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8-15 先生に技術的な話をするべきかは常に悩む。

魔法があるとはいえ、一般庶民には手を出しにくい代物である以上は石油や石炭という燃料は重要な物資ですよね。

 話すべきか、話さざるべきか、それが問題だ。

 いや、まだできると限った話じゃない。

 その上で、それができたからと言ってどうなるのかも、俺には想像がついていない。

 いや、でもいずれ先生は気づくかもな。

「できるかどうかは分からないんですが、電力で秘石を生み出せるかもしれないと思ったんですよ。

 まあ、変換効率とか、そこら辺が分からないのでそれに意味があるかどうかは分からないんですけど。」

 先生が真顔になる。

 いや、めちゃくちゃ怖いですけど。

 やがてにやけ顔になった。、

「面白いじゃない。

 いいね、それは是非私に研究させてほしい。

 いや、久しぶりに面白い研究が出来そうだ。

 いいね、いいね。」

 先生はいろんな本を取り出してきて、メモ書きを始めた。

 うわー、どうしよう。

「いや、それだとあれだね。

 逆に電力を発生させる仕組みが必要だ。

 車のエンジンだったかな。

 あれを利用することもできるかもしれないねぇ。」

 エンジンか。

 なんかいきなり蒸気機関をすっ飛ばして、エンジンが存在している違和感に疑問を持ってしまう。

 ついでだから聞いてしまうか。

「先生、水を分離することは可能ですけど、他の液体を分離することって可能なんでしょうか?」

 先生はメモを取りながら、それでも俺の話は聞いてくれているようだ。

「もちろん、可能だよ。

 ちょっと扱うためのレベルが上がってしまうけど、油は分離できるね。

 もっと高度な術式を使えば、個体も分離は可能だよ。

 さすがにがっちり結合していると難しいけどね。」

 俺は思わず固まってしまった。

 それ遠心分離不要でウランを濃縮できてしまう。

 やばい、気づかれる前に話を変えよう。

「すごいですね。

 実は石油というものを探してまして、それを分離すれば燃料に最適なガソリンが精製出来るんですよ。」

 先生は何かを思い出したのか、別の本を持ち出す。

「聞いた事はあるね。

 残念ながら、この大陸ではまだ大規模な埋蔵地は見つかってないんだけど。

 そうか、それをエンジンに利用するというのも手だねぇ。」

 そうなのか。

 やっぱり、国を大きく離れないと難しそうだなぁ。

「まあ、石炭なら結構見つかるから、それを利用するというのもありかもね。

 今は、薪代わりに使われてる程度だけど。」

 脱硫したコークスとしては利用されてないんだろうか?

「製鉄には使われてないんですか?」

 俺の質問に先生は首を横に振った。

「あれだと、鉄が脆くなってしまうらしい。

 石炭に含まれる硫黄のせいだというのは知っているけど、わざわざそれを呪文で抜いて使うくらいなら、木材を燃やした方が早いしね。」

 なるほど、何でも呪文という発想だから、コークスを作ろうという発想には至らないのか。

 これは、使えるのでは?

 なんだったら、蒸気機関も教えてしまっていい気がしてきた。

 いや、いいのか?

 今、安定しているのは、それらの技術が発達してないからかもしれないぞ?

 滅茶苦茶悩むな。

 先生だったら、どんどんやればいいと言いそうだけど、これはちょっと別の人に相談した方がいいな。

「ふむぅ。

 ちょっと実験したいな。」

 先生がため息をつく。

 とりあえず、先生の邪魔になりそうだし、そろそろお暇するか。

「長く、お邪魔してすいません。

 また何かあればよろしくお願いします。」

 そういうと、先生は申し訳なさそうな顔になった。

「あ、いや、ヒロシ君が邪魔だというわけじゃなんだ。

 むしろごめんね、長々と付き合わせてしまって。」

 先生は気遣いもできるし、きっと女性にもてるんだろうな。

 頭もよくて、美形だ。

 羨ましい。

「いえ、こちらこそいろいろとご教授いただきありがとうございます。

 また近いうちにお邪魔させていただきます。」

 俺は頭を下げて、席を立つ。

「何も、お構いできなくてごめんね。

 またいつでも来てよ。」

 さわやかな笑顔を浮かべつつも、何やら実験の準備を始めていた。

 マルチタスクができる人ってすごいよなぁ。

 

 結構な時間待たせてしまった。

 アノーは怒ってたりしないかな?

 窓越しに除くと、シートを倒して寝てた。

 まあ、寝れるときに寝ておくのは悪いことじゃないよな。

 どうしようか。

 いやまあ、いいか。

 こんこんと窓を叩く。

 慌ててアノーは体を起こした。

 鍵を開けてくれたので、車に乗り込む。

「お待たせしました。

 長い時間すいません。」

 俺が謝るとアノーは手を横に振る。

「いや、全然。

 ゆっくり眠らせてもらったんで平気っすよ。

 しかし、この車の椅子、滅茶苦茶寝やすいっすね。

 車の中で生活できそうですよ。」

 まあ、実際そういう人もいるな。

 車の中なら、変なのに襲われるリスクも減らせるだろう。

 でも何のかんの言って、車中泊は疲れる。

「とりあえず、倉庫に戻りましょうか?

