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8-13 なんだか色々訳アリなんだなぁ。

お金の集まるところには人も集まってきます。

さてどうなります事やら。

 モーダル市内を車で移動するのは迷惑かなと思い、一旦倉庫へ向かう。

 流石に暑い。

「おう、ヒロシ。

 丁度いい、新入りを紹介するから、ちょっと事務所に来いよ。」

 グラスコーが事務所から顔を出し呼びつけてくる。

 そうか、今日から来たのか。

 

「ロドリゴです。

 よろしく。」

 ぶっきらぼうに、挨拶をしてロドリゴはすぐに黙ってしまう。

 アノーもちょっと戸惑い気味だ。

「アノーっす。よろしくお願いします。

 いや、ここの職場、若い女の人多いっすね。

 俺恋人募集中なんで、いつでも声かけてください。」

 うわ、軽い。

「ロドリゴは遺跡担当だから、明後日は俺と一緒に来てもらう。

 アノーの方は、俺とは逆ルートをたどってもらうから、それまで仕入れよろしくな?

 ヒロシは、とりあえず王国内って言うのは変わらない。

 護衛は嫁がいるからいらんだろ?

 セレンはロドリゴと行動してくれ。」

 黒板にこれからの計画を軽く書きながら、グラスコーは説明する。

「え?私、ヒロシさんとじゃないんですか?」

 いや、ここでそのセリフを言うかね君は。

「たりめえだろ。

 ガキどもの面倒を見てくれなきゃ困るぜ。

 言ってみれば、あいつらの窓口がお前ってことだよ。」

 グラスコーは頭を抱える。

「あ、そうか。

 分かりました、任せてください。」

 よしよし、役割を理解してくれたようで何よりだ。

 セレンが一番、ジョンたちを気にかけてくれてるしな。

 上手く関係を作ってくれるとありがたい。

「えっと、俺には女の子付けてくれないんすか?」

 アノーが挙手をしながら聞いてくる。

「お前、女を連れて蛮地を走るつもりか?

 ちゃんとした護衛を雇うから、女見つけたきゃそこから選べよ。」

 筋肉質な女性はちょっととか言ってるが、冗談のつもりなんだよな?

 頼むから、面倒ごとは起こさないでくれ。

「ヒロシ、とりあえずアノーに運転を教えてやってくれ。

 多分、すぐ慣れると思うからよろしく頼むわ。」

 聞いてないぞ。

 運転の教習はグラスコーでこりごりなんだが。

「いやな顔すんなよ。

 大丈夫だって。」

 相変わらず、強引だな。

「分かりました。

 事故ったら修理代請求しますんで、そこんところよろしく、グラスコーさん。」

 商会の持ち物なんだから、当然修理代なんかは商会持ちだ。

「分かってるよ。

 アノー、十分注意しろよ。

 壊したらクビにすっからな。」

 アノーは、顔を青くしながらうっすと答えた。

 いや、まあ多少の故障ならクビにはならないと思うけどな。

 しかし、二人にも専用インベントリが必要かもな。

 しかも別々に容量を割り振らないと。

 後でホールディングバッグだって言って渡そう。

 

 専用インベントリを渡し終え、早速アノーの運転するワンボックスに便乗させてもらう。

 教習も兼ねてるので、ゆっくり動かしてもらった。

 オートマなので、特に難しい操作はない。

 馬車の運転には慣れているという事で、車体感覚には問題はないし、ドライブに入れてブレーキを緩めれば勝手に進んでくれる。

 後でタイヤ交換とかも教えないとな。

「これ便利っすね。

 ブレーキを利かせればすぐ止まるし、アクセル踏めばすぐ加速するし。

 馬の機嫌も関係ない。

 ちょっと早すぎな気もするっすけど、馬車より断然こっちっすね。」

 まあ、相応に高いけどね。

「とりあえず、ハロルドの店まで走ってもらえますか?

 さっき渡したものをハロルドさんにも渡したいんで。」

 了解と言いながら、アノーは車を加速させた。

 とはいえ、早すぎるといった感想を抱いていたからか言うほど飛ばしてない。

 割と慎重な性格のみたいだな。

 まあ、そうだよな。

 口調から、軽い性格なのかと思ったけど、そんなに無謀な奴ならグラスコーも雇わないか。

「いや、でも助かりましたよ。

 グラスコーさんが雇ってくれなきゃ、俺借金で首が回らなくなるところでした。

 まさか、あれだけ上がってた麦があんなに下がるとは。

 商売って難しいっすね。」

 あぁ、あの乱高下に巻き込まれたのか。

「しかも給料も良いし、こんなものまで任せてくれるし。

 最高っすね。」

 確か、給料は俺と同じ銀貨20枚だ。

 だけどその上で、売り上げの10%がボーナスとして支払われる。

 俺も同じ契約に変わっていて、これは破格の待遇だ。

 まあ、車を売られて飛ばれると困るからというのもあって、餌を吊り下げたというところだよな。

 俺がそれをやるメリットはないから、契約が変更されたのはついでだと思う。

 ちなみに、ギルドに提供した商品から得られる使用料についても俺の売り上げと換算されるそうだ。

 いや、太っ腹だなぁ。

 ロドリゴは銀貨20枚オンリーだというのはちょっと格差を感じてしまうが、特にそれで文句は言われなかったとグラスコーは言っていた。

 まだ、ショックから立ち直れてないのかなぁ。

「ちなみに、アノーさんは蛮地を通ったことあるんですか?」

 ちょっと経験を聞いてみたい。

「なんすか、テストですか?

