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9-12 実戦で確認するのもどうかとは思うけど。

ベネットやトーラスが慣れているのは、戦闘員として傭兵が依頼を受けたりするためです。

ここら辺、傭兵と冒険者(この世界ではスカベンジャーと言われます。)で業務が重なってたりもします。

主な違いは依頼主がいるかどうかというところでしょうか?

ただし、冒険者も依頼を受けて遺跡探索したりもします。

 組合の受付に行くと、組合長がすっ飛んできた。

 なんでも、商人が遺跡探索をするのはかなりのイレギュラーらしい。

 Eランクの人間を足抜けさせるためだからと包み隠さず伝えたら、なるべく安全な入り口をご案内しますと言われた。

 なんだったら、魔法の鎧をレンタルしますとまで言われてしまった。

 そこまでできるなら、シーカーにもレンタルしてやればいいのに。

 もしかして、金持ちの道楽とでも思われてるのかな?

 まあ、道楽と言えば道楽か。

 一回こっきりの年会費を支払い、入り口までの案内図を貰った。

 Dランクの入り口で、すでに探索は終わっている。

 後はゲートを壊してしまえば、ここに価値はなくなるダンジョンだ。

 だから足を一歩踏み入れてお終いにしてもいいんだけど。

 一応、ハルトの能力を確認する必要もある。

 なるべくならゲート破壊までは済ませてしまおう。

 敵にもよるけど。

 あぁ、その前に……

「ハルトさん、これが契約書です。

 質問があればどうぞ。

 何だったら、落ち着いた場所に行きましょうか?」

 大切な契約だ。

 ちゃんと腰を下ろして確認してもらってもいい。

「え?銀貨40枚ももらえるのかよ。

 でもなんでカイネが管理するの?」

 お前がだらしないからだよ。

 そもそもパーティー追い出されたのも金にルーズだったからだし、取り分を過剰に要求したからだろ?

 使い方も荒いみたいだし。

 まあカイネが管理できるかどうかは分からんけど、お前に任せるよりはましだろ。

「ま、いっか。」

 そう言いながらハルトは契約書にサインしてしまった。

 お前、そういうところだぞ。

「ハルトさん、いいんですね?

 俺がサインしたら、契約成立ですよ?」

 なんでそんなこと聞くのって顔をされてしまった。

 もう知らん。

「じゃあ、とりあえずこれに着替えてください。

 防刃服とチェインメイル。

 得物はありますか?」

 そういうと、ハルトは短剣を取り出す。

「へへ、これ結構いい武器なんだ。

 かっこいいでしょ?」

 ”鑑定”をかけても、ただの短剣にしか見えない。

 デザインが気に入ってるという事だろうか?

 まあ、いいや。

 あぁ、すっかり忘れてた。

「ベネット、これ。ラウレーネの鱗から作ったナイフだから、大事に使って。」

 鱗がオリハルコンで形成されているので、当然ナイフもオリハルコン製になる。

 魔力はないが、高品質で切れ味も鋭く滑らかだ。

「うん、分かった。大切に使うね。」

 そう言いながらベネットは刀身を確認した後に鞘に戻し、腰にぶら下げる。

「赤いナイフってかっこいいなぁ。俺も欲しい。」

 ハルトはナイフを見て欲しがった。

「金貨100枚なら売りますよ。

 それくらいの価値はあります。」

 途端にハルトは渋い顔になる。

 流石にナイフにこの値段は払えないよな。

 一応もう一本作れたので、それは俺が身に着ける。

「じゃあいきますか!」

 そう言ってハルトが思いっきり扉を開けようとした。

「待ってください。」

 慌てて止める。

 こいつ出待ちされてたらどうするつもりだったんだろうか?

「なんでだよ。」

 ハルトはいきなり止められて気分を害しているようだ。

 とりあえず、契約書を見せる。

「俺の指示に従うはずですよね?」

 ハルトは俺の言葉に渋々頷く。

 不服そうだけど、むやみな反発をされないだけましか。

 とりあえず聞き耳を立て、扉の向こうに何かいないかを探る。

 何もいなさそうなのを確かめて、そっと扉を開き《魔法の目》を飛ばす。

 ”鑑定”も用いながら、罠の位置や隠れている魔獣がいないかを確かめていった。

 おおよそのマッピングが終わる。

「な、なあ。なんでそんなに地味なことしてんの?」

 ハルトの疑問に答えてやるべきかどうか、少し悩んだ。

「中がどうなっているかもわからないで突っ込んでいって、罠にかかりましたじゃ話にならないでしょ?

 それと、中に入ったら極力しゃべらない。

 相手だって、馬鹿じゃないんだから不意打ちされる可能性だってあるの。

 分かったら、おしゃべりしない。」

 ベネットが若干腹立たし気にハルトの疑問に答えてくれた。

 それで分かってくれればいいけどな。

「わ、分かりました。」

 どうやら、ハルトはベネットに怯えてるみたいだな。

 まあ素直に従ってくれるならそれに越したことはない。

 マーナを先頭に、俺たちはダンジョンに足を踏み入れる。

 かび臭い匂いがするが通路は広い。

 得物は槍で大丈夫そうだな。

 俺は黒板でハルトに指示を出す。

 ” ”案内” でこの階層の罠の位置を検索して、座標をここに書いて”

「なんで黒板に書いてんの?」

 だからしゃべるなって言ったろうが。

 全員の視線がハルトに集まる。

 そこでようやく、自分がしゃべったことがまずいことに気づいたらしく、ハルトは頷いた。

 黒板を消して、ハルトに渡す。

 しばらくしてから、ハルトは罠の位置を書き記し始めた。

 座標が経度緯度ではない。

 NEWS、それぞれに三桁の数字が書かれていた。

 ダンジョンに入ると、大抵座標軸が狂う。

 だから、当然表示されないものだと思っていたら違った。

 メートル単位だろうか?

