、それが有益ではないという話じゃない。

 相手は、おそらくこの世界のすべての人になるだろうから、とてつもない力であるのは間違いがない。

 さらに言ってしまえば、今までどこに行っているのか分からなかったマジックアイテムの行き着く先がこの世界の人物であることが分かったのは大きい。

 元の世界で取引されてるとかって話になっていたら、怖いなと思っていたので安心材料にもなった。

 しかも制約付きのマジックアイテムなんかも手に入るわけだから、自分たちに合致するマジックアイテムを格安で購入することも可能だ。

 もちろん、あくまでも誰かが所有していて、売る意思があるものに限られはするんだけども。

 ただ問題なのは単に買って売るだけで金を稼ぐことはできない。

 レベルアップしていけば変わるかもしれないが買値は標準的な価格、売値は半額という感じなので、売るなら通常の買い手を探した方がいいし買うなら生産者から直接買うか、オークションを狙った方がいい。

 もちろん、特殊なものや高額なものなら、話は変わってくるんだけども。

 なんというか相変わらず凄いんだけど、利用方法が思いつきにくいというか。

 まあいいや。

 絹布もそろったのでラウゴール男爵に予約分を送ろう。

「とりあえず絹布は予約分があるので、発送の手続きしてもらってもいいですか?」

 イレーネに依頼し、手続きを取ってもらう。

 俺はその間にラウゴール男爵当てに価格交渉を進めるための手紙を書き始めた。

 そういえばベネットは何してるんだろう?

 あ、ライナさんにおみやげを渡してる。

 それと世話話をしながら、お茶を飲んでるなぁ。

 なんか、そつなくフォローされてて、本当にありがたい。

 さっさと手紙を書き上げてしまおう。

 

「ありがとうベネット。

 すっかりおみやげのこと忘れてたよ。

 ライナさんは何か言ってた?」

 カールを迎えに行く道すがら、ベネットに尋ねた。

「何時結婚するのって話とか、ライナさんの新婚だったときの話とかかなぁ。

 あとは、今年は麦があまりがちだから、パンが安くなって嬉しいとか。

 後、紙幣の話がちらほら出回ってるらしいよ?

 みんな感覚としては、新しいお金が出回るんだなぁくらいだけど。

 結構変わるんだよね?」

 結構変わるというか、多分世の中に出回るお金の量が格段に増える。

 それが経済活動の発展や雇用の創出につながり、物流の活性化を促してくれる可能性もある。

 それと同時に、需要の増大により供給の枯渇、物価の上昇をもたらす可能性も同時に発生する。

 金というものが物の価値を測る尺度として、今以上に意味を持つだろう。

 けど、俺が主導することではないからなぁ。

 正直、これを主導しているバウモント伯やアライアス伯が何を狙っているのかははっきりしない。

 明らかに、ギルドを狙い撃ちにしたいのは分かる。

 というかネストホルン伯との権力争いなんだろうなぁ。

「場合にもよるけど、物を作る人たちは強くなると思うよ。」

 その因果関係を説明すると長くなる。

 しかも言ったとおりになるとも限らない。

 というか、俺が知識として持っている経済の話も定説ではあるものの、あくまでも後付けの解説に過ぎない。

 何事もなく、平穏で何の波乱も起こらない可能性もある。

 逆に思ってもみない結末を迎えるかも。

 まあでも、どんな時でも手に職もってる人って言うのは強い気はするんだよなぁ。

「じゃあ、私が料理人になりますか!」

 ベネットは冗談のつもりだろうけど、とても心強い。

「その時はよろしくね。

 ベネットの料理はおいしいからなぁ。」

 まあ、いざとなれば俺がアルノー村に下働きとして働きに出てもいい。

 やれることを精いっぱいやるだけの話だ。

「まあ、ヒロシなら大丈夫だと思うけどね。」

 ベネットは楽しそうに笑う。

 もちろん、期待にはできうる限り応えたいところだ。

 

 カールを迎えに行ったら、沈痛な面持ちで大家さんに出迎えられた。

 不動産取得のほうが上手くいってないんだろうか?

 みやげでもってきたチーズケーキを出されているから、機嫌が悪いという話じゃないんだろうけど。

 応接間では微妙な空気が流れている。

 一緒に連れてきたマーナも不安げだし、カールも微妙に緊張している。

「ヒロシさん、おかしなことを言うのだけれど聞いてくれるかしら?」

 大家さんが重々しく口を開く。

「は、はい。」

 俺は神妙に応じる。

「まずは、感謝を。

 あなたのおかげでナバラ家は守れました。

 ありがとう。」

 どうやら不動産の問題は片付いたみたいだな。

「いえ、大切な船を譲っていただいたわけですし、こちらこそありがとうございます。」

 おかげで倉庫が大分すっきりしたし、いろいろと大きな荷物もしまえている。

 まあ、それでも5000万円近い出費は痛かったけども。

「そう言ってもらえるだけで、少しは気も楽になるわ。

 それでまた、お願いがあるのだけれど。」

 なんだろうか?

 また、何かを買ってくれという要望だろうか?

「わたくしの養子になっていただきたいの。」

 養子?

 いや、いきなりだな。

「それは甥御さんの件という事でいいんでしょうか?」

 大家さんは頷く。

「あの子は、家がどれだけの負債を抱えているかも知らないの。

 確かに資産はあります。

 それでも、いただいている御家賃を返済に充ててしまうと困窮する程度には借り入れも多いの。」

 な、なるほど。

 田舎の土地持ち旧家みたいなものか。

 どう返答したものか。

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