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8-20 ドワーフの工房を見学させてもらう。

工場見学楽しいです。

 翌日、グラネとワンボックスで競争してみたりしながらアレストラばあさんの工房へと向かう。

 流石に、全速力でも車の方が早い。

 少しプライドを傷つけてしまったかもしれない。

 心配になって、速度を緩め、窓から顔を出したら頭をかじられた。

 またか。

 よだれでべっしょりになるから勘弁して欲しいんだけどなぁ。

 一応、やられるたびに水で洗い落してるけど乾くまで若干時間がかかるから本当に勘弁して欲しい。

 タオルで頭を拭くけど、若干湿ってる。

「グラネは、ヒロシの頭が大好物ね。」

 おかしそうにベネットが笑ってる。

 もう他人事だと思って。

「また我慢してね。

 平気?そう、うん。」

 まるでグラネと会話するように顔を寄せ合い、撫でながらベネットは神の籠へと収納する。

「本気出したから疲れちゃったって。

 あの子、のんびり屋さんなのに珍しい。」

 そういいながら、助手席にベネットは腰かける。

「グラネと話せるの?」

 ゲームでは意思疎通が可能になるし、ベネットのレベルなら確か本人と乗騎の間では話ができる。

「うん。

 私との間だけなんだけどね。」

 そこら辺もゲームと一緒なんだなぁ。

 不思議な感じだ。

 世界がゲームに寄せられているのか、あのゲームがこちらの世界に寄せられているのか。

 判別かつかない。

 まあ、悩んでもしょうがないか。

 少し不思議に思うのは、俺がグラネと話せないことだ。

 《言語理解》がある以上、話せても不思議じゃないんだけどなぁ。

 嫌われてるのかな?

 まあ、可能性はなくはないけど。

 あるいは、主人であるベネットだけが意思疎通できるという可能性もあるし。

 まあ、考えても仕方ないか。

「ねえ、ヒロシ。

 あの山が、言っていたアレストラさんの工房?」

 煙がもくもくと上がっている。

 もしあの山に鍛冶場が無いとしたら、炭焼きしてるか山火事かのどっちかだよな。

「うん、そうだよ。

 俺が前に来たときは雪が降ってたから、緑の山が見えるのは初めてだけど。」

 なんだか初めての場所に着た気分だ。

 

 みやげの強い蒸留酒とカステラを渡すと上機嫌でアレストラばあさんは応接間に通してくれた。

 鍛冶場だけあって、夏場だと地獄だから非常に助かる。

 とはいえ、熱気を逃すための換気扇が回り、外の冷たい空気を送り込んでくれるからみな長袖でも何とかなっているようだ。

 まあ、鍛冶場で諸肌をさらすわけにもいかないもんな。

 しかし、あの換気扇、冷蔵庫でも使われている温度で収縮するばねが使われてるんだろうなぁ。

 凄い技術だ。

「よく来たね。

 あの会議以来か?

 嫁を連れてくるとは、隅に置けないね。」

 俺は、あいまいに愛想笑いをするしかできない。

「それで、どうだい?

 冷蔵庫とやらは?

