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8-16 教会から接触を図られた。

色々と考えちゃいますよね。

「お邪魔しまーす!!」

 セレンが大きな声で入ってきたので、カールがびっくりしている。

 マーナは歓迎するようにユウに飛びつく。

 結局、セレンに押し切られて家に連れてきてしまった。

 一応、ベネットには手紙で知らせてはいるけど凄い罪悪感があるのはなんでだろう。

 いや、リビングまでだから。

 それにユウもいるんだから、変なことは起きない。

 きっと。

 多分。

 いや、絶対に。

 ベネットは意外と平気らしくて、ジョシュを夕飯に呼んでレイナと食卓を囲むという話が帰ってきてた。

 信頼されているって事でいいのかなぁ。

 まあ、セレンの様子もおかしいから、俺に話しておきたいこともあるのかもしれない。

「うわ、おっきい金庫ですね。」

 セレンがびっくりしたような声を上げる。

 いや、そんなにでかいかな?

 膝くらいまでの大きさしかないし、そこそこの大きさだと思う。

「ベネットの財産もあるからね。

 そこそこのを買ったんだ。

 今までは、暁の盾に預けていたらしいから、結構たまってたらしいよ。」

 俺はテーブルに買ってきた料理を並べながら、買い置きのパンを取り出す。

「傭兵って儲かるんですね。

 あ、いや、まあ、命懸けだから当たり前か。」

 そうでもないと思う。

 命を懸けている割には安いんじゃないだろうか?

 まあ、命の値段は時価だからな。

 お金に換算するのは難しい。

 とはいえ、それでも結構な貯蓄が出来るんだから一般人から見れば成功者に見えるだろうな。

「すいません、余計なことを言いました。」

 考え事をしてたら、セレンが謝ってきた。

「いや、怒ってるわけじゃないですよ。

 それより食事にしましょう。」

 カールたちもお腹を空かせてるだろうしな。

 

 ユウは思った以上に健啖家だ。

 体は俺の半分くらいなのに、俺に匹敵するくらい食べた。

 あまりの食べっぷりに、ダンジョンで過ごす間の食事について心配になってしまうほどだ。

「ユウは、遺跡に潜ってる時もこんなに食べるのか?」

 ユウは首を横に振る。

「緊張してると食べられなくなります。

 危なくないところだと一杯食べてしまうんです。」

 な、なるほど。

 それは精神をやっちゃってるようにも思えるな。

「そっか、まあここでならいくらでも食べていいから。」

 そういいながら、俺はリンゴを剥き始めた。

 まあ、器用じゃないんで、4分割にした後ピーラーで剥いちゃうんだが。

「それ便利そうですね。

 皮むきがすごく楽そう。」

 あー、ピーラーも売れるかもな。

 セレンの言葉は目からうろこだった。

「目の付け所がいいですね。

 とりあえず、作れるかどうか聞いてみましょう。」

 そういうとセレンはうれしそうに笑う。

 剥いたリンゴはユウが一人でモリモリ食べてくれている。

 その間に、マーナに食事をさせよう。

 一応、カールにもドックフードを上げるようにお願いしているから昼は食べているはずだけど、こっちもモリモリ食べてくれる。

 好き嫌いがなくて助かるけど、太らないかちょっと心配だ。

 太った狼っていうのがカッコ悪いと思う反面、見てみたいという好奇心も沸いてしまった。

 いや、ダメダメ。

 そういう好奇心で、太らせるとかクソ飼い主の典型だ。

 正直、俺が動物を飼っているのが不思議でならない。

 ユウとマーナの食事が終わり、風呂を順番に済ませていく。

 とりあえず、セレンと二人きりになるときはマーナかカールを防壁にする。

「そこまで警戒しなくてもいいんじゃないですか?」

 いや、申し訳ないけど俺に対する防壁でもあるから、勘弁して欲しい。

「申し訳ないけど、身持ちが固い方じゃないから勘弁して。」

 ふーんとセレンは目を細める。

「まあ、いいです。

 ちょっとお話したいことがあるんですけどいいですか?」

 嫌だとは言いづらい。

 気になるしな。

「とりあえず、私がお渡しした聖印は破棄してください。

 多分、上の人凄く困惑してますから。

 あれのせいでみんな疑心暗鬼みたいです。」

 そうなのか。

「都合のいいところだけ聞かされてるんじゃないかって恐れてますよ?

 まあ、実際そうなんだと思いますけど。」

 ちょっとやりすぎたかな。

「無害であるとアピールが過ぎたかな?」

 俺がそういうと、セレンは頷く。

「警戒心がここまで強いのに、無警戒に盗聴を許してるという事は何かあるんだろう。

 そういう風に思ってるみたいです。

 私の上司はそちらの派閥ですね。」

 つまり、何も考えてないと思っている派閥もあるのかな?

