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9-14 そういえば、まともなダンジョン探索は初めてだなぁ。

手に入れたものを分配するときって言うのが一番楽しいですよね。

「まあ、こんなところですけど、どうしましょう?」

 とりあえず、相手がゴーレムであることやその特性を教えた。

 魔法に対する耐性は攻撃呪文のうち、物体や現象を発生させるものは有効だ。

 ただ、《火球》や《電撃》のように純粋なエネルギー攻撃は効かない。

 後、よく使う《蜘蛛の網》や《きらめく鱗粉》なんかは効果がないし、俺は覚えてないが《魅了》みたいな精神作用で効果を上げる呪文も有効ではない。

 その上で、滅茶苦茶硬い。

 対処が難しい相手であるのは確かだ。

 だから、ここで撤退しても何の問題もない。

「な、なあ、ヒロシ。あれって今まで食材だけに効くと思ってたんだけど。

 魔獣もいけたわけじゃん。」

 言いたいことは分かる。

 ゴーレムも解体できるんじゃないかという事だろう。

「さっき、あれのレベルが上がってさ。

 無機物の解体って言うのが出てきたんだ。

 だけど、大きさの制限があって急所じゃないとでかいやつにとどめはさせないって。」

 おぉ、ようやく考えるようになったんだな。

「ゴーレムには急所がありますよ。

 ゴーレムコアという奴ですけど、そこをえぐり取れば活動を停止させられます。」

 一応、”鑑定”で見て場所も確認済みだ。

 背中に埋め込まれている。

「倒せ、ないかな?」

 倒せるとは思う。

 問題は、どうやってハルトをそこまで近づけさせるかだ。

「ちなみに、発動範囲は広がりました?」

 ハルトは頷く。

「2mだけど。」

 2mかぁ。

 どのみち、ゴーレムの動きは止めないとな。

「じゃあ、作戦を立てましょうか。

 魔法が効かないなら物理でごり押します。」

 何も、魔法だけが動きを止める手段じゃない。

 

 作戦はとても単純だ。

 俺が《巨大化》で大きくなり、ゴーレムと組み付く。

 その間にベネットとトーラス。

 そして、カイネが網を投げて動きを止める。

 そこでハルトが近づき、ゴーレムコアを抜く。

 いたってシンプル。

 そして、おそらく一番成功率が高い方法だろう。

 何のことは無い。

 力押しだ。

 作戦でも何でもない。

 ハルトに扉を開かせ、俺は《巨大化》の呪文を唱えつつ、ゴーレムに突進した。

 慌てた様子もなく、相手もぶつかってくる。

 痛ってぇ!!

 滅茶苦茶激しくぶつかられ、俺は痛みに顔をゆがませた。

 だが、力負けして吹き飛ばされるほどじゃない。

 後ずさりつつも、何とか地面に押さえつけようとする。

 その間にベネットたちが網をかけ、俺ごと身動き取れないようにからめとっていく。

 ハルトが駆け出し、ゴーレムの背中へジャンプした。

 次の瞬間ハルトの体が掻き消え、背中に立つという結果がもたらされる。

 そしてハルトは短剣を振り下ろす。

 触れた瞬間、ぱきんっと音を立て刀身が折れた。

 と同時に、真っ赤なゴーレムコアがポンっとはじき出されて床に落ちた。

 ぐったりと、ゴーレムの力が抜けていく。

 戦闘過程は本当に物の10秒もかかったかかからなかったかくらいだ。

 ただ受け止めた俺は、肩が外れて激痛に襲われているけども。

「ヒロシ、今治療するから。」

 そう言って、ベネットが俺の肩に手を当ててくれた。

 やっぱり、怪我の治療方法があるって言うのはありがたいなぁ。

 絶対こんなの、全治数か月かかってるぞ。

 ゴーレムの体が砕け散り、秘石へと姿を変えていく。

 そして、その中央に煌びやかな宝箱が出現した。

「すげぇ!!これがゲート突破のお宝か!!」

 ハルトが喜び勇んで宝箱を開けようとする。

「馬鹿!!罠があるかもしれないだろ!!」

 俺は思わず怒鳴ってしまった。

 でもよかった。

 叫んだことで、ハルトは動きを止めてこくこくと首を縦に振った。

 罠発動で大惨事という事態は避けられる。

「まず”鑑定”かけてください。

 それから、罠があるようなら解除もお願いします。

 ちなみにゲートって言うのは、その宝箱を開けると消えるんですか?」

 そこが気になるところだ。

「確かそうだったはずだけど。

 俺も初めてだし、よくわかんねえ。」

 とりあえず、ハルトは慎重に”鑑定”をしつつ、罠を外していった。

「やべえ、あのまま開けてたら爆発してた。」

 ハルトが冷汗を垂らしながら、《爆発罠》のスクロールをこちらに見せてきた。

 単純な罠だ。

 とはいえ、ああやって浮かれると引っかかるのが一定数いるんだろうな。

 無事開錠し宝箱をハルトが開いた。

 それと同時に俺のレベルが上がった電子音が響く。

「お!おぉ!!レベルアップした!!これで俺のレベルも36だ!!」

 あぁ、はいはい、6レベルね。

 こっちの見えているレベルと違いすぎてびっくりするわ。

 ベネットやトーラスもレベルアップしてるし、カイネも同様だ。

 何かしら、節目があるとレベルアップしやすいとかもあるのかねぇ。

 

