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9-16 ダークエルフってどんな扱いなんだろう?

まず、今いる国では異種族になじみがありません。

 ハルトに渡したのは、ジーンズと一般的なチェニックだ。

 他にもっとお洒落なものないのかって言われたので、タイツを出してやった。

「冗談だろ? なんだそれ?」

 タイツを見て開口一番これだ。

「こっちでのお洒落ってこういうものですよ。

 これにぴっちりのシャツにベストを着て、ジャケットを羽織れば貴族っぽく見えるでしょうね。

 一応、そういう服も用意できますけどどうします?」

 ハルトはげんなりした顔をする。

 俺も初めて見た時はげんなりした。

 でも、こういう服装が、こっちの世界ではお洒落着なんだ。

 だからいくつか購入しておいた。

「ファストファッション系でいいから、普通の服くれよ。」

 あのなぁ。

 そんなに目立ちたいのか。

「こっちでの服装とあまり乖離したものを着てると攻撃される可能性ありますからね?

 地域次第ですが、チェニックだけだと敵認定されたこともありますし。

 TPOは意識した方がいいと思いますけど、それでも着ます?」

 まあ普通のシャツならそれほど目立たないだろうから、何枚か取り出して見せてやった。

 もちろん、こっちの世界のシャツだ。

「あー、うん、これならいいかなぁ。」

 試着しながら、気に入ったものを選んでいく。

 まぁ、近頃の若者はおしゃれです事。俺には、あまり違いがよく分からん。

 ともかく、さほど目立たない格好になってくれたし、ちゃんと代金も支払ってくれてるから文句はないんだけど。

 イケメンは何着ても似合うよなぁ。

 脱衣所から出ると、ベネットとカイネが待っててくれた。

 カイネの服装も変わっていて、生成りのシャツにひざ丈のスカートという出で立ちだ。

 それにコートを羽織っているのでなかなか可愛らしい。

 ベネットのコーディネートかな?

 まあ、少なくともぱっと見で奴隷っぽくは見えない。

「ハルト様、似合ってるでしょうか?」

 恥ずかしそうに、うつむきながらカイネはハルトに尋ねた。

「似合ってる似合ってる。

 ありがとうございますベネットさん。」

 ハルトもどうやら気に入ったみたいだな。

「どういたしまして。

 でも、あまり華美にならないように注意してあげてね。

 奴隷というだけで、着飾ってることを目の敵にする人もいるし。」

 ベネットはこちらでの常識を口にする。

「え?まじで?」

 ハルトは絶句する。

 そこら辺の事情も把握してないのか?

「同じ食卓について、食事をするのも毛嫌いする人はいるみたいですよ? 早めに奴隷としては解放して市民権を得たほうがいいと思います。

 焼き印も消す方法はあるから、カイネちゃんが望むならそうした方がいい。」

 もちろん、あくまでも彼女がそれを望むならだ。

 そこでようやくハルトは、奴隷というものがどんなものかを意識し始めたようだ。

「いや、でも食堂じゃ何も言われなかったし。」

 そりゃな。

 庶民的な店だったし、奴隷だなんだをとがめる人間がたまたまいなかったからだ。

 明確なルールがあるわけではない。

 でも、これ以上いうとハルトも辛いだろう。

「そこら辺は人や場所に寄ります。だけど、ちょっとは意識しておいた方がいいですよ。

 奴隷を連れ歩いてるってだけで人でなし呼ばわりされたこともあるから、奴隷制度自体も全員が是認しているわけでもないですし。」

 本当ここら辺の反応は十人十色だ。

 それだけにこういう問題は本当に難しい。

 カールなんかは、奴隷じゃなくなった時点で死が待ち受けている状態だった。

 今は、絵でそれなりの収入は得ているけど、あくまでもそれは俺の身分があるから許されていることだ。

 いきなり開放すると言っても、カールも困るだろう。

 あいつの知名度が上がって、それなりに認知されるようになれば問題はないだろうけど今のままだと単なる責任放棄になる。

 カイネの場合は、どうだろうなぁ。

 ダークエルフの扱いっていまいちよく分からない。

 後でベネットに聞いておくか。

 しかし、不安そうだな。

 ハルトはカイネを奴隷にしたことで手に入れたわけだが、それを放棄するとカイネが自分のもとから離れて行ってしまうのではないかと思っているようだ。

 かといって、奴隷のままであればカイネが不自由するのは目に見えている。

 というか、カイネの態度が奴隷のそれであるというのに気づいてるのかな?

 とはいえカイネにハルトに対する親愛の情が見え隠れしていることからすれば、自由の身にしたから即離れてしまうというのは杞憂だと思うけども。

 あーやめやめ。

 俺の介入すべき事柄じゃない。

 好きにすればいい。

 

「ダークエルフの扱い?」

 宿に戻り、キャラバンから送られたサンプルを確認しながら、ベネットに尋ねてみたが疑問形で返されてしまった。

「知らない?」

 そう聞く俺に、ベネットは困ったような表情を見せる。

「そもそもエルフ自体がそんなに見る種族じゃないし、ダークエルフなんておとぎ話でしか聞いたことないわ。

 あー綺麗な肌だなぁくらいにしか思わなかったし。」

 なるほど。

 そんな珍しい種族を奴隷として扱うって、どんな連中なんだろうか?

