表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/603

9-5 トーラスの謎の行動。

狙撃の才能のある人って普段はすごくボーっとしているということを聞いたことがあるのでそんな話を差し込んでみました。

「あれでよかったのかな?

 ヒロシ、私変なことしてたらどうしよう?」

 宿に着いたら、途端にベネットがそわそわしはじめる。

 俺は早くタイツを脱ぎたかったので、我慢できずに着替え始めてしまっていた。

 あー、すっきりする。

 とりあえず、この正装はちょっと改造を加えてもらおう。

 脇に鋏でも入れてゴムでつなぐかなんかしないと履きづらい。

「聞いてる?」

 ベネットは若干キレてる。

「聞いてるよ。

 ただ、俺がそもそも変なんだから、変なことしているかどうかって聞かれても分からないよ。

 それより着替えないの?」

 いや、まあ別にドレス姿が似合っているから、俺としてはそのままでもいいんだけども。

「じゃあ、手伝って。」

 はいはい、お手伝いしますとも。

 俺は、ひもを緩めたり、脱ぎやすいように裾を持ったりしながらベネットがドレスを脱ぐのを手伝う。

 本来なら、メイドさんのお仕事なわけだけど、そんな人を雇う余裕はないからな。

「ヒロシってば、脱がすの手慣れてるよね。」

 なんでそこでむすっとされるかなぁ。

「そんなことないよ。

 そもそも、ベネットが着ているドレスくらいしか、触ったことないし。」

 疑いの目を向けられても困る。

 事実だし、現代の服とも勝手が違う。

 ベネットは丁寧にドレスをしまいながら、それでも疑いの目を向けてくる。

「こっちに来てからは、そうかもしれないけどあっちではよく脱がせてたんじゃない?」

 俺はため息をつく。

「そんな経験があったら、こんなに手間取ったりしてないよ。

 それにこっちの服と、あっちの服じゃ勝手も違うだろうし。」

 そこは、まじめに想像でしかない。

 女性の服なんか触ったこともないから分からない。

「そうなの?

 もっと脱ぎやすかったら、楽なのにとか思う時はあるからそれは興味ある。」

 いや、知らないから。

「分からないよ?

 もしかしたら同じかもしれないし。

 ともかく、好みの服があれば買ってみれば?」

 せっかく、購入者権限を渡しているわけだし、そこら辺は自由に買ってもらって構わないんだけどなぁ。

「ううん。

 とりあえず、化粧落とさないと。」

 そう言いながら、ベネットはクレンジングオイルを取り出す。

 おぉ、そんなもの買ったんだなぁ。

「それ使いやすい?」

 尋ねてみると、うんという返事が返ってくる。

「少なくとも私の肌には合ってるみたい。

 綺麗に落ちるし、便利かも。」

 そう言いながらベネットは化粧を落としていく。

 とりあえず、蒸しタオルがあった方がいいかなぁ。

 水を中空に出現させて沸騰するまで加熱する。

 そして、用意したタオルをかざす。

「蒸しタオルあった方がいいよね。」

 そう言いながら、若干熱を冷ましながら、蒸しタオルを渡した。

「ありがとう。」

 そう言いながら受け取ってベネットは蒸しタオルに顔をうずめる。

 気持ちよさそうだなぁ。

 俺もやるかな。

「はぁ、すっきりしたぁ。

 ところでヒロシ、これも売ってみるの?」

 それは、どうしようかなぁ。

 便利そうではあるけれど、一般流通させるのはちょっと気が引ける。

「ベネットはどう思う?

 確かに便利ではあると思うんだ。

 だけど、絹布と違って値段の付け方が分からない。

 それに、こっちの世界じゃまだ作れなさそうだし。

 微妙かなって思ってる。」

 ベネットはクレンジングオイルとにらめっこする。

「うーん、作れないかなぁ。

 魔法なら作れる気がするけど、どうかな?

 だとすれば、《治癒》のポーションと同じくらいだったら買うかも。

 でも元の値段を知ってるからちょっと気が引ける。」

 分かる。

 完全にぼったくり価格だからなぁ。

 とりあえず、俺も蒸しタオルで顔洗おう。

 気持ちいいなぁ。

「ねえ、ヒロシ。」

 ベネットに声を掛けられたので、蒸しタオルを外す。

「何?」

 ベネットは着替え終わったのか、普段のチェニックに着替えている。

「女の人と付き合ったことがないって、嘘じゃないよね?」

 疑り深いなぁ。

「無いよ。前に話したけれど、お金を払って経験をしたことはあるけど、お付き合いした女性はいない。

 何度か、からかわれたことはあるけどね。」

 正直、嫌な思い出だ。

 ある意味で女性不信になってると言ってもいい。

「じゃあ、接したことがあるのはお母さん位なのか。」

 ベネットが言うように母親が唯一かもしれないな。

「まあ、今はそれすらも覚えてないけどねぇ。」:

 やばいやばい、余計なことを言いそうになった。

 ベネットには関係のないことだし、俺もそれほど気にかけていることじゃない。

 でも、話せばきっと聞いた人は気に掛けるだろうから言わない方がいいこともあるよな。

「そういえば、トーラスさんはどうしてたのかな?

