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9-20 偉そうなこと言っていてもこの程度の人間です。

チョコレートってココアを固めたものじゃないんですよ。

 コンテナハウスを出しているキャンプ場に戻った段階で、ハルトには”案内”で敵の存在を探知してもらった。

「なあ、これって意味あるの?

 敵って言っても、いろいろなわけじゃん。」

 そこは、俺も気になるところだが、検索をかければ0件と出てくるところから継続してもらっている。

「おかしな言葉で検索かけたり、あからさまに存在していないようなものを探させようとすれば、存在しませんってアナウンスが流れるんですよね?

 0件ってことは、探知範囲にはいないことを示している気がするので、続けてください。」

 とりあえず、ここまでの会話は日本語だ。

 ベネットはともかく、他の二人には何をしゃべってるかさっぱりだろう。

「いちいちやり直すの面倒だなぁ。」

 そうハルトが漏らすと、次の瞬間背筋を伸ばした。

 どうやらレベルアップしたんだろうなぁ。

 そういう愚痴を言えば、レベルアップするんだよ。

 やっぱりチートだよなぁ。

「継続的に使えるようになりました?」

 フランドル語に戻して、話しかける。

 ハルトは、がくがくと頷いた。

「多分だけど、引っかかったらお知らせ来るかも。」

 滅茶苦茶便利じゃないか。

 まあ、敵認定がどのような基準で探知されるのかによって変わるとは思うけども。

「また、ヒロシ遊んでるの?」

 ベネットが呆れたように言ってきた。

 遊びとは失敬な。

 まあ、能力で色々と試行錯誤するのは楽しいけども。

「その遊びでいろいろと便利になるのはありがたいよ。

 できれば何をしているのかは教えてもらえると助けるけど。」

 不満げにベネットは頬を膨らませる。

 確かに、何してるか分からないと連携は取れないよな。

「おおざっぱに敵がいないかどうかをハルトさんに探してもらってたんだ。

 まあ、明らかな敵意を持った相手じゃないと感知できないから索敵不要とはならないけど。」

 ちなみにレベルアップしたなら、範囲も広がっただろうな。

「ちなみに、ハルトさんは何キロまで範囲広がりました?」

 ハルトは、指を4本立てる。

 4㎞か。

 結構な距離だな。

「ちなみに、同時に検索かけられるのは2つまでって制限付き。

 だから、常にやってると1つしか余裕ないよ?」

 んー、なかなか厳しいな。

 まあ、妥当な制限ではあると思う。

 呪文や赤外線センサーもあるし、適宜切り替えてやってもらうのがいいかもな。

「あの、ハルト様、お昼を作ってみたんですがいかがでしょう?」

 カイネがおずおずとお昼のために作ったポリッジを持ってきた。

「え?お昼おかゆなの?」

 おかゆじゃねえよ。

 ポリッジだ。

 聞きなじみがないなら、オートミールといった方が分かり易いか?

 カイネは申し訳なさそうに、テーブルにポリッジを並べていく。

「あ、ごめん。いやカイネが作ってくれたんだよな?

 ありがとう。」

 あからさまな不満感を示してしまったのを反省したのか、ハルトは感謝の言葉を並べた。

 今更遅いけどな。

「いえ、お口に合えばいいんですけど。」

 そう言いながら、カイネは食事を勧めてくれた。

 うん、味は悪くないと思う。

 煮込み具合は若干緩いかもしれないけどなかなかおいしい。

「おいしいよ、カイネ。」

 ハルトは取り繕うように笑う。

「ありがとうございます。」

 どうやらそれがお世辞なのは分かっているらしく、カイネはちょっと落ち込んでしまっている。

「ヒロシはどう思う?」

 ベネットが俺にポリッジの味について意見を求めてきた。

 酷いなぁ。

「味はいいと思うよ。

 習いながら味を決めてたと思うから、そこはよかったと思う。

 ただ、そのせいか若干煮込みすぎちゃったかな。

 でも、そこは好みの問題だから、こういう柔らかいポリッジが好きな人もいると思うよ?」

 まあ、逆に言えば俺の好みとは若干違うという話ではある。

「ハルト様はいかがですか?」

 カイネは、ハルトのために作ってるんだろうし、当然そこは気になるよな。

「いや、その。

 えーっと、ヒロシみたくうまく言えないからあれなんだけどもっと歯ごたえというかなんて言うか。」

 そもそも、お昼にポリッジは食べたくないんだろうなぁ。

 でも、拒絶をするとカイネが悲しむかもと思って遠慮してる様子だ。

「じゃあ、クルトンでも入れます?」

 俺は試しに、買い置きしていたクルトンを取り出す。

「え?クルトン?おかゆに?」

 おかゆじゃねえって。

「まあ、アクセントにはなるかなと思いまして。」

 そう言って、ちょっと自分のにも入れてみた。

 ん、案外悪くないな。

「トーストでもいいのかな。

 結構合いますよ。」

 ぼりぼり言わせながら、クルトンと一緒にポリッジを平らげる。

「本当かよ。

 じゃあ、ちょっと試すわ。」

 そんなに疑う事か?

