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9-2 彼女に履歴を見られて焦るとか体験したくなかった。

別にみラテたって平気だしと思っていても、見られていると意識しただけで焦りますよね。

 体を拭き、急いで服を着る。

 リビングに戻ると、レイナとベネット、二人して顔を赤くしていた。

「えーっと、その。」

 気まずい。

 なんと話しかければいいんだろうか?

 どこまで見たとか聞けないし。

「ね、ねえヒロシ君さ。一つ聞いてもいいかな?」

 レイナがおずおずと口を開く。

「なんでしょう?」

 冷汗が止まらない。

「イラスト投稿サイトって、あるじゃない?

 あの、お気に入りの先生が、そこで投稿してたわけなんだけどもさ。

 あそこのアカウント?

 それを私が取得することはできないの?」

 一応、それを代行してくれるサービスもあるので、取得することは可能だ。

「で、出来ますけど。」

 俺は、一応代行サービスの説明をした。

「つまり、こっちからは直接メッセージを送ることはできないんだね。

 分かった、ありがとう。」

 そう言いながら、タブレットで顔を隠す。

 さっきから、もくもくとベネットは端末をいじっている。

 一応、俺の趣味や嗜好なんかは、洗いざらい話しているし、そういうイラストを好んでみていることも告白している。

 でも、現物を見られるのはまたなんとも。

 不意にベネットは顔を上げて、じーっと俺の顔を見てくる。

 頬を赤らめているけど、どことなく不満げな顔をしていた。

 まあ、そりゃいくらイラストだからって割り切れるものでもないかなぁ。

 くいっとベネットが俺の服をつかんで引き寄せようとしてくる。

 逆らうわけにもいかず俺は、彼女の隣に腰かけた。

「ヒロシはこんなことをしてほしいの?」

 そう耳元でささやきながら、イラストを見せてくる。

 そこには俺がよくお世話になるイラストレーターさんの絵が表示されていた。

 思いっきりストライクなイラストだ。

 俺は、頷くことしかできない。

「言ってくれればよかったのに……」

 俺は思わずベネットの顔を見てしまった。

「いいよ、ヒロシなら。他の人じゃ絶対やだけど。」

 恥ずかしそうにベネットは顔をそむけた。

 どうやら、イラストとかは浮気判定じゃないみたいだな。

 よかった。

 まあ、これが構ってあげてなかったり特定のキャラを好きだ好きだ言ってたら話は別なんだろうけど。

 いや、でもよかった。

 見ているイラストレーターさんはこれでも大人しい絵の人だから。

 とりあえず、これ以上は詮索されるのはまずい。

 家族プランで加入したらブックマーク共有するとかふざけやがって。

 とりあえず、ブックマークの共有は止めよう。

 ついでに、ベネットのタブレットを拝借する。

「ねえ、ベネット。

 他にもいろんな絵があるから、ベネットのアカウントも取ろうか?

 ほら、こんな絵もあるよ?」

 無難にかわいいキャラクターのイラストを見せる。

 どうやら、そちらにも興味を示してくれたようだ。

 とりあえず、他の絵を探すふりをしながら、俺のアカウントを消して、ベネットのアカウントを取得する。

 そして、他に不味そうなブックマークもとりあえず消しておいた。

 ついでに履歴も消しておくか。

「ねえ、ヒロシ、私にもいじらせて?」

 そう言ってきたので、俺はベネットにタブレットを返した。

「動物の名前とかを入れれば、そういう絵が出てくるんだね。」

 どうやらベネットは馬や犬のイラストに興味があるようだ。

 よし、上手く意識がそれてくれようだ。

 よくやったぞ俺。

 そんな様子を見ながら、レイナがにやにやしている。

 お前、他人事みたいに。

 

 取れた小麦については税を納める関係上、半分は置いておかないといけない。

 残りの半分を俺が貰い、残りはアルノー村で分けてもらうことになった。

 まあ、本当微々たる量だ。

 収穫も終わり、俺たちはいったんモーダルに戻る。

 まず、大家さんの船を購入をしないといけない。

 他にも出発前に護衛に雇ったトーラスも迎えに行く。

 やるとことしては、そんなところだろうか?