 俺たちが振り回されてた間、暇にしてたんんだろうし。」

 アライアス伯の街は、とりあえず娯楽らしいものはない。

 劇場があるわけでも、賭け事を楽しむ場所も、女性と楽しむ場所もない。

 流石にお酒を出している店もあるにはあるけど、じゃあ一人でずっと飲んでいろと言われたら寂しくなるんじゃないかなぁ。

「多分、大丈夫だと思う。

 暇なら、森に入っていくタイプの人だし。」

 俺より付き合いが長いベネットが言うのなら、そうなのかもしれないけど。

 森に入るって言うことは狩りでもするんだろうか?

「何しに行くの?」

 そう聞いても、ベネットも理解できてないらしく、首をかしげる。

「狩りをしているわけでもなくて、特に何かするわけでもなく森に入るんですって。

 ちょっと私には分からない趣味ね。

 釣りはするらしいけど、魚を持って帰ってきたことはないわよ?」

 謎過ぎる。

 何が楽しいのだろう。

 

「僕が森の中で何してるかって?

 あー、いや基本的には何も。

 暇な時に知らない人に絡まれるのが嫌だから、ぼーっとしてるだけだよ?

 見つかると変人に思われるから、最近は釣りをしているふりはするけど。

 真似だけだから何も釣れないんだけどね。」

 車で移動中、トーラスに森で何をしてるのかと思って聞いてみたら、そんな返答だった。

 いや、変人と思われるじゃなくて、変人だと思う。

 ひたすらボーっとするって何だろうか?

 思わずベネットと顔を合わせてしまった。

「いや、何か本でも読めばいいんじゃないですか?」

 本であれば、いくつか購入してある。

 絵本から、戦記まで各種取り揃えているので、案外暇は潰せるんじゃないだろうか?

「あー、うん。それもいいね。

 何か本を持っておけば、読書しているように見えるし。」

 あくまでもボーっとするのが目的か。

 漫画にも、確かそんな主人公居た気がする。

 彼もまた射撃の名手だったけど、似たような感覚なんだろうか?

 やっぱりよく分からない。

「それより大変だったねぇ。

 まさか、竜の友なんて持て囃されるとは。」

 楽しそうに笑うけど、こっちとしては全然ありがたくなかった。

「多分、ラウレーネ様を受け入れてない人が多いんでしょうね。

 だから、ヒロシを利用して少しでも印象を良くしようとしてるんだと思う。」

 ベネットの言葉に頷いてしまう。

 やはり、異形の生き物を素直に受けれるのは難しい。

 むしろ、俺が異常なのかも。

 同じ形の生き物に、命を脅かされたのに、ラウレーネは抵抗なく受け入れてしまっていた。

 まあ、しゃべっている内容が違いすぎて、同じ個体と認識できないというところはあると思うけど。

「あの巨体だからねぇ。大きいというだけで恐ろしいものだよ。

 森の中で熊に会うと僕もさすがに腰を抜かすし。」

 腰抜かしたら、危ないだろう。

 ボーっとしてると、見逃してもらえるものなのかな?

 そんなことないよな。

「熊よけとかどうしてるんですか?」

 思わず心配になって聞いてしまった。

「小さいころからよく聞かれるけど、危ない熊が近づいてくると僕は気づくんだ。

 だから、そういうところには近づかない。

 逆に、普通の熊が目の前に座ってた時には驚いたよ。

 ぼーっとしてたら、目の前で寝てるんだもん。」

 だもんじゃねえよ。

 なんだその特殊能力。

 思わず、トーラスを”鑑定”してしまった。

 特にそれらしい能力が表示されるわけでもない。

 この、当てになるんだかならないんだか分からない感じ、もやもやするなぁ。

 絶対表示されてないマスクデータがあると思う。

 それが何なのか分からないので、もやもやしてしまった。

 少なくとも、俺の知っているゲームにあるクラス、よく職業と訳される部分だけど、そこは隠されているので確定だと思う。

 ベネットの能力なんかを見れば、間違いなく聖戦士であるはずだけど全く表示されない。

 なので俺の職業が何なのか全く分からないし、そこから推測することも不可能だ。

 そこに不便を覚えるんだよなぁ。

 後、特殊能力なんかはレベルアップやクラス特典として得られるはずだけど、今のところ俺には槍の才能しかもたらされていない。

 これも、いくつか隠された特殊能力があるんじゃないかと邪推しているけども見当違いな可能性もある。

 あるいは、俺の解釈があくまでもゲームに偏っているせいでうまく表現されてないだけなのかもしれないけど。

 本当に”鑑定”は謎だ。

 もっと積極的に”鑑定”を使っていけば、状況も変わるのかなぁ。

 物品に対しては、割と役に立ってくれるから不満はないんだけども。

 そういえば、ワンドの使用回数を調べる為のカラーコードを要求してくる商人増えたなぁ。

 これは冬のオークションは激戦になるかもしれない。

 公開しなければよかったかなぁ。

 あぁ、そうだ。

 グラスコーに手紙を送らないと。

 次の街に付く前に絹布が売り切れかけていることを伝えて、追加で購入するかどうか、検討してもらわなければならない。

 ちなみに、すでに納品した金額はインベントリ経由で、事務所から受け取っている。

 こっちの売り上げはモーダルについてからでいいので、資金は割と潤沢だな。

 何か珍しいものでも売ってたら買うんだけどなぁ。

感想、ブックマーク、評価お待ちしております。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