「ちなみに、私に暗殺指令が出されそうになったのを止めたのもうちの上司です。

 安易に刺激するなという慎重な人なので、私はちょっと信用してます。」

 確かに、それはありがたい。

「まあ暗殺指令なんか出されても、私返り討ちにされちゃいますよって言っておきましたけど。

 信じてもらえないのはなんでなんでしょうね。」

 そんなことを俺に聞かれても。

 改めてセレンの鑑定を行ってみる。

 レベルは俺より2つ低い7だ。

 以前よりレベルが上がってる。

 かなりの腕があるのは確かだけど、それでもベネットにはかなわないだろう。、

 まあ、毒や罠なんかの絡めてという手段もあるから、必ずしもレベルがあてになるとは限らないけど。

「ともかく、上は混乱してます。

 いっそ私を処分して新しい人をあてがうかって言う話もあるとは言われてますし、逆に何の足枷もなくなるのは困るという意見も出てます。

 ヒロシさんへの評価も天と地ほどの差があってどうしていいのか分からないって言う感じなんですよ。」

 そんなこと聞かされてもなぁ。

 俺に他人の評価をどうこうできる手段がない。

「それで、俺にどうしろと?」

 少なくとも要求があるという事だろう。

「一度、私の上司と会ってください。

 日時はお任せします。」

 そう来たかぁ。

 結果としては俺の望む形ではあるかなぁ。

「もちろん、護衛は連れてきてもらっていいそうです。

 あくまでも話し合いがしたい、と伝えろと言われています。」

 少し心配になる。

「セレンさん、まさか洗いざらいしゃべってたりしませんよね?」

 特に俺たちに正体をばらしたとかそういうところだ。

「さすがに話せませんよ。

 私もなんで言っちゃったんだろうって後悔してます。」

 いや、本当になんでって感じだよ。

 まあ、ともかく、教会とコネクションができるならそれに越したことはない。

 変にて期待なんかしたくないしな。

 まあ、今日敵対するようなことしちゃったけどさ。

「そういえば、こっちからも聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

 なんでしょうとセレンは小首をかしげた。

「ジョンがいる修道院、あれ一体どうなってるんです?」

 とりあえず、怒ったことを一通り話してみた。

 セレンは困惑した表情を見せる。

「なんですかそれ、子供に文字を教えるなとかそんな教えありません。

 そりゃ、言うこと聞かない子に鞭を振ることはありますけど、明らかに理由がおかしいです。

 しかも、神が下す痛みだとか、何様なんですか。

 あり得ない!!

 しかも人質とって、避けさせないように強要するとか、何考えてるの。」

 あまりのひどさに、セレンは絶句してしまう。

 だよなぁ。

 明らかに常軌を逸している。

 とはいえ、それをそのまま糾弾しても仕方がない。

「そのことについては、セレンさんの方からも上に伝えておいてください。

 俺もジョンから直接聞いただけなので真実とも限りませんから。」

 まあ、鞭を振るわれたのは事実だが。

「あ、はい。」

 おい、まさか潜入調査とか、暗殺とか物騒なこと考えてなかったよな?

 ちょっと、突っ走りそうで怖い。

 正義感があるのはいいことだ。

 問題は、それで突っ走ってしまうことだ。

 事の善悪なんてそんなに分かり易いものじゃない。

 まあでも、明らかにあの常軌を逸した感じは何かあると思っていい気はするんだよな。

 ベーゼックにも話してみるか。

 あるいは、何か知っていて言葉を濁してたのかもしれないし。

 

「お風呂までいただいちゃってすいませんでした。

 また機会があればよろしくお願いしますね?」

 一応、夜道は危険なので、ユウとセレンを彼女の家まで送ったわけだけど、次の機会って……

 いや、食事くらいなら全然いいんだけども。

 まあいいや、帰ろう。

 不意に爺さんが目に飛び込んでくる。

 現れる時はいつも突然だな。

 俺は銅貨をとりだして、爺さんの前に置かれた皿に置く。

「聞きたいことはないのかね?」

 無いわけでもない。

 でも、この爺さんの正体も分からない。

 いいように利用されてる可能性だってある。

 どうしたものか。

 いや、その前にやるべきことがあった。

 金貨を爺さんの皿に置く。

 ピクリと爺さんが反応した。

「礼ですよ。

 無事全て終わりました。

 まあ、思ってもみなかった結末ですけどね。」

 あっちから襲って来るとは全然予測してなかった。

 しかも、事務員のポカがなければ接触することもなかったかもしれない。

 偶然、ではないのかもしれないが人の仕業じゃないだろう。

「それとこれは、別の話ですけど。

 マリドネル修道院について、何か情報があれば聞いてもいいですか?」

 銀貨を1枚追加で置いた。

「少し時間がかかるがいいかね?」

 俺は爺さんの言葉に肩をすくめる。

 爺さんはため息をつく。

「兄さんがどこまで信じてくれるか分からないが、ドライダルの件。

 裏に王族がいるよ。

 まあ、直接的な関係じゃないからほじくり返さなきゃ大丈夫だと思うがね。」

 まじか。

 厄介な話だな。

 ちょっと動悸がしてきた。

 ここにきて王族とか勘弁して欲しい。

 影も形もなかったじゃん。

 せいぜい貴族が裏にいる程度だと思ったんだけど。

 じっと爺さんが俺を見てくる。

「調べろとは言いませんよ。

 ほじくり返さなきゃいい話なんでしょ?

 なら、こちらとしては触れません。」

 触らぬ神に何とやらだ。

 爺さんは楽しそうににやりと笑う。

「せいぜい食べるものには気を付けてください。

 夏は食当たりが怖い。」

 そういいながら、俺は爺さんから離れる。

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