 いくら寝やすくてもちゃんと休んだ方がいいですよ。」

 それもそうっすねとアノーも同意した。

 

 倉庫に戻るとベンさんとユウがおしゃべりをしていた。

 セレンが仕事中、行く場所もないという事で倉庫で過ごしているようだ。

「おかえりなさい、師匠。」

 ぺこりと俺にお辞儀をしてくる。

 いや、まじでそういうの慣れない。

「ただいま、ユウ。

 えっと、何を話してたの?」

 ベンさんとユウは顔を見合わせる。

「おとぎ話を聞かせてもらってました。

 あと、絵本の話を少し。」

 そういうと、恥ずかしそうに絵本で顔を隠す。

 なんで照れるんだろう?

「子供っぽい趣味だと思われたくないんだろう?

 まあ、気にすることじゃないと思うがね。」

 そういいながら、ベンさんはユウの頭を撫でる。

 うん、それは俺も思う。

「可愛いって言われるのが、照れくさいって言うのもあるんじゃないっすかね。」

 まあ、確かにそれも分かる。

 ただ、ユウはそういう話題にされるのも恥ずかしいのか、この場から離れて行ってしまった。

「あらら、いっちゃった。

 俺余計なこと言っちゃいましたかね。」

 アノーは反省しながら頭を掻いた。

「いや、まああのくらいの子は難しいから仕方ないさ。

 それより、倉庫にしまっておくものあるか?」

 ベンさんがそう言いながら、仕事の準備を始める。

「あ、よろしくお願いします。

 それと、ヒロシさん目録持ってってもらっていいっすか?」

 俺は、分かりましたと言って目録を受け取る。

 事務所に入ると少し汗ばむ。

 一応扇風機をかけて、排気をしているおかげでそこまで蒸し風呂状態ではないけれど、外の方が涼しいのは確かだ。

「あーつーいー。もーやだー……」

 レイシャは仕事を終えたばかりなのか、崩れるように冷房クッションを下敷きにしながら机に突っ伏した。

「だらしないですね。

 ちょっと汗ばむくらいじゃないですか?」

 セレンがそう言いながら、バインダーでレイシャを扇いでいる。

「すいません、アノーさんの目録と、俺の目録です。」

 そう声をかけるとセレンが受け取りに来てくれた。

「お疲れ様です。

 ヒロシさん、今日はベネットさんいらっしゃらないんですよね?

 食事とかどうなさるんですか?」

 あー、うん。

 そういわれればそうだ。

 晩飯どうしよう。

「まあ、暑いですし軽く済ませようかなって思ってます。

 カールもいるから、何か適当なもの買ってこうかな。」

 しかし、割り込めないといったくせに相変わらず絡んでくるな。

 何か指示でも受けてるのかな?

「最近、食欲無いからアイスばっかり食べてる。

 なんか、冷たくてもちゃんとお中にたまるものないかなぁ。」

 レイシャが切実な悩みを吐露する。

 冷たくて、なおかつ腹にたまるものねぇ。

 そうめんが真っ先に思いつくけど、あれはあれで作るまでが地獄だ。

「ハロルドさんのところで出している冷製パスタとかどうですか?

 あれ、ソースを凍らせて雪みたく細かくして載せてるから冷たくておいしいですよ?」

 セレンの言葉に俺は驚く。

 そんなものを作ってたんだな。

 なんか知らないメニューが増えててびっくりする。

「へぇ、トマト味のもあるかな?」

 確かにトマト味ならおいしそうだ。

「レイシャさんって、トマト好きですね。

 私はあの真っ赤なのがどうしても苦手です。」

 相変わらずセレンはトマトが苦手らしい。

「あの、赤いのがいいんじゃない。

 それと酸味と青臭さが好きなんだよね。」

 飯談義するのはいいけど、ハロルドの店は滅茶苦茶混んでるんだよなぁ。

 これから行って席取れるかな?

「予約もなしに行けるんですか?

 多分、座る場所ないですよ?」

 イレーネが容赦なく突っ込みを入れる。

「うえぇ……もう、アイスだけでいい……」

 レイシャが泣きながら、クッションに顔をうずめる。

「ヒロシさん、トマトって私が購入してもよろしいですか?」

 イレーネの突然の申し出にちょっとびっくりしてしまう。

 いや別に、ちゃんとお金を払ってもらえれば問題ないけども。

「構いませんよ。

 いくつ必要ですか?」

 とりあえず、3つと言われたので袋に入れてイレーネに渡す。

「レイシャがよければ、私の家で似たようなものを作りましょう。

 ハロルドさんほどうまくできるとは限りませんが。」

 いかがですかとイレーネが言うと、レイシャは二つ返事でよろしくと言った。

「なんか、トマト嫌いな私の方が少数派みたい。」

 セレンが少し不満そうに漏らす。

「いや、まだそんなに受け入れられてないから、セレンさんの方が多数派だと思いますよ。」

 とりあえず、フォローしておこう。

「うちの子も嫌いだね、トマト。

 案外おいしいと思うんだけど、やっぱり色がまずいのかねぇ。」

 ライナさんがため息を漏らす。

 いや、たぶん味とかも受け付けない人は受け付けないんじゃないかなぁ。

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