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1-21 なんか納得がいかない。

 行商人が来ない。

とりあえず、この水場にとどまってから1週間くらい経ってるんだが来ない。

 その間に俺は、中堅キャラバンのリーダー二人にコテンパンにされていた。

理由としちゃ、蛮地にいるには自衛くらいできないと駄目だとか何とか言ってたが。

 知らん!そんなこと!!

武道なんて俺は全くやったことがないから知らないが、いきなり棒を持たされてぼっこぼこにされるのが訓練なのかよ!!

おかげで打ち身まみれになっている。

筋は悪くないとか、素振りは基本だとか言われているけど、さっぱり分からん!!

どうやら槍の使い方らしいんだが、いつ始まるか、いつ終わるのかもさっぱり分からないからいじめられてる気分だ。

おかげで、誰か近寄ってくるとびくっとなってしまう。

筋は悪くないから訓練すればものになるとか言われてもねぇ……

 俺は、そんなことより文字が覚えたい。

どうやら王国の文字は表音文字らしいので、アジームやローフォンの所にいる女性やら老人に頼み込んで、基本の文字は教わった。

俺が発音ができない文字や聞き取れない文字なんかはなかったのは幸いだ。

発音と表記にずれもなかったし、英語なんかよりはよっぽど覚えやすい。

 しかし、まあ分かったこととして、人間の年の取り方は元の世界と代わりがないらしい。

逆に、オークやゴブリンは寿命が短いとも聞いた。

ミリーみたいなハーフリングは長命らしい。

300歳くらい生きるらしいから長生きだよな。

 でも、ミリーとテリーは、まだ15歳らしいから見た目とのギャップはなかった。

 話によるとエルフやドワーフもそうだが、成長は人間と同じで、老化はかなりゆっくりなんだそうな。

 なんかずるいなぁ……

 エルフなんか衰えても、美しいままで多少しわができるくらいらしい。

その代わり、半透明になっていって幽霊みたいな存在に鳴り、最後は死体が残らないとか……

反則臭い生き物だなぁ。

 まあでも、エルフか……

 嫁に貰うならエルフっていいよなぁ……

 んで、ドワーフの女は髭はえてるのか気になって聞いてみたら、そんなことはないらしい。

見た目もピンキリらしく、可憐な美少女みたいなのもいれば、がっちり横幅が広いのもいるとかなんとか……

美醜の基準も人間と大差ないらしい。

やっぱり可憐な美少女みたいな方が人気なんだとか。

 んで、ドワーフはご多分に漏れず鍛冶が得意で酒好き、エルフは魔法が得意で薬学にも精通していて森の中に住んでいる。

ここらへんは俺の知識と合致しているな。

 でも、滅多に人前には出てこないらしい。

 お知り合いになりたいもんだよなぁ……

 いや別に嫁としてだけじゃなく、鍛冶師や薬師として助けて欲しいと思ってる。

別に性欲だけで興味があるわけじゃない。

 うん。

 んで、ハーフリングは人間達の間で、密偵や盗賊のなり手として有名らしい。

身のこなしが俊敏で気配を殺すのが上手だからなんだそうなんだけど、ミリー達を見ていれば頷ける。

動物と仲良くなれるのも特徴らしいけど、ミリーみたいに山羊やら羊やらを完全掌握できるのは図抜けているって評価だった。

 なんで俺が鼻高々みたいな気分になってるのか分からんが、まあ嬉しい。

 んで、ゴブリンなんかも街で暮らす奴らが多くて、こっちは同じ盗賊タイプでも力押しするタイプが多いらしい。

徒党を組んでスラムや都市近郊に出没して、集団で襲いかかってくるらしい。

街のやくざものの手下として率いられることも多いと聞いた。

 なるほど、ゴブリンの方は結構な社会性があるんだな。

中には、ヨハンナみたいなまじない師もいるらしく、地方だと村落で仲良くやってる連中もいるらしい。

 こうしてみると、人間を中心とした物の見方だけど、それぞれに役割があるんだな。

オークも凶暴だとか、化け物みたいな扱いだけど、傭兵としての需要があるらしい。

雄だけの種族だけに全員戦闘員にできる。

その上で人間よりも力強く、おそれ知らずで命令もよく聞く。

多少不器用らしく弓矢なんかの扱いは下手だし、集中力がないから監督がいないとすぐ作業をやめてしまうらしいけど。

まあ基礎能力が高いんだから、その辺はご愛嬌だよな。

 だけど、最初の印象と違ってローフォンとアジームのキャラバンも結構文化的なんだな。