 一応面接のときにも言いましたけど、何度か通ったことはありますよ。

 やばい場所だってのは重々承知してますよ。

 でも、王国の中じゃ俺みたいな小物はどうにもなりません。

 ヒロシさんみたいに不思議なホールディングバッグもないですしね。」

 そうだったっけ?

 忘れてる。

 本当に記憶力悪いな。

「着きましたよ?

 どうします、俺も付いてきます?」

 アノーがハロルドの店に付いたことを教えてくれた。

「いや、しばらくなれるためにも運転した方がいいだろうし、流しておいてくれますか?

 適当に休憩してもらっていいんで。

 あと仕入れとかしたい場合は、任せます。

 日が沈む前に回収してください。」

 了解というアノーの言葉を聞き、俺は車から降りた。

 ハロルドの店を覗くと、店員さんたちが忙しく給仕をしている。

 いよいよもって、入りづらくなった。

「すいません、グラスコー商会のヒロシです。」

 戸を叩いて、声をかける。

「ヒロシさん、いらっしゃいませ。お食事ですか?」

 接客がかかりの筆頭らしい女性が慌てて駆け寄ってくる。

「いえ、ハロルドさんに用事がありまして。」

 そういうと、女性は階段の方を見る。

「店長は、今上にいらっしゃるんですが。」

 どうしようといった様子だ。

「上がらせてもらっても?」

 聞いてきますと、すっとんでいった。

 もしかして、圧力かけてるようになっちゃっただろうか?

 次から言葉には気を付けよう。

「上がってきて欲しいそうです。」

 許可が出たのか、店の中に通された。

「すいません、ご迷惑おかけします。」

 頭を下げて、そっと店の奥に向かう。

 階段を上ると、小さな部屋があった。

 あー、こんなテナントだったなぁ。

 奥の方に寝室があるんだったと思う。

 ハロルドさんは、奥さんに食事をとらせているようだ。

「失礼します。奥さんの食事中にすいません。」

 ハロルドさんが驚いたような顔をする。

「あ、いや。そう見えますよね。ヒロシさん、ちょっと違うんですよ。」

 なんだ?

 まさか不倫で駆け落ちとかか?

「私は以前、帝国の貴族に仕えて料理人をしていました。

 この方は私が仕えていた貴族のご子息が娶られた奥方様です。」

 それがまたなんでこんなところに。

「いろいろと事情がありまして奥方様は追放されてしまったわけですが、私はそのお世話係のようなものです。

 料理しか得手がないもので、ご苦労を掛けてしまいました。」

 そういいながら、いつくしむように女性の口元を拭う。

 それは忠義なのか思慕なのか、判断がつかない。

 随分と若い女性だ。

 明らかにハロルドと所帯を持ってもおかしくない年齢差に見えた。

「ところで、ご用件は何ですか?

 人を増やしましたので、大抵のご要望には応えられるかと。」

 頼もしい限りだ。

 いや本当に迷惑をかけてるな。

 何かあったら、力にならないと罰が当たりそうだ。

「実は、渡したいものがありまして。

 それと、今月の発注票になります。」

 タイプライターで打った注文票を渡す。

「渡したいものというのは何でしょう?」

 注文票を受け取りつつ、ハロルドは訪ねてきた。

 専用インベントリを紐づけたバックを取り出し、一通りの使い方を説明した。

「というわけで、作っていただいたものは、こちらの中に入れていただければ助かります。

 もしなにか相談があれば、こちらに手紙を入れさせていただきますし、問題があればハロルドさんの方からも手紙を入れてください。」

 なるほどと言って、ハロルドはバッグを受け取ってくれた。

「これに、食材を入れてもらえるのですね。

 触れば料理を入れられるのは便利だ。」

 とりあえず、拒絶されなくてよかった。

 しかし、夫婦でもない女性と暮らすって言うのはどういう気分なんだろうか?

 俺には少しわかりかねた。

 もし、少しでも男として好きなら、とても俺には耐えられそうにない。

 

 アノーが戻ってくるまで、俺はハロルドの店で時間を潰させてもらった。

 通りに出されたテラス席で、軽くコーヒーを飲ませてもらったけど、なかなかおいしい。

 生クリームを載せたウィンナーコーヒーなんだけど、ウィーンではないから、モーダーだろうか?

 こっちの世界では、当然その土地の名前がつくよなぁ。

 しかし、まあ人って言うのはいろいろと問題を抱えているよな。

 あの女性、鑑定すべきか?

 いや、今の状態がハロルドにとっても幸せって可能性もあるからな。

 不意にクラクションが鳴らされた。

 どうやらアノーが戻ってきたようだ。

 俺は急いで、コーヒーを飲み干した。

 

「どうしたんすか?

 浮かない顔で。」

 まさか新入りに聞くわけにもいかないよな。

 プライバシーの問題もあるし。

「いや、ちょっと今日は一人寝になるんで切ないなぁと思っただけですよ。」

 とりあえず誤魔化しておこう。

「そういや、結婚するんすよね。

 あの銀髪の剣姫と。」

 その名前はちょっと独り歩きしすぎだ。

「それみんな知ってるんですか?」

 気になって聞いてみた。

「いや、最近赤毛の女と浮気してるって噂でしたけど、ちょっと事務員の子に聞いたらそれが……」

 俺は、唇の前で指を立てる。

「あ、口外禁止なんすね。」

 アノーは、頭を掻いた。

「顔が売れ過ぎたから、髪を染めてるんですよ。

 そのうち俺も髪を染めないといけなくなるかな。」

 まあ、別にそこまで必要とも思えないけども。

「ヒロシさんは、恨み買うようなことしてるんすか?

 割と評判いいっすよ?」

 そうなんだ、知らなかった。

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