 とりあえず、ダンジョンアタックも終わり、その報告も兼ねて探索者組合の受付にやってきた。

 それなりの戦利品があったので、さすがですみたいな組合長のおべっかが聞けるが別にそんなの必要ないんだよなぁ。

 査定額としては30万ダールだけど、これの1割か。

 高い。

 いや、まあ他だと倍くらいは契約商人でも払わないといけないし、それ以外だと3割持ってかれることを考えれば安いはずなんだけどなぁ。

 買取価格じゃなくて、販売予想価格の1割って言うのがなんか納得がいかない。

 売れるって言う保証もないのに、それに勝手に値段付けて金をふんだくられると思うと腹が立ってくる。

 まあ、決まりなんだから仕方ないよな。

 さて、問題は分配だ。

 とりあえず、ほとほと疲れたので、一旦宿に引き上げよう。

 話はそれからだ。

 しかし、宿代も俺持ちとか、そこらへんハルトに対する分配は減らしてもいいよな。

「そういえばハルトさん、《水操作》で体洗う方法とか知ってますか?」

 ダンジョンアタックで大分汚れた。

 明日また、汚いと問題なので聞いてみることにする。

「え?なにそれ?」

 知らなさそうなので、一つ一つレクチャーしていく。

 汚れた水の処理の仕方なんかも教えた。

 目からうろこみたいな反応されるけど、案外知られてないもんだなぁ。

 他のシーカーの連中もまじまじと俺のレクチャーを見ていた。

「まあ、そういうわけで、こんなこともできるから明日はちゃんと汚れを落としておいてくださいね。」

 そういうとハルトは分かったと首を縦に振った。

 

 トーラスとベネットの汚れは俺が担当した。

 大分汚い。

 シャワー室がないので、一時的に風呂桶とそれを覆うシャワーカーテンを用意した。

 当然、ベネットの裸を見せるわけにはいかないから、トーラスには体を洗った時点でバスタオルを渡して退室願う。

「お風呂入りたいねぇ。」

 俺はぼそりと漏らす。

「これはこれで綺麗になるし。

 私は、ヒロシに洗ってもらってる感覚が好きだから嫌いじゃないよ?

 もちろん、お風呂も嫌いじゃないけど。」

 そう言いながら、ベネットは洗ってほしい場所を俺に見せてくる。

 妙に気恥しくて顔をそらしてしまいそうになる。

 でも、顔はそらせないんだよなぁ。

 とりあえず二人きりだからいいけど、こんな場面見られたら、俺の品位が疑われそうだ。

 いや、あってないようなもんだけどもさ。

 洗い終わり、俺はベネットにバスタオルをかける。

「はい、交代。次は俺ね。」

 バスタブから出てもらうように促す。

 じっと二人で風呂桶の中で見つめ合う。

「あの、出てって。」

 俺の言葉にベネットは首を横に振る。

「私を見てたんだし、私が見ててもいいでしょ?」

 どんな羞恥プレイだ。

「じゃあ、今度からはベネットのこと洗わないからね?」

 理屈としては、そうならざるを得ない。

「ずるい。そうやって、いっつも断れないようなこと言うんだもん。

 分かりました。

 覗きません。」

 拗ねたように、風呂桶から出てってくれた。

 

 翌日、初日に来た大衆食堂に入り、分配について話し合いを持つことになった。

 まず、内訳だ。

 秘石は比較的値段がつけやすい。

 そもそも、買取価格と販売価格が設定されている。

 だから5万ダールで買い取ってもらった。

 これは、公平に分配でいいだろう。

 問題は、残りだ。

 一番の大物はタワーシールドという全身を覆い隠せる盾だ。

 もちろん、こんなものを扱える人間はそんなに多くない。

 普通なら売り飛ばすという事で、問題ないはずなんだけど。

 これ、俺が欲しいんだよな。

 もちろん、俺が使うんじゃない。

 ベネットに使わせたい。

 両手持ちの大剣を使っているから盾なんか持つ余裕がないだろうと思われるだろうが、この盾は魔法の盾でなおかつ”自律”の能力を持っている。

 攻撃が来ることを予測して動き、使用者の攻撃を邪魔しないように離れたり近づいたりする。

 とても有用な能力だ。

 当然お値段も9万ダールとなかなかの代物だ。

 買取価格としては、通常半額の4万5000ダールといったところになるわけだけど。

 一人頭の分配量からすれば、3万ダールが妥当だ。

 1万5000ダール俺が払ってでも買い取りたいわけだけども。

 当然ベネットが納得しないよな。

「ヒロシは、私に装備を渡しすぎ。

 ゴーレムの時だってヒロシだけが傷ついてたじゃない!!

 魔法の鎧や盾が必要なのはヒロシでしょ!!」

 いや、それはそうなんだけども、そうじゃなくて。

「別に俺は、金出してくれるんだったら好きにすればいいと思うよ。

 あんな馬鹿でっかい盾なんか、俺じゃ持てないし。」

 ハルトは興味がないのかサンドイッチをつまみながら、頬杖をついている。

「ヒロシは彼女にいろいろ着せたいタイプみたいだし、受け入れたら?

 僕は別に構わないよ。」

 トーラスには完全に見抜かれてるなぁ。

「そういう事に使うにしては金額が高すぎなの。分かってる?

 買ったら、9万ダールするの!今私が持ってる剣より高いの!!」

 ベネットの言うとおり、金額は確かにかかる。

 でも、こんな盾、そうそうお目にかかることはないだろう。

「今を逃したら、買えないかもしれないんだ。

 だから、買わせて!!」

 なんかプラモデルを買いたがってるオタク旦那みたいだけど、金額は車に近いよなぁ。

 俺の必死の訴えにベネットは若干引き気味だ。

「わ、分かった。

 じゃあ、条件を出すけどいい?」

 どんな条件だろうか?

 俺は、ごくりと唾をのむ。

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