 お茶漬けにもあられ入れたりするだろ。

「じゃあ、僕も試してみようかな。」

 そう言いながら、トーラスもクルトンに手を伸ばす。

 それに続くように、ベネットとカイネもクルトンを試してみている。

 二人は、味を確かめるように吟味をしている様子がうかがえた。

「あぁ、いいねぇ。悪くないよ。」

 トーラスはクルトンが気に入った様子だ。

「本当だ。」

 意外だったらしく、ハルトも若干戸惑いがちにクルトン入りのポリッジを食べ進めている。

「これって、固焼きパン?それにしては、サクサクしすぎというか。」

 ベネットはクルトンの正体を探るように目をつぶって、味わっている。

「油で揚げてるんでしょうか?でも、脂っこい感じはしないし。」

 カイネは、首をひねりながらクルトンの触感を確かめながら噛み締めている。

 なかなか好評だな。

 今度ハロルドに作ってもらうか。

「ごちそうさま。

 って言うかヒロシさ。

 こういうのはいいわけ?

 あっちの世界のクルトンだよな?」

 なんか腹立たし気にハルトが文句をつけてきた。

「これくらいなら、こっちでもあるでしょう?

 それに身内に限定するなら、俺も躊躇ったりしませんよ。

 自分たちで消費する分、たまにの贅沢なら対価を払うのはやぶさかじゃない。

 それだけですよ。」

 何の話なのかと、他の3人は不思議そうな顔をされてしまった。

 まあカイネは、もはや巻き込まれ確定だから話してもいいかなぁ。

 とりあえず、俺の基本方針を確認を兼ねて再度行う。

「あくまでも売るものは絞るけど、自分たちで使う分には制限を書けてないって話ね。

 それはいいんだけれど。

 ヒロシ、それについては私、前から気になってたことがあるの。」

 なんだろう?

 ベネットが改まって話し始めた。

「前に、チョコレートを食べさせてもらったでしょ?

 それ、暁の盾に卸してるわよね?」

 確かに卸してる。

 糖衣の安いチョコだ。

 量を確保するためになるべく安いのを選んだ。

「あれ、たぶんヒロシが独占してる状態よ?」

 え?

 いや、だってチョコレートはこっちの世界にもあるじゃないか。

「多分、普通に冷やして固めただけじゃあんなふうにならないって言う話ね?

 私も最近知ったけど、あれがどうしても再現できないから懸賞金が出されてるらしいよ?

 新しいお菓子として、奥様界隈では話題だし。」

 えぇ、あれは上流階級向けに作ったもんじゃないんだけどな。

「おやぁ? どこの誰だったかなぁ。

 技術の独占はよくないとか言ってたやつは。」

 ハルトが調子に乗って俺を責めてきた。

 だけど正確じゃない。

「俺が言ったのは、技術の発展を阻害しちゃいけないって言っただけですよ。

 それをしてしまうと俺が居なくなった後、何も残らなくなるという意味だし。

 チョコレートの件は勘違いしてただけです。」

 そもそも、チョコレート作りは技術的に手間暇がとてもかかるからハロルドに依頼するのはやめにしていた。

 そのことをすっかり忘れていた。

 これは早急に手を打たないと。

「ヒロシは時々、うっかりするよね。」

 ベネットはそう言ってため息をつくけど、たぶん時々じゃない気がする。

「でも、公開する気はあるのはよかった。

 チョコレート作りに挑戦している職人さんが何人かいるって話を聞いて、紹介状ももらってあるから、よかったら使ってね。」

 そう言いながら、ベネットはお菓子職人への紹介状を渡してくれる。

 やっぱり俺よりベネットの方が商人向いてる気がする。

 なんか泣きたくなってきた。

「ありがとうございます。

 ありがたく使わせていただきます姫様。」

 俺は平身低頭して、紹介状を預かった。

「えぇ、もう。

 苦しゅうない、しっかり励みなさいヒロシ。」

 仕方ないといった様子でベネットは茶番に付き合ってくれた。

 とりあえず、みんな笑ってくれたので助かった。

 というか、もしそのまま放置してたらと考えるとちょっと嫌な想像が思い浮かぶ。

 本当にベネットには頭が上がらないな。

 

 とりあえず、お昼を取った後、早速コンテナハウスでチョコレートの作り方を調べ始めた。

 皆には、休憩と伝えて作業に没頭してたけど正直言ってこれで合ってるんだろうか?

 温度計とか必要な道具が多いなと感じてはいるけど、それらもこっちの世界で手に入る道具でなければならない。

 正直難しいよなぁ。

 インターネット上には、現代の知識や道具が前提に掛かれている情報が大半だ。

 それをこっちの常識と照らし合わせる作業が必要で、そこが作業の大半を占めている。

「なあ、ヒロシ、ネット俺もやりたいんだけど?」

 そうだろうなぁ。

 ハルトが俺が調べ物をしているのを後ろから見て羨ましそうに声をかけてくる。

 こうやって苦労しているところに気軽に言われるとちょっとイラっとした。

 でも気持ちは分かる。

 というか、そう思ってもらえるのは逆にありがたいんだよな。

「それなりにお値段しますよ?

 ”売買”でインターネットサービスを継続的に買ってるんですけど、ハルトさん払えます?」

 金がかかるのかとハルトは顔を歪める。

「スマホゲーとかできる?」

 試したことはない。

 多分無理じゃないかなぁ。

「それは多分無理ですよ。

 一応、問い合わせとか質問の代行って言うのはできますけどね。

 チャットや掲示板に直接書き込むことはできないですし。」

 しかしそこまでスマホゲーしたいもんかね。

「じゃあ、音楽聞いたり動画見るくらいしかできないのかぁ。」

 ハルトは不満そうに体を揺らす。

「案外そう言うのでも暇は潰せますよ?」

 そう言いながら、俺は作業を進める。

 いつまでも構ってられないしな。

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