9-3 色々とアドバイスがもらえるのはありがたい。
やはり現地の人に聞くのが一番ですね。
カールを大家さんに預けに行ったときに船の”売買”契約を済ませて、その後に乾ドッグへと向かい船体を特別枠に納める。
言うだけならごくごく短い話になってしまうが、それで5000万円飛ぶと考えると恐ろしい。
ちょっと契約書を書く手が震えた。
船に触れた時も妙に大切に扱わないといけない気がして、びくびくしてしまった。
いずれ落ち着いたころに大家さんに買い戻してもらうつもりではあるから、なるべく傷つけないようにしたいというのもあるけど5000万円だからなぁ。
それと、ベネットに出してもらった5万ダールで何を仕入れるかだ。
とりあえず新しい布を売り込む。
サテン生地の高級絹布を300万円分で購入しておいた。
やはりこちらでは絹は高級品だ。
色は真っ赤なものと紫色のもの、そして生成りのものを選んでいる。
1巻1万円くらいするので、それを1000ダールで売るつもりだ。
暴利と思われるかもしれないが、こっちでの絹布も同じくらいの値段がするし。
いや、もうこの際、チートと言われようと目をつぶる。
乾ドックの近くの車の中で商品を受け取ったわけだけど、インベントリの中に突然300万円分の絹布が届くわけだから恐ろしい。。
とりあえず、一度に全部をグラスコー商会に納入するわけではない。
納入してもらう量はグラスコーに判断してもらう必要がある。
多分倍くらいの値段付けて出すんだろうなぁ。
とりあえずサンプルを送るので、どれくらい納入するか返事をくれと手紙をしたためはじめた。
まあ、お試しに10巻ずつ購入してくれんかなぁ。
そうすれば、少なくとも投資分は戻る。
「ヒロシ何書いてるの?」
助手席のベネットが訪ねてきたので、悪だくみと返しておいた。
「あー、うん。何を売るつもり?」
ベネットはそれだけで察してくれた様子で、俺が何を売ろうとしているか知りたいようだ。
試しに、赤い絹布を取り出す。
「これなんだけど、値段をどうしよう。
一応、これで1000ダールにしようと思うんだけど。」
ベネットの方がここら辺の値段には明るいかもしれない。
勢いで、1000ダールと値段をつけたけど、それが適正か悩んでいた部分もある。
もしかしたら、もっと安いかもしれない。
「これは、絹だよね。しかも細い繊維。
発色も良いし、これで1000ダールは安いと思う。特に赤だし。」
そうなのか。
色によって値段を変えた方がよさそうだな。
「ちなみに、こんな色があるけど。」
とりあえず、生成りの白と落ち着いた紫色を取り出して見せた。
「あー、生成りの白も綺麗だとは思うけど。
うーん、白が900で、赤と紫はそれぞれ1200でいいと思う。
最終的な売値じゃないんだよね?」
なるほど、勢いで値段付けなくてよかった。
「ありがとう、グラスコーさんにはその値段で卸すことを伝えるよ。
多分、倍くらいの値段付けるんだろうなぁ。」
そういうとベネットは笑う。
「まあ、倍だと私は買えないかなぁ。
でもちゃんとしたお家の方たちなら、普通に出してくれると思う値段だと思うわ。」
やっぱり売り先は貴族ってことになるんだろうなぁ。
「いくつかはリボンや髪飾りを作っておいてもらうといいかもね。
1巻全部を買い上げられる人はなかなかいないと思うから。」
なるほど、参考になる。
これから職人さんに頼むとなると時間がかかるだろうから、別途購入しよう。
考えてみれば、貴族相手には献上品を出さなくちゃならない。
その時に布地一巻を渡してたら、出費が半端ないしな。
手紙にもリボンみたいな完成品はあとで送ると付け加えておこう。
「参考になるよ。ありがとう。」
どういたしまして、旦那様と返されると恥ずかしくなってくる。
これくらい一人で思いつけないのがちょっと情けない。
とりあえず、手紙を仕上げよう。
トーラスを門で落ち合い、街の外へと車を走らせ始める。
「いや、もうそろそろ休ませてほしいよ。
あの会談の後も仕事は行ってたし、この仕事の後も仕事が入ってるんだ。
たまったもんじゃないよ。
まあ、街道沿いを走るなら、それほど出番があるとは思えないけど。」
トーラスは、後部座席の後ろ向きの座席に腰かけながら、げんなりしたような感じでしゃべり始めた。
「すいません。
まさかトーラスさんが来てくれるとは思わなかったので。」
一応は計画していた仕事ではあるものの、誰が来るかはお任せしていた。
だから、トーラスが来てくれると分かった時には大丈夫かなと感じてはいたけど。
「いや、ヒロシの仕事ならライフルが使えるからね。
比較的楽なんだよ。
相手の射程の外側から撃てるなら、そこまできつくはないし。
あー、でもこの間の仕事は大変だった。」
そうなのか。
割と短い時間で終わったから、楽な部類だと思っていた。
「そんなにきつかったですか?」