 うまくいってるかい?」

 アレストラばあさんには、構想を伝えファンを作ってもらっただけで現物を見せていない。

 どうせなら、それもみやげにしようと考えていた。

「一応、完成品が2種類出来ました。

 できれば、出来栄えを見ていただきたいんですけど、場所をお借りしてもいいですか?」

 もちろんだよとアレストラばあさんは快諾してくれた。

 なので、早速許しを得た場所に冷蔵庫を2台置く。

「こっちがアレストラさんに協力してもらったファン型です。

 やっぱりこっちの方が隅まで冷えて性能はいいですね。」

 冷蔵庫の中から、冷たいジュースを取り出す。

「これは?」

 陶器の瓶を見て、アレストラばあさんは中身が気になったようだ。

「ジュースです。

 水で薄めたり砂糖を加えたりして、味を調節してます。

 よろしければどうぞ。」

 そう言って、俺はグラスも取り出して、王冠を栓抜きで外してジュースを注ぐ。

「ジュースねぇ。

 子供にはいいだろうけど。」

 そういいながら、ぐいっとアレストラばあさんはあおった。

「あー、ビールを冷やすのもありかもねぇ。

 でも、これもうまいよ。」

 にっこり笑ってくれた。

「それで、こっちはモーダルの職人さんだけで作ったラジエーター型です。

 冷却部に近い方がやっぱり強く冷えるので、アイスを作るのにはいいんですが、下の方になってくるとどうしても温くなりがちです。」

 こちらの方が、アレストラばあさんには興味をひかれたようで、あちこち触って確かめるように眺め始めた。

「なるほどねぇ。

 この金属配分なら確かに一番効率はいいんだろうけど、やはり空気の循環がないと難しいか。

 いや、なかなか手が込んでいて面白いよ。

 人間の職人でもここまでできるようになったんだねぇ。」

 どことなく嬉しそうだ。

 他にも自転車や双眼鏡、ピーラーなんかの図面を見せた。

 現物も持ってきたので、これはアレストラばあさんに提供する。

 問題は秘石を使ったバッテリーの説明だ。

 モーターの説明から始まって、機械の動力源としてこれの他にガソリンを使ったエンジンが使われていることを説明した。

 そして、家の中など密閉空間ではエンジンよりもモーターの方が安全なため、よく電気が利用されることを説明する。

 当然、現物を見せる方が早いので、扇風機を取り出して試しに回してみた。

「なるほどねぇ。

 こっちの方が確かに効率的だ。

 まさか電気でこんなことができるとは思わなかったよ。」

 図面を見ながら、アレストラばあさんは扇風機をいじる。

 すぐ分解とかはしないんだな。

「で、秘石から電気を取り出したいと。

 魔法は私の専門外なんだけどねぇ。」

 いや、温度差で回転するファンとか、スライドを滑らせるだけで固定できる筒とか。

 十分魔法みたいなんだけどなぁ。

「作っていただきたいのはこっちなんです。

 先生は抵抗を並べていけば、テスターを作れるという話だったんですが、いまいちどういう素材がどれくらい電気を流すのか把握できてないんです。」

 そういいながら、俺は買っておいたテスターを取り出した。

「ふむ。

 これがどういうものか分からないねぇ。

 秘石を持ってるなら試しに作ってみるかい?

 容器なら作ってやるから、お前さんはその回路とやらを書いてごらん。

 どんな時だって、試すのが一番さ。」

 そういいながら、そそくさと出て行ってしまった。

「楽しそうだね。」

 ベネットがこっそり俺に耳打ちをした。

 確かに楽しそうだ。

 新しいものを知るのはどんな年になったって楽しいんだろうな。

 

 ばあさんは、様々な形の素焼きの容器を用意してきてくれた。、

 というわけで最初は一番小さい容器に粉末を少しづつ、水に流し込み端子を埋め込んでテスターで試していく。

 出来れば1.5Vと100V、200Vの端子を作りたい。

 ちょっとずつ回路を書き替えて、端子を作った。

 一番低い端子は0.1Vから1Vほどを行ったり来たりしている。

 次の端末は1Vから2Vだ。

 ふむ。

 これなら電池に使えるかもしれない。

 次に粉末の量を変化させて、電圧の安定性を確かめた。

 大体1つの石、1/100くらいの量でパチンと音を立てて端子が焼き切れてしまった。

 どうやら、秘石の量が増えると電圧が強制的に上がっていってしまうようだ。

 次の端子を試してみると80から110Vを示してしまう。

 だめだ、俺は性格がおおざっぱすぎる。

 これでいいやとか思ってしまう。

 一応、分量を増やせば電圧が安定し、はじける直前が一番いいと分かった時点で根を上げてしまった。

「根気がないねぇ。」

 アレストラばあさんは、顔を上げてしまった俺を笑う。

「すいません。」

 俺は頭を下げる。

「いや、まあいいさ。

 使い方は大体わかったよ。

 どういうテストをしたいのかも大体ね。

 後は私に任せておきな。

 とりあえず、端子は別の奴に任すから、あとはどんな形に仕上げたいかを図面で教えておくれ。」

 むしろいじりたくてうずうずしてたみたいだ。

「わ、分かりました。」

 俺は気おされて、ばあさんにすべてを任せてしまった。

 

「ねえ、ヒロシ。

 今日はここで、お泊りさせてもらう?」

 応接間に二人で残されてしまい、すっかり日が沈んでしまっている。

 アレストラばあさんは、テスターや端子、図面なんかをもって別の建物に移ってしまったので、やることがない。

「どうしようか?

 戻ってくる様子もないしね。」

 そもそも、泊まれる場所があるかどうかも知らない。

 どうしようかと悩んでたところで、応接間に人がやってきた。

 やはりドワーフだとは思うのだが、ばあさんと比べれば若く見える。

「すまんねぇ。姐さんがああなると見境がないんだ。

 日を改めないとお戻ってこないし、よければ宿舎を使ってくれねえか?

 帰しちまうと姐さん怒るから、後生だからと待ってってくれ。」

 俺としても専用インベントリの話もしたいし、コークスの話もしたい。

 ベネットに問題がなければ、お願いしたいところではある。

「私は問題ないよ。

 できれば、他の場所も見学させてほしいけど。」

 あー、それは分かる。

 何を作っているのか興味がわく。

 もちろん、門外不出のものもあるだろうから、案内役が欲しいところではあるけど。

「仕方ないねぇ。

 まあ、むさくるしいところだが、俺が案内するよ。」

 やれやれといった様子でドワーフさんは肩をすくめた。

「俺はビルムだ。

 姐さんの一番弟子って自負してるが、なかなか認めてくれねえんだよなぁ。

 まあ、姐さんのそばを離れるつもりはないからそれでもいいんだけどよ。」

 そう言って、ビルムさんは手を差し出す。

「俺は、グラスコー商会で働いているヒロシと言います。

 彼女は、ベネット。

 まだ、結婚はしてませんが婚約はしてます。」

 俺はビルムさんと手を握る。

「あー、一番幸せな時期だな。

 十分嚙み締めておくんだぜ?

 まあ、でもそれも人によるか。」

 既婚者なのかな。

 そういう話は、よく聞く。

 恋人気分のころが一番幸せだったとか。

 時間が積み重なって思い出が美化されてる可能性もあるけども。

 困難が重なれば、やっぱり後悔をすることも当然あるよな。

 どうなるのか、俺も不安だ。

 ベネットの方もちょっと不安そうだ。

 何となくお互い手を伸ばしてしまい、握ってしまった。

「それでどこから見てみたい?

 製鉄の所はよく見るだろ?

 ガラスと陶器、研ぎなんかは、やってる。

 革や布は残念ながら外に頼んでるから、麓に降りないとならない。

 まあ、一番涼しいのは研ぎかなぁ。」

 それなら、研ぎから見せてもらおうかなぁ。

 ちょっと気になる。

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