ご婦人やらご老人は、皆親切で教養もある。

男性陣は、あまり俺がご婦人達と接触するのは好んでないみたいだが、無理矢理引きはがそうとか、力づくで排除しようとしたりはしていない。

単に彼らの価値基準として、男は軽々しく女と話さないって価値観があるだけらしい。

脳筋なのはリーダー二人だよな。

それだけ即断即決が求められているって事もあるんだろうが、すぐに殴ってきやがる。

 まさか寝てるところに襲撃をかけてくるとは思わなかった。

おかげで逃げるのは上手くなったけどな。

そう考えてみると槍ってのは便利だ。

逃げ腰になって、適当に振るっても牽制にはなる。

かいくぐって懐に飛び込まれても、石突きで押し返してやれば距離の維持ができる。

素人でこれだ。

訓練した戦士が使ったら無敵だな。

 まあ、ちょっとした障害物でも使いにくくなるし持ち運びは不便だし、長いから重量以上に重く感じるけど。

それを差し引いても便利な武器だよな。

それに俺なら持ち運びの手間は軽減できる。

一本確保してみようかな……

槍って元の世界で販売してたりするだろうか?

 まあ超純水での資金確保も、この1週間でそれなりにできている。

これで何とかなったらいいな。

と言うか、早く行商人来ないだろうか?

中堅キャラバンはしびれを切らしたようで、昨日水場から出て行っちゃったし、俺たちもそろそろ移動しないとまずいよなぁ……

 まあ、いいや。

部外者が居ないうちに買い物をしよう。

まずは、着る物だよな。

みんなのサイズはすでに計測済みだ。

靴はトレッキングシューズにするとして、ズボンはジーンズが良いかな。

やっぱり丈夫さ重視した方が良いだろう。

いや、こうして買い物画面を眺めるだけでも楽しいなぁ……


 まあ、結果素寒貧になったわけですが……

1週間程度の資金稼ぎじゃ、あっという間になくなるね。

ジーンズは安物で、靴はそれぞれ銀貨5枚程度、保温機能のあるインナーを買ったら所持金0ですよ。

テリーと約束してた美味しい物は事前に確保してあるから良いとしても……

 まさか全部使っちゃうとはな。

やっぱり荒野で全て賄うのは無理だよなぁ……

とりあえず荷物の到着の前にテリーに美味しい物を渡してやるか。

朝食後の見回り前に渡してやろう。

 あの中堅キャラバンがいなければ、すぐにでも渡してたんだけどな。

怒ってなきゃ良いけど。

「テリー、ちょっと良いか?」

「なに?ヒロシ?」

「いや、例の件だよ……」

 にやりと俺は笑って、インベントリから美味しい物を取り出す。

まあ、なんとのことはないあんパンなわけだが……

「ふふふ、お代官様どうぞお納め下さい。」

「何いってんの?」

 あ、やっぱり通じないか。

「良いから、受け取れよ。」

 なんかこう滑ると恥ずかしいなぁ……

「パン?あぁ、美味しい物って頼んでたけど、これが美味しい物?……」

 躊躇無くテリーはあんパンにかじりついた。

 あれ?

 なんかどんどん無表情になってるんですが?

 あれれ?

 美味しくなかったか?

 えっと……もしかして豆はしょっぱいものって感じなのか?……

 俺失敗した?

 いや、でも結構なスピードで食ってくな。

全部食い尽くすとテリーは自分の手を見つめてる。

はぁ……と、残念そうなため息をつく……

残念そうって事は旨かったんだよな?

「美味しかった……」

 ぼけーっとした感じで空を見つめてる。

お前どんだけ旨いと思ったんだよ。

びっくりするわ。

「どうやら合格みたいだな。」

 俺はにやりと笑ってやる。

「そのにやにや笑うのはむかつくけど、確かに美味しかったよ。

 しょうがない。

 約束だから今から僕はヒロシの家来だ。」

 忘れてた。

そんな約束してたな。

どう答えたもんだか……

「あー、別に家来なんかにならなくていいさ。

 だって俺たち友達だろ?」

 ハンスの言っていたことを思い出して、友達宣言してみた。

「友達で家来だって良いだろう?

 ヒロシがどっかで修行してくる間、僕がキャラバンの面倒を見てあげるよ。」

 そういって、笑いながらテリーはきびすを返していった。

 くそう。

なんで俺は、いっつも手玉にとられるんだろうか。

俺は思わず頭をかきむしった。

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