 先生のところでは呪文も習ったし、マジックアイテムも購入させてもらった。

 料理なんかも一応追加注文ができるとはいえ、ハロルドに事前に発注させてもらい、それらもインベントリに納めてある。

 ユウには、《開閉》や《きらめく鱗粉》、《蜘蛛の網》なんかを教えた。

 当然、これらは俺が先生から教わったものなので、自分でも習得はしている。

 実は俺が習える上限の5レベル呪文では《瞬間移動》の呪文も習えるけれど、このレベルの《瞬間移動》は失敗確率があって変なところに飛ばされる可能性がある。

 だから、その上の《上級瞬間移動》が取得できるまではお預け。

 なので、5レベル呪文は《石の壁》と《集団飛行》の呪文を教えてもらった。

 他にも2レベルで学べる《連鎖する目》や《影の道》という呪文や、3レベルで習える《解呪》、《飛行》、《みぞれ混じりの嵐》。

 とまあ、色々覚えたわけだけども、使う場面はあるんだろうか?

 石の壁はそれこそ地形を変化させて永続的に壁を作れるから非常に強力な呪文だし、《飛行》にしろ《集団飛行》にしろ、空を飛べるというのはなかなかに有効な呪文だ。

 《連鎖する目》は接触した相手の見ているものを見ることができるから、のぞき見するなら有効だろう。

 しかも、その対象が接触した相手に移し替えることができるから、連鎖させて敵の構成を知るなんて言うのに有効だったりする。

 《解呪》に関しては、呪文使いを相手するときに用意して置けば相手の手段を潰すのに有効だ。

 もちろん、優れた相手の呪文を打ち消すのは難しいけど、より低い術者には非常に有効になるはずだ。

 と、ここまで言ってきたけどこれらは大抵戦闘をすることを前提にしているから、俺が直接使うことは少ないんじゃないかと感じる部分も大きい。

 唯一の例外が、《影の道》だ。

 これは、影でできた橋を架けることが可能になる呪文で、川や谷なんかを超える時に非常に有効だ。

 幅も6mほどあるから車ごと渡ることができる。

 しかも、重量制限がないから荷物を満載にしても橋が壊れるなんてこともない。

 という、とても便利な呪文ではある。

 一番お世話になりそうだなぁ。

 地味だけど。

 ほかにもあれやこれやと覚えたけど、全部を有効活用しているかというと疑問だなぁ。

 宝の持ち腐れにならないといいけど。

「ヒロシ、どうしたの?」

 ベネットがあれやこれやと悩んでいる俺に声をかけてきた。

 確か、レイナと少し話すと言っていたので、外で待っていたわけだけど。

 話は終わったんだろうか?

「いや、呪文のあれこれで悩んでた。

 話は終わったの?」

 そう聞くと、ベネットは頷く。

「おすすめの漫画とかを教えてもらってたの。」

 そうかそうか。

 どんな漫画を勧められたんだろうか?

 俺はレイナの方を見る。

「怪しい本は勧めてないからね。

 そういえば、マーナちゃんは使い魔にしないの?」

 使い魔。

 あー、あったなそんなルール。

 魔術師は、動物を使い魔にして、その能力の一部を手に入れられる。

 確かゲームでは狼を使い魔にすると嗅覚にボーナスがあるんだったなぁ。

 必要かどうかで言うと微妙だ。

 後は、使い魔と意思疎通ができるようになるんだったな。

 使い魔となった対象の知力も上がるし、悪いことは何もない。

 どこまでゲームの仕様と同じかは分からないけど、検討しておいてもいいかもしれない。

 狼の考えることなんてわからないから、今後の為にも意思疎通できるといいような気もする。

 でも、そういうレイナは使い魔を持ってるんだろうか?