 かなり高い値段がついていたそうだが、奴隷というにはちょっと才能がありすぎる。

 なんだかちぐはぐな感じがして、もやもやする。

 ちなみにカイネを買うかどうかでもめたのがハルトの追放に繋がるわけだが、追放されて当然だよなと思わなくもない。

 何せグループの共同資金を費やして女の子買いましたとかふざけんなって話だしな。

 まあ、才能があるのは当然把握していたんだろうけど、まともな説明をした形跡がないから、そこは完全にハルトの落ち度だよな。

 言っても分かってくれなかったとか言っても、”鑑定”能力かどんなものかを把握しづらいし可哀そうだって言うのを前面に押し出されたら賛同する人間は少ないと思う。

 その上で、説得を継続するんじゃなく共同資金を持ち出して買ってきたとかそりゃキレられるわな。

 それでも、共同資金を返済するという条件で何とか追放というのは我慢してもらったのに、危機的状況の仲間を見捨てて真っ先に逃げだしたんだとか。

 そりゃグループの人間も堪忍袋の緒が切れるだろう。

 グループもハルトが逃げ出したのでは戦線を維持できないとして撤退を決定し、幸いなことに全員が無事に生還したわけだが。

 撤退するかどうかを決める前に逃げだす奴を信用できるわけもない。

 結果、あえなく追放というわけだけど、これを聞いて自業自得だと思わない人がいるだろうか?

 ちゃっかり逃げる時は自分の奴隷だけは連れて逃げてるわけだし、カイネを取り上げられて借金漬けにされてても俺は同情しない。

 随分と優しい人たちに拾われてたもんだ。

 それともダークエルフは不吉だとか、そういうものがあるのかな?

「おとぎ話での扱いってどういうもの?やっぱり悪役とか?」

 俺の言葉にベネットは頷く。

「基本的には、普通のエルフは善良で、ダークエルフは邪悪って言うお話が多いよ。

 でも人は見た目で判断してはいけないって寓話では、心優しいダークエルフも出てくるし、肌の色が濃いからって忌避する人は少ないかなぁ。

 とりあえず、エルフにしろダークエルフにしろ、すごい魔法を使える人たちってイメージだから奴隷にされているって言うのは驚き。

 そんなことあるんだってびっくりしちゃったわ。」

 やっぱりイレギュラーなんだなぁ。

 謎が深まるばかりだ。

 奴隷商人には、これまで接触をしたことがないので内実がよくわからない。

 それだけに不気味に感じてしまうな。

「ちなみに前にも聞いた事あったと思うけど、奴隷って身分を捨てることはできるんだよね?」

 改めてベネットに確認をしてみる。

「うん、1万ダールを支払えば半分は主人に半分は領主に渡されて、晴れて自由の身になれるわ。

 市民としての戸籍も与えられるし。

 だけど、焼き印を消さないと元奴隷という事で色々不都合があるから、まずそれも消さないといけないけどね。」

 1万ダールか。

 決して安い金額じゃない。

「カイネちゃんを解放してあげたいの?」

 うーん、俺が解放したいわけじゃないんだよなぁ。

「ハルトがどうしたいかなんだよね。下手に介入するとこじれるだろうし。

 それにカイネちゃんも開放して欲しがっているかどうかも分からないのに、俺が勝手に金を払うわけにもいかないでしょ。」

 ベネットは俺の言葉に頷く。

「必ずしも解放されることが幸せとは限らないからね。

 気持ちの整理がつくかどうか、そこら辺を含めてちゃんとしないと駄目だと思う。」

 そう言いながら、ベネットはサンプルを広げるのを手伝ってくれる。

「これはガーネットかなぁ。

 こっちは石炭が出ているけど。」

 そう言いながら、ベネットは目に付いたものを俺に見せてくる。

 確かにガーネットだなぁ。

 しかし、石炭か。

 この間アレストラばあさんに、コークスの話をしたから、使い道は出てきた。

 場合によれば、コークスを作る時に軽油が取れるので、それを使ったディーゼル発電が使えるかもしれない。

 それにこれまでとは違い結構大きい。

 もしかしたら鉱脈があるかもな。

 しかし、まあ、相変わらずみんなお金を使ってくれない。

 靴や服なんかは破れたり汚れてしまったら言ってくれと書いているけど、音沙汰がないんだよなぁ。

 他にもハロルドが新作料理を出したら感想を聞いてるけどおいしいとか、ここのこう言う味付けを変えたらという返信が来るだけでまた食べたいという返答は聞けない。

 そういえばベネットのお母さんが仕送りをためてたって話は結局どうなったんだっけ?

「ところで、ベネットの仕送りの話だけど、あれって結局どうなったの?」

 何の脈略もなく、話題を変えてしまったのでベネットにびっくりされてしまった。

「あぁ、あれは借金の返済に消えたって。

 あまりうまくいってない農家なんて借金まみれだって聞いたから、別にいいんだけど。

 なんでそんななのか、ちょっと問い詰めたい気分ではあるかなぁ。」

 農家の大変さを知らないわけでもないだろうし、それでも問い詰めたくなる状態なのか。

 ちょっと、ベネットの義父さんって言うのがどんな人物なのか気になってくるな。

「ヒロシの方は、ハンスさんたちが使ってくれないって悩み?

 まあ、いつなんに必要になるか分からないんだから、あまり気にしない方がいいよ?

 お家だって、いつ壊れるか分からないでしょ?

 改装するなら、その費用としてもらうって言うのもありだと思うし。」

 あぁ、そうか。

 勝手にいじるよりかは、お金を貰って改装したんだよって言う話の方が受け入れてもらいやすいかもな。

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