そう尋ねてみるとトーラスは深く頷く。
「まず、あの距離は集中しないと当てられない。
だから撃つ際には無防備なんだ。
それと単眼鏡を覗いている間は視界が狭くなるからね。」
あー、護衛が欲しいところか。
「それと、基本的に撃つ対象だけに集中したいから、周りの状況を確認してくれる助手は欲しいかなぁ。」
観測手のことをすっかり忘れていた。
だとすると、あの仕事はかなり無茶をさせてたんだな。
「すいません、次からは気を付けます。」
でも、ライフルを扱うトーラスの助手かぁ。信用できそうな人物じゃないとまずい。
心当たりがないわけじゃないけど、始終拘束していい相手じゃないし。
悩むなぁ。
「まあ、あんな場面そうそうないだろうし、気にしなくてもいいよ。
今回はゆっくりさせてもらうから。」
そう言いながら、トーラスは車載カメラの映像を見ながらマーナを撫で始めた。
ちなみに、映像はインベントリ内のモニターに送っている。
半分実体化させることで、映像だけが見れるというのは非常に便利だ。
トーラスがこれをできるようになったのは、つい最近で映像を何度も見せられて何となくわかったと本人は言っていた。
やはりインベントリの使い方については慣れというものが影響してるみたいだな。
途中でベネットがグラネを休ませたいという事で、森の中で休憩をとることになった。
トーラスもいるので、ベネットに渡したヘッドバンドヘルムの効果を確認してみよう。
「ベネット、ヘッドバンドヘルムを貸してもらえるかな?
性能テストしてみたいんだ。」
分かったと言って、ベネットはヘッドバンドヘルムを渡してくれた。
「どれくらいの性能なのか私も興味あるから、あとで教えてね?」
そういうとベネットはグラネにまたがる。
「じゃあ、ちょっと走ってくるから、また後でね?」
ベネットが手を振るので、俺も手を振り返した。
「ヘッドバンドヘルムねぇ。
高貴な方々が使っているのは知っているけど、どれほどのものなんだろう?
銃を防げないならあまり意味はない気はするんだけど。」
そうでもないだろう。
弓矢を防げるだけでも、十分意味はある。
投石でだって、人はあっさり死ぬものだ。
もちろん、銃弾を防いでくれるならそれに越したことはないわけではあるけども。
「まあ、それを確かめるために借りたわけですし、早速試してみましょう。」
そう言って、20mくらいの距離に発動状態で的に括りつけた。
発動すると、力場のようなものが発生するらしく、ゆっくりでないと的まで手を届かせることができない。
なるほど、こんな仕組みなのか。
優しく撫でようとすれば問題ないけど殴ろうとすれば、まるで鉄の兜を殴っているような固さを感じる。
ふむふむ。
とりあえず、まずはマスケットからかな。
トーラスの元まで戻り、横に立った。
「とりあえず、マスケットから試してみましょう。
効果があってくれると嬉しいですけど。」
そう言って、10発分の銃弾と火薬を渡す。
「了解。
じゃあ、早速始めようか?」
そう言って、二人でイヤーマフをかぶる。
改めて思うけれど、トーラスの腕があるからリズミカルに試射してもらえているわけで、もしこれがまだ銃になれてない兵士だと大分時間がかかるんだろうな。
それとやっぱり銃弾がどこにあたっているか、そしてどうやって弾かれたか分かる動体視力はちょっと異常だな。
俺の目はやっぱり常人離れしてきている気がする。
「10発中5発は弾かれましたね。
4発は、あれだと体にあたるし、一発は貫通してしまったみたいだ。」
トーラスもそうだねと返してくれる。
やっぱり、彼もあの弾道見えてるんだなぁ。
「これだとライフルには無力な感じかもね。
体は、防弾チョッキがあれば防げるだろうし、威力も若干落ちているから治療ができる状況なら助かるかも。
まあ、いずれにせよ、こいつで確かめてみようか?」
そういって、トーラスはライフルを取り出した。
「10発でよろしくお願いします。」
そう言って、俺はマガジンを手渡す。
「ライフルだと10発はあっという間だよ?
まあ、ヒロシはもっとすごい銃とかもってそうだけどね。」
そういいながら、マガジンを受け取り、トーラスは10発の銃弾をあっという間に撃ち尽くしてしまった。
10発中8発は貫通、2発は体に反れる形になってしまった。
「動いていれば、もうちょっと効果はあるかもしれない。
でも、やっぱりライフルを防げると言い切ることはできないかなぁ。」
トーラスの言葉に俺も頷く。
「あるいは、強化していくことで、ライフルも防げるようになるかもしれないですね。
何より、本体は傷ついてないのは驚きです。」
損傷したら買いなおしだなと思ってたから、これはうれしい誤算だった。
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