「レイナさんは使い魔いるんですか?」

 いるよとレイナが返答すると、どこからともなくフクロウが飛んできた。

「わぁ、ちっちゃくてかわいい。」

 ベネットがフクロウを見て声を上げる。

 確かに、小さくてどことなく愛嬌がある感じがする。

 確か、フクロウを使い魔にすると知識量が増えるんだったか。

 そう考えると、フクロウを使い魔の方が便利な気がしなくもない。

 いや、こういうのはメリットばかりを考えるのは間違っている気もする。

 せっかくミリーが送ってきた狼なんだ。

 マーナを使い魔にしよう。

 でも、どうやって使い魔にするんだ?

「あれ?もしかして、使い魔にする方法をご存じない?」

 にんまりとレイナが笑う。

 そういうところでマウント取る必要あるのか?

 いや、まあいいや。

「お教えくださいませんか?

 大魔女様。」

 俺の言葉が嬉しかったらしく、レイナは上機嫌な様子だ。

 偉そうに胸を張りながら咳払いをして、では教えて進ぜようって言うのはなかなかに芝居がかってる。

 

 マーナを使い魔にして分かったことがある。

 動物との意思疎通は、ほとんど単語単位の意思疎通になるようだ。

 好き嫌い、あっちこっち、向こう、了解、拒否、不可能、可能といった単純な言葉に集約される。

 これだと《言語理解》では把握できないのも頷けた。

 言葉じゃないんだな。

 今は、車に揺られて後部座席でカールと戯れている。

 喜びを示しているので、マーナはカールと仲がいいというのは確かなようだ。

 いや、まあ仲が悪いという印象はなかったし、意外性はないんだよなぁ。

「楽しそうだね。」

 ベネットの言うとおり、行動で分かる。

 使い魔にした意味あったのかなぁ。

「そういえば船。

 今日買うんだよね。」

 俺は頷く。

「一応、カールを預けるついでに、契約を交わす予定だよ。

 その後、船をインベントリに納める。」

 そうしないと、乾ドックの費用がかかり続けてしまう。

 早めに特別枠に移さないと。

 そうすれば、少なくとも倉庫として活用できる。

 まあ、と言っても納めるのは春に大量に買い占めたキャベツやレタスの類、それにジャガイモなんかの食料ばっかりだけども。

 腐ったりはしないので値段が吊り上がったところで売りたい。

 そういえば、最近は俺のへそくりは伸びが悪い。

 そもそも、タオルにしても紙にしても、できうる限り現地で生産できるものは現地で生産しているからだ。

 俺がマージンを受け取る余地はない。

 グラスコー商会としては値段が抑えられて売り上げとしてはプラスだが俺としてはうま味がない。

 もちろん、品質が高い方が高く売れるわけだけど、安いものがあるのに高いものを買う余裕がある人は少ない。

 だから、在庫はあまりがちだ。

 在庫があるなら、仕入れないわけだし、ちょっと痛いな。

 防刃服も一巡した感があるので、そろそろ次の商品を売り出したいところではある。

 多分、俺の売る双眼鏡と同等の性能のものをアレストラばあさん作っちゃうだろうしなぁ。

 しかし、暁の盾に納品した、絞り式の銃剣はやはり不思議な仕組みだ。

 あれが魔法を使わない品物であるのが驚きでもあった。

 改めて、アレストラばあさんの凄さを思い知らされる。

 でも、電池を作ってもらえたなら、LEDランタンの売り上げは伸びそうな気がする。

 問題は、どのくらいの期間がたてば秘石電池が受け入れられるかだな。

 背に腹は代えられないから、多少あっちの世界のものも解禁していくしかない。

 普通の布を高級品として販売するのはありだな。

「いろいろ考えることがあって大変だよ。」

 そう漏らすと、頑張ってね旦那様とベネットは励ましてくれた。

 はい、頑張ります。

感想、ブックマーク、評価お待ちしております。

よろしくお願いします。

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