 何処を中心として記されているのかが気になる。

 あらかじめ、マッピングした罠の位置と照合してみた。

 どうやら、入り口を起点としている様子だ。

 なんだよ、滅茶苦茶便利じゃないか。

 ”次は、この階層にいる俺たち以外のクリーチャーの位置を検索して、座標を書いて”

 ハルトは首をひねるが素直に検索をかけてくれたようだ。

 ただ、それなりに数が多いのか、座標を書くのが大変そうだ。

 後半、ほとんど詰め気味になってるな。

 ”次にここにいる奴は何なのか、確認できないですか?”

 そう黒板に書くと、ハルトは首をひねる。

 無理かな?

 そう思った矢先、変な声をハルトが上げて、びくっと身をすくませた。

 まあ、”案内”のレベルがアップしたんだろうなぁ。

 ハルトが黒板に書き込みをして見せてきた。

 ”分かった。バジリスクが4体”

 バジリスクかよ。

 石化が厄介すぎる。

 確か、有効射程は9mほどだから、アウトレンジで戦うか。

 ベネットは石化する視線を避けられるのでこちらに来させないようにすれば完封できそうだ。

 ”俺たちがやるので、近寄らないように”

 そう黒板に書いて、バジリスクのいる部屋を目指す。

 

 あぶねぇ。

 《蜘蛛の網》をかけて、拘束したうえで、《きらめく鱗粉》で目を潰したところまでは順調だった。

 だけど、途中で目が見えるようになった奴が俺を睨んで石化させようとしてくる。

 幸い、俺の抵抗力が上回り石にされることはなかったけど、失敗したら一撃で無力化されるからやばかった。

 戦闘自体は、ほぼワンサイドゲームで傷つけられることはなかったけど、一歩間違えばやられてたところだ。

 トーラスにはサイレンサーを使ってもらったから、さほど大きな音はしていないが何かに感づかれているかもしれない。

 とりあえず、全員室内に入らせる。

 ”この部屋の隠し扉を検索して”

 そう、黒板に書いて、ハルトに見せた。

 どこまで限定できるか試している部分もある。

 ”無いって”

 そう返事が書かれたので、一応俺も”鑑定”でおかしな場所は無いかを探る。

 確かになさそうだな。

 ”バジリスクを捌いてみて”

 とりあえず、”下拵”というものを見てみたい。

 黒板に書くと早速、ハルトはバジリスクを解体していった。

 というか。

 なんだこれ。

 短剣が接触した瞬間バラバラになったぞ?

 刃を走らせているようには見えない。

 ものの見事に、一瞬で解体を済ませてしまった。

 とりあえず、解体したバジリスクはインベントリにしまっておこう。

 食えるのかな?

 まあいいや。

 確かめたいことがまだ残っている。

 そちらを優先しよう。

 次に近くにいる魔獣がなんであるのかを確認させた。

 

 次の部屋にヘルハウンドの群れがいる。

 割と手ごろな獲物だ。

 作戦としては1体を残し、《蜘蛛の網》で絡めとり、俺たちが始末する。

 そして、残りの一体をハルトの”下拵”で始末してもらうという手はずだ。

 ハルトはなんだか拒絶反応を示しているが、もしかしてこいつまともに戦ったことないんじゃないか?

 ”確認をしたいので、やってください。無理そうなら、加勢します。”

 そう書くと、渋々といった様子で頷いた。

 まあ、炎を吐く以外は大した敵じゃない。

 旨く片付けられるはずだ。

 

 予想通り、戦闘はあっさり終わる。

 《蜘蛛の網》で拘束してしまえば、あとはライフルの餌食だ。

 問題は、ハルトの能力だ。

 へっぴり腰でヘルハウンドに近寄り、吠えられたら逃げ出した。

 で、慌てて逃げだしたところで追いつかれそうになり、1mほどの距離に近づいた瞬間ハルトがヘルハウンドの後ろに転移して短剣を突き付けた。

 なんだその動き。

 そして短剣がヘルハウンドに接触した瞬間、相手はバラバラに解体された。

 これは、ちょっと要検証だな。

 とりあえず、接触した瞬間殺されるってめちゃくちゃ怖いわ。

 ただ、どうやら武器の耐久が持たなかったらしい。

 ぱきんっと音を立てて短剣がへし折れてしまった。

 まあ、それくらいの代償はあってしかるべきだよな。

「やった!!すげぇ!!」

 ハルトは、自分の能力の有効性に気づいたらしく、滅茶苦茶はしゃぎだした。

「なんだよ!滅茶苦茶チートスキルじゃん!!これならどんな奴にだって勝てる!!」

 バカタレ。

 仮にさっきの動きがまぐれじゃないにしろ、まだ検証は済んでない。

 マーナが警戒を促すように吠えた。

 俺たちは室内に入り、迎撃の準備を始めた。

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